2017年04月12日

広島・長崎より太地・下関が上、非核平和より美味い刺身≠ェ上──壊れた捕鯨ニッポン

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■Ultra double standard of Japan's diplomacy: 100% opposite in nuclear ban and "Favorite sashimi"
http://www.kkneko.com/english/nuclearban.htm

 今回は英語版を先に出しました。
 正直英語が超苦手な筆者ですが、国際司法裁判所(ICJ)でボロ負けして以降、判決全無視と卑劣な受諾宣言書き換え、ガラクタ調査捕鯨NEWREP-Aの強行に同じくNEWREP-NPの拡大宣言、トンデモ捕鯨礼賛映画裏コーヴ≠活用した愛国歴史修正主義者煽動etc.と、捕鯨サークルがなりふりかまわぬ姿勢に転じたこともあり、日本語/英語双方での発信強化を決めた次第です。

■核兵器禁止を目指す初の国連会議 日本の空席には「#wishyouwerehere」(3/29,ライブドアニュース)
http://news.livedoor.com/article/detail/12863111/
■核禁止条約交渉、日本は不参加=「国際社会の分断深める」と軍縮大使−国連 (3/28,時事)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017032800199&g=pol
■核禁止条約、対立を危惧=岸田外相 (3/28,時事)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017032800293&g=pol
■米国連大使、核兵器禁止「現実的でない」 (3/28,BBCジャパン)
http://www.bbc.com/japanese/39414602
■「核兵器禁止」日本は賛同せず 被爆国なのにどうして?【NPT再検討会議】 (2015/5/24)
http://www.huffingtonpost.jp/2015/05/24/npt-ban-nuclear-weapon-humanitarian-pledge_n_7429810.html
■Japan abstains as nuclear arms ban treaty talks start at U.N.(3/28,ジャパンタイムズ)
http://www.japantimes.co.jp/news/2017/03/28/national/japan-abstains-talks-start-u-n-nuclear-arms-ban-treaty/
■世界の核兵器、これだけある|朝日新聞
http://www.asahi.com/special/nuclear_peace/change/

