2016年08月27日

金を払ってSSCSと和解の怪! 司法判断から逃げ続ける卑劣な鯨研と共船

 最後のJARPNU(北西太平洋調査捕鯨)沖合調査が終了し、10月にスロヴェニアで開かれるIWC年次会議まで、しばらくクジラは世間の話題に上らないだろうと思っていたら、唐突にニュースが流れ込んできました。

■調査捕鯨の妨害しない 米の反捕鯨団体と合意 (8/23,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160823/k10010650891000.html
■捕鯨妨害、永久に禁止=米シー・シェパードと合意−豪団体は活動継続の意向・日本側 (8/23,時事)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016082300406&g=eco
■シー・シェパード 調査捕鯨妨害、永遠に禁止 日鯨研合意 (8/23,毎日)
http://mainichi.jp/articles/20160823/k00/00e/040/178000c
■シー・シェパード、捕鯨妨害禁止で日本側と合意 米での訴訟決着 (8/23,日経/共同)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG23H40_T20C16A8CR0000/
■逆風続く調査捕鯨 豪、NZなど根強い反対 妨害禁止合意 (8/23,東京/共同)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201608/CK2016082302000245.html
■「妨害永久に行わない」合意に抜け穴…拠点移し、高速新造船を投入 ワトソン容疑者「南極海に戻る」と豪語(8/23,産経)
http://www.sankei.com/world/news/160823/wor1608230032-n1.html
■妨害禁止「一定の効果」 調査捕鯨、米シー・シェパードと合意=訂正・おわびあり (8/24,朝日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12525379.html

日本側が金銭を支払う一方(引用〜NHK)

 これを聞いて、誰もが一瞬「えっ!?」と耳を疑ったことでしょう。
 裁判で事実上勝っている被害者が、一体なぜ加害者に金を払う必要があるのか、と。
 ネット上では「盗人に追い銭」という感想が聞かれますが、盗人より暴漢に近いとはいえ、あながち間違いとも言い切れないでしょうね。
 NHKは同記事中、他紙も第二報で、今回の取り決めは米国以外のSSオーストラリア支部等には「適用されない」とする当事者のコメントを伝えています。
 「じゃあ、一体全体何のために金を払ったの??」と、疑問はますます膨れあがるばかり。

■捕鯨妨害「禁止」 この合意では安心できぬ (8/26,産経)
http://www.sankei.com/affairs/news/160826/afr1608260011-n1.html
■[捕鯨妨害禁止] 安全性は確保されるか (8/25,鹿児島新聞)
https://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201608&storyid=78229
■捕鯨妨害禁止、安全確保の取り組み続けよ (8/25,世界日報)
http://www.worldtimes.co.jp/opnion/editorial/71537.html
https://vpoint.jp/opnion/editorial/71203.html

 今のところのマスコミの反応はこのくらい。国民の抱く素朴な疑問とはおよそかけ離れた内容で、違和感は強まる一方です。なお、最後の世界日報およびビューポイントは統一教会系メディア。いかにもそれっぽい感じ・・。
 そんな中、唯一ごくまともなツッコミを入れてくれたのが、こちらのコラムニストの保科省吾氏。

■暴力集団シー・シェパードに日本側が和解金を支払う謎 (8/25,メディアゴン)
http://mediagong.jp/?p=18812
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160825-00010000-mediagong-ent&p=1

だが、なぜ正当な理由で得た賠償金を返さなければならないのか。さっぱり分からない。
民事裁判だから原告(鯨類研究所)被告(米のシー・シェパード)とも、なんらかの利があって双方合意したということか。では、日本鯨類研究所の利とはなんなのか。シー・シェパードのそれはなんなのか。
もっと調べないと真実は分からないが、筆者はシー・シェパードにも日本鯨類研究所にもある種の怪しさを感じてしまうのである。(引用)

 当事者である日本鯨類研究所(鯨研)および共同船舶(共船)とSSCSの発表をチェックする前に、まず上掲の朝日と産経の記事中の重大な誤りについて、指摘しておきましょう。
 朝日記事(農水担当野口陽記者)は、アナログ版では8/24の三面、かなり大きな扱いです。
 オンライン記事の方は「訂正・おわびあり」とあり、鯨研が写真した写真のキャプションが間違っている旨追記されています。ちなみに、野口記者が日新丸と間違えた補給船の名称はサン・ローレル号パナマ船籍で船会社は韓国だったりします。いわゆる便宜置籍船。この辺も日本の調査捕鯨のいかがわしさ。

国際司法裁判所(ICJ)は14年、捕獲数が多く肉を販売しており、実質的に商業捕鯨に当たるとの理由で、南極海での調査捕鯨を違法と判断(引用)

 捕鯨の賛否によらず、捕鯨問題・ICJ調査捕鯨裁判の経過をウォッチしてきた人は、この一文を見てあからさまに眉をしかめたことでしょう。実際、和田浦の外房捕鯨の社長である庄司義則氏も「この記述は明らかな誤りです」(引用)と指摘するほど。

■シーシェパード(SS)と日本鯨類研究所の和解報道に関連して (8/25,外房捕鯨株式会社)
http://gaibouhogei.blog107.fc2.com/blog-entry-761.html

 国際捕鯨取締条約(ICRW)8条のもとで副産物≠フ利用は認められており、従来日本の調査捕鯨の合法性の拠り所とされてきました。「肉を販売したこと」が「違法判断の理由」と書いてしまった野口記者は、捕鯨問題の基礎中の基礎もまったく勉強していないことが明らかです。
 ただし、庄司氏の次の主張も明白な誤り。

「ICJが日本の調査捕鯨が擬似的な商業捕鯨であると認定した」と誤った報道をすることにより(引用〜外房捕鯨ブログ)

 無知な野口記者と異なり、事情を知っているはずの庄司氏のコメントは狡猾な誘導といわざるをえません。外房捕鯨は現在IWCの規制対象外となっている日本近海のツチクジラとゴンドウを捕獲対象としており、本来なら南極海母船式捕鯨とは一線を画する立場であっていいはずですが・・捕鯨支持国向けのレクチャーを引き受けたり、侵襲的で硬直的な性格も含め、中央の捕鯨サークルとどっぷり一体化してしまっているのは、きわめて残念なことです。
 ICJは、JARPAUは「商業捕鯨モラトリアム違反」である、すなわち商業捕鯨だったとはっきり認定しています。そして、その証拠として、本川一善水産庁長官(当時)による「刺身にしたとき非常に香りと味がいいミンククジラを安定的に供給するため」との国会答弁を採用し、判決文にもきちんと明記されました。要するに、科学が主目的≠ナ鯨肉が副産物≠ナさえあれば、JARPAUは商業捕鯨ではなく合法的な調査捕鯨として認められていたのです。しかし、ICJは、鯨肉こそが主産物であり、その安定供給がJARPAUの主目的だったときっぱり認定したのです。
 読者の皆さんには改めて説明の必要もないと思いますが、詳細はこちら。

■ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html

 朝日記事に話を戻しましょう。
 「捕獲数が多く」も詳細な補足が必要。ナガスクジラやザトウクジラは捕獲数が少数ないしゼロでも「成果あり」としながら、クロミンククジラのみ大量経年致死調査が「不可欠」とする矛盾を日本側が説明できなかったことがその理由。詳細は上掲拙記事解説をご参照。
 判決後に「じゃあ、捕獲数を増やせばよかったんだ」と外野の捕鯨推進派が訴えたものの、日本はNEWREP-Aで対象種をクロミンク1種のみに絞ったうえ、捕獲数を333頭に縮小、ますます矛盾だらけになったのが実情です。

調査捕鯨を日本が続けるのは、鯨が増えていることを証明するデータを集め(引用)

 こちらも完全な間違い。NEWREP-Aの主目的は「RMPの高精度化」「生態系モデルの構築」。
 なお、クロミンククジラについては、IWC科学委員会におけるJARPAレビューの中で「調査期間中の増加の停止」が確認されています。
 いま「増えている」と日本側が主張しているのは、「商業捕鯨対象になりえる」との理由で唯一の捕獲対象としたクロミンククジラではなく、ザトウクジラとナガスクジラ。ただし、ナガスクジラについてはIWC科学委員会で生息数について合意されてはおらず、どちらも日本をはじめとする捕鯨会社の乱獲によって激減した状態から少し回復しつつあるとみられるだけで、「増えている」という言葉を用いるのは大きな誤解のもとです。
 詳細はこちら。

■間引き必要説の大ウソ|拙HP
http://www.kkneko.com/mabiki.htm

 続いて、おなじみパクリ記者佐々木正明氏がリオからわざわざ届けてくれた産経記事。ただ、朝日ほどひどくはないといえ、いつもの佐々木節でたいした中身はなく、適当に書いた作文≠ヌまり。

一方、ワトソン容疑者は最近、「フランスを出る」「南極海に戻る」などとの発言を繰り返しており(引用)

 佐々木氏はこんなことを書いているのですが、以下の海外報道が出た25日の2週間前には、当のポール・ワトソンは米バーモント州に入っていた模様。まともなジャーナリストだったら穴に隠れたくなるくらい恥ずかしいチョンボ。
 不思議でならないのは、こんなガサツな作文で原稿料を要求できる佐々木記者と支払える産経の神経。ろくに裏取りもしないで駄文を書く暇があったら、リオでちゃんと仕事すりゃいいのにね・・

■US anti-whaling group to stop interfering with Japanese (8/25,FOX NEWS)
http://www.foxnews.com/world/2016/08/25/us-anti-whaling-group-to-stop-interfering-with-japanese.html
■Sea Shepherd's Paul Watson Returns to the U.S (8/25,MarEx)
http://www.maritime-executive.com/features/sea-shepherds-paul-watson-returns-to-the-us

 マスコミ報道チェックはこんなところで、当事者の発表内容を検証してみることにしましょう。

■対シーシェパード訴訟での調停合意のお知らせ|日本鯨類研究所
http://www.icrwhale.org/160823ReleaseJp.html
■妨害差止訴訟・豆知識|〃
http://www.icrwhale.org/10-A-b.html
■米国第九巡回区控訴裁判所の法廷意見|〃
http://www.icrwhale.org/pdf/daikyujunkaihoutei.pdf
■米国第九巡回控訴裁判所・命令|〃
http://www.icrwhale.org/pdf/karishobunmeirei.pdf

