2016年08月07日

太地を庇って沖縄を脅す捕鯨族議員・鶴保氏のとてつもないダブスタ

 和歌山県選出の自民党参議院議員である鶴保庸介氏は、太地を地元に抱えるだけあって、捕鯨族議員の中でも最も活躍してきた族議員中の族議員のお1人といえます。
 あたかもシーシェパードと張り合うかのような彼の過激な見解については、当ブログでも幾度か紹介してきたとおり。
 この7月の参議院で4回目の当選を果たした鶴保氏は、今回の第3次安倍第2次改造内閣で初入閣、内閣府特命担当大臣 (沖縄及び北方対策、クールジャパン戦略、知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策担当)に。
 その鶴保氏、大臣就任早々、とんでもない発言で世間を賑わしました。

■「消化できないものお口に」 鶴保沖縄相、予算の減額示唆 (8/5,琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-329681.html
■安倍政権 「基地と振興リンク」方針 県民の批判必至 (8/5,毎日)
http://mainichi.jp/articles/20160805/rky/00m/010/007000c
■鶴保・沖縄北方相「振興策と基地問題、確実にリンク」 (8/4,朝日)
http://www.asahi.com/articles/ASJ845HW7J84ULFA00Y.html
■振興策と基地「大きな意味ではリンク」 鶴保沖縄相、振興に「手段尽くしたい」 (8/5,沖縄タイムス)
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/56004
■菅長官、沖縄振興予算の減額否定せず=鶴保氏は翁長知事と会談へ (8/5,時事)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016080500408&g=pol
■安倍政権の沖縄予算 減額方針 法の理念と乖離 (8/5,琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-329683.html

@「振興策と基地問題は確実にリンクしている」 (引用〜朝日他)
@’「基地問題によって、振興策の中身を含め変わっていくのは十分当たり前のことだ。そういう意味では、振興策と基地問題は確実にリンクしている(引用〜琉球新報)
@’’沖縄振興というなかで、沖縄の大変な割合を占める基地問題、それに関心のある県民感情、歴史的経緯で基地というものは避けて通れないだろう。そういう大きな意味では振興策と基地問題は確実にリンクしていると思う」(引用〜沖縄タイムス)
Aまた、親交があったという国際政治学者の若泉敬氏の「沖縄県民の苦しみに全国民が寄り添うことができないのは、政治としておかしい」との言葉を紹介。「志を継いであげたいとの思いがある。沖縄振興を第一義的に考え、ありとあらゆる手段を尽くしたいと意欲を示した。(引用〜〃)
B基地の問題に対する態度をリンクさせようとする情勢を私はつくりたくない(引用〜琉球新報2)
C「予算額を減らすのは当然。消化できないものを無理やりお口開けて食べてくださいよでは、全国民の血税で使われているお金を無駄遣いしているという批判に耐えられない」(引用〜琉球新報他)
D「お金は限られた資源だ」(引用〜時事)

 「基地問題と振興策はリンクさせない」としてきた政府のこれまでの立場を完全に覆す、沖縄からしてみればまさに掌を返す仕打ち。
 安倍政権の変節、約束破りはこれが初めてではありませんし、マスコミがそれらをスルーし、国民もいい加減慣れっこになってしまっているのが返って恐ろしいところなのですが・・。
 Cなどは、安倍政権の尖兵を買って出た新人大臣の勇み足にも映りますが、内容的には菅官房長官の4日の記者会見の発言を追認しただけにすぎません。
 従来の政府方針どおりなら、沖縄・北方担当相は防衛省と一線を画する立場で粛々と(菅官房長官語)振興のことだけ、「何が沖縄の人たちのためになるのか」だけ考えていればいいはず。そのためにこそ、沖縄・北方担当大臣という役職があるはず。
 鶴保氏は、就任初っ端から、他省の顔色を伺い、道を譲る姿勢を明確にしたわけです。早急に移設を進め、沖縄県内で米軍基地をたらい回しし、過重な負担を押し続けるためのカード≠ニして振興費をちらつかせるのが自身の役目だと、鮮明に示したわけです。
 てんでバラバラの仕事をつなぎ合わせた内閣府特命担当大臣というポストが、若手議員が本物の閣僚≠ノ昇る手前のステップ、見習い大臣%Iな役職にすぎないと象徴するかのよう。
 もっとも、すでに以下のような話も出ており、いまの日本のマスコミが健全だったなら、甘利元経産相同様糾弾されて、政治キャリアもここで詰んでいたかもしれませんが……。

