2016年03月14日

鯨肉は食糧危機から人類を救う救世主?

「日米開戦は謀略だった、日本は罠にはめられた」
「南京大虐殺や慰安婦強制はなかった。欧米だってやっただろ」
「植民地主義の欧米と違い、日本の戦争は侵略じゃない、アジア解放という正義≠フための戦争だ」

「捕鯨モラトリアムはベトナム戦争隠しの謀略だった。日本は罠にはめられた」
「日本はクジラの乱獲も密猟・密輸もしていない。乱獲したのは欧米だろ」
「鯨油目当ての欧米と違い、日本の捕鯨は乱獲じゃない、伝統食文化のための正義≠フ捕鯨だ」

 「よその国の謀略」のせいにしたり、過去を正視せず事実をねじ曲げ美化したり、都合のいい相対主義を持ち込んで自己正当化したり。
 いつも思うのですが、右翼(ネトウヨ)と反反捕鯨の思考回路って、実にきれいにシンクロしてますよね。層がほとんど重なっているのだから、当然っちゃ当然ですけど・・。

 もうひとつ、しばしば持ち出される共通の主張が、将来の捕鯨/軍備を正当化する「(食糧/国防)安全保障論」。付け加えれば、原発推進派のエネルギー安全保障論とも重なります。
 将来への不安をかきたてるのは、こういう場合の常套手段ではあるのですが。
 しかし、憲法改正であれ原発であれ、あるいは捕鯨であれ、「本当にそれが必要なのか?」という丁寧な議論を置き去りにしたまま、不安ばかりを煽って拙速に物事を決めてしまうのはいただけません。

 はたして、それは現実的な解決策なのでしょうか? 物理的・経済的に妥当な結論なのでしょうか?
 日本にとっての問題? それとも、世界にとっての? その2つの議論をごっちゃにしていませんか?
 公平性・公正性の観点から、倫理的に見ても問題はない──そう言い切れるのでしょうか?
 ひょっとして、自らの権益を守るのに必死な業界当事者が、頭の中で描いただけの机上の空論にすぎない……なんてことはないでしょうか??
 当然ながら、今の調査捕鯨の置かれた状況と、将来許可され得る商業捕鯨の形態についても、詳細に検証する必要があります。
 何しろ、ことは日本の国家安全保障に関することなのですから。

 では、代表的な捕鯨賛成派の食糧安全保障論をチェックしてみましょう。
 まずは内野≠フ捕鯨サークルとメディアから。

@反捕鯨団体の言われなき批判に対する考え方|日本捕鯨協会
http://www.whaling.jp/taiou.html
7 戦後の食料不足の時代ならともかく、飽食の時代に、わざわざ鯨の肉を食べなくてもいい。
(回答)  我が国の食料自給率はカロリーベースで40%を切っています。そうした中で、食料生産手段の一つの選択肢として捕鯨を維持していくことは、将来、我々日本人が直面するおそれのある食料不足という非常事態への備えという意味でも極めて有意義なことです。 (引用)

Aどうして日本はここまで捕鯨問題にこだわるのか? 水産庁・森下丈二参事官(当時)|鯨論・闘論(捕鯨協会のポータルサイト、休眠中)
http://www.e-kujira.or.jp/whaletheory/morishita/1/
さまざまな種類の食料が利用できる仕組み,まさに多神教的なアプローチが,食料安全保障のためには必要であり,世界でもっとも多様な食材に恵まれながら,食料自給率が 40% を下回る日本にとっては本当に重要なことです。価値観の違いで,食べることができないものが増えていくことはこれに真っ向から反するわけです。繰り返しになりますが,捕鯨問題は単なる捕鯨産業の維持や役人のメンツといった問題ではないということです。(引用)

B異議あり 小松正之政策研究大学院大学教授(当時) ('10/4/17,朝日)
「持続的な利用が可能な資源なら、禁止する方がおかしい。動物性たんぱく質の多くは家畜に頼っていますが、飼料の栽培に必要な肥料の製造には大量の石油が必要です。河川の水や地下水も大量に消費する。排泄物も出る。クジラは海洋で持続的に生きている。それを利用することは、家畜への依存を減らす事にもつながる」(引用)

