2018年12月31日

クジラたちの海、ジュゴンたちの海

 皆さんご承知のとおり、暮れも押し迫った12月26日、日本政府は国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を発表しました。
 ついに堂々退場≠オちゃった捕鯨ニッポン。 
 NHKをはじめ各メディアが「IWC脱退(発表予定)」を一斉に報じたのが公式発表に先立つ20日のこと。「脱退」の二文字が新聞の表紙に踊る夢を筆者が見たのがその2日前の晩。まあ、政府の判断が年内に示されるのは9月のIWCブラジル総会後の水産紙報道でわかっていたことなのですが。で、26日には菅官房長官の談話の形で発表され、翌日本当に各紙の1面を飾ることに。

■内閣官房長官記者会見 平成30年12月26日(水)午前 国際捕鯨取締条約からの脱退について|首相官邸
https://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201812/26_a.html
脱退の効力が発生する来年7月から行う商業捕鯨は、日本の領海及び排他的経済水域に限定し、南極海・南半球では捕獲を行いません。(引用)

 公式見解に基づけば、南極海のクジラにとっては大きなプラス日本近海のクジラにとっては大きなマイナス
 ただ・・現時点では不確定の情報があまりに多く、商業捕鯨を再開・推進する日本側にとっても、また対応を余儀なくされる国際社会の側にとっても難題山積。見通しを欠いたまま強引に再開を押し通してしまった自民党捕鯨議連(とくに二階幹事長)と水産庁の責任はあまりに大きいといえますが。
 どこがどう問題なのかについては、20日以降の拙ツイログをご参照。


 ここではマスコミ報道をもとにポイントを解説しておきましょう。

@IWC脱退 7月商業捕鯨再開へ (12/26, NHK)
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20181226/0006652.html
再開する商業捕鯨はクジラの資源に影響を与えないよう適切な頭数を算出したうえで捕獲枠を設定して行われる見通しで、小型の船による沿岸での捕鯨のほか、沖合で複数の船が船団を組んで行う捕鯨も再開する方針です。
捕獲するのは、沿岸では主にミンククジラで、沖合ではミンククジラのほか、豊富だと見られているイワシクジラやニタリクジラも対象にすることにしています。
ただ、日本は海の利用などを定めた「国連海洋法条約」を批准していて、捕鯨を行う場合には「国際機関を通じて」適切に管理することが定められています。
このため政府は、「オブザーバー」という形でIWCの総会や科学委員会に関わっていくことにより、定められた条件を満たしていく方針です。(中略)
水産庁では、脱退後、すみやかに商業捕鯨を再開するほか、捕獲するクジラの種類も増やすことで、調査捕鯨の分がなくなってもクジラ肉の流通量が大幅に減ることはないと説明しています。(引用)

A主張通らず「脱退」 政権、IWC運営に不満 商業捕鯨再開へ (12/27, 朝日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13828863.html
政府は節目とされた9月のIWC総会前から、水面下で関係各国への根回しを進めた。(引用)

B感情論に振り回されたIWC 脱退は正常化の出発点 (12/20, 産経)
https://www.sankei.com/life/news/181220/lif1812200041-n3.html
科学調査は捕獲区域の日本近海や北太平洋で開始。鯨類資源が十分にある南極海からも撤退せず、目視による非致死的調査の継続に向け、調整を進める。(引用)

C政府、IWC6月末脱退通知 商業捕鯨、網走、釧路、函館など8拠点 (12/27, 北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/262335
商業捕鯨では網走、釧路、函館を含む全国7地域を拠点に、ミンククジラやツチクジラを捕獲する沿岸捕鯨を行い、山口県下関市を拠点にイワシクジラやニタリクジラを捕る沖合での母船式捕鯨を行う。沿岸捕鯨は全国の6業者5隻が操業、沖合操業はこれまで調査捕鯨を担ってきた共同船舶(東京)が実施する。(引用)

T.「共存」のハッタリ──脱退するために用意された無茶ブリ提案

 複数のメディアが、9月のIWCブラジル総会の前に、日本政府はすでに脱退の方針を固めていたことを伝えています。
 つまり、「共存」なんて嘘八百。実際、日本提案の中身は、双方の主張を取り入れた譲歩案とはかけ離れたものでした。中立に近いインドには問題点を指摘され、捕鯨賛成派のロシア・韓国も棄権、オーストラリア代表には「なぜこんな絶対通らない提案を出したのかわからない」と揶揄される始末。さらに不可解なことに、水産庁の諸貫代表代理が「東京と相談する」と答えて翌日出てきた修正案は、反対陣営がより受け入れやすくなるどころか、逆にハードルが上がっていたのです。常識で考えればありえないこと。
 それもそのはず。要するに、最初から受け入れられない前提で、純粋に国内向けに脱退の口実≠ノするためにこそ用意されたものだったのです。
 日本は9月のブラジルで、その気もまったくないのに共存≠ニいう言葉をこれ見よがしに掲げるパフォーマンスを繰り広げました。世界に対して大嘘をついていたのです。新基地建設を強行しながら「沖縄の負担を軽減する」などとしらじらしいことを平然と口にするのと同じく。
 日本提案の詳細については以下の解説をご参照。

■国際捕鯨委員会第67回会合と日本提案|真田康弘のブログ
https://y-sanada.blog.so-net.ne.jp/2018-09-15
■税金でブラジルまで出かけて無能ぶりを晒した捕鯨族議員は惨敗の責任を取れ
http://kkneko.sblo.jp/article/184463999.html

U.いままさに行われているチョウサ捕鯨≠ニいう名の商業捕鯨

 上掲のとおり、日本は9月のIWC総会前に脱退を決めていました。
 と同時に、これはこの11月12日に南極海に向けて出港した捕鯨船団による新南極海鯨類科学調査(NEWREP-A)の許可証発給前であることを意味します。
 2014年の国際司法裁判所(ICJ)の判決により、NEWREP-Aの前の南極海調査捕鯨(JARPAU)の国際法違反が確定しましたが、そのJARPAUの調査計画の非科学性の論拠のひとつに「研究期間が設定されていない」ことが挙げられました。この批判を受け、NEWREP-Aは12年の期間が設けられ、半分に当たる6年後にレビューを行い、数字を見直すこととしています。
 NEWREP-Aは今年でまだ4年目。半分にも達していません。

https://twitter.com/segawashin/status/1075904691899387904
こんな大規模コホート、医学研究でもなかなか目にしないw。こんだけサンプル集めてろくな論文も出てないって、まともな研究者なら座敷牢で折檻されるレベルだな(引用)

 上掲は小児科医/研究者でもある作家の瀬川深氏のツイート。
 NEWREP-Aは必要なデータが集まり切る前に空中分解、科学調査としての意義が完全に費えることが確定したわけです。オブザーバーとしてIWCに提出する報告以外、2018/19のチョウサ≠ゥら国際査読誌に掲載されるだけの学術論文が書かれることなどありえない話。
 要するに、今南極海で日新丸船団が行っているのは、国際条約で認められている(致死的な)科学調査などではなく、純粋に美味い刺身=i〜本川元水産庁長官)を日本の鯨肉市場に供給するための商業捕鯨に他ならないわけです。JARPAIIと同様、国際法のもとでは決して認められないはずの。
 今季のNEWREP-Aは過去の調査捕鯨の中でも最も、限りなく商業捕鯨に近いといっても過言ではないでしょう。
 上掲産経報道Dで「目視による非致死的調査の継続」とありますが、従来の日本の主張どおり「致死調査が必要不可欠」であるなら、これは無意味です。
 もし、代わりに目視調査を行うことに科学的意義があるとするならば、そもそもこれまでのNEWREP-Aを含む南極海調査捕鯨が不必要(あるいは相対的な必要性)だったことを自ら証明するものにほかなりません。国際法のみならず、日本の動物愛護法における3R≠フ趣旨にも真っ向から反していたことになります。
 違法性がJARPAIIより明確な最後の南極海捕鯨≠ヘ、仮にITLOSに訴えられればほぼ確実にアウトでしょう。ITLOSは、三権分立の建前がすっかり壊れ、米軍基地辺野古移設に関して安倍政権に擦り寄る判断しかできなくなった日本の司法とはきっと異なるでしょうから。
 残念なのは、仮にITLOSで違法判断が下されたとしても(差し止め命令は別にして)、そのころには手遅れで意味がなくなっている可能性が高いことですが。
 ただ、たとえ止められないとしても、最後の最後まで国際法を毀損する真似ばかりする国だったと、日本の汚点が歴史に刻み込まれることになるでしょう。
 日本が自らの国益をあまりにも大きく損ねた共同船舶による母船式捕鯨を完全に断念し、厳格な管理のもとでの太平洋沿岸17頭程度の沿岸捕鯨にとどめるのであれば、日本の北方領土や尖閣諸島周辺海域に相当する南極海をサンクチュアリに指定している国々も、「これで本当に最後ね」ということで政治的に黙認することも、あるいはやぶさかでなかったかもしれません。
 各メディアとも奇妙なほど触れずにすませていますが、日新丸船団は今頃南極海でまさに捕鯨を始めたあたり。
 しかし、南半球諸国の市民がこのまま黙っているとは、筆者には思えません。年明けには強い批判の声が巻き起こったとしても不思議はないでしょう。

V.規制に縛られない「オブザーバー」でやりたい放題!?

 「オブザーバー」とは読んで字の如し、傍観(聴)者=B
 会議の場に居合わせて、議論の様子を直接見聞きし、それを市民に伝えることができるのは、例えばNGO(非政府機関〜市民団体)にとってみれば大きなメリットと呼べるでしょう。もっとも、最近はネットを通じた動画中継という手段も登場しましたが。
 しかし、一国政府が加盟国からオブザーバーへと鞍替えすることに、一体何の意義があるというのでしょう?
 IWCでは議長裁量で発言の機会が与えられる時もありますが、オブザーバーに出来ることはただ言いたいことを言うだけ=B他の国際機関や議会では発言権さえない場合も少なくありません。
 北海道記事Cなどでは年間約1,800万円の分担金が要らなくなるとしていますが、9月のブラジル総会の日本代表団の旅費は推計7,000万円。オブザーバーになってからも総会(隔年)/科学委員会(SC)会合(毎年)に相応の人数が参加すると考えられるので、その出席費用で浮いた分など結局消し飛んでしまいます。ちなみに、外務省は(脱退に伴う)紛争解決のための国際弁護費用等の予算約8,000万円を新年度の概算要求で計上しています。
 つまり、加盟国の立場でこそ得られたはずのプレゼンス/影響力、何より貴重な1票を失い、ただの外野に成り下がるだけ。
 まあ、多額のODAと引き換えに加盟国になってもらった被援助捕鯨支持国を放り出すわけにもいきませんし、陣頭指揮≠キべく参加する必要はあるのでしょうが。
 いずれにせよ、加盟国の立場で変えられなかったものを、オブザーバーに格落ちして変えられるはずがないのは、誰が考えても容易にわかること。菅官房長官の発言は矛盾だらけ。
 もちろん、IWCのオブザーバーとなる目的は別のところにあります。
 それが、IWC/国際捕鯨取締条約(ICRW)の縛りから逃れつつ、国連海洋法条約(UNCLOS)65条のもとで商業捕鯨を行う体裁を取り繕うこと。
 該当するのは「through the appropriate international organizations」の部分。IWCにオブザーバーとして参加すれば、この「through」の条件を満たすと日本は考えたわけです。まあ、ある意味UNCLOSの瑕疵ともいえるかもしれません。
 日本側の解釈が正しい場合、捕鯨推進サイドにとってこれはいいことづくめ=B
 これでうるさいこと何も言われずにすむと。「ちゃんと通じてるだろ、文句あっか!」の一言でおしまいだと。
 ただし、あくまで日本が正しい場合ですけどね・・。
 IWC非加盟で(大型鯨類の)捕鯨を行っているのはカナダとインドネシアの2カ国のみ。ともに年間の捕獲数は1桁で、内容的にもIWCにおける先住民生存捕鯨の定義から外れるものとはいえません。
 一部メディアや識者が指摘していますが、日本が捕獲数や規模、商業的性格の点で両国とはまったくレベルの違う捕鯨会社による捕鯨を、条約加盟国の立場ではなく単なるオブザーバーとして強行した場合、どこかの国に訴えられないという保証は何もありません。後は国際海洋法裁判所(ITLOS)がどう判断するかという話になります。

W.商業捕鯨+チョウサ捕鯨???