■“スネ傷”4人が堂々と初入閣…東京地検が狙う新大臣の疑惑 (8/4,日刊ゲンダイ)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/187061

今村雅弘復興担当相(69)と鶴保庸介沖縄北方担当相(49)は、六本木や新橋のキャバクラの飲食代「政治資金」から支払っていた(引用)

■政治資金でキャバクラ支出/鶴保元国交副大臣の支部 ('14/11/28,四国新聞)
http://www.shikoku-np.co.jp/national/political/20141128000587

元国土交通副大臣の鶴保庸介参院議員(和歌山選挙区)が代表を務める自民党和歌山県参議院選挙区第2支部(和歌山市)が、女性が接客するキャバクラやラウンジの飲食代5回分、計約25万6千円政治活動費として支出していたことが28日、2013年分の政治資金収支報告書で分かった。
また12年の報告書でもラウンジやクラブの飲食代3回分、計約17万円政治活動費として支出していたことも判明。会計責任者は「誤解を招く支出だった」としている。
報告書や領収書によると、東京・六本木のキャバクラで13年2月に約8万8千円、6月に六本木の別のキャバクラ3万円などを支出。(引用)

 鶴保発言の細かい検証に入る前に、メディアとネットの反応を見てみましょう。

■基地問題とリンク 菅官房長官が「沖縄振興費」削減を示唆 (8/5,日刊ゲンダイ)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/187169

 「工事が進まなければ予算が少なくなるのは当然。跡地利用が遅れると、予算が少なくなっていくのは現実問題としてそうでないか」と語り、沖縄振興と基地問題をリンクさせないとしてきた政府の方針を事もなげに撤回した。
 今年1月に沖縄の基地負担軽減と振興策を協議する「政府・沖縄県協議会」の初会合では、振興策を基地問題とリンクさせないことを双方が確認していた。(引用)

■<社説>基地と予算リンク論 恫喝政治の表れだ 沖縄への揺さぶりやめよ (8/6,琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-330355.html

 安倍政権は法の精神をも踏みにじる。沖縄振興の根拠法である沖縄振興法には第1章第1条に「沖縄の自主性を尊重しつつ総合的かつ計画的な振興を図る」とある。辺野古の新基地建設について県知事や地元名護市長が反対し、選挙でも反対の民意が示されたのに、基地建設を進めようとするのは、沖縄の自主性を全く顧みていないということだ。(引用)

https://twitter.com/mas__yamazaki/status/761424262385192960
https://twitter.com/mas__yamazaki/status/761424744906301440
https://twitter.com/mas__yamazaki/status/761425191524151296
鶴保庸介沖縄・北方相は就任会見で「沖縄の振興策と基地問題は確実にリンクしている」と述べ、米軍普天間飛行場の同県名護市辺野古への移設作業が遅れた場合、沖縄振興予算を減らす可能性に言及(朝日)。言うことを聞かない者にはカネをやらない大臣
鶴保庸介議員という、沖縄問題への歴史的な理解がなく、テレビ討論では野党議員を馬鹿にする傲慢な態度を見せる人間を沖縄問題担当相に据えた安倍晋三首相の意図は、こういう無慈悲な政策を高圧的に実行できる資質を評価しての「配置」だろう。予算を人質に自国民を脅す政権を、民主主義とは呼ばない。
朝日新聞は、鶴保大臣の談話について「翁長雄志知事を牽制するもの」と書いているが、「予算額を減らすのは当然。消化できないものを無理やりお口開けて食べてくださいよでは、全国民の血税で使われているお金を無駄遣いしているという批判に耐えられない」等という暴言は「牽制」レベルの話じゃない(引用)

https://twitter.com/kimuratomo/status/761538592975953921
「消化できないものお口に」鶴保沖縄相、予算の減額示唆』政府に逆らう自治体は兵糧攻めだ。政府に逆らう者を当選させたら大損だぞ。いよいよ牙剥き始めた安倍政権からのこの恫喝メッセージ、一体どれだけの国民が他人事ではないと理解出来ているか(引用)

