2018年11月22日

捕鯨で負けたのに徴用工でまたICJ提訴? クジラは平等に殺せ、でもヒトの人権ダブスタはOK?

 今月久々に拙ツイートがバズりまして──まあバズッたといっても高々RT360ほどで、著名人の日常の呟き程度にすぎませんけど。まずは件の一連のツイート(筆者+VARDIGAさん、榧世さん)をご紹介。


 上掲引用RTの元ネタは、日本の最高裁にあたる韓国大法院が第二次大戦中のいわゆる徴用工の新日鉄住金に対する損害賠償請求を認めた判決に関する産経新聞記事。またぞろネトウヨが吹き上がって1,500RTされてますが、その1/5以上の反響はあったことになりますかね。。

@■徴用工問題で日本政府、国際司法裁に提訴へ 大使召還は行わず (11/6, 産経)
https://www.sankei.com/politics/news/181106/plt1811060004-n1.html
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181106-00000042-san-pol
■徴用工 国際司法裁判所に提訴へ 韓国の異常性を世界へ周知、日本単独の場合も韓国に説明義務あり (11/6, 夕刊フジ)
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/181106/soc1811060016-n1.html
A■菅官房長官、国際裁判辞さず 韓国元徴用工判決で意向示す (11/6, 共同)
https://this.kiji.is/432396931954852961
B■徴用工判決は「暴挙、国際秩序への挑戦」 河野外相批判 (11/6, 朝日)
https://www.asahi.com/articles/ASLC65JB8LC6UTFK015.html

 この件に関しては同日共同通信と朝日新聞も取り上げています。「政府は」で始まり「固めた」で締めくくる大本営張りの産経に対し、共同は菅官房長官、朝日は河野外相の6日の記者会見と出所が明確。官房長官は「国際裁判も含めあらゆる選択肢を視野に」「(今後の対処方針に関しては)手の内を明かすことになるので差し控えたい」としか述べておらず、河野外相も「あらゆる手段を取る用意がある」とややぼかした言い方。どうも、名無しの「政府高官」や「外務省幹部」の意気込み≠竕ッ測のみで「提訴へ」と書いてしまった産経の勇み足、先走りに映ります。「政府は──判断した」が同系列のフジじゃ「政府は──判断したようだ」になっていたり、相変わらずのクオリティ。一応政府部内にいる同紙のシンパが情報源なんでしょうけど。
 実は同趣旨の報道は先月末の韓国大法院の判決当日にも。

C■日本政府、対韓国「戦略的放置」強める 徴用工判決、国際司法裁判所への提訴も視野 (10/30, 産経)
https://www.sankei.com/politics/news/181030/plt1810300039-n1.html
■安倍首相「あり得ない判断」=徴用工訴訟、国際裁判も (10/30, 時事)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018103000804&g=pol

 国際裁判提訴の動きに対してはさっそく懸念の声が。以下は東京海洋大准教授・勝川俊雄氏、早大客員准教授真田康弘氏、日本通NZ人ガメ・オベール氏のツイート。

韓国の徴用工判決問題で、国際司法裁判所(ICJ)に提訴すれば日本が勝てるという見通しが大勢なんだけど、本当に大丈夫なのかな。捕鯨の裁判の時は、楽勝ムードだったのに、蓋を開ければ完敗だったので、ちょっと不安です。(引用)


 河野外相いわく「友好関係の法的基盤を根本から覆すものだ。極めて遺憾で、断じて受け入れられない」(引用〜A)「暴挙」「国際法に基づく国際秩序への挑戦だ」(引用〜B)とのことですが、オーストラリア・ニュージーランド首脳にはぜひそっくり言葉を日本に対して突きつけてほしいもの。産経記事「国際協定や実定法よりも国民情緒を重視する韓国への視線は、政府内で冷め切っている」(引用〜C)はやはり一握りの産経シンパがそう言ってるだけなのでしょうが、国際協定や実定法よりごく一部の″走ッ情緒・美味い刺身@~しさを優先する国が言えるこっちゃありませんわな。まあ「一体どの口が」という話です。
 それにしても、「国際司法裁判所(ICJ)」というキーワードが登場したにもかかわらず、日本がそのICJで調査捕鯨をめぐって豪州・NZと争い、敗訴したという重要な事実に触れた記事は1つもなし。上掲真田氏、勝川氏、榧世さんのようにすぐピンと来た記者が1人もいなかったとすれば、日本のマスジャーナリストはお先真っ暗ですな。。外務官僚は単にすっとぼけてるだけにしろ。
 そんな中、唯一自身のメルマガで調査捕鯨訴訟に言及したのが元大阪府知事の橋下徹氏。