 日本は再開後の商業捕鯨をIWCで合意された改定管理方式(RMP)のもとで行うとしています。
 捕獲対象となる3鯨種のうち、ミンククジラについては年69頭程度(最小17頭、最大123頭)との試算があります。

■ミンククジラ オホーツク海・北西太平洋|国際漁業資源の現況
http://kokushi.fra.go.jp/H29/H29_50.html

 実はこの17頭という数字、2年前の前回のIWC総会時に日本が要求したもの。しかし、オーストラリア等の反対で通りませんでした。
 なぜ否決されたかといえば、答えは簡単。「非科学的だから」。
 北太平洋のミンククジラは太平洋側のO系群と日本海側のJ系群の2つの個体群に分かれることまでは知られているのですが、さらにO・Jそれぞれが複数の系群に分かれる可能性があり、まだIWC-SCで合意は得られていません。水産研究・教育機構の「国際漁業資源の現況」においても示されているとおり。「日本側がやや正しそう」というぐらいでは、やはりゴーサインは出せません。それは非科学的なこと。
 つまり、日本は科学をいったん脇に置いて、「どうか日本の沿岸捕鯨会社に温情をかけてやってくださいよ、17頭ぽっちだからいいでしょう?」という情緒に訴えかける提案をしたのです。しかも、「その代わり、南極海・公海からは撤退しますんで」という、政治的には着地点となり得る、結果的には脱退することで2年後に自ら招いたのと同じ条件を付けることなく。
 他所で指摘されたとおり、現行の沿岸調査捕鯨によるミンククジラの捕獲数は網走沿岸47(J系群を含む)、太平洋沿岸(釧路・八戸・鮎川)80、太平洋沖合(43)で計170頭。
 ここで皆さんもお気づきになられたかもしれません。
 日本の今年までの調査捕鯨によるトータルの捕獲枠が、IWCで合意された管理方式に基づき持続可能とされる捕獲枠をも上回っていることに。
   調査捕鯨 > 商業捕鯨
 モラトリアム後の日本の調査捕鯨はそもそも、国際ルールからの逸脱を可能にするためにこそ編み出された裏技=B商業捕鯨であれば従わなければならない規制にも縛られることなく出来てしまうところがミソ。
 今回の脱退報道で、事情を知らない一般市民が「これで鯨肉の供給が増えるかもしれない」と誤解する一方、市場関係者が「減ること」を懸念したのは、まさにそれが理由なわけです。
 ただ、上掲NHK報道@では、水産庁が「大幅に減ることはないと」と回答。
 しかし、これはきわめておかしな話です。発表どおり公海から撤退する場合、国産鯨肉の8割方を占める南極海からのクロミンククジラ300頭と北西太平洋公海からのイワシクジラ134頭分の鯨肉はそっくり失われるのですから。
 さらに、@で水産庁自身が「調査捕鯨の分がなくなっても」と説明しているにもかかわらず、上掲産経報道Bでは「科学調査は──」とあり、情報が錯綜しています。後者は森下氏個人の持論かもしれず、記事を書いたのがパクリ記者佐々木正明氏なので、信憑性にやや疑問符がつくところではありますが。
 実際、公海上で行われるNEWREP-AとNEWREP-NP沖合≠ヘ法的根拠を失います。
 しかし、沿岸の非常に狭い範囲で行われてきた(オホーツク海側および太平洋側)NEWREP-NP沿岸は、日本のEEZ内であるため、国際法の上では日本が勝手にやってしまうことが可能。
 「流通量を維持する」という裏の目的≠ナ、RMPを忠実に守っていたのでは決して満たせない分をチョウサ≠ナ補充する超裏技≠ウえ使われかねません。
 その場合、実際には「混獲 + 商業&゚鯨(沿岸+沖合) + 調査&゚鯨」の≪三本立て≫という形で、場合によっては沿岸のミンククジラだけでトータル300頭を超えてしまうことになりかねないのです。
 IWC-SCで合意されているミンククジラの北太平洋における推定生息数は約25,000頭。しかし、同種は太平洋中に均等に分布しているわけではありません。若い個体が岸寄りを通り、成熟に伴って沖合にルートがずれていくのがミンククジラの回遊生態。沿岸での目視数は数百頭どまり。そして、沿岸調査捕鯨で百頭を超える捕獲を行ってきたことで、釧路沖の枠≠満たせなかったり、新規の八戸では開始初年度3頭に留まるなど、乱獲が強く疑われる状態でした。太地イルカ追込猟によるオキゴンドウやコビレゴンドウとも似た状況。
 このうえさらに捕獲数が増やされることになれば、若い年級群に集中的なダメージが加わって人口構造が大きく変わり、かつて商業捕鯨時代にマッコウクジラ捕鯨で犯したのと同じ愚を繰り返すことになるでしょう。
 以下はアイスランドの捕鯨会社社長ロフトソン氏による、日本のIWC脱退についてのコメント。

■「クジラの血が体に流れる」アイスランドの鯨捕りは日本のIWC脱退と商業捕鯨再開の方針をどう見たか (12/25, 木村正人/ヤフーニュース)
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20181225-00108985/
「日本のように約30年間も『調査捕鯨』を継続するのは少し行き過ぎだと思います。日本は調査を分析するために50年前の方法を使っています。このため、他の国の研究者は日本の調査結果を用いて比較できないのです」
「商業捕鯨と同時に捕鯨について必要なすべての調査を実施できます。それが、私たちがアイスランドで行っていることです」(引用)

 もし、日本が商業捕鯨と同時並行で調査捕鯨を行い、それによって鯨肉供給を確保しようとするならば、それは文字通り乱獲≠ノ他ならず、同時に非合法な捕鯨=密猟≠ナあることも意味します。
 その場合、たとえ沿岸限定であっても日本は国際訴訟リスクを抱えることになるでしょう。

X.EEZ内で母船式??? 共同船舶の悪あがき

 一連のIWC脱退関連報道の中で、筆者が最も眉をひそめたのが「(共同船舶の)母船式捕鯨が生き残る(かもしれない)」という情報でした。
 「母船式捕鯨」と明記したのは27日の北海道新聞記事C(小森美香記者)のみ。26日のNHK報道@では、沖合捕鯨は「複数の船が船団を組」むと母船への言及はなく、母船日新丸以外のキャッチャーボートを使う形態も考えられたのですが。
 また、27日の朝日報道など、いくつかの新聞は下関の関係者への取材をもとに「独自の水揚・解体施設のない下関市では、母船式捕鯨が行えないと(流通拠点が他の沿岸捕鯨地に移るなどして)同市の産業にとってプラスにならない」という趣旨の報道をしています。
 少なくとも、関係者には正式な決定事項として「下関市を拠点に実施するのは母船式捕鯨だ」と伝えられてはいないのでしょう。詳細な情報がきちんと与えられていないのは他の沿岸捕鯨地に対しても同様とみられますが。
 ちなみに、筆者も情報開示請求の件のついでに「7月以降の日新丸の運用はどうするつもりか?」と水産庁国際課に尋ねてみましたが、「まだ検討中」という以上の返事はありませんでした。まあ、決まっていたとしても筆者に教えるつもりはないでしょうけど。
 下関市の要望に応える形にするのであれば、早々に北海道新聞にリークしたのはあまり賢明とはいえないでしょう。
 両者は間違いなく競合関係にあるからです。鯨肉全体の市場という意味でも、ミンククジラ鯨肉単一の市場をめぐっても。
 公海母船式捕鯨すなわち共同船舶による鯨肉供給によって市場が左右されてきたのは事実であり、沿岸捕鯨事業者の不満を解消するために「沿岸調査捕鯨」が立案され、補助金が拠出されたわけです。
 しかも、沖合捕鯨の対象とされる3鯨種のうち、遠洋性のイワシクジラは調査捕鯨でもほとんど公海で捕獲されており、EEZ内では数頭が限度で(こっそり公海に出て密猟すれば話は別ですが)、探鯨のコストもランダムサンプリングの調査捕鯨と遜色ないほど大きくなると予想されます。ちなみに、JARPNII時代にはサンプリングのコースを外れていたことがIWC-SCで問題になりましたけど。
 また、ニタリクジラは入札でも売れ残った不人気鯨種。水産庁は営業努力次第という言い方をしたようですが、他の2種より価格を下げなければ売れない以上、経営を圧迫するのは明らか。
 そうなれば、直接競合するミンククジラの枠をめぐり、両者の間で軋轢が生じるのは自明のことでしょう。
 そして、事実上EEZ内のみでは採算が取れるはずがない母船式捕鯨の救済措置をはかった水産庁と自民党の捕鯨族議員が、これからも共同船舶に肩入れし続けるのもまた疑いの余地がありません。
 結局、皺寄せはクジラたちに押し付けられることになるでしょう。

Y.太平洋版NAMMCO(第二IWC)は米加中露韓抜きのぼっち機関≠ノ(つまり無理)

 「第二IWC」については野党を含む族議員が勇ましいだけで、菅官房長官も水産庁筋も「これからの検討課題」とやや引いた姿勢を見せています。
 おそらく「IWCオブザーバーに留まる」ことが外務省との落としどころとなっていそう。
 まあ、そんな動きを見せれば日本に対する海外からの風当たりが一段と強まることは避けられないわけですが。
 それだけではありません。
 ワールドワイドのIWCに頼らず捕鯨をしようと思ったら、対象鯨種の回遊先がEEZに含まれる沿岸国に対して合意を得るか、ともに参加する地域漁業(捕鯨)機関のもとで管理されなければなりません(UNCLOS#63)。
 つまり、北欧の捕鯨国が組織している北大西洋海産哺乳動物委員会(NAMMCO)の北太平洋版となる捕鯨管理機関には、以下の国々に頭を下げて加盟してもらう(少なくとも許諾を得る)ことが不可欠なのです。
 ミンククジラ・イワシクジラ・ニタリクジラの3種の日本の捕獲対象となる系群の回遊/生息域は、いずれも太平洋の米国領島嶼にかかっています。
 さらに、カナダ、中国、韓国、北朝鮮、ロシアも、沿岸国として日本の管理に物申す資格のある国ということになります。
 カナダと米国は今年10月に開催されたワシントン条約(CITES)常設委員会で連携して日本の公海イワシクジラ持込問題を徹底的に追及しました。カナダはIWC非加盟で小規模な先住民生存捕鯨を行ってはいますが、国民の鯨類保全に対する関心が非常に高い国でもあります。
 中国は違法象牙の最大の市場がある国ですが、CITESで象牙の大胆な禁止を表明したうえ有言実行で規制を始め、なおも密輸入は止まっていないものの、国際社会からかなり高い評価を得ています。それも、象牙の国際市場閉鎖に後ろ向きなばかりでなく、国際社会に対する対決型捕鯨外交の姿勢を鮮明にする日本と対比される形で。
 中国・台湾・香港メディアによる日本の捕鯨政策に関する報道や論点は欧米メディアとほとんど変わらず、市民の日本に対する視線も冷めています。加盟国の中で捕鯨支持国に分類されているものの、IWC総会へはもうしばらく出席していません。鯨肉市場もなく、せっかくの国際評価を台無しにするだけで何のメリットもない以上、第二IWCに参加して日本に塩を送るまねをするとは考えにくいことです。