 鯨研&共船v.s.シーシェパードの場外プロレスの経緯は、上掲2番目のリンクにあります。
 まず、2011年に捕鯨サークルの2角をなす鯨研・共船が米国のワシントン州米連邦地裁に妨害行為の禁止を求めて提訴。同地裁が仮差止命令の申し立てを却下したため、翌2012年に鯨研&共船側が第九巡回上訴裁に控訴。こちらで鯨研&共船側の言い分が概ね通ったわけです。
 その後SSCS側が命令を無視したため、法廷侮辱罪として賠償金255万ドル(約3億円)を課せられ、実際に連中は支払ったわけです。
 法廷侮辱罪の罰金は「原告の弁護士費用・経費及び被告の妨害により生じた損害」(引用) 3億円が懐に入ったといっても、決してまんまと大金をせしめたわけではありません。どんな裁判の賠償請求の場合も同じですが。
 つまり、船や機材などの修理代や弁護費用等にかかった実費分を加害者に払わせたはずなのに、その一部(金額不明)をわざわざ返してしまったのです。まさに保科氏の言うとおり、「さっぱり分からない」ですね・・。
 民事賠償請求で、そのような和解が一体起こりえるでしょうか?
 示談金(通常相当な高額)を加害者側≠ェ支払う代わり、刑事告訴を取り下げるという取引なら、よく聞く話です。しかし、このケースでは金を払ったのは被害者≠フ方なのです。
 暴行を受けた被害者側が、すでに裁判自体は勝訴目前(判決には至っていないものの、原告の主張に沿って差止命令を出した状態)のステータスでありながら、損害補填のために得た賠償金を「和解金」の名目で返すなんて話は、およそ聞いた試しがありません。
 朝日記事に写真があるとおり、13年に実害を蒙ったのは韓国企業が所有するサン・ローレル号。鯨研&共船がSSCSから得た賠償金は同号の補修費用に充てられるべきですが、こうなると彼らが本当に受け取れたのか疑わしくなってきますね・・。
 ちなみに、この3億円と同額の予算が「調査捕鯨円滑化事業」の名目のもとSSCS妨害対策費として2009年度から付けられ、その額は年を追う毎に膨れ上がって年間11億円を越え、東北大震災のあった2011年には復興予算まで流用して約23億円が確保されました。
 修理費用にも充てずSSCSに金を戻すくらいなら、国庫に返還するのがスジというもの。
 産経佐々木記者にしろ朝日野口記者にしろ、納税者の視点が圧倒的に欠如しているといわざるをえません。
 報道されているとおり、SS-AUSによる妨害は継続が考えられ、オーストラリアで米国と同様に司法による解決をはかることは不可能です。
 ちなみに、豪連邦裁による日本の調査捕鯨裁判の経緯については、下掲リンク先をご参照。まじめに賠償金を払ったSSCSと異なり、共船は豪裁判所の命令をガン無視。出廷要求にすら応ぜず。

【共同船舶はオーストラリア連邦裁判所法廷侮辱罪での罰金100万豪ドル(約8750万円)支払い命令を無視して未だ納めず】
http://textream.yahoo.co.jp/message/1834578/a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa/1/75954

 SS-USからの資金の流れがなくなるといっても、妨害の規模が縮小するという具体的な根拠は何もありません。産経佐々木記者は抜け穴≠ニ表現していますが、民事の取り決めにすぎず、日本の脱法調査捕鯨と同じ意味での国際法の網の目をかいくぐる抜け穴とは言えないものの、外れてはいません。新船はすでに建造済み、実行部隊はもともとAUS支部、支援者には寄付を直接そっちへ送るよう呼びかければ済む話で、SS側が実質的に困る要素はほとんどないと言っていいでしょう。つまり、今回の決定を受けて、国から安全対策にかける予算が減ることはないのです。日本国民には何の利益もないのです。
 一方、NEWREP-Aでは妨害による計画への支障を減じる万全の対策を講じている旨も、水産庁は公言しています。
 要するに、今回の当事者同士の表向きの和解は、情勢の変化を何ももたらすわけではないのです。
 当事者以外には詳細がベールに包まれたこの不可解な和解は、さらに大きな疑念を呼び起こします。

妨害禁止で合意したのは、訴訟費用がSSに重くのしかかったためとの見方がある(引用〜朝日)

 誰の見方なのか記事には書かれていませんが、朝日野口記者にこう耳打ちしたのは、鯨研・共船関係者に間違いないでしょう。
 しかし、2つの観点でこの見方≠ヘ決定的に間違っています。
 SSCSにとって少なからぬ費用負担となったのは、訴訟費用というより3億円の賠償金(大半は船等の損害賠償)のはず。産経・佐々木氏が以前記事にしていますが、オランダの宝くじ団体から入手した11億円が年間予算に相当するとすれば、3億円の損失は確かに痛いでしょう。
 ただ、弁護士委託等のそれ以外の訴訟関連費用より、南極海に船を送る妨害活動の経費の方がはるかにコストがかかります。反訴によって賠償金を減額させる、あるいは相手からも賠償金を得るという戦術も考えられるでしょう。敵≠ナある相手から金を受け取り、秘密の協定を交わしたうえで手を引くのは、SS流の直接行動をこれまでずっと支持してきたサポーターたちにとってみれば裏切り行為と映るもので、今回の和解自体が同団体のイメージダウンにつながり、寄付収入の減少の形で打撃を与えても不思議はありません。まさに本末転倒です。
 もうひとつ、もし本当に金がなくてSS側が困っているとすれば、なぜ鯨研・共船側から手を差し伸べてやる必要があるのでしょうか? SSCSが本当に財政的に行き詰まり、訴訟費用の負担に喘いでいるなら、鯨研・共船側から救済を申し出なくても、SSCS自らの判断で訴訟ないし妨害活動ないしはその両方を断念するでしょう。鯨研・共船側から、自分たちの蒙った損失分の補償金を返上してまで、彼らに援助≠オてやる理由は何もないはずです。共謀者でない限り。
 すなわち、SS側の不利益とは別に、鯨研・共船側にとってここで妥協を成立させておきたい強固な理由があるはずなのです。仇敵と握らなければ確実に失うもの、あるいはそうすることで得るものが。

本合意の詳細は、裁判所により公開された永久的妨害差止に関する情報を除いて合意条項に基づき対外秘となっている。(引用〜鯨研プレスリリース)

 鯨研・共船側から返還された額が相当大きかった──おそらく3億円の大部分が返ったのでしょう──疑いとともに、お互いにとってそうしたデメリットを補って余りある何かが、この密約の裏に隠されているのは否定の余地がありません。
 誰もがこう疑問を抱いて当然でしょう。

日本鯨類研究所の利とはなんなのか。シー・シェパードのそれはなんなのか(再引用〜メディアゴン)

 以下は筆者の推理。
 まず、SSCS側の大きな利について。


I am now free to travel in the USA and France(引用)

 これはワトソンの8/19のFB。まさに鯨研のプレスリリース直前のコメント
 それに対して、彼が「フランスを出たがってる」と書いてしまったお間抜けな産経佐々木氏が、悔しまぎれにつぶやいています。


米国は日本と犯罪人引き渡し条約を結んでおり、日本側が要求すれば米国はそれ相当の対応をしなくてはなくなります(引用)

 しかし、ワトソン本人の発信を見る限り、びくついている様子は微塵もなさそうです。米国が日本からの彼の身柄請求に応じること、あるいはそもそも日本からの身柄請求自体が来ないことを、確信したうえでの発言と受け取れます。
 むしろ、引退・代代わりもささやかれていたワトソンは、この春のタイミングでSS-USAの代表兼総責任者に復帰し、潮目が変わって℃ゥ由の身になったかの如く晴れ晴れとした風情で、当分米国に腰を落ち着けて任務に励むかに見受けられます。
 ちなみに、死刑存続国家である日本は、欧州諸国との間で犯罪人引渡し条約を結べず、条約を締結したのは米国と韓国のたった2国という先進国として恥ずかしいありさま。
 いずれにしろ、ワトソンがわざわざ直前のタイミングで自信にあふれるコメントを公表したことは、極秘事項の中に彼の身柄に関する事柄が含まれているのではないかという、強い疑念を呼び覚まします。
 というより、SSCS側にとって、南極海で捕鯨を継続している当事者との、金を受け取ることも含めて自分たちに不利を強いる取引に応じるだけの十分な利得があるとすれば、それは「ほぼ3億の返還」+「ワトソンの自由」以外に考えられないという気がするのです。

 では、鯨研・共船側にとっての大きな利とは一体何でしょうか?
 こちらの答えはより明瞭です。
 鯨研・共船側のねらい≠示すヒントは、彼らの発信している情報の中に隠されています。

反訴も含め正式に収束(引用〜プレスリリース)
連邦地裁に差し戻しとなった、永久差し止めの審理は、2016年10月11日に開廷の予定(引用〜鯨研リンク2番目)

 鯨研・共船の行動から明らかなのは、「金を払ってでも、今ここで和解しておく必要があった」ということです。
 では、もし仮に和解をしなかったとしたら、一体何が起こったでしょうか?