 おそらく、沖縄の市民の皆さんは、鶴保氏がどんな人物か、まだよくわかってらっしゃらないでしょう。
 しかし、筆者には、彼の捕鯨問題に対するこれまでの発言に実によく似ているなあと感じるのです。鶴保氏らしさがにじみ出ているとでもいうのか。
 一言で言うなら、非合理で支離滅裂。
 もうひとつ感じるのは、沖縄と、地元和歌山の太地町との扱いの間にある、途方もない落差。究極のダブルスタンダード

 鶴保氏のちぐはぐぶりは、上掲の5つの発言それぞれが真っ向から矛盾していることでもわかります。
 @は各紙が記者会見から見出し等に用いた、自民党・安倍政権の沖縄に対する立場を明瞭に示したもの。ただ、他紙が省いたその前段の部分を、沖縄の地元紙2紙が別々に取り上げています。
 @’(〜琉球新報)は、単に菅氏の発言をなぞって言い換えた形。一方、@’’(〜沖縄タイムス)は・・句点でつないだこの二つの文を読んだ沖縄の方々は、一瞬目が点になり、続いて腸が煮えくり返ったことでしょう。
 菅官房長官に歩調を合わせ、「基地と振興策の直接リンク」「振興予算の減額」をより明瞭な形で言い直した鶴保沖縄・北方担当相は、「県民感情」「歴史的経緯」にあえて触れたうえで、「予算額を減らすのは当然」「血税の無駄遣い」につないだわけです。
 過重な基地負担に喘ぎ、凶悪犯罪に打ちひしがれた「県民感情」、独立国だった琉球を併合され、太平洋戦争で戦場と化し、米軍に長らく占領され今日まで本土と異なる扱いを受け続けている「歴史的経緯」に配慮するならば、沖縄振興法の主旨に鑑みるならば、基地負担の減少が一向に進まず事実上の新設である県内移設を推進しながら、なぜ減額という形でリンクしえるのでしょうか?
 基地負担が確実に軽減され、県民感情が和らいだ暁には、振興予算の減額が検討されるのも道理でしょう。「そういう意味でのリンク」なら、沖縄の皆さんも納得するでしょう。
 菅氏の発言には、シンプルに沖縄の「県民感情」「歴史的経緯」より「日米安保」を優先するという血も涙もない合理性≠ェ見て取れます。
 それに対し、鶴保氏の発言はわけがわかりません。「なだめ役」「ごまかし役」ですらないのです。
 @’’とCの、沖縄県民の神経を逆撫でするばかりの発言は、政権の立場から見てさえ、「まったく言う必要のない余計な一言」以外の何物でもありますまい。
 同様にAとC、鶴保氏自身の発言と、彼が引用した若泉氏の発言を並べてみましょう。

「沖縄県民の苦しみに全国民が寄り添うことができないのは、政治としておかしい」
「全国民の血税で使われているお金を無駄遣いしているという批判に耐えられない」

 これが「志を継い」だ人間の発言だと、皆さんは思いますか?
 同一人物が、同日の記者会見の席でした発言だと、皆さんは信じることができますか?
 Bも、@、Cを平然と言ってのけた人間が、同じ口で何の憚りもなく発せられるということ自体、信じがたいことです。
 彼は、発言の整合性を取るということが、ひとつの記者会見の中でさえ出来ない人物といえます。もちろん、会見中に多少の齟齬が見られるのは、どれほど高い学歴を持つ政治家でも同じですけど。
 しかし、彼の発言には、沖縄の人たちを煙に巻くという意図さえも感じられず、ただひたすら支離滅裂な印象を受けてしまうのです。
 これは一種の二重人格なのでしょうか?? 首相に対しては自己愛性パーソナリティ障害という分析もありますけど・・。
 というより、筆者には、脈絡を考える気/能力のない人間が、つらつらと言葉を発しただけとしか思えないのです。単に沖縄のことを真剣に考えてなどいないだけで。
 そして、その背景には、仮想敵相手の言葉遊び・ディベートごっこでやり込めた高揚感に浸る反反捕鯨思考──竜田揚げ脳の影響があるように思えてならないのです。

