■指定漁業の許可及び取締り等に関する省令の一部を改正する省令案についての意見・情報の募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002463&Mode=0
■新たな捕獲対象の追加 パブコメ中|IKAN
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/post-8a95.html
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■新たな捕獲対象の追加 パブコメ中|IKAN
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つい先日、水産庁のパブコメに関する情報が回ってきました。
一般の方ならながめてそのままスルーしちゃうタイトルですが、実はこれ、イルカ猟に関するもの。PDFまで開かなきゃわからないのですが。
それも、シワハイルカとカズハゴンドウを新たに捕獲対象に付け加えるという、かなりとんでもない話。
「指定漁業の許可及び取締り等に関する省令」は漁業法のもとで特定の漁業に対する細かい制限措置を定めたもの。ときどき発令されていますが、まぐろ等国際機関の規制がかかった場合に出されるケースが多いようです。5年に1度まとめて更新されることになっていますが、今回はイルカ猟の増枠に限って特別にお達しがあった模様。
一般の方ならながめてそのままスルーしちゃうタイトルですが、実はこれ、イルカ猟に関するもの。PDFまで開かなきゃわからないのですが。
それも、シワハイルカとカズハゴンドウを新たに捕獲対象に付け加えるという、かなりとんでもない話。
「指定漁業の許可及び取締り等に関する省令」は漁業法のもとで特定の漁業に対する細かい制限措置を定めたもの。ときどき発令されていますが、まぐろ等国際機関の規制がかかった場合に出されるケースが多いようです。5年に1度まとめて更新されることになっていますが、今回はイルカ猟の増枠に限って特別にお達しがあった模様。
■指定漁業の許可及び取締り等に関する省令
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S38/S38F00601000005.html
■指定漁業の許可及び取締り等に関する省令|日本法令一覧
http://hourei.ndl.go.jp/SearchSys/viewEnkaku.do?i=5uW4lojHPS4qoP8FX9LhbA%3D%3D
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S38/S38F00601000005.html
■指定漁業の許可及び取締り等に関する省令|日本法令一覧
http://hourei.ndl.go.jp/SearchSys/viewEnkaku.do?i=5uW4lojHPS4qoP8FX9LhbA%3D%3D
今回の改正の背景についてIKANが水産庁に問い合わたところ、「コビレゴンドウとハンドウイルカの捕獲が『低位で推移しており、安定的な経営が困難』という理由」とのこと(詳細は上掲リンクIKANブログ記事を参照)。これは実にふざけた話。
「国連海洋法条約のもと、海生生物はすでに先に取ったものが勝ちではなくなっている。これまでのように、他の種を取りすぎたために、新しい種を取りたいというのは全く勝手な言い分であり、それをそのまま受け入れる管理当局の水産庁は、管理を放棄しているわけで、これはイルカに限ったことではないから驚くには当たらないかもしれない」(引用)
ここでちょっと、時期を合わせるように発表された水産庁レッドリストの両種の評価とパブコメの概要資料(1枚きりですが)をチェックしてみましょう。
日本近海のシワハイルカの個体数について、パブコメ資料の中では5,483頭(2014年)とあります。一方、レッドリストでは006年〜2007年の目視調査で11,811頭。十年足らずの間に半減しています。
水産庁レッドリストでは、最新の減った値の方を使ってないのがまた嫌らしいところ。スナメリについてはなんとか数が増えたことにしようとして、2015年のデータをギリギリ押し込んだことが、前後で矛盾した記述からも明らかなのですが。
基準Eを優先したり、準基準Eなるご都合基準を設けたり、勝手なローカルルールを導入している水産庁レッドリストの評価手法は無視し、IUCNの予防原則のグロスタに則り、同サイトで公開しているツールを使って筆者が判定した結果、日本周辺のシワハイルカはいずれもCR「絶滅危惧種U類」でした。