 ここで仮定を置くことにしましょう。
 まず、鯨研・共船側の主張が全面的に正しい場合。
 上述の流れで、暫定差止命令と同様に、SSCSに対して永久差止の判決が米連邦裁から下されることになるでしょう。和解による合意内容より厳しいものになった可能性さえあるでしょうね。
 それに対してSSCS側が反訴した場合。
 反訴の内容は、調査捕鯨船団側も人命に危害を加え得るLRADや放水による武力≠ナ応じ、自分たちにも被害が生じたとする主張を展開するものになるでしょう。
 ただ、それで狙えるのは損害賠償額の減額程度と考えられます。「先に手を出したSSCSが悪い」と米判事が判断すれば、それでおしまいでしょうね。
 鯨研・共船側にとっては、「自分たちも暴力をふるった」というエビデンスが残るマイナスイメージくらいで、マスコミを掌握できている間は国内で非難が高まる恐れはないとみていいでしょう。
 どちらもいま沖縄・辺野古で海保が、高江で機動隊が武器ひとつ持たない市民に対してふるっている圧倒的な暴力に比べればたいしたことではないと筆者は思いますけど・・。
 こうして裁判が鯨研・共船側ほぼ完全勝利の形で結審します。
 その後は、SS-USAと本部がそのまま加担し続ける形で、妨害活動が続行されるケースが考えられます。
 しかし、判決はすでに確定し、永久差止命令が下りているため、SSCSは妨害を行う度に法廷侮辱罪で罰金を命じられるでしょう。毎年、SSCS側は3億円を失い、日本側の懐には3億円が転がり込みます。しかも、再犯を繰り返すのは悪質との理由で罰金額は年を追う毎に引き上げられるでしょうね。また、米国内での公益団体としての認可は取り消され、非合法組織としての扱いを受けることになるでしょう。SSCSの台所事情が訴訟費用が痛手になるほどなら、存亡の危機に立たされるのは必至です。
 おや・・おかしいですね。鯨研・共船側にはまったく何のデメリットも存在しません。むしろ、願ったりかなったり。対策を十分に練ってある妨害を後数年だけ辛抱すれば、目障りな連中が勝手に自滅してくれるわけですから。

 次に、もうひとつの仮定に沿った展開を考えてみましょう。
 それは、鯨研・共船の思惑から逸れる、予想外の要素が裁判に付け加わった場合。
 そんなことがあるでしょうか? 主席判事がSSCSのパフォーマンスに対して「義足や眼帯がなかろうとおまえら海賊だ」と不快感も露に表明した以上、ひとつのきっかけで判決内容が覆ったりするでしょうか?
 実は、鯨研・共船にとって予想外の事態は、すでにあったのです。
 もちろん、米司法がSSCSの妨害を肯定することはないでしょう。どちらにしたって、SSCSの有罪はほぼ確定です。
 しかし、和解の形で終わらず、裁判がこのまま進行した場合、判決文は2013年2月に公表された控訴審の法廷意見の主旨とはまるで別のものに置き換えられることになるでしょう。
 そう・・その予想外の要素≠ニは、国際司法裁判所によるJARPAUの違法判決。
 賠償が課せられた期間は2012年/13年から2013/14年までの2シーズン、つまりJARPAUのとき。
 米連邦控訴裁の差止命令には、ICJの判断は一切加味されていないのです。シンプルに日本の調査捕鯨は国際法上合法だという前提に立っていたのです。

国際捕鯨取締条約の第8条は、締約国によって発給された調査許可に従って行われる場合、鯨類の捕獲を認めている。日鯨研は、日本からそのような許可を受けている。(引用〜鯨研リンク3)
捕鯨に関して公共の利益を定義している法は、捕鯨条約法と海産哺乳類保護法であり、両者とも捕鯨取締条約の下で発給された科学許可に従った捕鯨を認めている。日鯨研の活動はそのような許可の下で行われており、よって、海洋生態系に関する議会の政策と合致する。(引用〜鯨研リンク3)

 この部分は完全に差し替えを余儀なくされます。JARPAUは、ICRWと米国海産哺乳類保護法に背く違法行為であり、海洋生態系に関する米議会の政策に真っ向から反するものなのです。国際法の最高権威によって、すでにそういう判定が下りているのです。
 つまり、和解の形で途中で裁判を収束させず、続行させた場合には、10月のIWC年次総会が開かれるタイミングで、国民から忘れられつつある日本の調査捕鯨の違法性に、米裁判所による再認定という形で、改めてスポットライトが当てられることになるのです。
 そう・・それこそは、盗人に追い銭≠やってでも、捕鯨サークルとしては回避すべき事態なのです。ついでにいえば、NEWREP-Aに対して新たな妨害が企てられた場合には、その違法性が議論の焦点にならざるをえないでしょう。
 ICJ判決後、日本は調査捕鯨の看板を挿げ替えたり、国連のICJ受諾宣言の書き換えをやったり、国際司法判断からともかく逃げ続けてばかりいました。今回の一連の顛末も、蓋を開ければその延長にすぎなかったわけです。

 どう考えても被害者らしくない、まともな日本人の目にはあまりにも奇異に映る鯨研・共船の行動の裏には、「自分たちの違法行為を白日のもとにさらしたくない」というエゴイスティックな動機が働いていたと考えれば、皆さんもすべてがストンと腑に落ちるでしょう。
 捕鯨問題に詳しい環境外交のエキスパート・東北大の石井敦准教授は、捕鯨サークルとSSCS等の過激な反捕鯨団体の関係を指して「逆予定調和関係」と呼んでいます。
 今回の一連の経緯から、まさにお互い持ちつ持たれつ≠フ関係が改めて浮き彫りになったといえるでしょう。

   *   *   *

おかげさまで、HPリニュアル版、まとめ、ともに好評をいただいております。
引き続き周知にご協力くださいm(_ _)m

■クジラを食べたかったネコ
■「油目的で肉を捨てていた西洋と異なり、日本はクジラを余すところなく完全利用してきた」って本当?
posted by カメクジラネコ at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2016年08月07日

太地を庇って沖縄を脅す捕鯨族議員・鶴保氏のとてつもないダブスタ

 和歌山県選出の自民党参議院議員である鶴保庸介氏は、太地を地元に抱えるだけあって、捕鯨族議員の中でも最も活躍してきた族議員中の族議員のお1人といえます。
 あたかもシーシェパードと張り合うかのような彼の過激な見解については、当ブログでも幾度か紹介してきたとおり。
 この7月の参議院で4回目の当選を果たした鶴保氏は、今回の第3次安倍第2次改造内閣で初入閣、内閣府特命担当大臣 (沖縄及び北方対策、クールジャパン戦略、知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策担当)に。
 その鶴保氏、大臣就任早々、とんでもない発言で世間を賑わしました。

■「消化できないものお口に」 鶴保沖縄相、予算の減額示唆 (8/5,琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-329681.html
■安倍政権 「基地と振興リンク」方針 県民の批判必至 (8/5,毎日)
http://mainichi.jp/articles/20160805/rky/00m/010/007000c
■鶴保・沖縄北方相「振興策と基地問題、確実にリンク」 (8/4,朝日)
http://www.asahi.com/articles/ASJ845HW7J84ULFA00Y.html
■振興策と基地「大きな意味ではリンク」 鶴保沖縄相、振興に「手段尽くしたい」 (8/5,沖縄タイムス)
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/56004
■菅長官、沖縄振興予算の減額否定せず=鶴保氏は翁長知事と会談へ (8/5,時事)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016080500408&g=pol
■安倍政権の沖縄予算 減額方針 法の理念と乖離 (8/5,琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-329683.html

@「振興策と基地問題は確実にリンクしている」 (引用〜朝日他)
@’「基地問題によって、振興策の中身を含め変わっていくのは十分当たり前のことだ。そういう意味では、振興策と基地問題は確実にリンクしている(引用〜琉球新報)
@’’沖縄振興というなかで、沖縄の大変な割合を占める基地問題、それに関心のある県民感情、歴史的経緯で基地というものは避けて通れないだろう。そういう大きな意味では振興策と基地問題は確実にリンクしていると思う」(引用〜沖縄タイムス)
Aまた、親交があったという国際政治学者の若泉敬氏の「沖縄県民の苦しみに全国民が寄り添うことができないのは、政治としておかしい」との言葉を紹介。「志を継いであげたいとの思いがある。沖縄振興を第一義的に考え、ありとあらゆる手段を尽くしたいと意欲を示した。(引用〜〃)
B基地の問題に対する態度をリンクさせようとする情勢を私はつくりたくない(引用〜琉球新報2)
C「予算額を減らすのは当然。消化できないものを無理やりお口開けて食べてくださいよでは、全国民の血税で使われているお金を無駄遣いしているという批判に耐えられない」(引用〜琉球新報他)
D「お金は限られた資源だ」(引用〜時事)

 「基地問題と振興策はリンクさせない」としてきた政府のこれまでの立場を完全に覆す、沖縄からしてみればまさに掌を返す仕打ち。
 安倍政権の変節、約束破りはこれが初めてではありませんし、マスコミがそれらをスルーし、国民もいい加減慣れっこになってしまっているのが返って恐ろしいところなのですが・・。
 Cなどは、安倍政権の尖兵を買って出た新人大臣の勇み足にも映りますが、内容的には菅官房長官の4日の記者会見の発言を追認しただけにすぎません。
 従来の政府方針どおりなら、沖縄・北方担当相は防衛省と一線を画する立場で粛々と(菅官房長官語)振興のことだけ、「何が沖縄の人たちのためになるのか」だけ考えていればいいはず。そのためにこそ、沖縄・北方担当大臣という役職があるはず。
 鶴保氏は、就任初っ端から、他省の顔色を伺い、道を譲る姿勢を明確にしたわけです。早急に移設を進め、沖縄県内で米軍基地をたらい回しし、過重な負担を押し続けるためのカード≠ニして振興費をちらつかせるのが自身の役目だと、鮮明に示したわけです。
 てんでバラバラの仕事をつなぎ合わせた内閣府特命担当大臣というポストが、若手議員が本物の閣僚≠ノ昇る手前のステップ、見習い大臣%Iな役職にすぎないと象徴するかのよう。
 もっとも、すでに以下のような話も出ており、いまの日本のマスコミが健全だったなら、甘利元経産相同様糾弾されて、政治キャリアもここで詰んでいたかもしれませんが……。

■“スネ傷”4人が堂々と初入閣…東京地検が狙う新大臣の疑惑 (8/4,日刊ゲンダイ)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/187061

今村雅弘復興担当相(69)と鶴保庸介沖縄北方担当相(49)は、六本木や新橋のキャバクラの飲食代「政治資金」から支払っていた(引用)

■政治資金でキャバクラ支出/鶴保元国交副大臣の支部 ('14/11/28,四国新聞)
http://www.shikoku-np.co.jp/national/political/20141128000587