■橋下徹"徴用工問題、日本が負けるリスク" (11/14, ブロゴス)
https://blogos.com/article/338621/

日本の悪い癖は、法的な論戦になるときに、きちんとした備えをしないこと。最近では、クジラの調査捕鯨について、国際司法裁判所の場で必ず日本の主張が通ると高を括っていたら、なんと日本の主張は完全に排斥された。(引用)

 「完全に排斥された」とまで言い切っちゃうと、捕鯨サークル(水産庁・鯨研・共同船舶/捕鯨協会)が気を悪くしそうですね(実際には附表第30項違反に関しては日本側の主張が通っています)。まあ、ほぼ完敗に近いボロ負けだったのは事実。「美味い刺身≠フ安定供給目的の国際法違反」とはっきり認定されたわけですから。捕鯨サークル関係者の中には「いや、負けたわけじゃないんだ」と矮小化を図ろうとしている御仁もいますが、橋下氏らの信用を得るには至ってないと。
 ともあれ、保守派論客の橋下氏さえ、韓国政府を提訴した場合の日本政府のリスクを懸念しているわけです。
 徴用工訴訟問題そのものについては以下もご参照。ネトウヨ/産経読者諸兄は吹き上がる前に確認しておくべきでしょう。どうやら調査捕鯨国際裁判敗訴の判例がなくてさえ、日本政府側にとってかなり分が悪そうです。

■徴用工問題は本当に「解決済み」だったのか? 日本政府が60年以上にわたり隠蔽してきた日韓基本条約の欺瞞 (11/6, リテラ)
https://lite-ra.com/2018/11/post-4356.html
■徴用工判決と日本政府のブーメラン事情
https://www.youtube.com/watch?v=kZJGp7oZAN0&feature=youtu.be
■元徴用工問題 本質は人権侵害/元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明 (11/6, 赤旗)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-11-06/2018110601_02_1.html
■[インタビュー]日本の弁護士「日本が強制徴用国際裁判で負ける可能性もある」 (11/9, ハンギョレ)
http://japan.hani.co.kr/arti/international/32062.html
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181109-00032062-hankyoreh-kr
■日本弁護士「強制徴用賠償、ICJでも日本が負ける」…その根拠は? (11/7, 中央日報日本語版)
https://japanese.joins.com/article/872/246872.html
■河野外相「個人請求権は消滅していない」…「しかし解決済み」 (11/17, 中央日報日本語版)
https://s.japanese.joins.com/article/j_article.php?aid=247222
■韓国徴用被害を無視した日本企業、中国では年内に基金設立を推進 (11/5, ハンギョレ)
http://japan.hani.co.kr/arti/international/32029.html
■「中国には賠償、韓国には憤怒」強制徴用問題、日本の対応はなぜ違う? (11/2, レコードチャイナ)
https://www.recordchina.co.jp/b657935-s0-c10-d0058.html

 ちなみに、以下は慰安婦問題関連の報道ですが、登場する小和田氏はICJ判事として調査捕鯨訴訟にも携わっています。

■日韓請求権協定締結時に外務省 (2013/8/7, 赤旗)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-08-07/2013080701_04_1.html

 同「解説」は、「何が『紛争』に当たるか」について、一方の当事国が「ある問題について明らかに対立する見解を持するという事態が生じたとき」と明記。また、紛争の発生時期については「何らの制限も付されていない」とし、「今後、生じることのあるすべての紛争が対象になるべき」だと説明しています。
 そのうえで、日韓間で紛争が生じた場合は、「まず外交上の経路を通じて解決するため、可能なすべての努力を試みなければならないことはいうまでもない」と指摘しています。(引用)

