2018年09月19日

税金でブラジルまで出かけて無能ぶりを晒した捕鯨族議員は惨敗の責任を取れ

 9月10日〜14日にかけて、ブラジル・フロリアノポリスで国際捕鯨委員会(IWC)第67回総会が開かれました。
 西日本と北海道が台風・地震による大きな被害に見舞われたり、テニスや自民党総裁選の話題にかき消されたこともあり、マスコミの扱いも一般市民の関心も低調。それ以上に、「もうシーシェパードとのプロレスには飽きただよ」という方が多かったのでしょうが。捕鯨の国際会議に対する無関心ぶりは、閉鎖した犬吠埼マリンパークに1頭取り残されたイルカのハニーに、全国的に大きな注目が集まったこととも対照的です。筆者としてはやや複雑な心境。
 今回の日本が出したパッケージ提案は、国際捕鯨取締条約(ICRW)そのものの改訂まで視野に入れた、過去に提出された前例のない非常に大胆なもので、本来であれば外交問題としても大きな関心を呼んでよかったはずなのですが・・。
 5日にわたる協議の模様はユーチューブで生中継されました。が……地球の真裏の現地とは12時間時差のある日本では深夜にあたるとはいえ、ライブでの視聴数も伸びず、閑散とした有様。
 今でも再生できますので、捕鯨をめぐる国際会議の場で実際にどのような協議が行われたかに興味がある方は、ぜひチェックしてください。


 海外の一般市民にしてみれば、商業捕鯨モラトリアムの採択、そして国際司法裁判所(ICJ)による日本の南極海調査捕鯨違法判決で、もう蹴りがついた話。海の野生動物たちがプラスチック汚染や気候変動など深刻な脅威に直面する中、そちらの方で具体的な取組を政府・国際機関に求めることが優先されるのはやむをえないかもしれません。「まだグダグダやってんの?」「日本はほんとにどうしようもないね」と白い目で見られ続けるにしろ。
 そんな中、非常にうれしい動きもありました。捕鯨支持国である西アフリカのガーナで野生生物保護に積極的に取り組んでいる市民団体が、政府に対して南大西洋サンクチュアリ(SAWS)提案に賛成し日本提案に反対するよう要請し、現地のメディアもそのことをきちんと報道してくれたのです。

■Ghana Wildlife Society Urges Government Officials To Vote In Favour Of SAWS (8/31, MODERN GHANA)
https://www.modernghana.com/news/879046/ghana-wildlife-society-urges-government-officials-to-vote-in.html
■Our Whales and Dolphins in Danger! | ガーナ・ワイルドライフ・ソサイエティ
https://www.blog.ghanawildlifesociety.org/our-whales-and-dolphins-in-danger/

 ガーナは外務省の捕鯨セミナーを受けて2009年に加盟。同年度のODAに水産ODAは含まれないものの、国道改修計画約87億円他しめて140億円超、前年度の約15億円、前々年度の約36億円から桁違いに増額されています。これだけ大盤振る舞いするから「ひとつIWCの方もヨロシク」と頼まれたのでしょう。対日貿易では魚介類が主要な輸出入品目に入っていますが、輸出は絶滅危惧種(VU)のメバチなど大西洋のマグロ類中心、輸入では日本が乱獲の果てに小型化し養殖餌としか売れなくなったサバを東南アジアの代替市場として引き取っている状況。たいしたジゾクテキリヨウ同盟関係もあったものです。
 そんなガーナでの現地NGOの活躍ぶりは何とも頼もしい限り。ぜひガボンを見習い、日本のODAマネーの呪縛≠ゥら解き放たれてほしいもの。と同時に、票を買い漁っている当事国に住む国民としては、肩身が狭い思いに駆られますが。
 筆者としても一日本人として、ICJ判決以降強まっている捕鯨サークルおよび応援団による悪質な歴史修正デマ≠ノ対抗すべく、今総会に合わせて英語版のコンテンツを用意しました。合わせて日本語のコンテンツの方もヨロシクm(_ _)m