C21世紀の捕鯨にむけて(平成12年3月発行の「水産庁船長会会誌」第23号より)小島敏男フリージャーナリスト|捕鯨ライブラリー
http://luna.pos.to/whale/jpn_kojima2.html
 「人口増加が続くと、漁業の衰退、森林面積の縮小、気温の上昇、動・植物の種の絶滅など、他の環境要素にも影響がでる。」
 「地球の温暖化は、燃料消費、土地利用の転換、食料と水供給の潜在的限度も含めて、人口関連問題と切り離せない要素である。」と白書(筆者注・1999年版世界人口白書)は危惧している。
 このような状況で陸地利用の軽減を図るため、地球表面の4分の3を占める海洋の利用に目を向けるのは理にかなったことと思う。 そこに在る豊富なクジラ資源の持続的利用は地球にやさしい行為で、言ってみれば「地球を救う」ことだ。 ということは捕鯨産業は21世紀の未来的産業であり、エコ産業と言えるだろう。 (引用)

D「鯨肉は牛肉よりエコ?CO2排出量は10分の1以下」 ('09/4/24,産経)
産経「鯨肉生産は牛肉よりエコ」はデマだった|拙HP
http://www.kkneko.com/sankeidema.htm

 Aの森下氏は国際水産資源研究所所長で現IWC日本政府代表。彼の主張が、原発推進のエネルギーミックス論とそっくり重なる点に注目。
 Bの小松氏(現東京財団上席研究員)は、JARPA2(第二期南極海調査捕鯨)の増産・減産をめぐって鯨研とすったもんだのバトルを展開しており、その主張の一部は現在の捕鯨サークルとは食い違いますが、食糧安全保障論に関しては@の捕鯨協会とほぼ同じ。
 なお、長年元論説委員が鯨研の役員を務めるなど、マスコミの中でも捕鯨サークルと最も強固なリレーションを築いてきた、国内でも最も右よりの大手紙・産経新聞の流したデマDについては、水産庁担当者が公に否定しています。詳細はリンクの拙HP解説をご参照。

 続いて今度は外野。

EThe Globe Now: クジラ戦争30年|国際派日本人養成講座
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h11_2/jog097.html
The Globe Now: 捕鯨は地球を救う|(〃)
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogdb_h22/jog660.html
2050年には100億人の大台に乗る世界の人口を養うには、動物蛋白が絶対的に不足する。1キロの畜肉を得るには、その5倍近い飼料用穀類が必要で、今でも世界の穀類生産の半分は飼料向けになっている。また畜肉の中心である牛は、現在10億頭を超えるが、その排泄物は地球環境に深刻な影響を及ぼしている。今後、クジラを中心とした海洋資源に頼らざるを得ないのは明らかである。(引用)

 検索すれば、同様の主張のネトウヨブログが散見されますが、いずれもリンクをたどるとこちらへ行き着きます。まあ、見出しのキャッチが効いてるんでしょう。
 上掲ブログ記事のトップページにいくと、「スターリンと毛沢東が仕組んだ日中戦争」とか、「大東亜戦争:アジア解放」とか、南京大虐殺否定論とか、まあその手の記事がズラリと並んでいます。わかりやすいですね・・。
 で、Eの一次ソースは何かと最後まで読んでいくと、出てくるのが捕鯨協会のPRコンサルタント・梅崎義人氏著『動物保護運動の虚像』と産経記事。なんともかんともわかりやすすぎますね・・。

 結局、捕鯨食糧安保必要論の出所も、ベトナム戦争陰謀論と同様、当事者の捕鯨サークルであることがわかります。

 はたして、食糧安全保障の文脈で、鯨肉の出番はあるのでしょうか?