 鶴保氏のこの迂闊な発言は、菅氏の発言・安倍政権の方針が内包する大きな矛盾を赤裸々にさらけ出してくれました。もう気づかれた方も多いでしょう。

■復興予算 34%使い残し 15年度 事業遅れ1.9兆円超 (7/30,東京)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201607/CK2016073002000133.html
■<復興予算>34%未執行 用地取得の調整難航 (7/30,河北新報)
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201607/20160730_71014.html
■復興予算9兆円が未使用 11〜14年度、検査院調査 (4/7,朝日)
http://www.asahi.com/articles/ASJ455JF4J45UTIL039.html

 さて、震災の被害を受けた東北の皆さん。とりわけ福島第一原発事故による放射能汚染の影響を被った福島の皆さん。
 復興相「予算額を減らすのは当然。消化できないものを無理やりお口開けて食べてくださいよでは、全国民の血税で使われているお金を無駄遣いしているという批判に耐えられない」と鶴保氏とまったく同じことを言われたら、皆さんはどう感じますか?
 事業が遅れたから、「住民合意といった調整が難航」(毎日)したから、「予算額を減らされるのは仕方がない」と納得しますか?
 「沖縄と東北は違う」? もし、そう言われたとしたら、沖縄の皆さんはどう感じますか?
 福島の皆さん。もし、復興予算に関して、「福島第二原発の再稼働」「県内の原発新設」を条件にされ、受け入れなければ「復興予算の減額は当然」と迫られたら、皆さんはどう思いますか?
 国の安全保障のために米軍基地という迷惑施設を押し付けられた沖縄と、首都圏への電力供給のために原発という迷惑施設を押し付けられた福島と。そこに共通する差別の構造を指摘する声は前々からありました。そのどちらも、住民・現地企業を懐柔する振興名目の補助金とリンクしていた側面があったのも確かでしょう。
 いずれにしろ、これで沖縄に突きつけられたものが、偏に沖縄だけの問題だけではないということを、国民の誰もがはっきりと悟ったことでしょう。鶴保氏の発言によって。
 医師きむらとも氏の「いよいよ牙剥き始めた安倍政権からのこの恫喝メッセージ、一体どれだけの国民が他人事ではないと理解出来ているか」という言葉が、ずっしりと重みを伴って聞こえます。

 本来ならば、鶴保氏は沖縄・北方担当相の立場から、消化しきれなかった予算額は翌年度に繰り越したり、改めて沖縄振興事業に充当するなどの手を打つべきだと、菅官房長官に対して進言すべきだったはずです。東北の復興予算においてそうした措置がとられているように。
 しかし、鶴保沖縄・北方担当相は、あくまで沖縄県民の苦しみに寄り添うどころか、「消化できないものをお口に」云々と沖縄県民を嘲り、居丈高な菅官房長官語とダブルで追い討ちをかけたわけです。
 もし、本土の東北・福島に対してできることを、沖縄に対してやらないとするならば、そこにあるのは厳然たる差別にほかなりません。

 鶴保庸介殿。沖縄・北方担当相として沖縄という地域を代弁することなく、国の権威の側に立ち、沖縄の主体性を尊重せず県民の感情を踏みつけにすることが、なぜあなたにできるのですか?
 山崎雅弘氏のツイート「沖縄問題への歴史的な理解がない」との指摘は、鶴保氏が「歴史的経緯」という言葉を口にしながら「減額は当然」と言い切ってしまえることだけでも明らかですが、問題は彼が「沖縄に疎い」「歴史に疎い」の一言では片付けられません。
 沖縄の皆さんにぜひとも読んでいただきたいのが、彼が地元の地域紙わかやま新報にスペースを作ってもらって発信している以下のブログ記事。