■とことん卑屈でみっともない捕鯨ニッポン、国際裁判に負けて逃げる
http://kkneko.sblo.jp/article/166553124.html

 ロシア代表はブラジル総会で「対立を煽るだけ」と明確に主張したうえで日本提案を棄権。かつては日本と並ぶ規制違反捕鯨大国だったとはいえ、今は先住民生存捕鯨のみでIWC加盟の恩恵を享受しており、第二IWCに参加する理由はなし。北方領土問題で日本側がさらなる譲歩を申し出れば考えるでしょうが。まあ、譲歩なら安倍首相がすでに十分すぎるくらいしちゃってますけど・・。
 そして、これ以上ないほど二国間関係が冷え切った韓国。
 韓国もロシアとともにブラジル総会で日本提案を棄権。詳細は上掲拙解説記事をご参照。
 捕鯨問題は徴用工訴訟問題に直結します。当然クジラカード≠ヘ自国に有利な形でキープするでしょう。日本がこの件で「ICJ提訴をしない」と確約すれば、あるいは考慮するかもしれませんが。

■捕鯨で負けたのに徴用工でまたICJ提訴? クジラは平等に殺せ、でもヒトの人権ダブスタはOK?
http://kkneko.sblo.jp/article/185024459.html

 また、同国NGOは今回の日本の商業捕鯨再開に対して「韓半島(朝鮮半島)沖のミンククジラが絶滅危機を迎える」と痛烈に批判。J系群のことを指していますが、懸念は実にもっともな話。

■「日本が商業捕鯨すれば韓半島沖のミンククジラ絶滅危機」|中央日報日本語版
https://japanese.joins.com/article/588/248588.html

 北朝鮮は日本の調査捕鯨を「犯罪行為」として強く非難。ネタとして利用しているといってもいいでしょう。
 ま、誘うのは日本政府の自由ですが、はたしてどう応じることやら。また、国際社会からどんな目で見られることやら・・。
 ついでにいえば、日本のIWC脱退は戦前の自国の国際連盟脱退のみならず、同国のNPT脱退とも同列に受け止められるでしょうしね。

■広島・長崎より太地・下関が上、非核平和より美味い刺身≠ェ上──壊れた捕鯨ニッポン
http://kkneko.sblo.jp/article/179410385.html

 要するに、太平洋で商業捕鯨を実施するための、IWCに代わる国際機関の設立など、夢のまた夢の話なのです。作ったところで加盟国は日本一国だけ。ぼっち機関=Bそれでは国際法の要件は満たせません。
 外務官僚はきっと理解しているでしょうが。

Z.紛争激化か!? 海賊捕鯨国VS正義のシーシェパード

 上掲のとおり、日本が再開するのが母船式捕鯨であれば、たとえEEZ内のみであっても事情が大きく異なります。
 AISは「妨害」を理由に切り続けるでしょうし、IWC脱退で中立の立場の国際監視員を受け入れる義務もなし。
 そもそも遠洋マグロ漁業についても、IUUを完全に排除する監視制度が不十分なことがNGOからは指摘されているところですが。
 日本の捕鯨産業の過去の行状を振り返れば、ぐるみ違反を含む規制違反は数知れず。
 脱退でIWCの規制を外れ、誰も見張る者がいなければ、それこそ一体何をしでかすかわかったものではありません。
 そこで出番となるのがご存知シーシェパード。
 あるいは、南極海ではなく日本近海、EEZの境界付近でプロレスが始まる可能性もなきにしもあらず。
 もちろん、その場合は海上保安庁、あるいは海上自衛隊が対応することになるでしょう。商業捕鯨船の護衛という新たな任務が課せられ、国庫負担が増えることでしょう。
 捕鯨サークル的には、ネトウヨ応援団がかつてなく盛り上がり、鯨肉需要もほんのちょっぴり喚起できるかもしれませんが。
 しかし、人命に関わるようなトラブルが発生する懸念も捨てきれず。日本に対してはさらに厳しい目が向けられるでしょう。
 クジラにとってはもちろん、日本の国益にとっていいことはひとつもありません。

   ◇   ◇   ◇

 最後に──
 拙ファンタジー小説『クジラたちの海』では、南極海は主鯨公のクロミンククジラ族・クレアたちクジラの楽園として描かれています。
 そして、続編『クジラたちの海─the next age─』では、辺野古のアマモの森はたった3頭の生き残りとなった〈ザンの郡〉のジュゴン族・イオのかけがえのな故郷として。
 クジラたちの楽園には、これでやっと平和が訪れたことになるのかもしれません(まだ安心できない要素も残っていますが・・)。
 しかし、イオたちの故郷に土砂が投入され、おぞましい赤土の色に浸食されていく様は、あまりに胸の痛むものでした。

 ビジョンもなく、採算が採れるはずなどないのに、意地で決定された国際機関脱退と母船式商業捕鯨の再開。
 当分護岸工事に着手できないにもかかわらず、県民投票前に見せしめで土砂が投じられた辺野古の海。

 自制のきかない日本という国の暗澹たる未来を暗示するようで、筆者は新年を喜ぶ気になれません。

 願わくば、南極海の野生動物たちに永遠の平和を。そして、辺野古の美しい海にも再び平和が取り戻せる日がきますように──。

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『クジラたちの海』
『クジラたちの海─the next age─』


 ついでにポーズとる王子。拾ったときはあんなにチビチビだったのに、すっかり青年の顔になりました・・

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posted by カメクジラネコ at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2018年12月08日

捕鯨とアイヌのサケ漁──食文化にこだわる日本人よ、なぜこのダブスタを許すのか

https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1039819492992249856
先住民生存捕鯨の枠自体なくせと? 先日は紋別で警察にアイヌのサケ猟が阻止される事件があったが、アイヌのサケ猟は行政が「文化を評価」した上でごく一部の枠を与える形で「許可」を出す。それは「人種差別に繋」がらないの? 反捕鯨国の米・豪等では先住民が主体的に天然資源を管理している。

 今回もまずはツイートをご紹介。元ツイは公明党の捕鯨族議員・横山信一氏で、発信は9月11日、開会中のブラジル・フロリアノポリスの国際捕鯨委員会(IWC)総会の会議場から。前回紹介した徴用工訴訟関連より1桁少なくバズッてはいませんが、横山議員の元ツイの倍近くはRTをいただいております。
 で、拙ツイート内に出てくる「先日の事件」というのがこちら。北海道とネット以外ではあまり話題になっていませんが。

■アイヌ先住民権訴え"無許可"サケ漁 (10/24, NHK札幌)
https://www.nhk.or.jp/sapporo/articles/slug-n4a465c1a4f8a
アイヌの人たちの権利をめぐっては、スイスのジュネーブにある人種差別撤廃条約委員会で先月30日、日本政府に対し天然資源や土地に関する権利が十分に保障されていないとして改善を求める勧告が出されています。(引用)
■サケ漁の自由求める 紋別アイヌ協会、道に意見書 (10/10, 北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/236419
■儀式用サケ捕獲「アイヌの権利」知事らに意見書 (10/10, 読売)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20181009-OYT1T50118.html (リンク切れ)
アイヌ政策検討市民会議(世話人代表・丸山博室蘭工業大名誉教授)は「アイヌの正当な権利を制限する同規則は憲法違反であり、日本が締結している国際人権規約にも反する」と指摘。畠山会長は「昔、奪われた権利を返してほしいだけだ」と訴えている。(引用)

 アイヌのサケ漁をめぐるトラブルは今回が初めてではなく、前段がありました。今年は北海道警に漁を阻止された紋別アイヌ協会会長の畠山敏氏ですが、実は昨年も伝統儀式のためのサケ漁を強行しようとし、警察にいったん阻止されたものの、その後捕獲を実施できたのです。
 密漁?? 国際法違反を二度もやらかした調査捕鯨、あるいは、ナマコをはじめ北海道中で横行しているヤクザのそれと同じく? いえ。以下のブログ記事(管理人は浦河町のアイヌの方のために特別採捕の手続を手伝われてきた方)に昨年の経緯が詳しく書かれています。

■もう一つの日本文化 (アイヌ・先住民族の漁業権回復)|もうひとつの日本文化(アイヌ文化)徒然ブログ
https://fine.ap.teacup.com/makiri/218.html
■もう一つの日本文化 (政府は、畠山さんの国連先住民族権利宣言に基づくサケ捕獲権を収奪できるのか?)|〃
https://fine.ap.teacup.com/makiri/215.html
■もう一つの日本文化(地元河川での鮭捕獲アイヌへの奇妙な事実〜政府はアイヌの鮭捕獲を容認か・その1)|〃
https://fine.ap.teacup.com/makiri/190.html
■もう一つの日本文化(地元河川での鮭捕獲アイヌへの奇妙な事実〜政府はアイヌの鮭捕獲を容認か・その2)|〃 
https://fine.ap.teacup.com/makiri/191.html

 なんと驚くべきことに、畠山氏ご本人も知らないうちに、同氏名義の特別採捕許可証が作成・提出されていたというのです。高橋はるみ道知事の捺印付の当該文書の画像も記事中に掲載。
 事実なら指摘されているとおり、北海道オホーツク総合振興局・北海道警・地元紋別漁協の共謀による不法行為といえます。今流行り(?)の私文書(畠山氏の申請書)および公文書(同知事の許可証)の偽造。法律違反を犯したのはアイヌの畠山氏ではなく行政当局。マスコミが報道を拒んだのも、今時分の日本であれば返って信憑性を裏付けた格好ですね。
 以下は北海道大学アイヌ・先住民研究センター准教授の丹菊逸治氏のツイート。まさに氏が指摘したとおりのトラブル。

https://twitter.com/itangiku/status/1068739301653934081
アイヌ民族の伝統的な価値観では、正義と公平を重んじます。調和よりもです。アイヌ伝統社会でも人々は「周囲に合わせる」けれど、それは同調圧力ではなく、自分だけ損しないためです。行動が似ているからといって、同じ価値観だと思うとトラブルになります。(引用)

 倭人の社会の明文化されない暗黙のルール≠フもと、事なかれ主義でなあなあですませようと勝手に申請書まで用意するやり方が、正義と公平を重んじるアイヌの価値観に反するものとして受け入れられなかったと。結局、翌年は警察による実力阻止という形になり、一部マスコミにも書かれる事態に至ったと。
 上掲ブログ記事4番目には先住民捕鯨と日本の沿岸捕鯨問題に関する言及も。

仮に日本政府が【沿岸捕鯨は日本文化の一部】として認め、【畠山さんのようなアイヌが、地元河川で何百年、何千年と鮭を捕ってきた権利】を認めないのであれば、現在においても【アイヌは法的には等しく国民でありながらも差別されている】ことになるだろう。(引用)

 実は、ニュースで登場した畠山氏はサケ漁だけでなく、アイヌの伝統捕鯨復活も提唱されていた方。以下は2010年の別のアイヌ支援NGOの記事。

■「アイヌ民族と漁業権」|アイヌ民族情報センター活動日誌
https://blog.goo.ne.jp/ororon63/e/80a9bbdd2126b2c72bbf6f9886e573c1
■「アイヌ民族と漁業権」続き|〃
https://blog.goo.ne.jp/ororon63/e/2052259f7b2fb6f82e95834aff968074