 韓国文政権の方針がまだはっきりしませんが、今後どのような対応を取ると考えられるでしょうか? まずは高齢の被害者への人道的配慮を優先すべく、当該企業に日韓両政府も加わる形での基金による解決を目指そうとするでしょうが、それでもなお日本政府が強硬に突っぱね、6日の産経記事どおりICJ提訴に踏み切ったとしたら? 
 実際、中国の強制徴用被害に対しては、上掲リンクのとおり西松建設・三菱マテリアル等の加害企業が和解金を支払ったり、基金の設立を進めています。強制徴用問題におけるダブスタは橋下氏から赤旗や韓国紙まで指摘しているとおり。ことは人権、ウシやカンガルーとクジラを比べるのとはわけが違うと思いますけどね。アイヌサケ漁問題に対する森下丈二前IWC議長のダブスタ容認発言ではありませんが、ヒトのダブスタはOKとする産経や反反捕鯨ネトウヨの心理は筆者には理解できかねます。
 後は2つに1つ。外務省筋の見立てのとおり、応訴しないか。あるいは、勝てる見込みが十分高いと見て応訴するか。
 どちらを選択した場合にも、2014年の日本ICJ敗訴は相当なインパクトがあります。
 筆者自身も、韓国政府が応訴しない可能性もある程度高いのではないかと思っています。理由のひとつは、たとえ勝算が十分があるとしても裁判に絶対はないこと。もうひとつは、被害者にもう時間的猶予が残されていないのにズルズルと裁判を長引かせるのは──まず日韓請求権協定に基づく仲裁手続が先行するはずですし、物別れに終わってからICJ提訴、審理に時間を割くことになるでしょうから──人道的見地から賢明とはいえないという理由。その場合、韓国政府自身が被害者に一定の補償をする泣き寝入りの形にはなるでしょうが。
 そして、もう1つ。たとえ日本のICJ提訴を無視した場合でも、国際社会における韓国のイメージが傷つく恐れはないから。これは応訴しないことによるデメリットがない(日本企業に責任を取らせることができない点を除き)という意味ですが。
 一体なぜ、産経や同紙シンパの外務省幹部が説くように「韓国の異常性を世界に知らしめる」のではなく、「日本の異常性が世界に知らしめられる」ことになってしまうのでしょう?
 もう説明は要りませんよね。筆者及び識者がツイートしたとおり。
 とはいえ、補足しておきましょう。

 ICJで裁判を開くには原則として紛争当事国の同意が必要で、手続きには(1)相手国の同意を経て共同付託する(2)単独で提訴した上で相手国の同意を得る−という2つの方法がある。政府は韓国から事前に同意を得るのは難しいことから単独提訴に踏み切る。
 その場合も韓国の同意は得られないとみられ、裁判自体は成立しない可能性が高い。だが、韓国に同意しない理由を説明する義務が発生するため、政府は「韓国の異常性を世界に知らしめることができる」と判断した。(引用〜C)

 上掲はリンクした11月6日の産経記事に書かれているICJ提訴の流れ。夕刊フジに至っては見出しで「説明義務あり」とまで言い切っちゃってますが、まったくのデタラメです。10月30日の記事は原川貴郎記者の署名がありますが、こちらの記事は無署名。何も勉強せずに適当なこと書いて給料もらえるんだから産経所属記者は楽でいいですねぇ。外務省内のシンパが吹聴したとしたら、その御仁もおそろしく無能ですが。
 ICJで裁判を開くには、「1ヶ国以上」がICJに付託することが必要。逆に言えば、一方の当事国が相手国の同意なしに勝手に訴えてもICJが妥当と判断すれば受理されます(強制管轄権受諾国同士の場合)。

第53条 1.一方の当事者が出廷せず、又はその事件の防禦をしない場合には、他方の当事者は、自己の請求に有利に裁判するように裁判所に要請することができる。(引用)

■国際司法裁判所規程|国際連合広報センター
http://www.unic.or.jp/info/un/un_organization/icj/statute/

 実際の手続は3つ。
(1)特別の合意(紛争当事国同士による共同付託)
(2)条約の(管轄権)条項
(3)一方的宣言(強制管轄権受諾国同士の場合)