■Historical transition of Japanese whale meat diet
https://www.kkneko.com/english/history.htm
■Is whale meat a savior to save humankind from the food crisis?
https://www.kkneko.com/english/foodsecurity.htm
■日本の鯨肉食の歴史的変遷
https://www.kkneko.com/rekishi.htm
■捕鯨推進は日本の外交プライオリティbP!? (6)セントビンセント・グレナディーンのケース
https://www.kkneko.com/oda6.htm
■捕鯨カルチャーDB
https://www.kkneko.com/culturedb.htm

 会議の経過と日本提案、IWC脱退論の詳細については、下掲のお馴染み早大客員准教授真田氏の解説をご参照。

■国際捕鯨委員会第67回会合と日本提案|真田康弘の地球環境・海洋・漁業問題ブログ
https://y-sanada.blog.so-net.ne.jp/2018-09-15

 開催場所となったフロリアノポリスは国際的に有名なリゾート地で、その目玉のひとつが冬に繁殖に訪れるミナミセミクジラを中心とするホエールウォッチング。NHKも会期直前に紹介していましたが。会期中もそのミナミセミクジラのブリーチがホテルから間近に見られたとのことで、NGO関係者がSNSに写真をアップしていました。市民の環境意識も非常に高く、クジラたちに毎年来てもらえるように(目当てで来た観光客にも満足してもらえるように)、浜辺や海をクリーンに維持しているそうです。
 今回ホスト国のブラジルは、そんな「身近な野生動物・クジラとともに生きる町」にふさわしい宣言をまとめ、各国の理解を得るべく尽力し、念願かなって見事可決成立させることができました。そのフロリアノポリス宣言の和訳を鯨類学通の学生さんがまとめてくれました。どんな内容か、ぜひ皆さんも確かめてください。

■2018年度IWC総会 「フロリアノポリス宣言」の和訳|迷子のオガワコマッコウの放浪日記

 日本が脱退した場合、現行の調査捕鯨および公海での商業捕鯨が事実上不可能になることについては、毎日(捕鯨擁護より)と朝日(ほぼ中立)が報じています。

■政府与党に脱退論、実現にはリスクも IWC、商業捕鯨再開案を否決 (9/16,朝日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13681032.html
■日本手詰まり IWC脱退、慎重論強く (9/17,毎日)
https://mainichi.jp/articles/20180917/k00/00m/020/074000c