 以下が渦中の畠山氏が安倍首相・高橋道知事・北海道警に宛てて出した声明文。9月には、上掲読売記事にコメントを寄せたアイヌ政策検討市民会議が同氏を招き、札幌で緊急集会を開いています。

https://ainupolicy.jimdo.com/
■カムイチェㇷ゚に対する私たちの権利を、日本国は侵害しないでください|アイヌ政策検討市民会議
https://ainupolicy.jimdo.com/app/download/16423758996/MonbetsuAinuAssociation_statement20181008.pdf
さる2018年8月31日と翌9月1日、私たち紋別アイヌ協会が古式伝統にのっとり、毎年恒例のイチャㇽパ(先祖供養の儀式)・カムイチェㇷ゚ノミ(サケを迎える儀式)のため、カムイチェㇷ゚(サケ)をさずかるべくチㇷ゚(丸木舟)を藻別川に降ろそうとしたところ、北海道警察の車両数台に場所を占拠され、また川岸に立ち並んだ約10人の警察官に行く手を阻まれて、私たちは川に降り立つことすら、かないませんでした。
それに先だつ8月には、北海道本庁・北海道オホーツク総合振興局、また北海道警察紋別警察署から、計7度にもわたって職員・署員らが当協会にやってきて、「北海道知事あてに特別採捕許可を申請せよ」と、しつこく迫られました。また8月下旬には、警察車両がこれみよがしに近所に停車し続け、外出のたびに追尾を受けました。
これは日本国行政機関(北海道警察、北海道庁)による先住民族に対するパワーハラスメントそのものです。私たちが有する当然の権利を、このように全否定されて、これほどの屈辱はありません。(引用)
■緊急集会 アイヌ民族とサケ漁 〜紋別におけるサケ漁阻止問題をめぐって〜|アイヌ政策検討市民会議
https://ainupolicy.jimdo.com/app/download/16308955896/20180916.pdf

 シーシェパード等の反捕鯨活動家よろしく、北海道警がアイヌの伝統漁業を実力行使で妨害したことに対しては、アイヌの漁業者S.Shiikuさんらも以下のようにコメントしています。

https://twitter.com/shinshukeshiiku/status/1037286204788682752
伝統文化を名目にしての商業的な漁は出来ない」って言うなら多分、日本全国の「漁(猟)法」の全てが「出来なくなる」
特に「沿岸捕鯨」(引用)
https://twitter.com/shinshukeshiiku/status/1037287684354404352
例に挙げた沿岸捕鯨なんて「伝統だ、文化だ」って言ってるけど「商業的な漁」だよね、どう見てもさ。
「伝統文化を名目にしての商業的な漁は出来ない」って奴に反して無い?(引用)
https://twitter.com/shinshukeshiiku/status/1037290107617701888
本当に伝統文化だって言うなら木製和船をちょんまげふんどし姿で櫂漕ぎして、銛を打ち込んで捕鯨すべきだよ、あんなキャッチャーボート何かで捕らないでさ。(引用)
https://twitter.com/watashidesu543/status/1037264850739638273
アイヌの網漁がおかしいと言う前に「日本の伝統だ!」とか言い張ってる「捕鯨」は何とかならないの?
日本の伝統ならば最低限、木造船に乗ってふんどしとちょんまげは必要でしょ。(引用)

 アイヌの方々と支援者はこのように指摘しているわけです。
「日本政府は国際会議の場で伝統文化を声高に主張し、調査の名目で南極海での捕鯨を強行し、沿岸捕鯨も実質的に継続しているではないか。なのに、なぜアイヌによるサケ漁を認めないのか? それはダブスタではないのか? 人種差別ではないのか?」と。
 一方、横山氏ら捕鯨族議員や外野の反反捕鯨シンパの人たちは、こう言い張っているわけです。
「IWC/国際社会は先住民の捕鯨を認めているではないか。なのに、なぜ日本の商業捕鯨は認めないのか? それはダブスタではないのか? 人種差別ではないのか?」と。
 以下は捕鯨サークルを代表する人物、長年IWC日本政府代表のポストに就き今年のブラジル総会までの2年間IWC議長も務めた、現東京海洋大学教授・森下丈二氏の主張。

■鯨論・闘論 「どうして日本はここまで捕鯨問題にこだわるのか?」[ご意見:38]|くじら横丁(サイト運営鯨研)
https://www.e-kujira.or.jp/whaletheory/morishita/1/#c38
アンカレッジのホテルのロビーの土産物店では,アラスカ先住民がホッキョククジラのヒゲから作った小さなかごが,ひとつ何十万円という値段で売られていました。これには商業性はないというのは,理屈にならない理屈です。(引用)

 上掲のS.Shiikuさんのコメントと見事にシンクロしていますね。
 「日本の沿岸捕鯨を認めるなら、(現在認められていない)アイヌのサケ漁も認めろ」(「禁止するなら両方禁止しろ」との皮肉)
 「先住民生存捕鯨を認めるなら、(現在認められていない)日本の商業捕鯨も認めろ」( 〃 )
 この2つの文章で一見矛盾するかに見える沿岸捕鯨の実態について、少し細かく説明しておきましょう。
 IWCの管理下にあるミンククジラなどの大型鯨類は現在国際条約上商業捕獲を禁止されています。日本の沿岸捕鯨会社は現在IWCの管理下に置かれていないツチクジラやコビレゴンドウを捕獲しています(小型沿岸捕鯨)。また、禁止対象であるハズのミンククジラも、科学調査の名目で国が許可を出し、副産物≠スる鯨肉を売る形で業態としての捕鯨を存立させています。それがいわゆる沿岸調査捕鯨(北西太平洋鯨類科学調査・オホーツク海側沿岸/太平洋側沿岸)で、実施主体は沿岸捕鯨会社4社から成る日本小型捕鯨協会。ただし、小型沿岸捕鯨の対象種も国連海洋法条約に基づきIWCの管理下に置くべきだとの議論がありますし、国際司法裁判所(ICJ)およびワシントン条約常設委員会により国際法違反の判定が2回も下った公海(南極海および北西太平洋)母船式調査捕鯨同様、沿岸調査捕鯨に対しても国際法に違反する嫌疑がかかっています。つまり、法的に黒ないしグレーな代物を、伝統文化を全面に押し出すことで無理やり正当化させているのが実情なのです。
 S.Shiikuさんの指摘するとおり、現行の沿岸商業捕鯨は文字どおり文化の名を冠するビジネスにほかなりません。
 一方、アイヌのサケ漁は法律上どのように扱われているのでしょうか? それが記されているのが漁業の調整について定めた以下の北海道の規則。

■北海道内水面漁業調整規則 第52条(試験研究等の適用除外)
http://www5.e-reikinet.jp/cgi-bin/hokkaido/D1W_resdata.exe?PROCID=-2013679344&CALLTYPE=1&RESNO=1&UKEY=1543806641288
この規則のうち水産動植物の種類若しくは大きさ、水産動植物の採捕の期間若しくは区域又は使用する漁具若しくは漁法についての制限又は禁止に関する規定は、知事の許可を受けた者が行う試験研究、教育実習、増養殖用の種苗(種卵を含む。)の自給若しくは供給又は伝統的な儀式若しくは漁法の伝承及び保存並びにこれらに関する知識の普及啓発(以下この条において「試験研究等」という。)のための水産動植物の採捕については、適用しない。(引用)

 内水面漁業調整規則自体はどの都道府県にもある規則ですが、「伝統的な儀式若しくは漁法の伝承及び保存並びにこれらに関する知識の普及啓発」とあるのは北海道のみ。その点に限れば、アイヌの伝統漁業への配慮を謳った北海道ならではのルールといえなくもないかもしれません。この一文が加えられた経緯を、2005年の記者会見で道知事(現在と同じ高橋氏)が述べています。

■知事定例記者会見 平成17年7月8日(金)|北海道庁
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/tkk/hodo/pressconference/h17/h170708gpc.htm
アイヌ民族による秋サケの採捕について
  三つ目は、アイヌ民族による秋サケの捕獲についてでございます。昨年「まちかど対話」で日高管内に入りましたときに、萱野さんにお会いをした際に、ご要望があった件でございます。サケというのは、アイヌの人間にとっては特別な意味があると、アイヌ民族の儀式用に使用する秋サケの捕獲について、ちゃんと位置づけてくれというお話がありました。それを受けていろいろと関係部局で議論をさせたわけですが、北海道内水面漁業調整規則というものがありまして、内水面漁場管理委員会への諮問等の事務処理手続がまだ残っておりますが、国との協議も終了いたしましたので、秋サケが本格的に来遊する前の8月下旬にも規則を具体的に改正する予定です。改正内容は、制限・禁止規定の適用除外事項に「伝統的な儀式若しくは漁法の伝承」ということを新たに明記するということを考えております。「伝統的な儀式」ということを事項の中に入れますのは、全国初でございます。もう一つ、事務の繁雑さという話もありましたので、申請許可を北海道ウタリ協会に一本化するということで、申請事務の簡素化も行おうということを考えております。以上の中身につきまして、ウタリ協会さんとは当然事務的にもいろんな打ち合わせをさせていただきながらやってまいりましたが、萱野さんご本人にも私ども支庁からご説明をし、了解いただいていると報告を受けております。(引用)

 発言中にある「北海道ウタリ協会」はいまネトウヨ方面に利権云々とたたかれている現北海道アイヌ協会のこと(改称は2009年)。「萱野さん」とはアイヌ初の国会議員を務められた故萱野茂氏(後で詳述)。
 実際にこの文言を含める規則の改正が行われたのは、萱野氏が亡くなった後の2010年のことで、高橋知事が約束してから5年もかかっています。
 そして、「アイヌ協会に申請許可を一本化する」という話は実現しませんでした。
 漁獲対象種・数量・区域・期間・使用漁具等詳細を明記した申請書および「許否の決定に関し必要と認める書類の提出」(同規則第5条2)を知事に提出しなければならず(第52条2)、「終了後、遅滞なく、その経過を知事に報告し」なければならず(52条6)、「必要な制限又は条件を付け」られ(52条5)、変更しようと思ったら新たに申請書を提出し再度許可を得なければならず(52条7)、漁の間も許可証を携帯しなければなりません(第30条)。すべて知事の権限に委ねられているのです
 もし、アイヌの漁業者の総意に基づき、アイヌ協会が主体的に許認可の判断を行う形になっていたら、日本は「先住民の権利に関する国連宣言」(国連先住民族権利宣言)の趣旨に即してアイヌの伝統サケ漁を認めていると世界に胸を張ることができたでしょう。日本の反反捕鯨界隈からしばしば非難される反捕鯨国オーストラリアのトレス海峡諸島民によるジュゴン・ウミガメ猟や、カナダおよび米国の先住民によるサケ漁のように。北米西海岸では先住民のトライブが彼ら独自のやり方でサケ漁業の管理を主権的に行っていましたが、権利を勝ち取る裁判を経て、現在は資源評価を担うスタッフや取締官、紛争を処理する裁判所などの体制も整え、連邦政府と共同で天然資源の管理を行っているのです。主体性を完全に奪われているアイヌのサケ漁とは対照的に

■先住民にサケを獲る権利はあるか? コロラド大学ロースクール教授 チャールズ・ウィルキンソン講演会
基本的かつ普遍的に認められる先住民の主権について〜アメリカにおける先住民の主権とサケ捕獲権〜|北大開示文書研究会
http://hmjk.world.coocan.jp/wilkinson/wilkinson.html
アイヌは代々の住み場所から追いやられ、サケなどに対する漁業権も失いました。さっき市川弁護士が説明されたように、現在でも北海道知事の許可なしには、川を遡上してきたサケの1尾を捕獲することすら許されません。しかも、アイヌにサケ捕獲が許可されるのは、文化的・教育的な目的に必要と知事が認めた場合に限られます。そうやって同化政策がどんどん加速するにともない、アイヌ差別が広がりました。現在、アイヌ(コタン)は実質的に土地を保有しておらず、漁業権も行使できない状況です。ただ個人としての地権者、漁業権者がいるだけです。(引用)