■国際司法裁判所(ICJ)-よくある質問- 5 . なぜ国家間の紛争のなかで、ICJで取り扱われないものがあるのですか?|国際連合広報センター
http://www.unic.or.jp/info/un/un_organization/icj/faq/#a5

 日韓請求権協定は紛争の解決を仲裁委員会に委ねており、ICJの管轄権条項は含まれていないため、(2)はなし。竹島問題でネトウヨ方面にも知られているとおり、韓国は強制(義務的)管轄権を受け入れていないため、(3)もなし。つまり、ICJでの裁判が成立するのは韓国政府が同意する(1)の場合のみ。
 産経記事にある「同意しない理由を説明する義務」なんてものは、国際法規上は存在しないのです。
 なお、上掲ICJ規定53条には「その事件の防禦」とありますが、これは先決的抗弁等の形でICJで審理されるべき事案ではないと受理を拒否するよう申請するパターン。
 この先決的抗弁に関しては、ICJ調査捕鯨訴訟の判決が出る半年前に筆者が公開した過去記事で詳細に解説しています。

■ICJ調査捕鯨訴訟で日本は負ける
http://kkneko.sblo.jp/article/70305216.html
■Japan will lose the legal suit on of whaling in the Antarctic at the ICJ
https://www.kkneko.com/english/icj.htm

 お読みいただければわかるでしょうが、日本は当時強制管轄権をほぼ無条件で受諾していたため、「同意するか、あるいはICJが受理すべきでないとする妥当な理由を説明する義務」を負っていたわけですが、この先決的抗弁を使わず「いったん同意しておきながら、裁判の中で同意を拒むみっともない説明」をしてしまったため、判決が出る前から「異常性を世界に知らしめ」てしまったわけです。
 さらにそのうえで、調査捕鯨の国際法違反が確定した1年半後、看板をすげ替えた新たな調査捕鯨計画をぶち上げ、再びICJで違法性を追及されるのを回避すべく、受諾宣言を書き換えてしまったのです。海洋生物資源に関しては国連/ICJの管轄権を受け入れない、と。韓国等とまったく同じ立場。
 いや、もっとはるかに悪質ですね。裁判で認定された違法行為を繰り返すため、わざわざ受諾宣言を書き換えたんだから。