元国土交通副大臣の鶴保庸介参院議員(和歌山選挙区)が代表を務める自民党和歌山県参議院選挙区第2支部(和歌山市)が、女性が接客するキャバクラやラウンジの飲食代5回分、計約25万6千円政治活動費として支出していたことが28日、2013年分の政治資金収支報告書で分かった。
また12年の報告書でもラウンジやクラブの飲食代3回分、計約17万円政治活動費として支出していたことも判明。会計責任者は「誤解を招く支出だった」としている。
報告書や領収書によると、東京・六本木のキャバクラで13年2月に約8万8千円、6月に六本木の別のキャバクラ3万円などを支出。(引用)

 鶴保発言の細かい検証に入る前に、メディアとネットの反応を見てみましょう。

■基地問題とリンク 菅官房長官が「沖縄振興費」削減を示唆 (8/5,日刊ゲンダイ)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/187169

 「工事が進まなければ予算が少なくなるのは当然。跡地利用が遅れると、予算が少なくなっていくのは現実問題としてそうでないか」と語り、沖縄振興と基地問題をリンクさせないとしてきた政府の方針を事もなげに撤回した。
 今年1月に沖縄の基地負担軽減と振興策を協議する「政府・沖縄県協議会」の初会合では、振興策を基地問題とリンクさせないことを双方が確認していた。(引用)

■<社説>基地と予算リンク論 恫喝政治の表れだ 沖縄への揺さぶりやめよ (8/6,琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-330355.html

 安倍政権は法の精神をも踏みにじる。沖縄振興の根拠法である沖縄振興法には第1章第1条に「沖縄の自主性を尊重しつつ総合的かつ計画的な振興を図る」とある。辺野古の新基地建設について県知事や地元名護市長が反対し、選挙でも反対の民意が示されたのに、基地建設を進めようとするのは、沖縄の自主性を全く顧みていないということだ。(引用)

https://twitter.com/mas__yamazaki/status/761424262385192960
https://twitter.com/mas__yamazaki/status/761424744906301440
https://twitter.com/mas__yamazaki/status/761425191524151296
鶴保庸介沖縄・北方相は就任会見で「沖縄の振興策と基地問題は確実にリンクしている」と述べ、米軍普天間飛行場の同県名護市辺野古への移設作業が遅れた場合、沖縄振興予算を減らす可能性に言及(朝日)。言うことを聞かない者にはカネをやらない大臣
鶴保庸介議員という、沖縄問題への歴史的な理解がなく、テレビ討論では野党議員を馬鹿にする傲慢な態度を見せる人間を沖縄問題担当相に据えた安倍晋三首相の意図は、こういう無慈悲な政策を高圧的に実行できる資質を評価しての「配置」だろう。予算を人質に自国民を脅す政権を、民主主義とは呼ばない。
朝日新聞は、鶴保大臣の談話について「翁長雄志知事を牽制するもの」と書いているが、「予算額を減らすのは当然。消化できないものを無理やりお口開けて食べてくださいよでは、全国民の血税で使われているお金を無駄遣いしているという批判に耐えられない」等という暴言は「牽制」レベルの話じゃない(引用)

https://twitter.com/kimuratomo/status/761538592975953921
「消化できないものお口に」鶴保沖縄相、予算の減額示唆』政府に逆らう自治体は兵糧攻めだ。政府に逆らう者を当選させたら大損だぞ。いよいよ牙剥き始めた安倍政権からのこの恫喝メッセージ、一体どれだけの国民が他人事ではないと理解出来ているか(引用)

 おそらく、沖縄の市民の皆さんは、鶴保氏がどんな人物か、まだよくわかってらっしゃらないでしょう。
 しかし、筆者には、彼の捕鯨問題に対するこれまでの発言に実によく似ているなあと感じるのです。鶴保氏らしさがにじみ出ているとでもいうのか。
 一言で言うなら、非合理で支離滅裂。
 もうひとつ感じるのは、沖縄と、地元和歌山の太地町との扱いの間にある、途方もない落差。究極のダブルスタンダード

 鶴保氏のちぐはぐぶりは、上掲の5つの発言それぞれが真っ向から矛盾していることでもわかります。
 @は各紙が記者会見から見出し等に用いた、自民党・安倍政権の沖縄に対する立場を明瞭に示したもの。ただ、他紙が省いたその前段の部分を、沖縄の地元紙2紙が別々に取り上げています。
 @’(〜琉球新報)は、単に菅氏の発言をなぞって言い換えた形。一方、@’’(〜沖縄タイムス)は・・句点でつないだこの二つの文を読んだ沖縄の方々は、一瞬目が点になり、続いて腸が煮えくり返ったことでしょう。
 菅官房長官に歩調を合わせ、「基地と振興策の直接リンク」「振興予算の減額」をより明瞭な形で言い直した鶴保沖縄・北方担当相は、「県民感情」「歴史的経緯」にあえて触れたうえで、「予算額を減らすのは当然」「血税の無駄遣い」につないだわけです。
 過重な基地負担に喘ぎ、凶悪犯罪に打ちひしがれた「県民感情」、独立国だった琉球を併合され、太平洋戦争で戦場と化し、米軍に長らく占領され今日まで本土と異なる扱いを受け続けている「歴史的経緯」に配慮するならば、沖縄振興法の主旨に鑑みるならば、基地負担の減少が一向に進まず事実上の新設である県内移設を推進しながら、なぜ減額という形でリンクしえるのでしょうか?
 基地負担が確実に軽減され、県民感情が和らいだ暁には、振興予算の減額が検討されるのも道理でしょう。「そういう意味でのリンク」なら、沖縄の皆さんも納得するでしょう。
 菅氏の発言には、シンプルに沖縄の「県民感情」「歴史的経緯」より「日米安保」を優先するという血も涙もない合理性≠ェ見て取れます。
 それに対し、鶴保氏の発言はわけがわかりません。「なだめ役」「ごまかし役」ですらないのです。
 @’’とCの、沖縄県民の神経を逆撫でするばかりの発言は、政権の立場から見てさえ、「まったく言う必要のない余計な一言」以外の何物でもありますまい。
 同様にAとC、鶴保氏自身の発言と、彼が引用した若泉氏の発言を並べてみましょう。

「沖縄県民の苦しみに全国民が寄り添うことができないのは、政治としておかしい」
「全国民の血税で使われているお金を無駄遣いしているという批判に耐えられない」

 これが「志を継い」だ人間の発言だと、皆さんは思いますか?
 同一人物が、同日の記者会見の席でした発言だと、皆さんは信じることができますか?
 Bも、@、Cを平然と言ってのけた人間が、同じ口で何の憚りもなく発せられるということ自体、信じがたいことです。
 彼は、発言の整合性を取るということが、ひとつの記者会見の中でさえ出来ない人物といえます。もちろん、会見中に多少の齟齬が見られるのは、どれほど高い学歴を持つ政治家でも同じですけど。
 しかし、彼の発言には、沖縄の人たちを煙に巻くという意図さえも感じられず、ただひたすら支離滅裂な印象を受けてしまうのです。
 これは一種の二重人格なのでしょうか?? 首相に対しては自己愛性パーソナリティ障害という分析もありますけど・・。
 というより、筆者には、脈絡を考える気/能力のない人間が、つらつらと言葉を発しただけとしか思えないのです。単に沖縄のことを真剣に考えてなどいないだけで。
 そして、その背景には、仮想敵相手の言葉遊び・ディベートごっこでやり込めた高揚感に浸る反反捕鯨思考──竜田揚げ脳の影響があるように思えてならないのです。

 鶴保氏のこの迂闊な発言は、菅氏の発言・安倍政権の方針が内包する大きな矛盾を赤裸々にさらけ出してくれました。もう気づかれた方も多いでしょう。

■復興予算 34%使い残し 15年度 事業遅れ1.9兆円超 (7/30,東京)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201607/CK2016073002000133.html
■<復興予算>34%未執行 用地取得の調整難航 (7/30,河北新報)
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201607/20160730_71014.html
■復興予算9兆円が未使用 11〜14年度、検査院調査 (4/7,朝日)
http://www.asahi.com/articles/ASJ455JF4J45UTIL039.html

 さて、震災の被害を受けた東北の皆さん。とりわけ福島第一原発事故による放射能汚染の影響を被った福島の皆さん。
 復興相「予算額を減らすのは当然。消化できないものを無理やりお口開けて食べてくださいよでは、全国民の血税で使われているお金を無駄遣いしているという批判に耐えられない」と鶴保氏とまったく同じことを言われたら、皆さんはどう感じますか?
 事業が遅れたから、「住民合意といった調整が難航」(毎日)したから、「予算額を減らされるのは仕方がない」と納得しますか?
 「沖縄と東北は違う」? もし、そう言われたとしたら、沖縄の皆さんはどう感じますか?
 福島の皆さん。もし、復興予算に関して、「福島第二原発の再稼働」「県内の原発新設」を条件にされ、受け入れなければ「復興予算の減額は当然」と迫られたら、皆さんはどう思いますか?
 国の安全保障のために米軍基地という迷惑施設を押し付けられた沖縄と、首都圏への電力供給のために原発という迷惑施設を押し付けられた福島と。そこに共通する差別の構造を指摘する声は前々からありました。そのどちらも、住民・現地企業を懐柔する振興名目の補助金とリンクしていた側面があったのも確かでしょう。
 いずれにしろ、これで沖縄に突きつけられたものが、偏に沖縄だけの問題だけではないということを、国民の誰もがはっきりと悟ったことでしょう。鶴保氏の発言によって。
 医師きむらとも氏の「いよいよ牙剥き始めた安倍政権からのこの恫喝メッセージ、一体どれだけの国民が他人事ではないと理解出来ているか」という言葉が、ずっしりと重みを伴って聞こえます。