 拙ブログでは、今回の総会で採決が行われた5つの決議の星取表≠ご覧に入れましょう。
iwc67votej.png
 結論から言うと、日本の惨敗・・・・。
 対戦成績で行くと、先住民生存捕鯨改訂捕獲枠を除き、1勝3敗の形。
 1勝は可決に3/4以上の得票が必要なSAWSをブロックしたからですが、実は過去20年間提出され続けてきたSAWS提案は、日本側の反対意見を汲む形で科学的にもブラッシュアップされたこともあり、年々得票を延ばしています。前回のIWC66では賛成38票だったのが今回は39票に。まあ、反対も1票増えましたし、賛成派としてはもう後数票欲しかったところですけど。
 SAWSも含め、得票差は13票から17票で、日本陣営はいずれも10票以上水を開けられています。
 かつて2006年には今回のフロリアノポリス宣言のまさに対極にあたる、モラトリアムを不要とするセントキッツ宣言が可決されましたが、わずか1票差でギリギリ。せっせとODAで票を集めた全盛期に比べても、捕鯨支持勢力は明らかに減衰しているのです。日本は今総会に向けてリベリアやサントメプリンシペを新たに陣営に加えたものの、援助外交頼みでは勢力を維持することも困難になっているのが実情です。
 そして、日本側が代表団の説明や報道で「反捕鯨国側に配慮」「共存」と謳い、コンセンサスを目指して反対陣営の説得、落としどころを見つける作業を粘り強く続けていたハズ≠フパッケージ提案は、反対が41票と5つの決議のうちダントツで最多。SAWSやフロリアノポリス宣言に対して棄権ないし不参加だった1、2カ国も明確に反対の意思を表示したことになります。
 つまり、一番のボロ負け
 ちなみに、不在の1票、モナコはたまたま呼ばれたときちょっと席を外していたようで、取り直したはずなのですが採決には反映されず。本当なら反対は42票になるはずでした。
 国民の無関心をよそに、日本側は国会議員7名を含む総勢62名、過去最大級の万全の体制で今総会に臨んだのです。それでいながらこの体たらく。
 特に大きいのは、捕鯨支持国であるはずの韓国ロシアが、日本のパッケージ提案に対し棄権に回ったこと
 採決後、ロシア代表は投票態度について「(鯨類の保全の必要性を理解するとともに)持続的利用を支持しているが、対立する意見をまとめてコンセンサスを得るには時間が足りなかったし、これ以上の分断は避けるべきとの趣旨説明をしました。
 本心から共存のためのコンセンサスを目指すのであれば、見込みがないとわかった時点で取り下げ、次回までに相手方に受け入れられなかったポイントを検証したうえで練り直し、再提案を目指すのが合理的な態度というものでしょう。
 ロシアの指摘は実にもっともであり、棄権したのは合理的な判断だったといえます。日本と同じ陣営にありながら、日本の非を諌め、反捕鯨国に対する節度と礼儀を示すことで、捕鯨支持陣営にポイントを取り戻す役割を果たしたのです。外交の手さばきの巧みさがこういうところに表れていますね。
 翻って日本はといえば、パッケージ案を最初から「次はもう提案しない」と断ったうえで提出。あたかも「我々が譲歩≠キるのは今回限りだ、次はもうないぞ」と脅すかの如く。しかも、真田氏の解説にあるとおり、条約改訂を含むきわめて重要な内容でありながら、提示されたのはたった3ヵ月前のこと。代表団全員にロシアの爪の垢を呑ませたいもの。
 ロシアの発言はまた、日本の提案が「共存」「配慮」との言葉とは裏腹に分断を煽るだけだとはっきりと指し示すものであり、提案国の日本に限ってはロシアを説得できなかった所為で失点をさらに重ねてしまったといえます。自業自得ですが。
 ロシアとともに日本の隣国である韓国は発言しませんでしたが、やはりロシアと同じ動機と考えていいでしょう。
 ただし、日韓両国の関係は日中、日露と異なり政治的にかなり冷え切っている中、IWCにおいては比較的連携が取れていると言われていました。にもかかわらず、棄権されるという結果に。
 日本提案は、友好的なハズ≠フ捕鯨支持国から同調を得られなかったわけです。採択に付してしまったことで、わざわざ℃^成票を減らしたのです。それも、中身が受け入れられなかったわけではなく、「コンセンサスが無理な以上、やめた方がいいんじゃない?」という、ある意味非常に消極的な動機で。
 カリブ、大洋州、アジア、アフリカの捕鯨支持国は、セントビンセント・グレナディーン(SVG)を除いて自ら捕鯨を行う意思はなく、多額の援助を受け取るのと引き換えに日本に右へ倣えするだけの被援助捕鯨支持国。IWCの場では常に日本を「リーダー」と仰ぐ立場。