■とことん卑屈でみっともない捕鯨ニッポン、国際裁判に負けて逃げる
http://kkneko.sblo.jp/article/166553124.html

 拙記事中で実際に海外から巻き起こった大ブーイングと合わせて解説しているとおり、この時点で日本政府は自らの異常性を間違いなく世界に知らしめていたのが事実なのです。
 今回の徴用工判決問題に関して、韓国政府は「同意しない理由を説明」する必要は何もないわけですが、ICJ、あるいは国際社会に対して淡々と一言言明することはできるでしょう。
 日本が調査捕鯨に関してICJの管轄権を受け入れていないのと同様、韓国には応訴する義務はありません」と。
 被害者の人権救済の観点から国際法を従来と異なる視点で解釈する韓国政府と、南極産美味い刺身≠フために国際法に基づく秩序をぶち壊した日本と、一体どちらが異常だと国際社会が判断するかは、自明のことだと思えます。上掲真田氏らが指摘するとおり。純粋に国際法の見地からみても、少なくとも海外の識者は「どっちもどっちだね」という判断をするに違いありません。産経やネトウヨが「それとこれとは話が別だ!」と吹き上がったら、やはり日本の異常性の方が圧倒的に際立つことになるでしょうが。
 「度重なる韓国の不誠実な対応についてもアピール」(引用〜@)したところで(「戦略的放置」と上から目線の一方で海外に必死に媚びるのは、それだけで相当みっともない気がしますが)、調査捕鯨裁判における一連の対応で、国際法・国際協調をとことん軽視する国として日本の信用はすでに地に落ちています。「韓国の方が日本よりクジラを殺している」というデマをばらまくトンデモ竜田揚プロパガンダ映画の海外上映に対する予算計上じゃありませんが、下手すりゃ火に油を注ぐだけでしょう。
 日本企業に賠償金を支払わせることはかなわないとはいえ、結局国際裁判には韓国が実質戦わずして勝ったも同然ということに。
 では、韓国が応訴した場合は? 徴用工問題と直接関係はないものの、やはり真田氏が指摘するとおり「あんた判決事実上守ってないよね」と足元を見られる可能性はあるでしょう。また、人権の観点のみならず、自らの国際法違反を棚に上げたまま「国際ルール違反といえる行為は枚挙にいとまが」(引用〜C)と一方的に韓国を非難する日本の矛盾に満ちた独善的態度ゆえに、ギャラリーはほとんど韓国の味方で占められることになりかねません。まさか提出資料や口頭弁論でそんな産経ばりの主張を展開するほど外務省は愚かではないでしょうが。
 もっとも、ICJの場で正面から争った場合、よしんば韓国側が勝ってしまったりすれば、政権当事者を含む日本の保守層が憤懣のあまり完全に壊れてしまいそうです。そうなると、北朝鮮の核問題等を抱える中、両国関係に深刻な亀裂を生みそうですし、在日韓国人の方々の身の安全にも差し障りかねません。そういった意味でも、韓国政府としては応訴しない可能性が若干高いのではないかと思えます。ほかでもない日本に対する配慮≠ゥら。
 とはいえ、調査捕鯨訴訟でほぼ全面敗訴したからといって、ネトウヨ連中の心象が悪化した程度で、別に日豪関係にヒビが入ったわけではありません。それどころか、つい先日安倍首相がダーウィンを訪問、安全保障面での協調をはじめ良好な関係を築けているのです。相手が韓国だからといって、それができないはずはありません。国民のほんの一部にすぎないネトウヨや政府部内の産経シンパがいくら感情的に韓国を毛嫌いしているからといって。違うのですか、安倍首相? 河野外相?
 応訴するしないいずれの対応を取るにせよ、韓国側はきっとこのクジラカードを使ってくるでしょう。以下の拙記事で解説していますが、元産経のジャーナリスト・木村太郎氏が「傍聴席に陣取った韓国大使」として紹介しているとおり、韓国政府は日本政府の国際訴訟対応のまずさをしっかりウォッチしていたのですから。

■元産経木村正人氏もやっぱりトホホ反反捕鯨記者
http://kkneko.sblo.jp/article/73531621.html
■とことん卑屈でみっともない捕鯨ニッポン、国際裁判に負けて逃げる(再掲)
http://kkneko.sblo.jp/article/166553124.html
■安倍政権が総力戦で臨んだクジラ裁判の行方 ('13/8/26,ヤフーニュース)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kimuramasato/20130826-00027574/

 日本政府/企業は戦時中の振る舞いそれ自体を真剣に反省し誠実に対応すべきですし、ヒトの権利について日本人あるいは中国人と韓国人との間に線を引くことはあってはなりません。それこそ、ジゾクテキリヨウなどよりはるかに重要な原理原則のはずです。
 とはいえ、本川一善氏や森下氏をはじめとする歴代の水産官僚、日本捕鯨協会&共同船舶、捕鯨族議員らが、国際法を遵守するという国家として貫くべき道理を捻じ曲げるまねさえしなければ、日本の受けるダメージはもう少し小さなものとなっていたでしょうにね・・。

 余談ですが、以下は韓国ではなく日本が国際的イメージダウンを強いられる、産経や外務省幹部(?)の想定と逆のパターンについての考察。日本が狡い手口で国際裁判から逃げたため、日本の対外イメージはもう落ちるとこまで落ちちゃいましたけど。

■捕鯨ニッポンが最悪のドツボにはまる可能性
http://kkneko.sblo.jp/article/93046598.html

 ところで、河野外相の「あらゆる手段を取る用意がある」、菅官房長官の「あらゆる選択肢を視野に」って、どこかで聞いたことがあると思いませんか?
 そう、谷合農水副大臣がIWCブラジル総会の最終日にぶった中途半端な堂々退場演説あらゆるオプションを精査せざるを得ない」

■「さらばIWC! 捕鯨ニッポン堂々退場ス」!? 江島議員発言の真意は?
http://kkneko.sblo.jp/article/184709374.html