先月国連で開かれた核兵器禁止条約(NWC)締結に向けた国際交渉への参加を日本が蹴ったニュースを見て、たぶん国民の多くが「なんで?」と首をひねったことでしょう。
 広島・長崎の原爆の悲劇は絶対に忘れてはならない、繰り返してはならない歴史として、直接被爆を体験していない世代も含め、私たち日本人の心に刷り込まれています。そのハズです。
 ですから、岸田外相や高見沢国連大使の、(少なくとも拉致被害者家族と同等以上に)心に深い傷を負い続けてきた被爆者の方々にまったく寄り添おうとしない、冷淡で突き放した言い方に対し、国民の感覚との大きなズレを感じたことでしょう。
 世界で最初に核攻撃による甚大な被害を受け、多数の尊い人命を奪われた日本が、核兵器廃絶を外交の最優先課題に据え、非人道的な兵器を認めないという価値観を共有する約110カ国の先頭に立って核のない世界を目指すことは、大変理にかなっています。
 世界中の心あるすべての人々が、きっと日本の姿勢に共感してくれるはずです。オバマ前米国大統領が示してくれたように。
 心を持たないシステムたる国家の場合、話はそう簡単ではありません。しかし、核兵器保有を正当化する大国の代表者は、真実に裏打ちされた日本の主張に対し、歯に物が挟まったような、あるいは冷淡で突き放した利己的かつ非人間的な言い訳≠オかできないはずです。彼らは被爆者の目をまっすぐに見ることができないはずです。そして、そのことは間違いなく世界に伝わります。
 日本が核兵器禁止条約での議論をリードすれば、確実に目標に一歩近づいたことでしょう。なんでもかんでも手っ取り早く武力で解決を図ろうとする、文明の後退を匂わせる昨今の世界情勢に、一石を投じることができたでしょう。
 世界における日本の存在感も格段に大きくなったはずです。TV局に厨二病的日本スゴイ番組をせっせと作らせるより。一過性のどんちゃん騒ぎにすぎない五輪なんか開くより。武器の流入を黙認しながら情勢が悪化するとそそくさと撤退する超中途半端なPKO派遣なんかより。
 ところが、残念なことに、日本政府はまったく逆の選択をしました。核保有国のお先棒を担ぎ、彼らに格好の口実を与えました。自称唯一の被爆国である日本が、具体的な核廃絶への道筋を何一つ示さないまま、「(核兵器禁止条約交渉を)現実的・効果的でないと平然と言ってのけちゃったんですから。これで、本来なら後ろめたさでいっぱいになるはずの言い逃れの文句を、彼らも安心して堂々と使えるわけです。
 参加した被爆者や核廃絶を求める世界中の市民の間からなんと情けない国だろうと失望の深いため息が聞こえてくるのは、あまりにも当然のことでしょう。
 そもそも日本が米国等の核保有国とタッグを組みながら推している核不拡散条約(NPT)は、既存の核大国を別格扱いする身も蓋もない差別的な不平等条約です。イスラエルやインド、パキスタンは参加せず、問題児の北朝鮮は脱退し、2010年代からは世界の核兵器の数はほぼ横ばいと、実効的な成果を挙げてきたとはとてもいえません。それ以前に今世紀に入ってからは、削減はもともと非合理に量産した米ロが主で、他の核保有国は変化なし、新興核保有国の登場まで許したのが実情です。核保有国には「誠実に核軍縮交渉を行う」ことが義務づけられていたにもかかわらず、ちっとも誠実に履行などされませんでした。一方、質量的に大国と対抗できる軍備を揃える技術も金もない国にとって、核はむしろより手軽な脅しのカードに使えるオプションとなってしまいました。だからこそ、業を煮やした世界中の非核保有国とNGOがNWCの制定に向けて準備を進めてきたわけです。
 しかし、そのように停滞した状況を打開する行動を一切とることなく、唯一の被爆国を謳いながら指をくわえてながめてきたに等しかったのが日本でした。そんな日本の言い訳は矛盾だらけで、ひたすら見苦しいの一言に尽きます。
 気候変動枠組条約にしろ、生物多様性条約にしろ、核以外の非人道的な大量殺傷兵器禁止条約にしろ、よその国の顔色ばかりうかがっていたら何も進みやしないのは、あらゆる国際条約でいえることです。対人地雷禁止条約とクラスター弾禁止条約には、米ロ等核大国とも重複する肝腎の保有国が批准していませんが、日本は加わっています。NWCに対する日本の態度は、地雷敷設で多大な人的被害を被ったカンボジアがオタワ条約に参加しないのに等しいものです。あるいは、後にパリ協定につながり、後ろ向きだった米国や豪州も参加させることにつながった京都議定書を最初から「無駄だ」と一蹴するのに等しいことです。
 破綻を前提とするのでない限り、できるだけ多くの国々が参加する筋の通った法的枠組を作ったうえで、消極的な国に方針の転換を粘り強く促すことこそ、現実的で効果的な唯一の道といえるでしょう。
 さて、筆者はもちろん、国に一刻も早く核廃絶を達成してほしい一日本人として、次の国政選挙では景気よりNWC早期加盟の是非を候補者・政党を選択する際の重要な基準に据えるつもりでいます。