 日本から援助を受け取らず対等な関係にある捕鯨支持国は、ノルウェー、アイスランド、ロシア、韓国の4カ国。
 つまり、鍵を握る4カ国のうち半分から支持を取り付けることに、日本は失敗したのです。
 4カ国うちノルウェーとアイスランドは日本と並ぶ現近代捕鯨国の三巨頭。異彩を放っているのは、名目上は商業捕鯨でないはずの調査捕鯨を公海、それも赤道を越えた南極まで出張ってやっている日本ですが。両国にとって日本は鯨肉の輸出先市場、お得意様≠ナもあります。
 この2国はモラトリアムを留保しているため、日本提案によって何が変わるわけでもなく、自国にとって直接のメリットはありません。仮に日本が商業捕鯨を再開して鯨肉生産量を増やした場合、輸出が縮小・消失するリスクさえあります。
 それでもなお日本案に同調したのは、むしろ可決する見込みがないとはっきりわかっていたからと推察できます。
 過去には日本とともに最後まで母船式捕鯨を行い、やはり日本とともに悪質な規制違反を犯した事実が発覚したロシアですが、現在はチュコト半島での先住民生存捕鯨しか行っておらず、今回の決議でも無難に3/4票以上を得て捕獲枠が更新されています。
 韓国は混獲によって供給される鯨肉の消費市場が存在する国で、過去に一度調査捕鯨実施を検討し、猛反発を受けて引っ込めた経緯があります。仮にモラトリアムが解除された場合、同一のストックをめぐってわずかな枠を日本と獲り合う競合関係となる可能性もなきにしもあらず。ただ、対象のミンククジラ黄海・東シナ海・日本海系群(Jストック)は混獲による減少が強く疑われており、少なくとも現在申告されている混獲数より大幅に少ない捕獲枠しか設定されず、監査の目も一層厳しくなるはずなので、名乗りを上げれば返って損ということになるでしょう。また、オーストラリアと共同で混獲の実態調査なども進めており、日本のように公海・南極海での大規模な商業捕鯨に進出することも考えられません。
 いわばこの2国は、今回の日本提案によって特段利害が発生しない国。
 言い換えれば、今回の日本提案の意義、コンセンサスが通らず採択になった場合にも賛成票を投じてもらうことの意義を、純粋な外交折衝によって納得してもらう必要があった国です。
 リーダーとしての日本の指図に唯々諾々と恭順する被援助捕鯨支持国と異なり、札束による懐柔策ではない、真の外交手腕が求められる相手。
 今更説明するまでもなく、両国は地理的に日本と近いだけでなく政治・経済面で密接なつながりのある、日本にとってきわめて重要なポジションにある国。ギクシャクしているところもありますが。
 こういうときこそ、まさに国会議員の出番であったはず。
 日本代表団はなぜ、ロシアと韓国の投票態度を確認しなかったのでしょう?
 事前の口裏合わせどころか、まともに意見交換していなかったことが明らかな、あのような発言をロシアにさせてしまったのでしょう?
 特に、「与党代表の一人として商業捕鯨再開に向け努力してきます」(引用〜横山議員のツイート、9/7)と胸を張ってブラジルに乗り込んでいった7人の国会議員たちは一体何をやっていたのでしょう??
 思い起こすのは、IWC本会議最中の12日にウラジオストックで開かれた首脳会談の際、「その場の思いつき」と明言しながら領土問題棚上げ平和条約の締結を進言したプーチン大統領、その場でまともな返答を返すことさえできなかった安倍首相の一幕。両首脳の間に信頼関係などまるで構築できなかったことが赤裸々に暴露された、日本の外交史上に残るであろう屈辱的な大失態。
 安倍首相をあからさまにバカにした態度を取ったプーチン大統領とは違い、ロシアIWCコミッショナーは会議の度に日本の顔を立てる気配り上手な方なのですが、会議の全体を見渡す能力も備えていたことがわかります。
 さらに、最終的には反対に回ったものの、日本提案に対して非常に興味深い発言をした国がありました。それはインド。同国代表は「モラトリアム解除については同意できないが、附表修正の可決のハードルを過半数に下げるのは賛成だと述べたのです。そうすればSAWSも通すことができたのに、と。そもそも日本が1つのパッケージに詰め込んだことに無理があると、インドはズバリ指摘してみせたわけです。それでコンセンサスが得られるわけがないと。
 「共存」を目指す中立・公正な立場で、「反捕鯨国にもメリットがある」と強調するならば、日本が択るべきは次の2つに1つでした。