 本来ならば、鶴保氏は沖縄・北方担当相の立場から、消化しきれなかった予算額は翌年度に繰り越したり、改めて沖縄振興事業に充当するなどの手を打つべきだと、菅官房長官に対して進言すべきだったはずです。東北の復興予算においてそうした措置がとられているように。
 しかし、鶴保沖縄・北方担当相は、あくまで沖縄県民の苦しみに寄り添うどころか、「消化できないものをお口に」云々と沖縄県民を嘲り、居丈高な菅官房長官語とダブルで追い討ちをかけたわけです。
 もし、本土の東北・福島に対してできることを、沖縄に対してやらないとするならば、そこにあるのは厳然たる差別にほかなりません。

 鶴保庸介殿。沖縄・北方担当相として沖縄という地域を代弁することなく、国の権威の側に立ち、沖縄の主体性を尊重せず県民の感情を踏みつけにすることが、なぜあなたにできるのですか?
 山崎雅弘氏のツイート「沖縄問題への歴史的な理解がない」との指摘は、鶴保氏が「歴史的経緯」という言葉を口にしながら「減額は当然」と言い切ってしまえることだけでも明らかですが、問題は彼が「沖縄に疎い」「歴史に疎い」の一言では片付けられません。
 沖縄の皆さんにぜひとも読んでいただきたいのが、彼が地元の地域紙わかやま新報にスペースを作ってもらって発信している以下のブログ記事。

■捕鯨文化を粘り強く発信 佐々木さんの映画制作に支援を ('15/7/22,わかやま新報)
http://www.wakayamashimpo.co.jp/2015/07/20150722_52442.html

こうしたことが続く欧米社会とは永遠に分かり合えないのではないかという不信感、そして埋めようのない価値観の違いに絶望感すら抱きます。安全保障法制が議論されている昨今、今後こうした欧米社会と価値観を共有し、さまざまな事態に連携して対処していくことができるのだろうか、とは私の考えすぎでしょうか。
イスラムの問題をひきあいに出すまでもなく、自分たちの価値観を押し付けることこそ世界の平和を乱すものである、という強い信念で、われわれの文化や考え方を押し付けるのではなく、粘り強く発信し、理解を求めていくしかないのだろうと思うのです。
例えば同性婚について、これまでさまざまな迫害がありましたが、連綿と続く努力のなかでいまや世界的に容認の方向であるといっていいでしょうし、少なくとも今現在認めていない国々に対して認める国が圧力をかけたり、不満を表明したりすることはないでしょう(引用)

■大物活動家の入国を拒否 史上初の処置、法定化も視野に(2/9,〃)
http://www.wakayamashimpo.co.jp/2016/02/20160209_58092.html

それが怖くて行政は滅多に入国拒否という強硬手段に訴えることはありませんでした。私はこれまで何度も何度も法務大臣にこうした慣例を破るよう迫ってまいりましたが、今回が初めての処置と成りました。(引用)

 上の同姓婚云々の、あまりにも支離滅裂すぎて意味不明(事実にも反する)のトンデモ持論については、以下の記事中の解説をご参照。

■オーストラリアは本当に庭先の自然を荒らす海の無法者&゚鯨ニッポンから潜水艦を買うの?|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/170101475.html

 鶴保氏は国交政務官等は務めてきましたが、農水の政務官・副大臣は歴任していません。
 しかし、太地の捕鯨・イルカ猟のためなら、法務大臣に「慣例を破るよう」迫ることはできるわけです。
 国際司法裁判所の調査捕鯨違法判決直後に鯨肉カレーパーティーを開き、調査捕鯨の非科学性を精一杯世界にアピールしてみせた自民党捕鯨議員連盟の中心メンバーの1人(幹事長代理)として、彼は精力的に活動してきました。
 海外の活動家1人の入国手続に関して法相にまで圧力をかけたのは、上掲のブログでご本人が口にしているとおりですが、これ以外にも、他の捕鯨族議員とともに国の捕鯨政策を左右していたことは疑いの余地がありません。
 水産官僚が日新丸改修のために南極海調査捕鯨の1年休漁を検討していたときに「けしからん」と怒鳴りつけたり、民間団体であるJAZA(日本動物園水族館協会)を呼びつけてWAZA残留の経緯について説明を要求したりしたときも、きっとその場にいらしたことでしょう。

■「反捕鯨陣営」に逆襲する日の丸 ('15/6,FACTA)
http://facta.co.jp/article/201506030.html

鶴保議員は国際的な法律事務所の有力弁護士と議論を重ねるだけでなく、「海外での訴訟経験が豊富な大手企業も回り、世界を相手にした法廷闘争やPR合戦のノウハウを蓄積している」(自民議員)とされる。(引用)

 三軒太地町長いわく外堀≠ナある南極海調査捕鯨を死守するために、ここまでやれてしまうのが鶴保議員なのです。
 太地の捕鯨に寄り添うあまり、「安全保障法制が議論されている昨今、今後こうした欧米社会と価値観を共有し、さまざまな事態に連携して対処していくことができるのだろうか」という、内閣の一員に加わるはあまりに強烈で意味深な言葉をわざわざ口にしてしまえる人物なのです。
 今回の記者会見で、「消化できないものを無理やりお口開けて食べてくださいよ」とか、「資源」などという言葉が口をついて出てしまったのも、クジラが一番弁舌をふるう機会の多いネタ、彼の十八番だったからでしょう。

 皮肉なことですが、調査鯨肉はJARPAIIの無理な増産が祟り、鯨研/共同船舶がイベントで無料で配布したり、あの手この手の販促PRを展開しても国民にそっぽを向かれ、過年度在庫が積み上がり、鯨研自身も債務超過に陥ったことを水産庁も正直に白状しているとおり。「消化できないものを無理やりお口開けて食べてくださいよでは、全国民の血税で使われているお金を無駄遣いしているという批判に耐えられない」という彼の台詞は、調査捕鯨事業にこそピタリと当てはまるものだったのです。
 そして、予算云々に関して言えば、今年度政府予算で宛がわれた捕鯨関連予算はなんと51億円。なんと前年度比2.5倍を超える金額です。TPP関連の一部を除き、農水予算でここまで至れり尽くせりの大盤振る舞いを受けている分野はありません。しかもこれ以外にも水産外郭団体による別立ての基金が27億円用意されています。
 沖縄振興予算の方は3350億円ですが、調査捕鯨予算の拠出先は従業員300人程度の1事業所(鯨研&共同船舶)が中心なのです。沖縄県民143万人と比べるなら、振興予算を百倍の30兆円にしないと釣り合いません。

 どうして鶴保氏は、南極産美味い刺身のために多額の予算を付けたり、米国やオーストラリア、国際司法裁判所にあの手この手で対抗したり、活動家を追い払うため法相に慣例を破るよう要求することはできるのに、沖縄に対しては「予算額を減らすのは当然」とまで冷淡になれるのでしょう? 反捕鯨団体の監視とは比較にならない、まさに人権侵害以外の何物でもない機動隊や海上保安庁の暴力に苦しめられる高江・辺野古の市民を守ってくれないのでしょう?
 ひとつはっきりしているのは、鶴保氏にとっての優先順位が「太地>>米国>>沖縄」だということ。
 彼が差別してるのは人≠ナす。
 クジラやイルカと「猿」と「馬」と「カラス」ではなく。
 それらの動物を平等≠ノ殺すためなら、様々な機関に政治的圧力をかけることも辞さないが、同じ日本の中で同じ人である沖縄の人々がかくも理不尽な差別的待遇を受けている事実に対し、闘うことをしようとはしない政治家なのです。

 鶴保氏の素朴にすぎる捕鯨美化の意識がこの先変わることがあるとは思いません。「南半球の人々に身勝手で傲慢な価値観を押し付け、南極の自然に欲をかくのはやめてほしい」と頼むだけ無駄でしょう。
 しかし、沖縄・北方担当相のポストに就いた以上、県民の心を踏みにじる無知で無神経な発言を繰り返すことは二度と許されないはずです。そこは捕鯨の是非とリンクする話ではありません。
 少なくとも、強大な敵≠ニ闘っている点で、太地と沖縄には共通点があります。もっとも、沖縄との大きな違いは、太地にはそれを上回るさらに強大な味方がついているということですが。
 太地を守るために発揮している政治的豪腕を、沖縄のために行使することは、鶴保氏には可能なはずです。できないはずがありません。
 それをしないというのなら、日本の独善的な捕鯨政策を裏で支える国会議員の沖縄に対する究極のダブスタが、調査捕鯨や太地のイルカ猟に関心のある世界中の人々にもいずれ知れ渡ることとなるでしょう。それが太地のためになるとは、筆者には思えません。

関連リンク:
■沖縄を切り捨て太地を庇う、自民党と日本政府のすさまじいダブスタ|拙ブログ過去記事
■米大使ツイート騒動|拙ブログ過去記事
■激論!コロシアム【イルカが消えるだけじゃない!?日本を追い込む"やっかいなニュース"の真相!】(2015.6.13放送)
http://togetter.com/li/834969
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2016年08月03日

びっくり仰天、都合の悪い事実に蓋をする非科学的な水産庁広報資料

 水産庁が実に驚くべき資料を立て続けに公表しました。


 上の資料は、「水産基本計画の変更」について審議するべく、7月13日に水産庁で開かれた水産政策審議会企画部会で使用されたもの。
 そして、下の資料は、農水省ホームページにもあるとおり「消費者の皆さん、農林水産業関係者、そして農林水産省を結ぶビジュアル・広報誌」(引用)。ちなみに、編集を下請けしているのはKADOKAWA。
 何が驚き≠ゥといって、水産資源状態の枯渇とそれに伴う国際規制強化の動きについて、乱獲の当事者である日本の漁業者とそれを監督する責任のある水産庁ではなく、別の誰かの所為にしていること。
 その誰か≠ニは、具体的にいうと「外国(中国・台湾等の周辺国および島嶼国)」「環境保護団体」そして「クジラ」──。