 ただ、一連のニュース、特に日本政府担当者の発言を聞いていて、憤りとともに非常に強く感じたことがあります。
 それは、モヤモヤ感・とてつもない違和感
 というのも、別の分野の国際交渉をウォッチしてきた者の目には、日本政府のあまりにも煮え切らない卑屈な態度が、まるで別人格≠フように映ったのです。英語版記事では「ジキルとハイド」という表現を使いましたが。
 実際のところ、とある国際交渉の場において、日本政府はまるっきり逆の態度を取り続けてきました。すでに拙HP、ブログにお越しいただいたことのある皆さんには、何のことかもうおわかりですよね?
 原爆については日本は被害者の立場(太平洋戦争ではむしろ加害者の側面が大きいにしろ)ですが、商業捕鯨の乱獲・規制違反・密漁密輸の責任については日本はノルウェーに次ぐトップ2の加害者の立場です。南極海の荒廃をもたらし、多数の野生動物の命を奪った日本が、捕鯨推進を外交の最優先課題に据え、ジゾクテキリヨウという価値観を共有(?)する30カ国余りの捕鯨支持国の先頭に立って商業捕鯨再開を目指す──それが捕鯨外交なのです。
 非核平和ではよその国に遠慮しまくっている日本が、美味い刺身≠ノなると態度を一変させることができちゃっているのです。
 国際捕鯨委員会(IWC)の議論で、日本側のトップとして交渉にあたった前/現ミスター捕鯨問題≠スる小松正之氏と森下丈二氏も、≪原理原則≫を前面に押し出して一歩も譲歩する姿勢を示しませんでした。小松氏は国際法違反認定されたJARPAUの拡大路線とODA票買いの音頭を取り、森下氏は2009年の外部専門家を交えた和解協議だったデソト交渉を破談させました。まあ、「海のゴキブリ」発言で有名な小松氏はぶち上げ型、森下氏はサークルの核である日本捕鯨協会とは一線を画する斜めの主張がむしろ持ち味で、お二人のカラーはだいぶ異なりますけど。森下氏の方は最近微妙なニュアンスの変化がうかがえるものの、残念ながら極端なジゾクテキリヨウ原理主義から脱することはできていません。
 永田町の捕鯨族議員は何かと言えば「脱退しろ!」と拳を突き上げ(しかも鯨肉カレーなんぞ頬張りながら)、担当者も会議の場で脱退カードをこれ見よがしにちらつかせ、自らが決議を拒むことを正当化してきました。NWC参加問題での広島・長崎への仕打ちとは対照的に、IWCでは太地と二人三脚でぴったりと寄り添い、南極の自然を勝手に1地方自治体・特定漁協にとっての外堀≠ノしてしまいました。
極めつけは2014年のICJ判決に対する日本の不誠実かつ不遜極まりない態度。当時、各新聞も社説で「調査を名目にするのはやっぱりおかしい。南極海からはもう撤退した方が現実的≠ナはないか」とまともな国民の多くの声を代弁しました。しかし、当の捕鯨サークルは馬耳東風と聞き流したわけです。
 ヤッツケ・デタラメ新調査捕鯨の強行と国連受諾宣言書き換えは、岸田外相や高見沢国連大使の言うところの「対立・分断を深める」行為以外の何物でもありません。公海での違法な調査捕鯨に固執し続けるのは反発を強めるばかりで逆効果であり、日本の国是「商業捕鯨(沿岸捕鯨)再開」すらもますます遠ざける悪手といわざるをえません。
 実際のところ、捕鯨文脈における日本の独善的な行動は北朝鮮と瓜二つ。この辺はブログで何度も指摘しているところ。
■北は人工衛星という名のミサイル、日本は調査捕鯨という名の商業捕鯨
http://kkneko.sblo.jp/article/60752017.html
■ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html
■IWC決議違反の調査捕鯨は国連決議違反の北朝鮮のミサイルと同じ!
http://kkneko.sblo.jp/article/96646061.html

 もっとも、その北朝鮮はICJ判決後に日本の国際法違反の調査捕鯨を「犯罪行為」と強く非難しています。

■北朝鮮 日本の捕鯨を「犯罪行為」と批判 ('15/11/2, 聯合ニュース)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2015/11/02/0300000000AJP20151102004500882.HTML

 自分のことを棚に上げて? そりゃ、どんぴしゃブーメランでしょうに・・。
 そう、国際社会の目から見れば「どっちもどっち」。むしろ、たかが美味い刺身≠ナ国際法違反の悪いお手本を世界に示してしまう日本の方が、ずっと奇異に映るでしょうね。
 要するに、NWCとIWCの二つの国際会議における日本の態度は、到底同じ国のものとは思えないのです。
 南極産鯨肉=美味い刺身≠フためならあれほど傲岸不遜に振舞うことのできる国が、内外で共感する市民が圧倒的に多いはずの反核平和に関しては、すっかり萎縮してとことんしおらしくなってしまうのですから。
 「日本人の美徳」、慎ましさ、奥ゆかしさ?
 広島・長崎の声を犠牲にしてまで発揮した度を越した謙虚さの美徳も、オーストラリア・ニュージーランド両国が主権を主張しているサンクチュアリにまで一方的に押し入って美味い刺身≠強奪している時点で台無しですよ。
 もっとも、日本人の中にはこれでもまだ生温すぎるとお思いの御仁もいらっしゃるようですが。
 そう、「日本人の美徳である耐え忍ぶ、あうんで分かり合える、という素晴らしい民族性が今、仇となっている」という教育勅語も顔負けの迷言を残したウルトラナショナリスト、トンデモ竜田揚げ映画「ビハインド・ザ・コーヴ」を製作した八木景子氏。