1.パッケージから一部の鯨種のモラトリアム解除の附表修正を外し、決議要件緩和一本に絞るか、少なくとも別建てにする。
2.パッケージに捕鯨支持側の附表修正案だけでなく、SAWS設立等の反捕鯨国側の附表修正案を含める。

 これができない時点で、「共存」は見せかけにすぎずきわめてエゴイスティックな要求であることはだれが見ても明らかです。
 日本提案をめぐる議論の応酬は会議4日目のことで、審議が翌日に持ち越された後で日本は提案の一部を修正してきました。しかし、その中身は、パッケージの中でモラトリアム解除の附表修正を優先するという、妥協の姿勢とは程遠い、コンセンサスを得るための努力など微塵も感じられないものでした。
 せっかくインドが親切に意見を述べてくれたのに、日本は耳を傾けるどころか、後足で砂をかけるまねで返したわけです。同国が棄権ではなく反対に回ったのは当然のことでしょう。
 そして、今回日本のパッケージ案が鍵を握っていたハズ≠フもう1つの国が米国
 日本国内ではとかく強硬な反捕鯨国という目で一般から見られがちな米国ですが、実は豪州やNZ、EU、今回のホスト国であるブラジルをはじめとする南米諸国に比べると穏当な立場です。少なくとも現在は。理由のひとつは、アラスカで先住民生存捕鯨を行っていること。もうひとつは、日本と強固な政治的同盟関係にあること。あるいは、二国間交渉によってモラトリアムの留保を取り下げさせた所為で返って日本を意固地にさせ、調査捕鯨という形での延命を許したことへの反省もあるかもしれません。そのため、外部専門家を招いた2009年のデソト案和解交渉時には裏方に徹し、オーストラリアと日本の間を取り持とうと尽力しました。
 オバマ前大統領は建前上、日本の調査捕鯨に明確に反対する姿勢を表明していました。しかし、現職のトランプ大統領は地球温暖化陰謀論を鵜呑みにするエコ嫌いで知られており、捕鯨を含む漁業国際交渉を担当する米大気海洋局(NOAA)の予算も大幅に削られる始末。ある意味、日本にとっては米国の譲歩を一番引き出しやすい政権が誕生してくれたといってもいいでしょう。
 以下は上掲した会議後の17日掲載の毎日記事から引用。

反捕鯨国の米国は今回、アラスカ先住民の捕獲枠を6年に1度要求する時期に当たり、日本は「特別扱い」を求める米国の協力に期待。他の反捕鯨国も反対表明をしない消極的支持を取り付けるシナリオを描いた。(引用)