日本近海のシワハイルカの個体数について、パブコメ資料の中では5,483頭(2014年)とあります。一方、レッドリストでは006年〜2007年の目視調査で11,811頭。十年足らずの間に半減しています。
水産庁レッドリストでは、最新の減った値の方を使ってないのがまた嫌らしいところ。スナメリについてはなんとか数が増えたことにしようとして、2015年のデータをギリギリ押し込んだことが、前後で矛盾した記述からも明らかなのですが。
基準Eを優先したり、準基準Eなるご都合基準を設けたり、勝手なローカルルールを導入している水産庁レッドリストの評価手法は無視し、IUCNの予防原則のグロスタに則り、同サイトで公開しているツールを使って筆者が判定した結果、日本周辺のシワハイルカはいずれもCR「絶滅危惧種U類」でした。
一方、カズハゴンドウの方は、目視調査データに関しては漸増しているものの、やはりレッドリスト資料にご都合主義的記述があります。「混獲・座礁は年2.5件と少ないことなどから」とありますが、2013年には22件発生していますし、2015年の鹿島灘では156頭のマスストランディングが起こっています(大半が死亡)。カズハゴンドウの大量座礁は2011年に東北沖大地震との関連が取り沙汰されましたが、もともとこの種はマスストランディングが多いようです。もちろん、ヒトの目に触れて記録されるものばかりがすべてではありません。ストランディングが起きる要因については、下掲のJAMSTECの解説もご参照。
いずれにしても、今回の水産庁の設定した700頭を超える捕獲枠は、数年おきに数十頭、ときには100頭以上に上ることもあるマスストランディングを考慮したものにはなっていません。
また、ゴンドウクジラ亜科・シャチ亜科・アカボウクジラ亜科は社会性が非常に複雑であることが知られています。コビレゴンドウとシャチには閉経があり、高齢雌が育児を担うと考えられていますし、ゴリラに似たツチクジラは父系社会の可能性が指摘されています。捕獲が単純に数だけでは推し量れない繁殖へのダメージをもたらすことは、陸上も含め社会性哺乳類全般についていわれていることで、マッコウクジラの管理に失敗したのも、そうした社会性への配慮のなさが要因でした。
水産庁レッドリストでは「一般的に社会構造が複雑である可能性があり」との一行のみ。同種の社会性に対して何にも情報を持ち合わせてないことがモロバレ。
いずれにしても、今回の水産庁の設定した700頭を超える捕獲枠は、数年おきに数十頭、ときには100頭以上に上ることもあるマスストランディングを考慮したものにはなっていません。
また、ゴンドウクジラ亜科・シャチ亜科・アカボウクジラ亜科は社会性が非常に複雑であることが知られています。コビレゴンドウとシャチには閉経があり、高齢雌が育児を担うと考えられていますし、ゴリラに似たツチクジラは父系社会の可能性が指摘されています。捕獲が単純に数だけでは推し量れない繁殖へのダメージをもたらすことは、陸上も含め社会性哺乳類全般についていわれていることで、マッコウクジラの管理に失敗したのも、そうした社会性への配慮のなさが要因でした。
水産庁レッドリストでは「一般的に社会構造が複雑である可能性があり」との一行のみ。同種の社会性に対して何にも情報を持ち合わせてないことがモロバレ。
沿岸マグロ漁業者の悲痛な声を無視する水産庁が、なぜ太地に対してだけはかくも手厚い便宜を図ろうとするのか、筆者には理解に苦しみます。
なお、太地の今シーズンの捕獲表は前回のブログ記事に掲載しています。
パブコメの提出締切は明日4/15(金)。時間がなくなってしまいましたが、イルカ猟問題に関心のある方は「捕獲する種を新たに増やすことはやめてください」とはっきり声を伝えましょう。
以下、筆者の提出意見(ちと長くなったのでFAXで送りました)。
以下、筆者の提出意見(ちと長くなったのでFAXで送りました)。
〜 〜 〜 〜 〜
案件番号:550002463
平成29年3月17日付・
指定漁業の許可及び取締り等に関する省令の一部を改正する省令案についての意見
指定漁業の許可及び取締り等に関する省令の一部を改正する省令案についての意見
意見:
指定省令第82条第1項ただし書きに、新たに「しわはいるか」及び「かずはごんどう」を追加することに反対する。
指定省令第82条第1項ただし書きに、新たに「しわはいるか」及び「かずはごんどう」を追加することに反対する。
理由:
鯨類は国連海洋法条約第65条において国際機関を通じて管理する旨定められている。
カズハゴンドウならびにシワハイルカは日本近海と公海を行き来していると考えられ、また系群構造も不明であることから、とくに国際機関における管理が妥当である。