 まず、南極海捕鯨に焦点を絞り、実際にどれだけの鯨肉生産が可能なのか、そこから見ていきましょう。
 ITQかオリンピック方式かという議論が象徴するように、(自然)科学者が枠の数字を決めるだけでは、漁業を持続的たらしめることはできません。乱獲を確実に抑止する、実効性のある資源管理システムを社会科学的に構築することが必要なのです。
 過去の乱獲の重い責任と悪質な密猟の事実、日本が先進国の中でもずば抜けた持続的漁業の落第生(後述)である現実、象牙からペットのスローロリスまで野生動物の絶滅を未だに助長している恥ずかしい先進国であるという現実がある限り、共有財産であるべき南極海・公海のクジラを日本に任せることを世界は決して認めるわけにはいきません。
 ここでは、その前提をひとまず日本がクリアし(サンクチュアリの科学的意義や気候変動その他の環境異変の影響等も脇に置いて・・)、RMS(改訂管理制度)について国際的な合意が成立し、モラトリアムが解除されて現行のRMP(改訂管理方式)が適用されたものと、かなり無理やり仮定しましょう。
 もちろん、捕獲が許可される可能性があるのは、絶滅の恐れが低いとされ(合意された生息数の数字の上では1980年代の72万頭から1990年代の51.5万頭に激減していますが・・)、ICJ(国際司法裁判所)判決後の新調査捕鯨NEWREP-Aで唯一の捕獲対象種となったクロミンククジラ。

■調査捕鯨は不必要or商業捕鯨は不可能/コスト意識ゼロのたかり企業共同船舶|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/54058582.html

 上掲はICJ判決以前の記事ですが、状況は変わっていません。

■平成23 年度国際漁業資源の現況 クロミンククジラ|水産総合研究センター
http://kokushi.fra.go.jp/H23/H23_49S.pdf
なお本種に改訂管理方式(RMP)を当てはめた試算では、南極海全体で年間1,945 〜 4,490頭、平均3,202 頭という捕獲が持続可能との結果であった。(引用)

 実はこれ、拙記事でも説明しているとおり、76万という暫定的な数値をもとに日本が勝手にやった試算。ひところ推進派が連呼していた「76万」の数字がゴミ箱行きになって以降、毎年更新されている水研センターの記述からは消えてしまいましたけど・・
 合意された最新の数字(51.5万頭)に適用するなら、1,300頭から3,000頭、平均でざっくり2,000頭という数字になります。
 そして、これは南極海全周分の数字。
 日本が伝統的(?)に操業してきた太平洋側の2海区に当てはめるなら1/3の約700頭違法認定されたJARPAIIの計画目標数より少ない値になるのです。
 さらに、日本側の主張が正しいという前提に立てば、調査捕鯨を(商業捕鯨とは別に!)継続しないとRMPの精度が下がり、より高い安全率を見込んで規制を強化せざるを得なくなります。バイアスのかかった人為的捕獲圧が加わり、パラメータの変化を一層注視する必要が生じる中で、調査捕鯨を不要とするのは、30年の過去を全否定するのに等しいことです。よって、商業捕獲可能枠はトータルから調査捕鯨分を差っ引いた400頭弱ということに。
 形態としては、商業捕鯨会社(今もってどこも参入に名乗りを上げてはいませんが・・)が母船1隻。調査捕鯨用に母船1隻、合わせて2船団ということになるでしょう。
 調査捕鯨で333頭、商業捕鯨で400頭弱。ランダムサンプリングの縛りがあり、全体の1/3が未成熟の仔クジラである調査捕鯨より、若干燃費がよく、歩留まりも上がるでしょうが、公費で赤字分がどっちゃり補填される調査鯨肉との競合の問題も発生します。ついでに、雌の方が体が大きい(より肉が採れる)ため商業捕鯨では雄よりターゲットにされやすくなりますが、RMP上では性差に大きな偏りが生じないよう、修正が求められます。
 JARPAIIで一気に増産した後、さまざまなキャンペーンを打ったにもかかわらず、大量の過年度在庫が発生、18億円の巨額な赤字を抱えて債務超過団体に陥ったところを税金で救済され、その後なりふりかまわぬ事実上の国営捕鯨として今年はなんと51億円もの公金がつぎ込まれることになった調査鯨肉に対し、民間捕鯨会社は自助努力で採算を維持しないといけないわけです。因果な商売もあったものです・・。
 鯨肉生産量は、最近の歩留まりを反映すれば調査捕鯨が1,200トン、商業捕鯨分が1,700トン前後というところでしょうか。
 鯨肉生産量に関していえば、仮に調査捕鯨をやめて全部商業捕鯨に回したとしても、増えるのはせいぜい200トン程度。
 通常の食品と同等に正々堂々堅気らしく¥、売するなら、JARPAII増産時の二の舞は避けられない気がしますが……。
 いずれにしても、南極海捕鯨で日本に供給できる鯨肉は、年間2,900トンが関の山なのです。