■捕鯨文化を粘り強く発信 佐々木さんの映画制作に支援を ('15/7/22,わかやま新報)
http://www.wakayamashimpo.co.jp/2015/07/20150722_52442.html

こうしたことが続く欧米社会とは永遠に分かり合えないのではないかという不信感、そして埋めようのない価値観の違いに絶望感すら抱きます。安全保障法制が議論されている昨今、今後こうした欧米社会と価値観を共有し、さまざまな事態に連携して対処していくことができるのだろうか、とは私の考えすぎでしょうか。
イスラムの問題をひきあいに出すまでもなく、自分たちの価値観を押し付けることこそ世界の平和を乱すものである、という強い信念で、われわれの文化や考え方を押し付けるのではなく、粘り強く発信し、理解を求めていくしかないのだろうと思うのです。
例えば同性婚について、これまでさまざまな迫害がありましたが、連綿と続く努力のなかでいまや世界的に容認の方向であるといっていいでしょうし、少なくとも今現在認めていない国々に対して認める国が圧力をかけたり、不満を表明したりすることはないでしょう(引用)

■大物活動家の入国を拒否 史上初の処置、法定化も視野に(2/9,〃)
http://www.wakayamashimpo.co.jp/2016/02/20160209_58092.html

それが怖くて行政は滅多に入国拒否という強硬手段に訴えることはありませんでした。私はこれまで何度も何度も法務大臣にこうした慣例を破るよう迫ってまいりましたが、今回が初めての処置と成りました。(引用)

 上の同姓婚云々の、あまりにも支離滅裂すぎて意味不明(事実にも反する)のトンデモ持論については、以下の記事中の解説をご参照。

■オーストラリアは本当に庭先の自然を荒らす海の無法者&゚鯨ニッポンから潜水艦を買うの?|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/170101475.html

 鶴保氏は国交政務官等は務めてきましたが、農水の政務官・副大臣は歴任していません。
 しかし、太地の捕鯨・イルカ猟のためなら、法務大臣に「慣例を破るよう」迫ることはできるわけです。
 国際司法裁判所の調査捕鯨違法判決直後に鯨肉カレーパーティーを開き、調査捕鯨の非科学性を精一杯世界にアピールしてみせた自民党捕鯨議員連盟の中心メンバーの1人(幹事長代理)として、彼は精力的に活動してきました。
 海外の活動家1人の入国手続に関して法相にまで圧力をかけたのは、上掲のブログでご本人が口にしているとおりですが、これ以外にも、他の捕鯨族議員とともに国の捕鯨政策を左右していたことは疑いの余地がありません。
 水産官僚が日新丸改修のために南極海調査捕鯨の1年休漁を検討していたときに「けしからん」と怒鳴りつけたり、民間団体であるJAZA(日本動物園水族館協会)を呼びつけてWAZA残留の経緯について説明を要求したりしたときも、きっとその場にいらしたことでしょう。

■「反捕鯨陣営」に逆襲する日の丸 ('15/6,FACTA)
http://facta.co.jp/article/201506030.html

鶴保議員は国際的な法律事務所の有力弁護士と議論を重ねるだけでなく、「海外での訴訟経験が豊富な大手企業も回り、世界を相手にした法廷闘争やPR合戦のノウハウを蓄積している」(自民議員)とされる。(引用)

 三軒太地町長いわく外堀≠ナある南極海調査捕鯨を死守するために、ここまでやれてしまうのが鶴保議員なのです。
 太地の捕鯨に寄り添うあまり、「安全保障法制が議論されている昨今、今後こうした欧米社会と価値観を共有し、さまざまな事態に連携して対処していくことができるのだろうか」という、内閣の一員に加わるはあまりに強烈で意味深な言葉をわざわざ口にしてしまえる人物なのです。
 今回の記者会見で、「消化できないものを無理やりお口開けて食べてくださいよ」とか、「資源」などという言葉が口をついて出てしまったのも、クジラが一番弁舌をふるう機会の多いネタ、彼の十八番だったからでしょう。