 「」付の表現は、毎日の加藤記者が捕鯨擁護色が強いうえに、森下氏や横山氏同様、先住民政策のグロスタに無理解なことを示すにすぎません。ただ、米国としてはやはりスムーズに改訂を済ませたい意図はあったでしょう。つまり、水産庁がマスコミにちょろっと漏らして期待感を抱かせたように、日本の立場からすれば先住民生存捕鯨枠改訂をカードに米国と取引をしない手はありません。
 実際、2002年の下関総会の折には、まさに今回と同様、先住民生存捕鯨枠の更新のタイミングと重なっていため、日本側はこれを積極的にカードとして利用したのです。
 ただし、そのやり方はあまり褒められたものではありませんでした。当時交渉を仕切っていたのはあのミスター捕鯨問題こと小松正之氏(現東京財団政策研究所上席研究員)。ちなみに、今回総会に出席した江島議員は当時下関市長。自国開催となる下関総会のため、日本は勧奨活動を積極的に推し進めたうえで、米国に対し日本の小型沿岸捕鯨暫定枠とのバーターを要求したのです。協議が物別れに終わったことから、日本側は先住民生存捕鯨枠の改訂を阻止。「米国のダブルスタンダードを示した」とは当のタフネゴシエーター(?)小松氏の弁ですが、これではただのケンカ、外交交渉とは呼べません。一部筋によれば、このとき米国の怒りを買ったことが小松氏の左遷につながったとも言われていますが・・。
 とはいえ、そのようなごり押しの手法に頼らずとも、ちらつかせつつ交渉を有利に運ぶ余地も決してゼロではなかったハズ=B
 それこそ、国会議員の外交の腕の見せ所というものでしょう。
 ところが……蓋を開ければ、先住民捕鯨捕獲枠改訂に日本は素直に賛成票を投じたのに対し、日本パッケージ提案に対して米国はきっぱり反対票を投じたのです。
 国内向けには威勢のいいことを言いながら、一方的に譲歩しっぱなしの安倍政権の不甲斐ない対米・対露外交のパターンをそっくり踏襲する形。
 まあ、過去の小松氏の強攻策が裏目に出た結果、取り付くシマもなかったのかもしれませんが。だとすれば、毎日記者にあんな記事を書かせた水産庁の担当者は相当罪作りと言わざるをえませんね。
 一体、7人の国会議員は、米国に対してきちんと協力を要請したのでしょうか? それとも、「ただ期待しただけ」で、話し合いの場を設けることさえしなかったのでしょうか? 目線を送れば意思が通じるとでも思ったのでしょうか??
 毎日が報じた、日本の思惑とはかけ離れた日米それぞれの投票は、お互いの間にまともな意思疎通がなく、深刻な隔たりがあることを如実に物語っています。族議員たちはボタンのかけ違いに気づいてすらいないのかもしれませんが。
 一方的な片思いの日米関係とは対照的に、大人の外交を示した国があります。それはブラジルとSVG。
 今回の先住民生存捕鯨枠改訂に対しては、ブエノスアイレスグループと呼ばれるラディカルな南米諸国のうち7カ国が反対票を投じています。これらの国々は決して先住民生存捕鯨そのものを否定しているわけではありません。主な反対の理由は、捕獲枠の自動更新と、地域毎に事情も保全状況も異なる4箇所を一括で処理することに対して。中でも一番問題視しているのが、生存捕鯨としての定義上グレーな、同じ中南米のSVGによるザトウクジラ捕鯨。
 本来ブエノスアイレスGを代表するホスト国のブラジルは、それでも今回同附表改訂に棄権票を投じました。一方、捕鯨支持のカリコム5カ国のうち、SVGだけがSAWS提案に対して棄権票を投じました。
 お互い、相手国への配慮もあったことは想像に難くありません。
 国民に対してはさも深謀遠慮≠ェあるかに見せかけながら、その実何も考えていなかった(としか考えられない)という、外交と呼ぶに値しないお粗末ぶりを晒した日本とは雲泥の差。
 以下は真田氏のツイート(日本政府出席者リスト付)。

https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1040545943743946752
参加者リストには日本側62名載っているので、エコノミークラス節約プランで一人40万としても62×40=2480万。議員・大臣・上級官僚はビジネスでしょうから、3000万円かけて地球の裏側で無理筋交渉の挙句バンザイ突撃するみたいです。(;´д`)(引用)

 繰り返しになりますが、一体全体国会議員たちは会期中ブラジルで何をやっていたのでしょう?? 被災地の住民が日常生活を取り戻すのに四苦八苦している中、税金使ってブラジルに遊びに行ってた??
 以下は、出席した国会議員7名のうち4名による現地からの発信。まずは自民党鶴保議員のフェイスブックから。

 自民党捕鯨議連の重鎮3名で仲良く記念写真。明らかに会議のコーヒーブレイクの間に撮ったと思われます。他国との情報交換なり折衝なりに勤しんでいて然るべきだと思いますが・・。
 鶴保氏、江島氏については以下の過去記事をご参照。

■太地を庇って沖縄を脅す捕鯨族議員・鶴保氏のとてつもないダブスタ
http://kkneko.sblo.jp/article/176384491.html
■ちぐはぐ族議員とグルメ好事家官僚が明かした美味い刺身*@のデタラメ
http://kkneko.sblo.jp/article/180420343.html