両種は生態・個体群動態に不明な点が多いことからも、国連海洋法条約第65条の趣旨に照らして、開発するにあたってIWC、米国等太平洋諸国の協力下でのアセスメントを行わずに、一国の判断で利用を開始するのは早計である。
カズハゴンドウならびにシワハイルカは日本近海と公海を行き来していると考えられ、また系群構造も不明であることから、とくに国際機関における管理が妥当である。
両種は生態・個体群動態に不明な点が多いことからも、国連海洋法条約第65条の趣旨に照らして、開発するにあたってIWC、米国等太平洋諸国の協力下でのアセスメントを行わずに、一国の判断で利用を開始するのは早計である。
概要資料の中で、シワハイルカの日本周辺海域での推定個体数は5,483頭(2014年)とあるが、2006年〜2007年の調査による推定値は11,811頭であり、10年に満たない期間に半減している。
IUCNレッドリストの予防原則の趣旨に則り、ガイドラインに基づき近縁種の世代時間を外挿して基準Aによるカテゴリー判定を行ったところ、線形・指数両パターンで基準A1,2ともCR(絶滅危惧種U類)ランクに該当する結果となった。
日本に生息する個体群として見た場合、シワハイルカは明らかに絶滅危惧種である。
これが鯨類と同様に国際管理が求められる渡り鳥であれば、渡来数が短期間に半減し、なおかつその原因も究明されていないにもかかわらず、新たに資源としての利用を考えるなどありえないことである。
系群の分布が日本周辺の外に広がるか、隣接する海域からの移入があるなら、なおのこと国際機関のもとしっかり調査を行い、域外の資源への影響を十分に把握するまで利用を思いとどまるのが、節度ある漁業国の態度である。
IUCNレッドリストの予防原則の趣旨に則り、ガイドラインに基づき近縁種の世代時間を外挿して基準Aによるカテゴリー判定を行ったところ、線形・指数両パターンで基準A1,2ともCR(絶滅危惧種U類)ランクに該当する結果となった。
日本に生息する個体群として見た場合、シワハイルカは明らかに絶滅危惧種である。
これが鯨類と同様に国際管理が求められる渡り鳥であれば、渡来数が短期間に半減し、なおかつその原因も究明されていないにもかかわらず、新たに資源としての利用を考えるなどありえないことである。
系群の分布が日本周辺の外に広がるか、隣接する海域からの移入があるなら、なおのこと国際機関のもとしっかり調査を行い、域外の資源への影響を十分に把握するまで利用を思いとどまるのが、節度ある漁業国の態度である。
カズハゴンドウについては、2001年に53頭、2002年に85頭、2011年に54頭、2015年に156頭等のマスストランディングがあり、2013年に22件等、単発のストランディングも多い。
ストランディングの原因は不明であるが、気候変動による海流・水塊の変化に影響を受ける可能性も指摘されている。
また、ゴンドウクジラ類は社会構造が複雑で種毎に異なる可能性がある。
複雑な社会性を持つ哺乳類では、性比の偏りや社会行動の変化により繁殖率が低下し、単純な個体数から推測される以上に減少する恐れがあることは広く知られており、IUCNガイドラインにおいても注意喚起されている。
しかし、水産庁および水研機構の資料を見る限り、同種の社会性に関して調査が行われていないことは明白であり、したがって持続的利用に十分な資源量が確認されたとは到底いえない。
少なくとも、数年置きに発生しており、今後増加する可能性もあるマスストランディングと、複雑な社会性も十分に考慮に入れた管理方式を別途開発すべきであり、いずれもほとんど情報がない以上、今の段階で利用を開始するべきではない。
ストランディングの原因は不明であるが、気候変動による海流・水塊の変化に影響を受ける可能性も指摘されている。
また、ゴンドウクジラ類は社会構造が複雑で種毎に異なる可能性がある。
複雑な社会性を持つ哺乳類では、性比の偏りや社会行動の変化により繁殖率が低下し、単純な個体数から推測される以上に減少する恐れがあることは広く知られており、IUCNガイドラインにおいても注意喚起されている。
しかし、水産庁および水研機構の資料を見る限り、同種の社会性に関して調査が行われていないことは明白であり、したがって持続的利用に十分な資源量が確認されたとは到底いえない。
少なくとも、数年置きに発生しており、今後増加する可能性もあるマスストランディングと、複雑な社会性も十分に考慮に入れた管理方式を別途開発すべきであり、いずれもほとんど情報がない以上、今の段階で利用を開始するべきではない。
なお、概要資料に「漁業者等からもこれらの鯨種の漁獲枠の設定について要望が相次いでいる」とあるが、「相次ぐ」とは少なくとも次から次へと立て続けに起こることを意味し、それだけの数の漁協が本当に2種の捕獲を求めているのか強い疑問を覚える。