■いろんな意味で「The Cove」を超えたトンデモ竜田揚げプロパガンダ映画=uBehind the Cove」の真っ赤な嘘|トゥゲッター
http://togetter.com/li/941637
■暴かれる陰謀|YOICHI MOGI
http://uminchumogi.blog111.fc2.com/blog-entry-446.html
■「ベトナム戦争」と「核問題」に直結する本物の陰謀≠暴き、かけがえのない日本の非核文化をサポートしてくれた「グリーンピースの研究者」と、竜田揚げブンカのために「広島長崎の虐殺」を掲げながら贋物の陰謀≠ノ引っかかったトンデモ映画監督|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/174248692.html
■Talk-back to an Oscar winner: Keiko Yagi's doc, BEHIND THE COVE, opens in Los Angeles | TrustMovies
https://trustmovies.blogspot.jp/2016/12/talk-back-to-oscar-winner-keiko-yagis.html

 八木氏が熱情を込めて作ったこのノンフィクション映画≠ノは、なんと驚くべきことに、原爆のワンシーンが登場します。これには外国人も日本人も(まともな人は)ドン引き。リンク、まとめの感想をご参照。
 ICJ判決まで捕鯨問題に無関心だった方が、新宿の鯨肉居酒屋で捕鯨協会のコンサルタントを務めた世論操作の立役者・梅崎義人氏と意気投合し、何かに突き動かされるように(とご本人もおっしゃってますが)作り上げたというこの作品。国内でも海外の映画祭でもクオリティについてはさんざんな評価を受けました。そんな無名の監督の初作であるにもかかわらず、なぜか永田町の国会議員を招いた試写会がセットされたり、記者レクのサポートまで水産庁がお膳立てしたり。安倍昭恵夫人の秘書さんじゃないけれど、何とも至れり尽くせりのアシストです。担当者はきっと「公務じゃない」とさえ言わないでしょうけど。
 氏はこれまでにも映画後のトークショーやメディアインタビュー、あるいは漁業問題のプロフェッショナル・茂木氏とのやり取り等各所で、人権・外交・環境・動物・漁業問題に関する相当とんちんかんな見識を開陳されてきましたが・・どなたか、八木監督の核兵器廃絶に向けたメッセージ、メディアへの寄稿を目にされた方はいらっしゃいますか? 今回のNWC交渉日本不参加に対する発言を聞かれた方は?
 まあ、本当に南極産美味い刺身≠フことしか頭にないんでしょうねえ・・なんともザンネンな御仁です。
 13日に渋谷で上映との話ですが、核兵器禁止条約交渉に対する日本政府の不甲斐なさに対し、せめて何か一言でもガツンと言ってくれるといいんですけどねえ。
 ちなみに、八木監督のお好きな阿吽の呼吸という言葉、核廃絶の足を引っ張る米国に歩調を合わせる日本にこそまさにぴったりあてはまる表現だと、本当に核問題に関心のある&はみなさんお思いになったことでしょう。当人にはちんぷんかんぷんかもしれませんが・・。

 筆者はむしろ、日本政府としての反核平和の哲学とジゾクテキリヨウ(美味い刺身=jの哲学の扱いは、今と正反対であるべきだと思います。美味い刺身≠ネんぞ優先順位の最下位でよろしい。
 毎年52億円の捕鯨対策予算は全部、「核兵器のない世界」を構築するための事業に振り向けるべきです。復興事業にたかった23億円や、これまでODAに注ぎ込んできた1千億円の予算も返納してもらいたいところ。縁故主義が支配的でガバナンスの未熟な発展途上国にODAを大盤振る舞いし、旅費を持ち、担当役人にはよい女の子≠ワで手配し、手練手管を駆使して多数派工作を進めてきた捕鯨推進外交のエネルギーも、今後はすべて非核グループの結束と拡大のために注がれるべきです(コールガール接待しろとは言いませんが)。
 美味い刺身@~しさに国際法を蹂躙し、南極海の平和を欲望でかき乱す、そんなエゴむき出しの行為をやめられない国がいくら平和を口にしたところで、世界に対して説得力を持つはずがないではありませんか。

 ◇ ◇ ◇

 次回(近日中)太地イルカ猟問題の予定
posted by カメクジラネコ at 18:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系