 で、こちらは公明党の捕鯨族議員・岡本氏、谷合氏、横山氏のツイッター。


 期間中のブラジルからのIWC関連のツイートは岡本氏1回、谷合氏3回、横山氏7回。
 岡本氏は外務政務官、谷合氏は農水副大臣の立場で、岡本氏は初日、谷合氏は初日と最終日にスピーチもしています。
 公明党の3人は、自民党に比べるとまだそれなりに頑張った感があるかもしれませんが・・。
 この中で、現地でのロビイングの模様を伝えているのは族議員レベルの高い横山氏。登場する相手国はカリブ諸国、カメルーン、カンボジア・モンゴル・ラオス、アフリカ大西洋岸諸国、そしてニカラグア。
 いずれも被援助捕鯨支持国です。つまり、リーダー%本に同調することがあらかじめわかっている国々。
 ここでニカラグアについて補足しておきます。まずは以下の横山氏のツイートと拙ツイートにお目通しを。

https://twitter.com/gagomeyokoyama/status/1040293092866379776
IWC4日目。商業捕鯨モラトリアムを継続するフロリアノポリス宣言が採択された。採決後にIWCが機能しないとの意見。このあと、日本の改革案について32か国から意見表明。カンボジア、モンゴル、ラオスのコミッショナーとの昼食懇談では、鯨だけを特別扱いする考えには同意できないとの意見で一致。(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1040552638566195201
この3カ国は外務省の方針で東アジアの中の重点的な援助対象。ラオスは首相訪日時「友好の証にIWC入ってるし、援助ヨロシク」と挨拶、わかりやすい日本の勧奨活動の例として知られる。「右へ倣え」する国々と会食するばかりで、対立陣営と対話する気はないの? 税金でブラジル行く必要あったの??
https://twitter.com/gagomeyokoyama/status/1040571443958960128
IWC最終日。午前中に日本提出の改革案が採決される見通し。昨日は反捕鯨国のニカラグアが「商業を理由に商業捕鯨を一切認めないとする態度は欺瞞」「これがIWC正常化の最後のチャンス」として賛成を表明した。昨日の会議後にアフリカ大西洋沿岸の皆さんと懇談。日本を応援するよと激励されました。(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1040581138241093633
ニカラグアは会議が始まる前から反捕鯨国にあらず。前総会では拠出金未払で不参加。日本の改革案に対して事前に日本の調査捕鯨を支持する(自国はやらないけど)旨の教科書的な回答を出している。捕鯨族議員横山氏のロビイングの結果、会場で考えが変わって反捕鯨から捕鯨支持に変わったわけじゃないよ

 14日の横山氏のツイートは画像がニカラグア代表と会食等のシーンではないことからも、拙引用RTの批判に対する応答と見ていいでしょう。
 ニカラグアは2003年にIWCに加盟、当初は日本の勧奨に応じた捕鯨支持国でしたが、ブラジル等のブエノスアイレスGの説得を受け反捕鯨陣営に鞍替え。その後いったん分担金未払で投票権停止状態に。分担金は納入したものの、近年の総会には参加していませんでした。前回・前々回も欠席。
 上掲拙ツイートのとおり、ニカラグアは7月に公表された日本の改革案に対し寄せられた応答の1つとして、日本を支持する立場を明確に表明していました。会議が始まる前の時点で、すでに引き抜かれていたわけです。
 そして、拙批判に対して横山氏が画像抜きで反論し得たのはこのニカラグアだけだったということになります。
 話を戻しましょう。
 ひょっとして、100%味方とわかっているハズ≠フ国々でも、国会議員7人がかりでランチをともにし、必死の説得工作を続けないと態度を翻される恐れがある、それほどまでに今回の日本提案は心もとない内容だったのでしょうか?
 しかも、東カリブ海諸国にはブラジル総会直前の今年7月に岡本氏自身が足を運び、日本のIWC改革案への支持を要請しているのです。