 日本人1人当り年間22gです……。
 付け加えるなら、全海区合計すれば年間8,700トン日本人1人当り年間68gに。1年間にやっと竜田揚げ2コ分ってとこでしょうか・・。

 ただし、操業規模を太平洋側と同等としても、母船・捕鯨船をさらに遠く離れたインド洋・大西洋側まで送らなければならず、同じ生産量を上げるのに燃料代が大幅にかさむことになります。給油船の派遣も不可避になり、その分コストが跳ね上がるのは必至。黒毛和牛より高価な代物になるのは確実でしょう。税金で見かけだけ値段を下げても、国民の腹を痛めるのは同じことです。
 そしてもうひとつ、これは利用できる南極のクジラを日本がすべて独占できるという前提での話です。

 訪れた食糧危機が世界規模でなおかつ深刻なものだった場合、70億なり、危機が訪れた時点の増加した世界の総人口で割ることになるでしょう。さすがに反捕鯨国も、人類の存続がかかっているとなれば反対ばかり言ってられないでしょうし・・。
 仮に2050年だとすると、予想される人口は96億人(日本の人口は9700人)ですから、年間1人当り0.875gということに。耳かき1杯分くらいですかね・・。
 もちろん、人類が非持続的に食いつぶして自滅を早めるほど愚かでなければ、ですけど・・。
 さすがにその分配の仕方はあまり現実的とはいえませんが、世界的な食糧恐慌ともなれば、クジラをめぐる争いが勃発するのは不可避でしょう。もっと有用で合理的な非常時向け食糧がまったくないという前提の話ですけど。
 その場合、政治的な理由で優先権を主張すると考えられるのは、現在一応凍結されている(放棄はしていない)南極海領有権を主張する7カ国。とくに、南半球で南極海に面しているオーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチンの4カ国は、操業コストが相対的に大幅に低い点でも圧倒的に有利だといえます。
 また、クロミンクが沖合・EEZの範囲を回遊している可能性のあるブラジルや南アフリカも、当然名乗りをあげるでしょう。

 北半球の日本が、大量の石油を燃やし、大西洋側も含めた南極海のクジラを独占することを、一体世界が認めると思いますか? 食糧難の時代に。
 ついでにいえば、食糧輸入国でもある多くの産油国は、石油を食糧と引き換えのカードに使うのは目に見えていますから、日本はそもそも出漁さえできなくなるでしょうね。
 バイオ燃料? どこから調達するのですか? 食糧難の時代に。
 食糧輸入が途絶えた中で、自国の限られた農地を南極行捕鯨船用の燃料のために使い、その分救えるはずの多数の国民を見殺しにすれば、日本は世界から狂った国家とみなされるだけです。
 後は、操業が可能な南極海近くの国から鯨肉を買うしか手はありません。
 食糧難の時代に、石油も食糧もない日本が、一体何を差し出せるのでしょう?
 それとも、戦争でもしますか?
 以前も指摘したとおり、オーストラリアをはじめとする南極領有権主張国にとっては、尖閣諸島に相当する場所なのですよ?
 SSCS対違法捕鯨船団のプロレスではなしに、いざ本物のクジラ戦争となったら、アメリカは日本をバックアップするどころか、安保条約を破棄してAUS・NZの味方をしたとしても、何の不思議もないでしょうな。捕鯨反対という以外の理由で。
 食糧難の時代に、鯨肉・美味い刺身=iby本川農水事務次官)のために、戦争でいがみ合った過去を置いて様々な形で支援してくれ、軍事面を含む同盟関係にあったばかりか、小麦をはじめ基礎食糧を長年供給してくれた大恩のある国々に対し、戦争を仕掛けるというのも、とてつもなく狂っていますが。前世紀の大戦前・大戦中以上に。

 食糧危機が日本だけを襲い、よその国はどこも飢饉が発生していない(ただし、日本が食糧を輸入している相手国はどこも輸出だけできない)、石油だけは問題なく輸入できる、経済的にもそれだけの余裕があるという、非現実的にもほどがある前提条件が成立しない限り、鯨肉の出番はおよそありえません。
 そして、その場合でも、南極産鯨肉にすがれるのは「年間1人当りたったの68g」ぽっちなのです。
 鯨肉1g当り1kcal、1日1人当り必要な熱量を2,000kcalとすれば、南極産鯨肉で補えるのは日本人に必要なカロリーの1万分の1にすら満たないのです。