 先月には水産紙等で自民党捕鯨議連が国際捕鯨委員会(IWC)脱退の方針を「固めた」かのように報じられましたが、調査捕鯨利権関係団体の抵抗もあり不透明になっている模様。自民党議連・水産庁は年末に方針を示す旨明らかにしていますが、蓋を開ければ「なあんだ、またハッタリか」で終わってしまうかもしれません。
 徴用工判決についても、韓国大法院判決について、また提訴した場合のICJの判断について、事前に分析することはいくらでも可能だったはず。あるいは、こちらも「薮蛇になりかねない」と見送られ、河野外相の勇ましい発言もいつのまにか「聞かなかったことにしてくれ」ということになるやもしれませんね・・。

 日本の捕鯨外交の異常さには、昨今の日本の外交全体の歪みと稚拙さが端的に表れているといえます。国際交渉の中で議論を主導したわけでも、具体的成果があがったわけでもないのに、御用メディアが勝手に持ち上げてくれるため、目立つのは内向きのパフォーマンスばかり。居丈高で独善的な姿勢では捕鯨外交が突出していますが、それ故に返ってさまざまな矛盾が露呈する形になっています。存在感を示せているのは、漁業・野生動物関連国際会議でのヒール≠チぷりだけ。
 公明党谷合氏や自民党江島氏ら捕鯨族議員は、自分たちがIWCでの「共存」を訴えたのにあたかも反捕鯨国のせいで失敗したかのように主張しています。しかし、日本提案の中身は「共存」とは程遠く、IWCでは仲良しのハズの韓国やロシアにも棄権されてしまった代物。
 橋渡し*を自認しながらまったくその役割を果たせていないのは、核廃絶の文脈でも、貿易ルールの文脈でも同じ。
 唯一の被爆国として核廃絶こそ国民の悲願であり、一方では核大国米国と強固な安保同盟関係にある日本として、双方を取り持つことはまったくできていません。国連軍縮総会で決議案を出しても、核保有国には冷たくあしらわれ、核兵器禁止条約加盟国からもクレームがつく始末。捕鯨外交で太地町や下関市を手厚くバックアップするくせ、広島市や長崎市をサポートしようとはしませんでした。
 自国の産業界にとっても一大事でありながら、米中の橋渡しにも失敗し、APECは宣言を出せず。NHKや産経等の国内メディアはまるで中国習近平主席と「握手した」ことがすばらしい外交成果であったかのように誉めそやしていますが。
 対韓国とは対照的におもねってばかりの対米・対露外交もまた然り。
 米国ペンス副大統領が「FTA」とツイートで明言しているにもかかわらず、日本政府は「FTAじゃない」と強調するばかり。食糧危機になったら何一つ役に立たない捕鯨推進の口実に食糧安全保障を掲げながら、一次産業を衰退させ自給率を下げる方向へとまっしぐら。
 安倍首相は露プーチン大統領とのジョーク外交≠継続中。やはり提灯メディアは安倍外交の成果を謳っていますが、二島先行返還もプーチン氏本人にはその気なし。欧米の経済制裁対象になっているにもかかわらず、その彼の側近が経営する国営石油会社に安倍氏は国民の年金を貢ぐ気でいるとの一部報道も。
 ちなみに、北方領土周辺海域では日本は調査捕鯨を実施していませんが、科学的根拠は何もなし。中国と韓国の徴用工への対処方針と同じく、豪州南極海サンクチュアリとのダブスタの謗りは免れません。
 海洋プラスチックごみ対策でも他の先進国に周回遅れ。サンマをはじめとする国際漁業資源管理でも、日本はリーダーシップをとれず。
 そんなのばっかり。
 自分たちがICJでボロ負けした事実をコロッと忘れ、ICJ判決に続きワシントン条約常設委員会でも2回目の国際法違反認定を受けた事実も眼中になく、「韓国の異常性を世界に知らしめてやるのだ」と胸を張れてしまうのは、もはや深刻な社会病理現象といったほうがいいでしょう。
 いい加減日本スゴイ病≠治療し、韓国や反捕鯨国を見下す前に、自分たちの至らなさと素直に、謙虚に向き合うことこそ、いま私たちに求められているのではないでしょうか──?
posted by カメクジラネコ at 16:30| Comment(1) | TrackBack(0) | 社会科学系