■岡本外務大臣政務官のグレナダ訪問(結果)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/fsh/page1_000604.html
■Japan lobbying EC countries to support its proposal to resume commercial whaling
http://www.nowgrenada.com/2018/07/japan-lobbying-ec-countries-to-support-its-proposal-to-resume-commercial-whaling/

 なお、SVG首相の接待招請については上掲拙HP解説記事を参照。
 これだけアプローチしているにもかかわらず、まだ自信が持てなかったのでしょうか? カリブの国々が日本を裏切るかもしれないと考えたのでしょうか?
 それ故に、説得の見込みが薄いロシアや韓国、インド、米国などにかまっている余裕がなかったということでしょうか?
 だとすれば、コンセンサスを目指すこと自体、最初からあまりに無謀だったと結論せざるをえません。
 豪州、NZ、EU、ブエノスアイレスGは当初から否定的な立場でした。
 コンセンサスを目指すのであれば、突破口になり得るのは上記以外の第三勢力。すなわちロシアと韓国、インド、米国などを懸命に説得し、日本側についてもらい、中立軸を動かすことが重要だったはずです。
 コンセンサスを断念し採決を選択するにしても、少しでも賛成票を増やすために必要なのは、すでに陣営に取り組んで票を確保しているハズ≠フ相手に念押しを重ねることではなく、賛否が確定していない国々にコンタクトを取ることのはず。
 選挙の際、最初から自党候補に投票することがわかりきっている党員の家に何度も足繁く通うより、無党派層を意識して街頭に立った方が当選の可能性を高める──政治家ならそう考えるハズ≠ナはないのでしょうか。
 しかし、ブラジルまで足を運んだ国会議員たちからは、そのステータスをフルに活かし、鍵を握る国々と膝詰めで談判しようという姿勢がうかがえませんでした。彼らはただ、仲良しクラブで食事と内輪のおしゃべりを愉しんだだけ。
 もう一点、これらの国会議員の渡航が不要だったことを端的に示す発言がありました。
 4日目に日本提案が討議された後、交渉役の水産庁諸貫代表代理は「日本は深夜で東京と話す必要もあるのでこの議題はオープンしてほしい」とコメントしたのです。
 要するに、司令塔は東京にあったわけです。
 この提案がコンセンサスを得られる見込みがないのは、関係者なら最初からわかっていたハズ=B思惑が外れたというより、想定どおりの結果。
 トップといえる外相・農相(実際には裏方の事務次官)に判断を改めて仰ぐ必要のある、想定外の困難な状況に直面したとは到底いえません。
 にもかかわらず、副大臣の谷合氏、政務官の岡本氏とも、現場で判断して物事を決める権限を委譲されてはいなかったのです。ただの飾り。
 現地に派遣された7人の国会議員は、いてもいなくても関係ない下っ端だったということです。
 東京に相談した結果が上掲のあまり意味のない修正案だとすれば、司令塔の程度もたかが知れますが。
 
ビジネスクラスでブラジルまで足を運びながら、ロシアと韓国、インド、米国などを説得しきれなかった、あるいはしようともしなかった国会議員7人公明党:横山信一氏、谷合正明氏、岡本三成氏、自民党:浜田靖一氏、江島潔氏、鶴保庸介氏、国民民主党:徳永エリ氏)は、無能の謗りを免かれませんロシアメディアに「ジョーク外交」とまで揶揄された売国奴首相ほどではないにしろ。

 その他、横山氏の先住民生存捕鯨否定ツイート、豪州代表による日本提案批判発言直後の森下議長の渋面、国内向けには決して言わない諸貫代表代理の「日本は昔は悪ガキだった」発言等々、今回のIWCウォッチングの見所については下掲ツイログでチェックを。セーリングW杯開会式が新江の水で行われ、イルカショーまで披露したために国際セーリング連盟からクレームがついた件も取り上げています。


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