 そればかりではありません。改正された北海道内水面漁業調整規則には驚くべき附則が付けられていました。

■北海道内水面漁業調整規則 附則4 一部改正〔平成8年規則75号・22年1号〕(リンク上掲)
毎年8月1日から翌年3月31日までの間におけるさけの採捕及び7月1日から11月30日までの間におけるからふとますの採捕に係る第52条の適用については、当分の間、同条第1項中「試験研究、教育実習、増養殖用の種苗(種卵を含む。)の自給若しくは供給又は伝統的な儀式若しくは漁法の伝承及び保存並びにこれらに関する知識の普及啓発」とあるのは、「試験研究、教育実習、増養殖用の種苗(種卵を含む。)の自給若しくは供給、伝統的な儀式若しくは漁法の伝承及び保存並びにこれらに関する知識の普及啓発又は知事がさけ及びます資源の保護培養に資すると認める事業」とする。(引用)

 赤字下線に部分にご注目。なぜわざわざこのような断り書きを付け足したのでしょうか?
 はっきりしているのは、この一文によって「漁協が優先しますよ」ということを強調していることです。
 要するに、倭人の漁協が「獲らせてやってもいい」と首を縦に振った場合だけ許可してあげますよ──ということ。
 以下のS.Shiikuさんと丹菊氏の連ツイは必読。

https://twilog.org/kamekujiraneko/date-180905
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1037280210175971328
多くの和人共がこの記事に「申請すれば良い」と、言ってますが。実際の所、アイヌがアイヌ単体で北海道に「特別採捕許可申請」しても「申請受理して貰えません」、和人はその事がどういう事なのかをしっかり考えた方が良い。(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1037280512337821696
北海道における鮭の特別採捕の許可を出すのは最終的には道知事ですが、実際には伝統儀礼の内容などを説明するだけではなく、地元の漁協の許可を取る必要があります。また、どの川でも可能というわけではなく、ケースバイケースです。「アイヌは許可を申請すればいいだろ」で簡単にすむわけではない。(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1037280666293960706
なんぼ言ってもわかんねえんだな、アイヌが河川に遡上したサケマスを獲る為には「和人の許可」が居る、そしてその許可を貰うためには「和人の懐に金なり何なりの「得する事」」が無いと「和人はアイヌの話も聞かない」って意味が。(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1037280797886111744
そもそも、かつて「鮭の水揚げ日本一」をうたい、現在「破壊され、忘れられたアイヌ文化の復興」を掲げてる俺の住んでる町で「河川におけるサケマスの特別採捕許可」が「申請も出来ず」に居ることで分かるだろう。そしてその「申請も出来ない理由」がどういう事なのかも結局「和人の都合」だと言う事も(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1037280906266857473
「申請受理してくれない」どころか「その為に関係支庁に行った事」すら「無かった事」にする、挙げ句は「川に揚がったサケが欲しいならふ化場のサケを売ってやる。」とか「自分でわざわざ捕らなくても良いでしょ。」とか言って和人の北海道職員がニヤニヤとしてる顔を見せられるのがせいぜい。(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1037282212926783488
うちの町を含む当管内の河川に遡上したサケマスは「管内増殖事業団」が捕獲し、採卵し人工受精させたサケマスの受精卵を「他の地域の河川に売ってる」から「河川遡上親魚が「1匹でも」減る可能性が有る事」には「決して許可を出したりはしない」またその儲けは「当地方の各漁業協同組合」にも流れてる(引用)

 上掲した「もうひとつの日本文化(アイヌ文化)徒然ブログ」の記事からも引用。

この特別採補許可、当初の申請時はなかなか許可が出なかった・・・というよりも許可申請書を受理してもらえなかった、地元漁協の協力を得て受理してもらったと聞いている。
また、担当の道職員からは「サケが欲しかったら、道立水産孵化場で何匹でもあげますよ。」などというアイヌへの侮蔑的発言があったとも聞いている。(引用〜@)

 ところで、捕鯨問題ウォッチャーには「試験研究等の適用除外」という項目にピンときた方も多いのではないでしょうか。そもそも水産学者や生態学者が調査を行いたい場合に申請する、他の都道府県では専らそのために定められた事項なわけです。
 そう、まさに国際捕鯨取締条約(ICRW)第8条に基づく調査捕鯨の特別許可証発行と同じスタイル。ICJが判決文の中で「発給された捕獲許可が科学研究目的であるかは、当該発給国の認識のみに委ねることはできない」と言及し、IWCで「致死調査の必要性を立証できていない」と報告されているにもかかわらず、日本政府は強行しているわけです。
 アイヌのサケ漁の場合は、いくら当事者のアイヌ漁業者が申請しても、漁協〜道職員の恣意的な判断によって受理さえしてもらえないのが実態なのに。「申請されたサケ漁が伝統目的であるかは、当該先住民漁業者の認識のみに委ねることはできない」と言わんばかりに。
 関係者の方々の証言する、「サケが欲しければ孵化場のサケをいくらでもあげますよ。自分で獲らなくたっていいでしょ。買ったサケを生簀に入れて銛で突けば?」という道職員の発言には、あからさまな侮蔑の感情が見て取れます。異なる民族の文化を上から目線で一方的に評価したうえで「買ったって同じだろ」と伝統性を言下に否定することが、彼らには出来てしまえるのです。そこには相手を理解しようと努め、尊重する姿勢など微塵もうかがえません。
 上掲ブログ記事(リンク@)には畠山氏が申請したことになっている%チ別採捕許可証に記された数量は「60尾以内」
 たったの60尾。法的には同列の特別許可採捕であるハズの調査捕鯨よりずっと少ないですね。現在の沿岸調査捕鯨の捕獲枠は126頭。過去の南極海調査捕鯨の最大捕獲枠は違法認定されたJARPAIIの850頭。もちろん、漁獲量(トン数)では比較にもなりません。雀の涙。祭事用・自給用以外で商業漁業として成立する数字でないのは明らかです
 北海道全体でも2015年度に実際特別採捕の許可を得たのは11団体だけ。それらの捕獲数を合計しても、現行の調査捕鯨による捕獲総数にも届かないでしょう。
 対する紋別漁協(組合員160名)のサケ・マス出荷量(生鮮冷凍のみ)は2016年で約2,900トン、金額では15億円以上

■もんべつの水産2017|紋別市
http://mombetsu.jp/syoukai/files/2017mombetsunosuisan.pdf

 第一、北海道の規則上は「伝統的な儀式若しくは漁法の伝承及び保存」の名目でしか認められていないのです。だからこそこの数字なのでしょう。
 ICRW草案の時点では調査捕鯨の捕獲数は数頭程度と想定されていましたし、ICJでも日本側証人として出廷したノルウェーの鯨類学者ワロー氏が妥当な調査捕鯨の数字として「less than 10」と述べました。にもかかわらず、日本は科学調査の名目で毎年数百頭ものクジラを殺し続け、年間数千トンもの鯨肉を市場に提供してきたのです。
 この差は一体何を意味しているのでしょうか? 差別的なダブスタ以外の何だというのでしょうか?
 ここで思い出していただきたいのが、2007年にロサンゼルスタイムズ紙記者のインタビューに対してしれっと言ってのけた森下氏の以下の発言。

■驚き呆れる捕鯨官僚の超問題発言
http://kkneko.sblo.jp/article/30322511.html
■Japan's whaling logic doesn't cut two ways (2007/11/24, LAタイムズ)
http://articles.latimes.com/2007/nov/24/world/fg-whaling24
"You cannot be perfect on every issue and unfortunately that's happening in the case of the Ainu." (引用)
■米国紙がみた調査捕鯨とアイヌ|無党派日本人の本音
http://blog.goo.ne.jp/mutouha80s/e/a863ac35990df463fce164c7633863d5
「我々はいつも首尾一貫しているとは言えない。誰でも全ての点で完全であることは出来ない。たまたまアイヌの問題でそれが起こったのだ。(引用)

 国際会議で日本政府の立場を代弁する上級官僚の口から、ここまで無神経な発言が飛び出すこと自体、とても信じがたいことです。
 国際法上禁止されているハズなのに、違法なハズなのに、伝統文化の名の下で、事実上継続してしまっている日本の沿岸捕鯨。
 国内法上特例として許可されるハズなのに、合法なハズなのに、行政による恣意的な判断の下で、事実上伝統文化としての継続が不可能になってしまっているアイヌのサケ漁。
 法を捻じ曲げて解釈するやり方がいかにも日本的(倭人的)だという点で、どちらも共通しているとはいえるかもしれませんが。
 ここでもう一度、最初に掲げた横山議員の元ツイを振り返ってみることにしましょう。

「食文化を評価するのは人種差別に繋がりかねない議論だ。日本の主張は、先住民捕鯨であれ、商業捕鯨であれ、科学的な根拠に基づき判断すべきと。最も明快。」(引用)

 横山氏のこの主張は、以下の水産庁の公的立場を踏襲したものでもあります。

A■捕鯨を取り巻く状況|水産庁
 http://www.jfa.maff.go.jp/j/whale/w_thinking/
先住民生存捕鯨について
商業捕鯨モラトリアム下であっても、IWCは先住民生存捕鯨を認めており、我が国もこの捕鯨に賛成しています。ただし、
・先住民の定義が確立されておらず、人種差別的な適用が懸念されること
・そもそも鯨の資源管理は科学的根拠に基づき行うべきであること
が原則であり、操業者が先住民であるか否かは、資源管理上は大きな問題ではないことから、会議の場においてこれらの点について指摘を行っているところです。(引用)

 「懸念されること」「行うべきであること」が並列で「が原則であり」にかかっている、日本語としてとんでもなくおかしな表現で、この頁を執筆した担当官僚の国語能力を強く疑ってしまいますが、それはそれとして、ここで問題の先住民生存捕鯨について解説しておきましょう。
 企業による商業捕鯨が禁止されても、IWCでなお別枠として認められているのが先住民生存捕鯨。そこには条件がつきます。「社会・文化的、栄養上の必要性があること」、そして「地域的消費に限られること」。加盟国が申請し、技術委員会による審査をパスし、科学委員会の勧告に基づき総会で承認された捕獲枠設定に従わなりません。国境を越えた管理が求められるグローバルコモンズとして、国際機関の管理下にきっちり置かれるわけです。
 北海道内水面漁業調整規則第52条が条文どおりに♂^用されていたならば、先住民捕鯨との差はないといえるでしょう。ただし、許可されるか否かの判断基準は、先住民捕鯨の定義に収まるかどうかと、科学的資源評価のみ。先住民以外の第三者の利害を優先する附則4に相当する条文はどこにもありません。
 確かに、伝来の土地と天然資源に対する先住民の主権を謳った国連先住民族権利宣言の観点からすれば、先住民側にはやや不満が残るかもしれません。商業捕鯨が全面禁止されている中、先住民のみに特例として認められている点で、破格の厚遇といえるのもまた事実ですが。
 先住民生存捕鯨の定義をめぐっては、厳格な適用を要求する保全NGO側、捕獲枠を維持・拡大したい当事国・先住民側との間でせめぎ合いもみられます。近年物議を醸しているのは、地域的消費・商業性に関して厳しい目が向けられているグリーンランド捕鯨と、そもそも19世紀後半に移民が持ち込んだいわゆるヤンキー捕鯨をルーツとするセントビンセント・グレナディーン(SVG)の捕鯨。このうちSVGと日本の関係については以下の拙HP解説をご参照。実は、SVGの捕鯨が開始されたのは、アイヌの捕鯨が明治政府によって強権的に廃絶に追い込まれた時期と重なります。