 上掲のファイルをもとにツッコミを入れていきましょう。まずは審議会資料の方から。
 プレゼン3ページ目、真ん中の段、1番右と左、「科学的根拠に基づかない規制」「『環境保護』勢力の圧力増大」は言っていることがほとんどダブっていて2つに分ける意味がありません。まあ、強調したかったんでしょうが・・。
 そのうえ、3番目は科学的根拠に基づ≠ゥず、札束外交・力ずくで言うことを聞かせるやり方を掲げているのですから、自己矛盾もいいところ。
 捕鯨に関しては、「科学的根拠に基づく生物資源の利用全体の観点も見据え、調査捕鯨の継続による商業捕鯨を再開」と、なにやら国語の苦手な中学生の作文状態・・。
 「U−2.太平洋マグロの国際的な資源管理」、【課題】で日本自身の乱獲に一言も触れられていません。
 最大消費国として重い責任を持つはずの日本が、経済規模でも漁業への依存度でも比較にならない太平洋の小さな島国にその責任をなすりつけている図は、みっともないの一語に尽きます。
 前月には同じ企画部会で国内の資源管理について議論がなされ、クロマグロについてもちょびっとだけ触れられましたが、大手巻き網の産卵親魚漁獲集中問題への言及はなし。
 実はこのとき、企画部会委員でもある全漁連常務理事の大森敏弘氏が、とんでもない意見を述べています。


 気候変動、外国漁船の影響のほか、開発行為等、水環境政策など、さまざまな資源の変動要因があるのではないか。これらをしっかりと分析・評価する精度をあげる研究をしていくべき。その上で、漁業者の乱獲が減少要因であれば、厳しい管理措置の実施も何ら避けるものではない。(引用)

 大森氏自身が下線で強調しているこの指摘、言い換えれば「自分たちの責任だとはっきりしない限り、いくら魚が減っていようと規制は受け入れず獲り続けるぞ」ということ。
 つまり、全漁連役員の用いる「持続的」という言葉は、水産資源の持続性を保証するという意味でないのです。
 これは非持続的な乱獲志向の大手事業者に常に寄り添う業界団体幹部の認識であり、日本のすべての漁業者の皆さんがそういう感覚に縛られているとは思いませんが・・。
 密漁に関わる日本の裏社会、あるいは温室効果ガスを大量に放出する産業界の責任を追及し、減船や漁獲削減に対する補償を求めたり、国に実効的な規制を要求するのは、至極正当なことでしょう。
 しかし、「じゃあ、俺たちも獲り続けるよ」というのは、海の自然・魚と長年つきあい、配慮してきた人たちの口にする言葉ではありません。
 例えるなら、全漁連のこの指摘は、気候変動による高潮で国土が水没しつつある島嶼国が、「俺たちの責任じゃないんだから、俺たちはCO2をガンガン排出し続けるぞ」と、無頓着に自国を沈めたがるのと一緒です。
 してみると、翌月の審議会で配布された国際管理に関する資料が、すべての責任を日本の漁業者以外に押し付ける内容になっているのは、業界団体の不満を和らげるガス抜きの配慮と見て取れるわけです。
 なお、クロマグロの問題については、漁業問題に精通する茂木陽一氏のブログの解説を合わせてご参照。

■生クロマグロ水揚げ日本一の境港を訪れて
http://uminchumogi.blog111.fc2.com/blog-entry-455.html

 で、P18からが捕鯨。相変わらず部門の規模に似合わない大きな扱いですが・・。

(注1)環境NGOの活動はその後、公海流し網漁業の禁止、マグロ延縄漁業による海鳥の混獲問題、クロマグロやサメの貿易規制提案等、他の漁業・魚種に拡大(引用)

 P19中のこの一文にはもう笑うしかありません。なぜって?

■(資料2) 漁場環境の保全及び生態系の維持|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/shingikai/pdf/pdf/61data2.pdf
 
 上掲はまさに同じ企画部会で使われたもう一つの資料
 P5に「生物多様性に配慮した漁業の推進」と題して海鳥やウミガメに対する混獲削減に向けた取り組みと一層の改善の必要性が紹介されています。
 そう・・混獲問題に関しては、日本の研究者も米国等海外と協力し、まさに科学的根拠に基づ≠「て、漁業者・国民の理解を求めているところなのです。
 ところが、水産庁自身も率先して漁業者に呼びかけているハズのこうした取り組みに対し、同日に配られた資料1の総論と上掲の記述はまるで「環境保護団体の圧力で、科学的根拠に基づかず仕方なくやる羽目になった」とでも言いたげな様子。
 実際には、環境NGOの指摘に基づく海洋生態系保全のための国際共同研究とは対照的に、科学的根拠に基づかない=A科学≠フ皮をかぶった美味い刺身目的の調査になっているのこそ、調査捕鯨なのです。
 その証拠に、P20は非科学的な珍説のオンパレード。
 環境外交の専門家・早大真田氏もばっさり斬り捨てています。


水産庁の新方針、「クジラのせいで魚が減っているのだ。クジラがどのくらい餌を食べているかはお腹を割いてみなければわからないのだ。だからクジラを科学調査目的でとるのだ」という国際司法裁判所の口頭弁論でもでさんざんけちょんけちょんにされた例の説をまたもや大々的に開陳(p. 20)。
「おなかを割かないと何を食べたかわからない」という理屈に対しては、勿論「じゃあ、なんで特定の種類のクジラばっかりとっているんだろうね。北太平洋で魚など食べ物を食べているのは、日本の調査捕鯨の理屈では、特定のクジラだけなんだ。φ(`д´)メモメモ… 」と外国の科学者たちからこき下ろされている今日この頃です。(引用)

 世界中の研究者から白い目を向けられるようなプレゼン資料を、よりによって国の所轄機関が発表してしまうとは、なんとも恥ずかしい限りです。
 ラッコ先生に倣い、筆者も個別にチェックしてみましょう。

増加したクジラによるこの捕食行動が、漁業に深刻な影響を与えていると懸念されている。(引用)

 まず、「クジラが増加した」という表現が科学的にはきわめて不正確。
 正しくは、「商業捕鯨の乱獲によって激減した鯨種のうち、捕獲禁止後一部は回復に向かっているとみられる」です。
 そして、「漁業に深刻な影響を与えている」ことを立証する論文はどこにもありません。
 まさに非科学的な懸念そのもの。放射脳≠ネらぬクジラ食害脳なのです。
 間引き説を唱えた捕鯨御用学者・大隅氏らが、「鯨類は○○トンの魚を食べる」という、科学リテラシーの弱いネトウヨに受けそうな珍説を披露しましたが、これは南極のオキアミも非商業漁獲対象種も全部ぶっ込んだ数字。
 いずれにしても、数字は「深刻な影響」を意味しません。
 クジラと同じように科学的には意味のない、分類群による大雑把な推計を挙げるなら、魚もイカ等の無脊椎動物もトータルでは鯨類の捕食量を圧倒的に上回ることでしょう。魚(商業漁獲対象種)と魚(非商業漁獲対象種)を分けても、やはり同様にクジラの上をいくでしょう。
 単位体重当り摂餌量で比較すれば、代謝の高い鰭脚類や海鳥類が鯨類を上回ることも確実です。これは食害の効果≠ェより高いことを意味します。
 付け加えれば、資料2には「有害生物による漁業被害防止対策の推進」の項もあるのですが、そこに記載があるのは大型クラゲ・トド・ザラボヤのみ。クジラへの言及はありません。
 まじめな研究者であれば、水産庁所属であっても否定するのが当たり前の話なのです。

 水産庁は、生態系を構成する野生動物にすぎないクジラを、まるでエイリアン、ヒトに対抗する文明種族か何かのように、「クジラと漁業の競合」を掲げています。
 「生態系の一部であるクジラ」と、経済の論理で動く人間の「漁業」とでは、天と地ほどの開きがあります。
 水産庁が故意に狙った$}説に対抗すべく、こちらもなるべくわかりやすいよう図を用意してみました。

oomachigai.png

 食害論については、先日更新したこちらのまとめとリンク先をご参照。

■間引き必要説の大ウソ|拙HP
http://www.kkneko.com/mabiki.htm

 トンデモ図説の隣、P20の右側について。
 文章自体を正しく直してあげましょう。このプレゼンを作成した庁の担当者が国語と水産学双方に疎いとしか思えないのですが・・

2.このため鯨類資源調査においては、致死調査の一貫として、鯨類の胃内容物を調査。
  鯨類資源調査の主目的
(1)致死調査の例
  致死調査によってわかる情報
●資源の構成(耳垢栓による年齢組成分析など)
●系群の分布(組織サンプルの遺伝解析)
●摂餌生態(胃内容物)
(2)非致死調査の例
  非致死調査によってわかる情報
●資源量(目視による個体数推定)
●資源の構成(組織サンプルの化学分析)
●系群の分布(組織サンプルの遺伝解析)
●摂餌生態(組織サンプルの化学分析、バイオロギング)

 筆者が青字で付け足した、水産庁が省いた項目について補足。
 RMP(改訂管理方式)では年齢構成の情報自体不要。日本はこれを調べる目的を掲げて調査捕鯨をやっていますが、そもそも「必要不可欠」な作業ではないのです。日本の主張する精度の改善とは、「調査捕鯨のデータを活用すると、もしかしたら捕獲枠を1割くらい増やせるかもしれない」という話で、商業捕鯨再開の前提でも何でもありません。そのために必要な年齢査定は、DNAメチル化技術で非致死調査によっても可能。後は精度の問題。その精度でなければならないという理由もやはりないのですが。
 摂餌生態については、胃内容物調査はその場限りのスナップショット的情報しか得られないため、むしろ非致死調査の脂肪酸解析の方が優れています。