その要望の切迫性、切実性にもやはり大きな疑問を感じる。
その要望の切迫性、切実性にもやはり大きな疑問を感じる。
太地町のイルカ漁業(追い込み)に関しては、今年度の捕獲数は前年度より増加しており、中でも収益の高い水族館向け生体販売の比率が大幅に上がっている。
既存の対象鯨種の捕獲枠は未消化であり、新たに対象鯨種を追加する合理的理由は見当たらない。
既存の対象鯨種の捕獲枠は未消化であり、新たに対象鯨種を追加する合理的理由は見当たらない。
乱獲に対する自制力を発揮できず、対象鯨種を枯渇させては次々に切り替えることを繰り返してきたのが近代捕鯨の歴史である。イルカ漁業の場合も同様に、有名な太地を例にとれば、静岡から技術を導入した途端漁協間の競争で捕獲数が膨れ上がった経緯がある。
今回の捕獲枠新設は、そうした非持続性の業≠背負った過去を髣髴とさせる。
今回の捕獲枠新設は、そうした非持続性の業≠背負った過去を髣髴とさせる。
諫早干拓事業、辺野古米軍基地移設、原発立地等をはじめ、沿岸事業者で国策の名のもとに代々続く漁場を手放さざるをえなくなった事例は数多い。また、クロマグロ漁業に携わる沿岸漁業者のように、大手巻網事業者との軋轢・不公平感を抱えながら、資源管理の重要性を理解して減収に涙を呑み規制を受け入れる事業者もいる。
また、国際法を誠実に遵守する姿勢を内外に示すことや、民主主義の価値観を共有する各国と協調をはかることは、きわめて重要な国策である。
少なくとも、この省令改正は、水産庁が喫緊に対応すべき、優先度の高い施策であるとはまったく考えられない。持続的漁業の推進を掲げるなら、水産庁にはもっと他にやるべきことが多々あるはずである。
参考資料:
−海洋海洋生物レッドリストの公表について
整理番号79-81(カズハゴンドウ、マイルカ、ハセイルカ)
http://www.jfa.maff.go.jp/j/sigen/attach/pdf/20170321redlist-48.pdf
整理番号85-87(シワハイルカ、カマイルカ、サラワクイルカ)
http://www.jfa.maff.go.jp/j/sigen/attach/pdf/20170321redlist-44.pdf
http://www.jfa.maff.go.jp/j/sigen/attach/pdf/20170321redlist-44.pdf
-Guidelines for Using the IUCN Red List Categories and Criteria ver.12, 2016
http://www.iucnredlist.org/technical-documents/red-list-training/red-list-guidance-docs
http://www.iucnredlist.org/technical-documents/red-list-training/red-list-guidance-docs
-Red List Assesment Tool
http://www.iucnredlist.org/technical-documents/red-list-documents
http://www.iucnredlist.org/technical-documents/red-list-documents
-茨城県の海岸に打ち上げられた多数のイルカと海洋異変について|JAMSTEC
http://www.jamstec.go.jp/apl/j/column/20150423/
http://www.jamstec.go.jp/apl/j/column/20150423/
-変容する鯨類資源の利用実態. 和歌山県太地町の小規模沿岸捕鯨業を事例として
http://ci.nii.ac.jp/naid/120003057536
http://ci.nii.ac.jp/naid/120003057536
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以下のリンクもチェックのほどヨロシクm(_ _)m
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■Taiji - an inflated symbol of perceived culture|WDC
http://uk.whales.org/blog/2017/03/taiji-an-inflated-symbol-of-perceived-culture
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