■(6)セントビンセント・グレナディーンのケース
https://www.kkneko.com/oda6.htm

 もっとも、ラディカルな反捕鯨の立場の南米諸国を含め、加盟国政府の中に条約上の先住民生存捕鯨そのものを否定する国はありません。自らの都合でけなしながら支持する日本の立ち位置がむしろ特異といっていいでしょう。
 水産庁がIWCの先住民生存捕鯨に対して「人種差別的な適用が懸念される」と(反対しないと言いつつ)珍妙な異を唱えているのは、「先住民だけに認めて日本人(倭人)に認めないのは差別≠カゃないか!」との趣意であるのは明らかです。横山氏の発言もまた然り。
 自分たちがあたかも差別の被害者≠ナあるかのような目線でのこうした難癖って、どこかで見覚えがありませんか?
 そう、女性や、LGBT・障害者・当の先住民族等のマイノリティを優遇する政策への逆差別との批判。女性に一定割合の議席や管理職ポストを配分する行政府や企業の方針、あるいは障碍者雇用率──まさに所轄官庁の厚労省まで数字をごまかしていたことが発覚したところの──をめぐる議論と重なっているのです。これまで権利を存分に享受してきたはずのマジョリティの側にいながら、「マイノリティが過度≠ノ優遇されることで自分たちが不利益を被るのではないか」との被害妄想にも等しい極端な発想に基づいているわけです。
 しかし、格差を生み出すもととなったのは迫害の歴史そのものです。先進国の先住民優遇政策はそもそも、本来享受できたはずなのに後から移入してきた異民族に阻害されてきた、土地や資源などにアクセスする権利などの主権の回復を補償する意味合いを持っているのです。
 上掲の水産庁公式見解は、日本以外のIWC加盟国(捕鯨の賛否問わず)の先住民政策や国連先住民族権利宣言に対する無知、というより無視に基づいているとみなさざるをえません。人種差別そのものに対する無知無理解とともに。
 一応日本政府は2008年に遅きに失しながらもアイヌを先住民として認めています。それも国会の場で。先住民の定義がうんたらと平気で口にしてしまう水産官僚は、トンデモな中国陰謀論に取り憑かれた極右思想の元札幌市議と同水準の認識しか持てないのでしょうか?
 グリーンランド政府が先住民捕鯨擁護の文脈で国連先住民族権利宣言を持ち出すのは一理あるでしょう。しかし、日本政府は決して素知らぬふうに聞き流せる立場にはないはずなのです。捕鯨擁護に熱心な御用文化人類学者たちも。
 アイヌの捕鯨が明治時代に禁止された経緯は、まさに先住民のたどった抑圧・搾取の歴史の最もわかりやすい事例なのですから。

■倭人にねじ伏せられたアイヌの豊かなクジラ文化
http://kkneko.sblo.jp/article/105361041.html

 話をアイヌのサケ漁に戻しましょう。
 紋別漁協が千トン単位のサケの漁獲をあげているのに、畠山氏に60尾ほどのサケ漁さえ認めないのは、「科学的根拠に基づく判断」だと横山氏はいうのでしょうか?
 そうでなければ筋が通りませんね。「最も明快」だとおっしゃる以上は。
 もし違うとすれば、アイヌが伝統のサケ漁を自主的に実施する行為を「許可を得ない単なる密漁=vとしか彼はみなしていないことになります。紋別のアイヌ漁師VS北海道警騒動に対し吹き上がったネトウヨたちとまったく同じように。
 横山氏をはじめとする捕鯨族議員、そして水産庁の公的立場からは、アイヌのサケ漁は「漁業ではない」のでしょう。あくまで単なる密漁=B
 確かに、畠山氏が強行しようとして警察に阻止されたサケ漁は、どれほど伝統的手法に則ろうと、真に伝統の保存を目的としていようと、法律上は非合法ということになるのでしょう。
 しかし、丹菊氏はこう指摘しています。

https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1037277871197188097
先住民族のさまざまな伝統文化が現在まで(あるいはつい最近まで)違法行為として維持されてきたことが判っている。伝統漁業や伝統狩猟を制限された場合、先住民族の多くは密漁(密猟)の形で文化を伝えてきた。アイヌの場合も漁業権が得られなければ密漁しかなかった。(引用)

 捕鯨の場合も、国際法でモラトリアムが定められてからは伝統文化≠調査捕鯨という名の脱法行為(JARPAIIとJARPNII/NEWREP-NPはすでに違法が確定)として維持してきたとはいえますが。
 それはしかし、先住民による伝統を死守するための苦渋の選択とは似て非なるものです。合法的な商業捕鯨時代から行われていたあの手この手の規制逃れの手口の延長
 C・W・ニコル氏は太地の捕鯨会社による密猟をじかに目撃。沿岸ではモラトリアム以前から厳格に捕獲が禁じられてきたセミクジラの切断された頭部が打ち上がったり、座礁個体から銛先が出てきたことも。また、モラトリアム後には鯨肉の代替需要を見込んだイルカの漁獲量が一気に膨れ上がりました。
 捕鯨ニッポンの密輸・密猟・規制違反の目的は伝統文化の維持などではなく、持続性なんて後回しのビジネスの維持だったのですから。
 いずれにせよ、彼らは伝統文化の中身について議論はしないのです。「人種差別に繋がりかねない」(引用〜横山氏)から。
 その発言が真に意味するところは何でしょうか?
 北海道内水面漁業調整規則第52条において「伝統的な儀式若しくは漁法の伝承及び保存」と明記されたにもかかわらず、北海道担当当局が受付の段階で排除する形で正しく運用されてこなかったのは、ひょっとして横山氏らの意を汲んでのことではないのでしょうか?
 アイヌにだけ特別な形でサケ漁獲の枠を設けるのは、倭人の漁協との「差別に繋がりかねない」。高橋道知事が故萱野氏に約束した道の漁業規則改訂は、横山氏らの視点からすれば「人種差別に繋がりかねず」好ましくないことだったに違いありません。
 しかし、現行の北海道のアイヌ農林漁業対策事業自体、逆差別≠フ観点からすれば問題視されうる要素を含んでいるのです。ネトウヨ方面に「利権ガー」と騒がれるような。

■アイヌ農林漁業対策事業|北海道
アイヌ農林漁業対策事業の概要
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/kei/sen/grp/H28ainugaiyou.pdf

 事例の中にサケの記述があるのですが、それはアイヌ民族の伝統としてのサケ漁の話ではありません。アイヌの戸数や受益割合が一定以上の場合、補助金が出る仕組み。紹介されているのは、アイヌ漁家を含む漁協がサケ加工処理施設を導入する際に助成金が下りるというケース。
 申請する事業の内容にアイヌ特有の事情は何もありません。倭人の漁協との違いは、ただ構成員にアイヌがいるかどうかだけ。アイヌの伝統文化の存続や主権とは関係ない、低所得層へのそれと何も変わらない優遇制度なのです。一種のバラマキという見方もできなくはないでしょう。
 もしそれができるのであれば、取り上げられてきた先住民としての権利を回復してほしいというアイヌの漁業者の方々の切実な要請を断る理由などないはずです。 
 横山氏は北海道出身で国政進出前は道議を務めておられた方。なおかつ、北海道の漁協長によって構成される北海道水産政治協会を支持母体にしています。今年のIWCブラジル総会開催中の当記事の中でも、横山氏は「捕鯨族議員のレベルが高い」とお伝えしましたが、捕鯨だけでなく漁業全体をカバーする水産族議員といえるでしょう。北大水産学部を出て博士論文を書き(内容は噴火湾のアカガレイの摂餌生態)、函館水産試験場科長を務め、メディアも「水産学博士」の肩書きを紹介するほど。


 つまり、アイヌのサケ漁問題には二重に関係してくる政治家といえます。
 彼が地盤である北海道の漁協の利益を最優先するのは、まあ当たり前ではあるでしょう。以下のツイートからもそれはうかがえます。

https://twitter.com/gagomeyokoyama/status/775603202066554880/photo/1
山形県遊佐町の枡川鮭ふ化場の建設現場に来ました。建設に尽力されてきた尾形組合長と。ここから旅立つ鮭は、4年後に北海道ではメジカと呼ばれる高級なブランド鮭になります。遊佐町はメジカのふるさとです。(引用)

 ここで放流された稚魚が成長して回帰する際に北海道沿岸で漁獲されることから、北海道と山形の漁協が連携。横山氏はその実現の影の立役者だったわけです。倭人の漁協に奉仕する水産族議員らしいお仕事ですね。
 横山議員のブログがこちら。国会議員としては発信量の多い方といえそうです。最近は9月のIWC総会関連の記事で止まっていますが、参院法務委員長として忙殺されておいでのようですから、まあ仕方ありませんね。法務委員を務められるなら、外国人労働者の人権問題についても捕鯨に負けない分量の記事を書いて欲しかったところですけど。

■よこやま信一公式ブログ
https://ameblo.jp/gagome-yokoyama/

 右側のカテゴリーを見ると、農業・食文化が248本、水産業が196本と記事数で抜きん出ています。3番目が震災復興・災害対策。それに対し、アイヌ文化はたった3つ、働き方改革(2)に次ぎ2番目の少なさ。
 その3本は博物館・民族共生公園の整備事業に関するもの2本、遺骨問題が1本。
 与党公明党議員の横山氏は、遺骨の返還事業及びハコモノ整備とそこでの東京五輪に合わせた集客イベントの展開がアイヌ政策の中心的課題と考えておられるようですね。これらはすでに内閣官房アイヌ政策推進会議が掲げている施策でもありますが。

■アイヌ遺骨問題を考える (2013/6/20, よこやま信一公式ブログ)
https://ameblo.jp/gagome-yokoyama/entry-11555814642.html
これはアイヌの人々の尊厳を損なう悲しい歴史でもあります。速やかな返還を目指して議連として活動していくことを決意しました。(引用)

 アイヌのサケ漁に対する主権を認めないのは、尊厳を損なうことにはあたらないのでしょうか?
 ここで「議連」という言葉が登場しましたが、実は横山議員は「アイヌ政策を推進する議員の会」のメンバー。水産族議員であるばかりでなく、アイヌ族議員でもあるハズなのです。

■河川でのサケ漁、新法で容認を 道アイヌ協会など要望 (2016/10/2, 北海道新聞〜先住民族関連ニュース)
https://blog.goo.ne.jp/ivelove/e/66084cc1051b909f3ad9b25795e2cf56
政府の作業部会では新法の中心となる生活向上に向けた施策として、雇用の安定など6項目を検討課題として列挙。これ以外の検討課題として、伝統的なサケ漁の復活も挙がっている。内閣官房アイヌ総合政策室は「道の特別採捕の実績を把握することなど、どういう手順で検討するかという所から今後議論することになる」と話している(引用)
■アイヌ新法、来年国会提出 政府、「先住民族」初明記 (8/14, 共同通信)
https://this.kiji.is/402011969156695137

 赤字傍線のとおり、残念ながら、検討さえ10月の段階で緒についたばかりの模様。
 道知事の改正前の会見にもあったとおり、国会議員となった萱野氏はサケ漁の問題をずっと訴え続けてきました。国がアイヌが先住民であることを国会で認めた2008年には「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」が設置され、北海道ウタリ協会(当時)理事長の加藤氏からもサケ漁に関する要望が出ています。

■ アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会(第2回)議事概要 |官邸
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/dai2/haifu_siryou.pdf
明治初期、生活のための捕獲を保障されていた共有漁場などを奪われた歴史的経緯などから、漁業権の一般の権利侵害を伴わない範囲での一部付与などは、必要不可欠な事柄なのです。(引用)