 続いてP21。
 「イルカはIWCの管理対象外」とあるのは間違い。正確にはまだ規制対象外」。小型鯨類も国連海洋法条約のもとで国際機関が管理するのがスジですが、現在できておらず、IWCできちんと管理・監視すべきだという議論が続いています。
 「科学的根拠に基づく適切な資源管理の下で実施」
 現行では日本の独断で管理しており、イシイルカ等で適用されている管理方式(PBR)を太地の追い込み猟の対象種に対しては恣意的に適用しないなど、科学的にも大いに問題があると批判を受けています。
 「反捕鯨団体による妨害活動」について。
 日本側もLRAD、放水等人命に関わる応戦をしているので五十歩百歩。いずれにせよ、いま沖縄の辺野古や高江で海保と機動隊がやっている非人道的・暴力的な行為に比べれば百倍も千倍もマシ。
 「イルカ漁業への抗議・妨害」について。
 太地イルカ猟関係者はWAZA/JAZAに嘘をついて「生体用と食用の捕獲を分ける」という約束を破ったり、ハナゴンドウの捕獲枠を超過した疑いがあるなど、甚だ信用が置けません。監督者でありながら物申すことができない県・水産庁の責任でもあります。
 世界イルカデーの行動は合法的な市民のデモ。
 先進国であれば市民誰にでも認められた権利です。アイヌの存在そのものを否定したり、在日外国人に対し「殺せ」「レイプしろ」と叫んで子供の安全を脅かす卑劣で陰湿な極右団体のヘイトスピーチとは次元が違います。在特会は(勝手に?)何度か太地に捕鯨・イルカ猟の応援に入っていますが、水産庁は沈黙を守っています。これでは水産庁自身の人権感覚が問われても仕方ありません。
 これは同時に、以前と異なり、過去に日本の捕鯨会社が犯した乱獲や密猟という大きな過ちを認めるどころか、嘘で塗り固めて否定しようとする歴史修正主義と相まって、国際社会に対する日本の国全体のイメージを大きく失墜させるものといえます。

 まとめのP22「基本計画における方向性」
 この1ページだけで「科学的根拠に基づく」と4回も連呼しているのが可笑しくなってしまいます。トンデモ図説のせいで台無し。
 従来の捕鯨政策の延長で、とくに目立った変化はないのですが、今まで以上に北朝鮮を髣髴とさせる硬直した姿勢が見て取れます。
 「生物資源全般の科学的根拠に基づく持続的な利用」を謳うなら、南極の自然に手を出す前に日本がやるべきことはあるはずです。

(1)なぜICJ判決で負けたか、国民にきちんと説明し、責任を果たすこと。
 国民に対して嘘をつき続けるのをいい加減やめ、水産庁トップの「美味い刺身の安定供給のため」発言によって自ら首を絞めたことを明示すること。

(2)公海調査捕鯨をただちにやめること。
 NEWREP-Aの続行は、日本に「国際法的・科学的な正当性」がないことを証明し、世界の信頼を失うばかりです。

(3)南極のクジラ殺しのみを神聖視するダブスタをやめること
 オオハクチョウやキタオットセイやハダカイワシ、多くの昆虫、食用に適さないわけではなく市場がないという理由で網にかかりながら遺棄される多くの魚等、クジラと同じ意味において科学的・持続的に利用可能でありながら日本が現在(ほとんど)利用していない生物資源はいくらでもあります。
 少なくともそこには、南半球のたくさんの人々が生態系サービス・非消費的な経済的価値に浴している野生動物をよそから乗り込んで強奪していく行為によって生じる、彼らの感情を逆なでし、生かす文化≠踏みにじり、友好国との外交関係に支障を来たすという、きわめて高い障害はありません。
 筆者自身は無理にやれというつもりはありませんけど……。

(4)乱獲体質を改め、真の持続的水産業先進国へと脱皮すること。
 日本には水産物の持続的利用で世界を仕切り、発展途上国を指導する資格などまったくありません。
 論より証拠、世銀レポートでも、漁業生産で世界平均23.6%の成長が見込まれる中、唯一日本のみがマイナス成長(-9.0%)と予測されている国なのです。
 日本は持続可能な漁業のできない落第生≠ナあることを示す何よりの証拠。国民に対して嘘をつき続けるのは、北朝鮮にも劣る、先進国としてあまりにも情けないことです。

■世界漁業・養殖業白書 2014年(日本語要約版)|FAO
http://www.fao.org/3/a-i3720o.pdf
■世界銀行レポート FISH TO 2030:世界の漁業は成長し、日本漁業のみが縮小する|勝川俊雄公式サイト
http://katukawa.com/?p=5396

 V章の「海外漁業協力等の推進」、札束外交については、以下をご参照。

■捕鯨推進は日本の外交プライオリティbP!? ──IWC票買い援助外交、その驚愕の実態──|拙HP
http://www.kkneko.com/oda1.htm

 さて、P22の最下段、「政府広報の展開、国内・海外へのマスコミの情報発信のやり方を工夫」の一環といえるのが、農水省広報誌affの鯨特集。
 引き続き、ざっとaffの記事をチェックしていきましょう。

 P1、「日本遺産に認定された鯨と生きた人々の物語」
 日本遺産認定に関しては以下の記事を参照。残念ながら、太地をはじめとする古式捕鯨も、やはり持続性のない乱獲の歴史に他なりませんでした。

■哀しき虚飾の町・太地〜影≠フ部分も≪日本記憶遺産≫としてしっかり伝えよう!|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/175388681.html

「畏敬(いけい)と感謝の念を持ち大切に利用されてきた鯨」
 従来はアイヌの捕鯨につながる縄文時代の真脇遺跡の例を挙げるケースが多かったのですが、次頁も含め見当たりませんね・・。代わりに登場したのが壱岐・原の辻の遺跡からの出土品。
 ただ、同地方は大陸・朝鮮半島由来の出土品が多く、捕鯨技術もおそらく大陸からもたらされたものでしょう。鯨と船(?)が線刻されたと見られる土器は紀元前1世紀のもので、時期的にも新宮の徐福伝説と重なります。

■太地の捕鯨は中国産!? 捕鯨史の真相|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/18025105.html

 短いうえに強引にまとめた段落ですが、捕鯨問題ウォッチャーは既にご承知のとおり、日本人はこの文章のように単純化された畏敬と感謝の念のみでない、もっと複雑に入り乱れた感情をもってつきあってきたのです。
 江戸時代初期から捕鯨の乱獲と非人道性に対する批判もあれば、仔鯨殺しへの悔恨の情もあれば、「鯨一つ捕れば七浦枯れる」と戒める地域もあったのです。
 そして、鯨油を売って外貨を獲得することしか頭になかった戦前の捕鯨会社は、南極海で獲ったクジラの肉の大半を捨てていました。大切に利用してきた民族がやることではありません。

■鯨供養碑と仔鯨殺しに見る日本人のクジラ観の多様性|Togetterまとめ
http://togetter.com/li/977982
■真・やる夫で学ぶ近代捕鯨史|拙HP
http://www.kkneko.com/aa1.htm

「捕鯨の近代化と環境保護主義の台頭」
 規制と環境保護の台頭を自ら招いた日本の捕鯨産業による乱獲と密猟について、一言も言及がありません。
 「食料難に苦しんでいた日本人を救ってくれたのが南極海の鯨」に対し、恩を仇で返すとはまさにこのことです。ライターの下境氏の責任ではなく、すべては捕鯨サークル・水産庁が悪いのですが・・。

P2、「畏敬の念を示す祭事や史跡のシンボル」として、ここで北海道のモヨロ貝塚が紹介されていますが、日本という国は先住民アイヌに対して畏敬を示すことなく、和人よりは持続的で歴史の長かった彼らの伝統捕鯨を強制的に廃止させたのです。

■倭人にねじ伏せられたアイヌの豊かなクジラ文化
http://kkneko.sblo.jp/article/105361041.html

 その下には和田浦の小型捕鯨を紹介。
 繰り返しになりますが、「捕鯨の対象は国際管理下にはないツチクジラ」は間違い。正しくは「未規制」です。
 「地元で捕れる物を食べる」とありますが、和田浦の外房捕鯨は北海道沖まで出張っています。地元とはいえず。

 P3。鯨肉は単に割高なだけ。バレニン教≠ノ騙されないように。
 あと、グルメ紹介サイト「クジラ横丁」のドメイン取得者はあろうことにも鯨研。「写真提供/日本鯨類研究所」って、よく恥ずかしくないよね……。
 以下をご参照。

■完全商業捕鯨化に向けKKP発進|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/60376356.html
■鯨料理トンデモ<激Vピ一覧|拙HP
http://www.kkneko.com/shoku.htm

 P4、ここでおなじみ森下丈二氏が登場。東京海洋大教授だけで、現IWC日本政府代表の肩書きがないのが不思議。

 「唐突な商業捕鯨停止提案とIWCでの多数派工作」
今では反捕鯨の立場をとっている国を含め、欧米諸国はかつて鯨油を目的とする捕鯨を盛んに行っていました。1960年代には大規模な母船式捕鯨を展開して乱獲状態となり(引用)

 非常に計算された、狡猾な日本語表現。文字で起している以上、そう断定せざるをえません。
 前半の句点までの主語は「欧米諸国」。後半は主語がありません。
 1960年代、戦後の南極海商業捕鯨の最盛期に最も多く船を出し、トータルで最も多くクジラを殺していたのは日本です。この時期に一番多くナガスクジラとシロナガスクジラを殺していたのも日本
 日本の捕鯨産業の責任について一言も触れない、ここまで卑劣な歴史修正主義が一体あるでしょうか!?