 皮肉なことですが、調査鯨肉はJARPAIIの無理な増産が祟り、鯨研/共同船舶がイベントで無料で配布したり、あの手この手の販促PRを展開しても国民にそっぽを向かれ、過年度在庫が積み上がり、鯨研自身も債務超過に陥ったことを水産庁も正直に白状しているとおり。「消化できないものを無理やりお口開けて食べてくださいよでは、全国民の血税で使われているお金を無駄遣いしているという批判に耐えられない」という彼の台詞は、調査捕鯨事業にこそピタリと当てはまるものだったのです。
 そして、予算云々に関して言えば、今年度政府予算で宛がわれた捕鯨関連予算はなんと51億円。なんと前年度比2.5倍を超える金額です。TPP関連の一部を除き、農水予算でここまで至れり尽くせりの大盤振る舞いを受けている分野はありません。しかもこれ以外にも水産外郭団体による別立ての基金が27億円用意されています。
 沖縄振興予算の方は3350億円ですが、調査捕鯨予算の拠出先は従業員300人程度の1事業所(鯨研&共同船舶)が中心なのです。沖縄県民143万人と比べるなら、振興予算を百倍の30兆円にしないと釣り合いません。

 どうして鶴保氏は、南極産美味い刺身のために多額の予算を付けたり、米国やオーストラリア、国際司法裁判所にあの手この手で対抗したり、活動家を追い払うため法相に慣例を破るよう要求することはできるのに、沖縄に対しては「予算額を減らすのは当然」とまで冷淡になれるのでしょう? 反捕鯨団体の監視とは比較にならない、まさに人権侵害以外の何物でもない機動隊や海上保安庁の暴力に苦しめられる高江・辺野古の市民を守ってくれないのでしょう?
 ひとつはっきりしているのは、鶴保氏にとっての優先順位が「太地>>米国>>沖縄」だということ。
 彼が差別してるのは人≠ナす。
 クジラやイルカと「猿」と「馬」と「カラス」ではなく。
 それらの動物を平等≠ノ殺すためなら、様々な機関に政治的圧力をかけることも辞さないが、同じ日本の中で同じ人である沖縄の人々がかくも理不尽な差別的待遇を受けている事実に対し、闘うことをしようとはしない政治家なのです。

 鶴保氏の素朴にすぎる捕鯨美化の意識がこの先変わることがあるとは思いません。「南半球の人々に身勝手で傲慢な価値観を押し付け、南極の自然に欲をかくのはやめてほしい」と頼むだけ無駄でしょう。
 しかし、沖縄・北方担当相のポストに就いた以上、県民の心を踏みにじる無知で無神経な発言を繰り返すことは二度と許されないはずです。そこは捕鯨の是非とリンクする話ではありません。
 少なくとも、強大な敵≠ニ闘っている点で、太地と沖縄には共通点があります。もっとも、沖縄との大きな違いは、太地にはそれを上回るさらに強大な味方がついているということですが。
 太地を守るために発揮している政治的豪腕を、沖縄のために行使することは、鶴保氏には可能なはずです。できないはずがありません。
 それをしないというのなら、日本の独善的な捕鯨政策を裏で支える国会議員の沖縄に対する究極のダブスタが、調査捕鯨や太地のイルカ猟に関心のある世界中の人々にもいずれ知れ渡ることとなるでしょう。それが太地のためになるとは、筆者には思えません。

関連リンク:
■沖縄を切り捨て太地を庇う、自民党と日本政府のすさまじいダブスタ|拙ブログ過去記事
■米大使ツイート騒動|拙ブログ過去記事
■激論!コロシアム【イルカが消えるだけじゃない!?日本を追い込む"やっかいなニュース"の真相!】(2015.6.13放送)
http://togetter.com/li/834969
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