 議論を始めるまでになぜ10年もかかったのでしょうか?
 新法と言えば、美味い刺身*@(調査捕鯨実施法)なんて、2014年のICJ判決に危機感を抱いた捕鯨協会の要請を受け、野党民主党(当時)の族議員として玉木氏らが検討を始めたのが2015年。それから2年であっというまに国会に上梓。同じ国会の種子法、今国会の水道法や入管法の改悪≠烽ミどいものでしたが、捕鯨に至っては自由党の山本太郎議員の質疑10分だけであっという間に成立。短時間に審議・可決された法律としてはギネスものでしょう。公明党を代表する捕鯨族議員として横山氏も草案に加わっていたはず。
 調査捕鯨事業に関わる共同船舶等の雇用者は前JARPAIIの時点で330人(慶応大・谷口智彦氏、2009年)、アイヌの人口は北海道だけで16,786人(北海道アイヌ協会、2013年)。
 この温度差は一体何なのでしょうか?
 横山殿。
 貴殿に対して「捕鯨に反対しろ」などと野暮なことは言いません。
 来年1月に提出予定のアイヌ新法には、現在の漁協と同格の漁業権を付与する形で、アイヌの漁業者が主体的に伝統漁業を行う権利を認める文言を必ず入れてください。
 道の漁業団体を支持母体とし、アイヌ議連にも名を連ねる貴殿なら、(倭人の)漁協団体を説得することができるはずです。
 今国会で審議されている改正漁業法では、漁業権の規制が緩和され、企業が参入する余地が増えることになります。漁業法改正の必要性と問題点については東京海洋大学准教授・勝川俊雄氏の解説をごらんいただきたいと思いますが、それが可能であるならアイヌに漁業権を賦与することにはまったく何の問題もないはず。野党は猛反発していますが、企業はともかく、アイヌに漁業権を与えることで北海道の漁協のサケ漁が脅かされることなどありえません。
 改正漁業法の条文に組み込むのは間に合いそうにありませんが、アイヌ新法には確実に明記できるはずです。
 捕鯨・北海道の漁業・アイヌのサケ漁のすべてに関わる立法府の人間として、この許すまじきダブスタを解消してください。
 森下氏らが国際社会に対して「たまたま起こった」などという苦しまぎれの弁明をもう二度としなくてすむように。

 アイヌのサケ漁について、もう少し掘り下げてみましょう。

B■アイヌ社会とサケ|みんぱくリポジトリ
http://hdl.handle.net/10502/5602
日々の食事の主たるメニュ0で、食材は季節によって変化するが、魚の割合はおよそ2〜3割を占めたと推定される[LEE1968;渡辺1988]。そしてその大部分はサケ・マス類である。(引用)

 萱野氏は「主食」という言い方をされていますが、量的な割合もさることながら、冬越しのために欠かせない保存食であり、交易品としても重要でした(江戸時代に入ると次第に松前藩による搾取にすり替わっていきますが)。

サケ類はその部位すべてを食べることができ、身(魚肉)はもちろんのこと、卵巣(イクラ・筋子)、精巣(白子)、軟骨の多い頭、また目、内臓、骨、皮からひれにいたるまで、残すところは殆どなかったという。(引用〜B)

 鯨体完全利用神話の方は、戦前も戦後も捕鯨会社が洋上でバンバン投棄しておりデタラメでしたが、こちらは本物。食用以外に、皮も上衣や靴として加工、膠としての利用もされていました。
 そして、サケをめぐる豊かな精神文化。コタン間の交流もサケ抜きには語れませんでした。
 
そして、この地縁集団の標識となるのが共通の首長と、サケ産卵場のなわばり、住居新築の際の協力、サケに関わる集団儀礼であるといわれるように、共同体の根幹はサケと深く結びついていた[渡辺1977]。(引用〜B)

 そのサケの恵みを取り上げられ、つながりを絶たれるのは、まさに倭人にとってみればコメ・稲作に関する文化を奪われるのも同然といっても、決して大げさな表現ではないでしょう。
 丹菊氏はこう述べられています。

https://twitter.com/itangiku/status/1068736514622812160
「アイヌだけに鮭漁を認めるのは不公平」というのはどうでしょう。和人社会は昔から「分業」社会です。でもアイヌ伝統社会は分業せず、鮭漁も自分でしていた。その価値観が祭祀や食事、道徳観などとつながっている。「伝統鮭漁」はたんなる銛や網の技術だけの問題ではないのです。(引用)
https://twitter.com/itangiku/status/1068737449956827137
アイヌにとって、鮭はたんなる魚ではないし、鮭漁はたんなる銛や網の技術ではない。だから「和人から鮭を買って生け簀に入れて、そこで銛で突けばいい」と言われれば怒るのも当たり前です(実話ですよ)。鮭への意識は鮭漁禁止以来今まで保持され続けてきた。簡単にはなくならないのです。(引用)

アイヌのサケ漁の伝統の奥深さに比べれば、捕鯨サークルや外野の反反捕鯨の説く鯨肉食文化なんぞ、ガリガリくんナポリタンを多額の税金で存続させるのと変わらないと筆者は思いますが。
 南極産クロミンククジラに手をつけだしたのはたったの半世紀前。消費者に敬遠されるからといって極低温冷凍設備やドリップを防ぐ解凍技術に頼ったり、フレンチシェフにクジラ肉のポワレカキのフライ添えカフェドパリバターソースだのわけわからん創作料理をこしらえさせて政治家らが集うパーティーで振る舞ったり。そんなもの、ただの食材でしかありません。伝統文化に値しない食ブンカ

■トンデモ鯨料理一覧
https://www.kkneko.com/shoku.htm

 記事の最後に、萱野茂氏の晩年の著書、平凡社新書の『アイヌ歳時記 二風谷のくらしと心』から、少し長くなりますが引用しましょう。昨年にはちくま学芸文庫版も出ています。


第1章 四季のくらし サケはアイヌの魚
 サケのことを北海道ではふつう秋味というが、アイヌはカムイチェㇷ゚(神の魚)、またはシエペ(シ=本当に、エ=食べる、ペ=もの、しゃべるときはシペという)と呼んだ。
 北海道というとクマとアイヌが主役で、有名なのはイヨマンテ(クマ送り)で、あたかもクマの肉を主食にしていたように思われがちだ。しかし、私が物心ついて約七〇年、その間に村でクマが獲れたのは昭和一六年頃に二谷勇吉さんが一頭、そのあと昭和三五年に貝沢健二郎さんが二頭か三頭、私の弟貝沢留治が昭和四〇年ごろに一頭獲っただけであった。
 こうしてみると、一〇年に一頭にもならないほどなので、クマの肉はめったに口に入るものではなく、クマの肉のことをアイヌたちは、カムイハル(神の食べ物)というほどであった。
 これに対しサケのほうはアイヌがシエペ(本当の食べ物、主食)という言い方で大切にした食べ物であり、本当に当てにしてくらしていたのである。
(中略)
 アイヌたちが定住の場を決めたのは、サケの遡上が止まるところまでであり、主食として当てにしていたことがそのことからはっきりわかるはずだ。世界中でアイヌ民族だけが使っていたと思われるマレㇷ゚(回転銛)など、サケを獲る道具は約一五種類もあり、サケの食べ方は大ざっぱに数えて二〇種類。その中には生のまま食べる食べ方もあり、獲ってすぐでなければできない料理もある。
 アイヌは自然の摂理にしたがって利息だけを食べて、その日その日の食べ物に不自由がないことを幸せとしていたのである。それなのに日本人が勝手に北海道へやってきて、手始めにアイヌ民族の主食を奪い、日本語がわからない、日本の文字も読めないアイヌに一方的にサケを獲ることを禁じてしまった。
 これはアイヌ民族の生活をする権利を、生きる権利を、法律なるものでしばったわけで、サケを獲れば密漁だ、木を伐れば盗伐だ、と手枷足枷そのものであった。
 話を古いほうへ戻すが、昭和六年か七年のこと、秋の日にわが家の建て付けの悪い板戸を開けて巡査が入ってきて、立ったまま、清太郎(アレㇰアイヌ)行くか、と父にいった。
 父は板の間にひれ伏し、はい行きます、といったままで大粒の涙をポタッポタッと落とした。それを見た私は、あれっ、大人が泣いていると思ったが、次が大変であった。
 父は巡査に連れられ平取のほうへ歩き出し、私が泣きながら父の後を追いかけると、私を連れ戻そうと大人たちが追ってくる。その大人たちの顔に私と同じに涙が流れていたのを、つい昨日のように思い出すことができる。
 毎晩こっそり獲ってきて子供たちに口止めしながら食べさせていたサケは、日本人が作った法律によって、獲ってはならない魚になっていたというわけであった。
 父が連れていかれたあとで、祖母てかっては、「シサㇺカラペヘ チェㇷ゚ネワヘ クポホポンノ ウㇰワエッヒネ カムイト゚ラノ ポホウタㇻ エパロイキヒ アコパㇰハウェ シサㇺ ウタㇻ ポロンノウッヒ アナッネ ソモアコイパッハウェー」と嘆きの言葉をもらしながら泣いていた。
 この意味は、「和人(日本人)が作ったものがサケであるまいに、私の息子が少し獲ってきて、神々と子供たちに食べさせたことで罰を受け、和人がたくさん獲ったことは罰せられないのかい」ということである。
 私はこれまでパスポートを必要とする旅を二四回していて、行った先ではなるべくその国の先住民と称せられる人びとと交流をしてきたが、侵略によって主食を奪われた民族は聞いたことがない。
 現在のサケとアイヌの関わりがどうなっているかを述べよう。北海道全土の漁協が獲っているサケの数は数千万匹という。その中でアイヌ民族が書類を出して獲らせてもらえる数といえば、登別アイヌが伝統的漁法であるラウォマㇷ゚(やな)で五匹獲れるのと、今一ヵ所は札幌アイヌがアシリチェㇷ゚ノミ(新しいサケを迎える祭り)のために獲れるのが数年前まで二〇匹であった。
 この本をお読みになる日本人の方々よ。あなたが悪いのではないが、あなたたちの先祖が犯した過ちが今もなお踏襲されているのはまぎれもない事実なのであり、それを正すも正さないもあなたたちの手に委ねられていることを知ってほしい、と私は思っている。
 もし、よその国から言葉も風習もまったく違う人たちがどさっと日本へ渡ってきて、おまえたち、今日から米を食うな、米食ったら逮捕するぞ、という法律を押しつけたらどうであろうか。これと同じことをアイヌに対して日本人はしたのである。
 こう私はいい続け、書き続けているが、私が語り続けてきたことにまったく反応がないのはなぜだろうか。
 私は、アイヌ民族の食文化継承のために必要なサケはどうぞご自由に、といってほしいだけで、そうむずかしい注文をしているわけではないはずだ。
 私が生まれ育ったシシリムカペッ(沙流川の河口から四キロほどのところ)に、頑丈なやなが設置され、一匹のサケも遡上できなくなり、キツネやカラス、シマフクロウ、クマなど上流で腹を空かせて待っているものたちがいることだろう。こうした動物たち、そしてアイヌに、有史以来食べる権利を持っていたものたちのために、やなを三日に一度でいいから開けられないものだろうか。
 川は誰のものなのか、漁業組合なるものの占有物ではないはず。その流域でくらしている生きとし生きるものたちの共有財産であったものを、一部の人たちの思いのままにしていいのだろうか。(引用。強調は筆者)

 『アイヌ歳時記』には昭和初期、幼少期の萱野氏自身の豊かな自然体験、アイヌ語で祖母や父に教えられた逸話・訓話や生活の知恵が、同化政策によって押し付けられた言語であるところの日本語による確かな筆致で描かれています。目に浮かぶ情景に胸打たれるとともに、読み進む毎に痛みが心に突き刺さってきます。なぜならそれは、連綿となく受け継がれてきた大切な仕来り、かけがえのない自然がひとつひとつ失われてゆく過程そのものだからです。
 合わせて以下もご一読を。

■アイヌの主食は鮭、なぜ捕るなと言うのか?・・萱野茂氏の主張(4・終)|始まりに向かって
https://blog.goo.ne.jp/blue77341/e/f09be0a0e923aa0d9139a9e22464abc9

 萱野氏らが国を相手取った二風谷ダム訴訟で強制収用の違法性の審判は下ったものの、奪われた土地・自然は水底に沈められたままという大きな犠牲を払ったうえで、1997年にはアイヌ文化振興法が成立しました。しかし、その内容は先住権の回復というには程遠い内容でした。
 しかも、倭人とアイヌの、対等とは到底言いがたい、歪んだ関係はまだ続いたままです。萱野氏がこれをご覧になったらさぞかし嘆かれることでしょう。

■沙流川の今。2016年7月29日|流域の自然を考えるネットワーク
http://protectingecology.org/report/6462
清流であった沙流川のアイヌの聖地を水没させた違法ダム「二風谷ダム」。ダムは満杯に泥で埋まっている。国の膨大な予算を使って計画された当時の役割を、完全に失っているダムである。
雨が降る度に、沙流川は泥水が流れ、今なおダムは泥を溜め続けている。(中略)
そして、支流の額平川には、新たに「平取ダム」が建設中である。
平取ダム建設中の額平川も、そこへ合流する宿主別川もご覧のように酷い泥水となっている。これでは、清流・沙流川は更に酷い泥川にされてしまう。沙流川からシシャモの姿が消えるカウントダウンが始まった。
正面の山はアイヌの祈りの場といわれる神聖な山「チノミシリ」である。チノミシリに「穴を穿ち、ダム堤体を取り付け、麓を水没させる」平取ダム。(引用)
■二風谷ダム裁判判決文
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Suzuran/5596/
■二風谷ダム訴訟判決から20年(2017/3/26, 八ッ場あしたの会)
https://yamba-net.org/20469/

 水産庁の上掲公式HP「捕鯨の部屋」にはこんなことが書かれています。

捕鯨についての基本的考え方
( 2 )食習慣・食文化はそれぞれの地域におかれた環境により歴史的に形成されてきたものであり、相互の理解精神が必要である。(引用〜A)

 一体どの口が言えるのでしょう??
 加害者たる倭人の一人として、筆者はただただ深く恥じ入るばかりです。
posted by カメクジラネコ at 08:48| Comment(4) | TrackBack(0) | 社会科学系

2018年12月05日

今年のIWCブラジル総会の日本政府代表団の旅費(の一部)が明らかに!