アメリカが唐突に商業捕鯨の停止の提案を行ったのは、1972年6月、スウェーデンで開催された国連人間環境会議でした。(引用)

 さあ、耳タコの陰謀論が出てきましたね・・。
 きわめて不可解なのは、森下氏自身が以前、食害論の否定と同様、日本捕鯨協会/国際ピーアールの世論操作に自分は関わっていないと言わんばかりに「当時に直に関わっていたわけではないので何とも言えません」と発言していること。竜田揚げ効果で態度を翻したのかもしれませんが・・。
 ベトナム戦争陰謀論についての詳細は以下をご参照。

■クジラの陰謀|IKAN
http://ika-net.jp/ja/ikan-activities/whaling/324-the-whale-plot-j
■検証:クジラと陰謀|Togetterまとめ
http://togetter.com/li/942852
■「ビハインド・ザ・コーヴ(Behind the Cove)」の嘘を暴く〜いろんな意味で「ザ・コーヴ」を超えたトンデモ竜田揚げプロパガンダ映画 |Togetterまとめ
http://togetter.com/li/941637

「捕鯨に関する日本の見解とかたくなな反捕鯨国の姿勢」

 上掲したとおり、南半球ナガスクジラについてはIWC科学委員会で合意された生息数の数字はありません。日本の一部捕鯨関係者が勝手にそう言ってるだけ。

反捕鯨国にとっては、捕鯨国に科学的データを持ち出されてもやすやすと譲歩するわけにはいかない事情もあるのでしょう。
反捕鯨勢力が国際世論を醸成し、今や調査捕鯨にまで「悪」のレッテルを貼ろうとする反捕鯨団体や、鯨やイルカを「カリスマ的動物」として特別視する人たちが登場しています。こうなると科学の範ちゅうの話ではありません。(引用)

 おやおや・・現実と真逆の印象操作をなさってますね。
 国際司法裁判所(ICJ)はなぜ、日本の調査捕鯨を違法と断じたのでしょうか? 「カリスマ的動物」を特別視する反捕鯨勢力が国際世論を醸成したから? ICJまで調査捕鯨に「悪」のレッテルを貼った??
 答えはNOです。その
 日本の調査捕鯨が国際司法機関によって「違法」という事実に即したシンプルな「悪」のレッテルを貼られたのは、判決文にもしっかり記されているとおり、南極産鯨肉を美味い刺身「カリスマ的美食」として特別視する人が日本に存在するからです。反捕鯨国に「いくら科学的データを持ち出されても」、判決直後に永田町で鯨肉パーティーを開いたりする面々に尻をたたかれ、担当官僚も「やすやすと譲歩するわけにはいかず」、看板をかけかえたり、国連の受諾宣言を書き換えるみっともない真似をせざるをえないするわけです。確かに、もうこうなると「科学の範疇」ではありませんけど……。

■ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html
■とことん卑屈でみっともない捕鯨ニッポン、国際裁判に負けて逃げる|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/166553124.html

 「鯨を含む『カリスマ的動物』に対する規制の強化」

 ここで斜めに走るのがお好きな森下氏らしい、トンデモ食料自給論が登場します。

 「多様性の維持」こそが食料安全保障のキーワードなのですが、すでに極端なモノポリー(独占)が進行しているのです。(引用)

 いかにも飢餓と貧困の現場から遠く離れたところで飽食三昧に暮らしている日本の官僚らしい主張ですね・・。
 彼が引用した元FAOの台詞は、国際的な食糧市場を牛耳るGM等のバイオメジャーによって商業作物の種苗が囲い込まれ、途上国で非商業的・伝統的に利用されてきた植物の栽培・利用技術が失われようとしている現状を指したもの。事情は日本においても同様で、地域野菜や雑穀が高齢化・過疎化に加えTPP加入により市場経済への適合をますます迫られることによって、いま絶滅の危機にあるわけです。多額の税金と石油を投じて南極にクジラを屠りにいくことで解決する話ではまったくありません。TPP参入をはじめ、食の多様性を喪失させる方向へと邁進しているのは日本政府に他ならないのですから。国民の目を欺くことで、日本の自給率低下を加速させ、多国籍企業の支配を手助けする効果ならあるでしょうが。
 それにしても、多様性≠ニいう言葉で国民を惑わす手口が原発推進派に実にそっくりです。
 捕鯨がいかに日本の食糧安全保障に寄与しないかについては、こちらで詳細に論じているとおり。

■鯨肉は食糧危機から人類を救う救世主?|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/174477580.html

鯨を前例として、国際会議の場で科学的根拠のないまま、あれもダメ、これもダメと絶滅危惧種の提案や利用を厳しく制限する提案が続出し、ゾウなどの大型の陸上動物、マグロやサメが「カリスマ」のリストに加えられようとしていることです。こうなると、多様性はさらに失われます。(引用)

 そんなにいうなら、いっそ生物多様性条約(CBD)に対抗する食の多様性条約でも提案したらどうかと思いますが・・。
 ゾウ、マグロ、サメと、注意深い管理を求めるだけの生態学的・社会科学的根拠が明確にある野生動物に対し、科学的根拠なく「カリスマ」というレッテルを貼って規制の足を引っ張ろうとする森下氏は、もはや生物多様性の敵といっても過言ではないでしょう。水産庁自身の資料に「生物多様性に配慮した漁業の推進」も入っているのにね・・。
 「未曽有の干ばつや家畜の伝染病が発生すれば、人類は危機的状況」(引用)に陥った場合、南極産鯨肉が2000%助けにならないのは前掲ブログ記事で指摘しているとおり。無知な大衆の危機感を煽るやり方は、過激な市民団体≠フ模倣なのかもしれませんが・・。
 「捕鯨は国家主権の問題」(引用)という日本に右へ倣えの主張をしているのは、日本から多額の援助を受け、農水省から手取り足取りレクチャーを受け、現実的に公海母船式捕鯨を実施する可能性ゼロの国だけです。

「カリスマ的」といった概念を持ち込めば、「私たちの文化は他の文化より勝っている」という文化帝国主義的な議論になりかねません。鯨についても異なる考え方がある。意見の相違があっても相手を尊重する。これもまた、鯨に対する見方の「多様性」であり、まずはこの合意を議論の前提として求めていくべきです。(引用)

 そもそも「クジラはカリスマだ!」と主張している反捕鯨派を筆者は知りませんし、森下氏自身の発明した誘導目的のキャッチコピーだとしか思えないのですが、文化帝国主義≠ヘ森下氏本人のカラーです。南半球の殺さない文化∞生かす文化≠蔑ろにすることといい、アイヌに対するダブスタ発言といい。「意見の相違があっても相手を尊重する」ということをまったくしていないのは、傲慢な超拡張主義的食ブンカを南半球の人々と自然に強引に押し付け続ける日本に他なりません。

■米国紙がみた調査捕鯨とアイヌ|無党派日本人の本音
http://blog.goo.ne.jp/mutouha80s/e/a863ac35990df463fce164c7633863d5
■Japan's whaling logic doesn't cut two ways (LATimes,2007/11/24)
http://articles.latimes.com/2007/nov/24/world/fg-whaling24

「商業捕鯨/先住民生存捕鯨等を行っている国々」

 日本の調査捕鯨の捕獲数を入れないなら意味のない数字。日本はノルウェー・アイスランド産鯨肉の市場となっていることも注意。
 同ページの最後に登場するウーマンズフォーラム魚ですが、NGO(非政府組織)の呼称に似つかわしくない、政府・業界の立場をそっくり代弁する御用団体。詳細はこちら。

■モラトリアム発効と「国際ピーアール」の陰謀|拙HP
http://www.kkneko.com/aa4.htm

 最後のP5は、調査捕鯨の正当化。

持続可能な捕獲量を計算するには目視で得た現在の生息数だけでなく、将来の変動を予測する必要があります。ある鯨種が全体として高齢化していれば今後、減少していくことになるわけです。また若い個体が多くても栄養状態が悪く、成熟が遅れがちだと増えにくいと言えます。(引用)

 持続可能な捕獲量を計算するためのRMPは、生息数のデータのみで将来の変動を予測することのできる安全な方式として考案されたもの。これも繰り返しですが、そもそも調査捕鯨は要らないのです。「必要だから」やっているのではなく、「1割くらい捕獲枠を増やせるかもしれない」という理由でやっているのです。
 クロミンククジラの「栄養状態が悪く」なっているという論文を鯨研はネイチャーに提出、胸を張って宣伝しようとしましたが、統計処理に問題があったと他の研究者に突っ込まれました。なんでそこまできちんと書かないのかしら?
 ICJ判決を受け、今までお座なりにやっていた非致死調査にやっと少しだけ腰を入れ始めたことも、記載がありません。まるで最初から一所懸命取り組んでいたかのよう。それが事実なら、ICJで敗訴することは決してありませんでした。

「北西太平洋における競合の模式図」

 さっきの非科学的きわまりない審議会資料、しっかり使ってますね〜。

例えば南極海ではクロミンククジラの資源が安定していることや、近年ザトウクジラなどほかの鯨種が急増していること、これによって将来、クロミンククジラの餌環境が脅かされてその資源の動向にも影響を与える可能性が否定できないことなど、資源管理をするうえで重要な事実が分かってきています。(引用)

 再掲ですが、以下を参照。

■間引き必要説の大ウソ|拙HP
http://www.kkneko.com/mabiki.htm

 「ザトウがミンクを脅かす」という従来無責任に流布していたのとは真逆の説についてですが、これはあくまで可能性の一つにすぎません。いくつもの可能性が考えられるのですが、特定種の致死調査に特化した調査捕鯨ではそのどれが正しいのか判別することができないのです。詳細は以下を参照。

■調査捕鯨の科学的理由を"後から"探し続ける鯨研|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/18846676.html

 その他、NEWREP-Aの問題点の数々については、前回の記事とリンクをご参照。

■新調査捕鯨NEWREP-Aはやっぱり「美味い刺身」目当ての違法捕鯨だ|拙ブログ過去記事


 大越船長のコメント「調査捕鯨を止めてしまえば、これらの技術は失われ、復活させるのは難しいでしょう。」(引用)について。高齢化や経済的理由で伝統産業の担い手が失われるままに放置されている日本ですが、それらに比べれば近代捕鯨の技術が復活困難だとは到底呼べません。調査捕鯨が科学目的ではないと白状しているに等しいですが……。

 7月号のaffの特集は鯨と鰻の2本立て。
 クジラの5ページに対し、ウナギに割いたのはたったの2ページ、しかも1ページは丸々どうでもいい豆知識解説。
 かろうじて一言だけ「乱獲」と入ってはいるものの、「資源管理は避けられない課題」とあり、「クジラのページに書いてあるとおり日本が持続的利用を推進する国なら、なんで今まで出来なかったんだろう??」とまともな読者なら首をひねるでしょうね。
 そしてやはり、密漁にも密輸にも、絶滅危惧種指定にも、一っっっ言も触れていません。
 この構成だけ見ても、農水省/水産庁が、一体何から国民の目を逸らしたいのかは一目瞭然でしょう。
 こちらに読者アンケートがあるので、鯨と鰻の特集を読んでひどいと思った人は、該当欄の「悪い」にチェックを入れて送っておきましょう!

■農林水産省広報誌「aff(あふ)」2016年7月号アンケート
https://www.contact.maff.go.jp/maff/form/d448.html
posted by カメクジラネコ at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系