 今年9月にブラジル・フロリアノポリスで開催された国際捕鯨委員会(IWC)の第67回総会については、動画で配信された会議の模様やオブザーバー参加したNGOの話をもとに当ブログで取り上げたところ。
 今年の総会にはオブザーバーを除く加盟国政府だけで400名を越える参加者が集まりました。このうちの62名が日本政府代表団。実に7分の1近くを日本が占めていたことになります。もちろんダントツで最多。他の加盟国はほぼ1桁で、代表1名のみのところも少なくありません。
 10月にソチで開かれたワシントン条約常設委員会(CITES-SC)も日本からは18名が出席、参加者数で他国を大きく引き離していました。
 どちらもクジラがらみ。
 すべての産業界にとって無関係ではいられない国連気候変動枠組条約、その昨年の締約国会議(COP)23に参加した政府関係者は197カ国で約9千人(1ヶ国当たりでは50人弱。多く派遣しているのは先進国でしょうが)。100人に上る政府代表団が送られるのは、後はサミットくらいのものでしょう。
 実際のところ、国際交渉で10人以上の政府要員を派遣するだけで、その国にとってよほど重要な案件のはず。それはIWCやCITES-SCへの日本以外の国からの参加人数を見てもわかります。
 もちろん、かかる経費だって決してバカにならないのですから。
 というわけで、筆者は外務省および農水省に対し、今回の総会への日本政府代表団の旅費その他参加費用に関する書類の行政文書開示請求を行うことにしました。
 農水省に関しては、情報公開窓口で農水省分と水産庁分を農水大臣宛・水産庁長官分宛に分けて出してくれと言われたため、開示請求を2通分作成することに。外務省も本来は本省分と在外公館(大使館等)分に分かれるそうですが、こちらは一括で応じてくれました。さらに、開示可否の決定通知を受けたうえで、不足分(開示実施手数料−開示請求手数料)にあたる印紙を貼って開示実施方法等申出書を送付。ようやくブツが手元に。面倒くさいですね。用意する方も大変でしょうけど。あと、フォーマットを省庁間で統一した方がもっと効率的だろうにとも思いましたが。
 農水省・外務省とも部分開示でしたが、とくに農水省は一部不開示とした理由を5項目詳述しており、いずれも合理的な内容で異存はありませんでした。懇切丁寧な対応をしていただいた両省の担当部署の方々にはお礼申し上げます。水産庁以外。
 ていうか、水産庁(国際課捕鯨室)だけ開示決定期限を1ヶ月延長してきたんですよね〜。「権利利益を侵害される可能性のある第三者の意見聴取及び当該行政文書開示・不開示の審査に時間を要するため」という理由で。
 メンバーに庁外の業界団体関係者がいたからということなんでしょうが、すでに当事者であって第三者とはいえないはず。国際会議出席にかかった旅費・宿泊費等の費用を開示するだけで「権利利益を侵害される」可能性のある第三者とは一体誰なのでしょう? 例えば、業界団体の人間には国会議員並にビジネスクラスの航空券やランクの高いホテルの部屋を用意したことが国民に知られると、それが権利利益の侵害にあたったりする? そりゃ、侵害する方とされる方が逆≠ネのと違いますか? 税金使ってるのに。四の五の言わずにとっとと開示してほしいものです。
 さて、現物は農水省がA4用紙36枚、外務省がA4用紙27枚。墨塗りは一部のみで、必要な支出金額はすべて開示していただきました(水産庁以外)。それを一覧表にまとめたのがこちら。表下部の補注もご参照。
iwc67_delegates_exp.png
 同じ表を以下の拙HPでも公開しています。

■IWC67日本政府代表団旅費等参加費用情報公開請求
https://www.kkneko.com/iwc67delegatesexp.htm

 今回明らかになったのは、IWCに参加登録した日本代表団全62名のうち、農水省2名、外務省18名の分。また、資料上は匿名でしたが、在クリチバ領事館のスタッフの方6名がおそらくリストの最後に加わったと考えられます。
 今年のブラジル詣でに加わったのは、このほかに国会議員5名、下関市2名(市長と議長)、同じく太地町2名(町長と議長)。水産庁の幹部クラス官僚5名も確認。残る22名が水産庁職員および業界関係者ということになりますね。
 自民党3名、公明党1名、国民民主党1名の族議員は議院ないし国会委員会の職務扱いで、残念ながら情報公開法の対象外。
 太地町のお2人の分については同町議会の漁野尚登議員が、過去の総会同様、町に対して開示請求されたとのこと。
 今回筆者の方では下関市に対する請求をあえて行うことはしませんでした。おそらく太地町と同額程度と考えられるため。
 で、判明した金額が20,115,297円
 これでまだ≪62分の26≫にすぎません。国会議員では≪7分の2≫。
 水産庁の27名分を除いた残りの推計を含めた35名分で、およそ4千万円
 たった1回のブラジルツアーで家(土地付き)1戸建っちゃいますね・・。
 仮に、政務官と秘書官を除く外務省本省7人分の平均を水産庁の27人にあてはめると、およそ3千万円。しめて約7千万円
 都内の新築マンションが買えますね・・。
 少し細かく見ていきましょう(会計検査院の目で)。
 判明している26名分の旅費のうち8割は航空運賃です。ブラジルはフロリアノポリス開催ということで、渡航費がかさむのはやむをえないかもしれません。
 ただ、その航空運賃の6割近くは岡本政務官と谷合副大臣およびそれぞれの秘書官、計4名の分です。
 谷合副大臣と山本秘書官の航空運賃はそれぞれ2,013,960円。サンパウロ−フロリアノポリス間のブラジル国内線はエコノミーですが、東京−サンパウロ間はルフトハンザ航空のビジネスクラスを使用。岡本政務官は復路で米西海岸2都市に立ち寄っており、谷合副大臣より50万円高い値段(その後カナダへ)。
 それにしても、1度の往復で200万円とはすさまじいですね。会社の業務であれ個人の旅行であれ、比較サイトで格安航空、キャンセル待ちを探す庶民には想像もつかない金額です。とある研究者の方いわく「200万円くれたら10回か11回分国際会議を回ることが出来て、論文も捗るなあ・・」とのこと。しかも、当人の出張がなければ必要のない随行秘書の分で2倍に。議員・政府高官として、万が一にも遅れて会議に出席できなくなることがあってはならないという事情もわかりますが。
 さればこそ、せめて参加する国会議員は谷合氏と岡本氏の2名に絞るべきでした。
 また、会場でのスピーチは初日を谷合副大臣、最終日を岡本政務官といった形で分担すればよく、2人とも丸々5日間会議に張り付いている必要はなかったはずです。外交の場で政府の顔≠ニしての役割を演じるのが彼らの仕事であり、どうせ実務を担当するのは官僚なのですから。そうすれば宿泊費は1泊分ですみ、秘書官含め5日分の宿泊代と日当、40万円ちょっと浮いたはずです。
 実は、今回の総会にはオーストラリアからも与党自由党の上院議員アン・ラストン氏が出席していました。役職は谷合氏に相当する国際開発・太平洋担当副大臣。ラストン議員も日本の岡本氏と同様に豪州政府を代表して初日にスピーチを行ったのですが、内政を優先してとんぼ返り。そのことに対してNGOや豪州国内からは批判の声もあがりました。
 しかし、筆者はラストン議員・豪州政府の判断は賢明だったと思います。長くいたところで税金の無駄になるだけなんですから。
 日本の国会議員が7人も内政をほったらかしてブラジルまで押しかけ、会期中丸々居座るのではなく、2人だけ出席して「本当はずっと会議の行方を見守りたいところですが、地震と豪雨により被災した国民が大勢おります故、1日だけ顔を出させていただくことにしました」とでもスピーチしておけば、国内のみならず対外的にもむしろ日本の株はあがったことでしょう。
 それ以外の議員5名の旅費は、秘書の同行なし、航空運賃と宿泊費は谷合副大臣と同じ(まさかエコノミーで行くはずもないし・・)と仮定したうえでの推計ですが、やはり合わせて1千万円を超えます。また、おそらくブラジルでこれら国会議員に随行し通訳等の世話をするために在クリチバ領事館から追加のスタッフが派遣されたと思われるので、その分余計な支出が増えるとともに、領事館の業務が手薄になったんじゃないかと心配になります。
 はたして、地球の真裏のブラジルまで国会議員7名を擁するこれだけ大がかりな代表団を送り込んだだけの成果は挙がったのか──という点に関していえば、もうすでに結果は出ちゃったわけですが……。

■税金でブラジルまで出かけて無能ぶりを晒した捕鯨族議員は惨敗の責任を取れ
http://kkneko.sblo.jp/article/184463999.html
■IWC67会議報告−1日目〜その他のこと|ika-net日記
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2018/10/index.html
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/index.html
■国際捕鯨委員会第67回会合と日本提案 [クジラ]|真田康弘の地球環境・海洋・漁業問題ブログ
https://y-sanada.blog.so-net.ne.jp/2018-09-15

 判明した一部だけで2千万円、推計で7千万円と言う莫大な税金をかけ、国会議員7名を含む大代表団を送る必要があったとは、筆者には到底思われません。
 過去のIWC総会においても、日本は他の加盟国より相対的に多くのメンバーが出席し、族議員の誰かも加わってはきました。が、今回はとくにコストパフォーマンス的に最悪の外交だったといえるのではないでしょうか。(安倍首相の外遊のそれについてはここでは問わないとして・・)

 日本政府がIWCを脱退する/しないの判断を下すとしたのが今月。
 はたして「我が代表堂々退場ス」ということになるのかどうか。
 9月のブラジルが本当に参加する最後の機会だったとしても、もっと他にやり方があったでしょうにね。

参考リンク:
第66回IWC総会参加費用|太地町議会議員 漁野尚登のブログ
https://blogs.yahoo.co.jp/nankiboys_v_2522/34527636.html
平成30年 第2回 太地町議会定例会開催のお知らせ|〃
https://blogs.yahoo.co.jp/nankiboys_v_2522/35172444.html

 近日中にアイヌのサケ漁と捕鯨のダブスタに関する記事をアップする予定です。
posted by カメクジラネコ at 18:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系