 いざ食糧危機が起こったとき──「背に腹は替えられない」「贅沢言ってる場合じゃない」状況に見舞われたとき、最優先でまず供給を確保すべき食糧といえば何でしょうか?
 答えは、生きていくための基礎代謝を支える主食です。すなわち、米・芋。
 実際、日本政府も食糧安全保障マニュアルの中で、穀類・芋類への重点的な配分を謳っています(後述)。
 重要なのは、何をおいてもカロリー。
 食糧難とはすなわち、供給カロリーの絶対量が不足している状態なのですから。
 蛋白食品としての鯨肉は、畜肉・多くの大衆魚・大豆・そして、鯨肉と違い世界で食糧難時代の救世主≠ニして本当に注目されている昆虫に比べ、カロリーが低いのが特徴。
 カロリーが絶対的に不足している食糧難時代にあって、豚肉の3倍、イワシの2倍、大豆の4倍、シロアリの6倍食べないと、その分のカロリーを補えないのです。
 これは食糧難の際には致命的です。ヘルシーの謳い文句が通用するのは飽食の時代だけ。
 食糧危機の文脈においては、鯨肉は蛋白源としてさえ、冷凍倉庫のスペースと莫大な電力を無駄に消費するだけで、いいことはひとつもない食品なのです。

 現実問題として、主食が確保できない状況に日本が陥ったなら、低カロリーで年間必要な分の1万分の1も供給できない南極産鯨肉は一切出る幕がありません。
 蛋白源としても、コストと栄養価・カロリーの観点で昆虫食に圧倒的に負けます。
 ちなみに、動物性蛋白質なるものは実際にはなく、問われるのは必須アミノ酸20種のバランスだけなので、玄米と豆類のたった2品目でアミノ酸スコア100%は問題なく達成できます。家畜の飼料用作物ないし農地を直接ヒトの食用に回すのは、水産養殖餌用の魚を直接食用向けに転換するのと同様(後述)、少なくとも食糧危機の場面では現実的で合理的な解決策です。
 昆虫食は、水産業の言い方を借りるならほぼ未利用資源状態。菜食も、迂回生産分を回すだけで状況を劇的に変える効果があります。

■「昆虫食」が世界を救う? 日本の「昆虫料理研究会」にも海外注目 ('14/8/24)
http://newsphere.jp/national/20140824-1/
■「昆虫食」は地球を救う!? 〜食卓にコオロギ料理が並ぶ日は来るか? ('15/12/14)
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20151214-OYT8T50108.html
■FAOの昆虫食報告書”Edible insects Future prospects for food and feed security”の要約(日本語)|食用昆虫科学研究会(E-ISM)ブログ
http://entomophagy.blog.fc2.com/blog-entry-28.html
■ベジタリアンでエコロジー
http://uchishoku.com/wp-content/uploads/2011/02/meatfreemonday1.pdf
■将来の食料問題を解決するのはクジラではなくイモだ
http://blogs.yahoo.co.jp/marburg_aromatics_chem/61041880.html
■捕鯨は牛肉生産のオルタナティブになり得ない|拙HP
http://www.kkneko.com/ushi.htm

 日本人だけで年間1人当り68gが限界の鯨肉と違い、昆虫食と菜食は、世界の飢餓を解決するだけのポテンシャルを間違いなく有しているといえます。
 必要なのはお金ではなく、ちょっと見方・価値観を変えるだけのこと。
 どうせ税金をかけるなら、来るべき食糧難への供えとなる正しい選択≠フためにこそ用いられるべきでしょう。
 本川農水事務次官や永田町の族議員らが欲しがっている美味い刺身≠フためではなく。
 逆に言えば、年間1人当り最大で68gまでしか供給できないうえに莫大な石油・コストを要し、いざ食糧難となったら糞の役にも立たない南極海捕鯨に、食糧問題解決を名目として年間50億円超もの税金を注ぎ込み続けるのは、合理的な食糧安全保障対策を放棄して国民を飢えさせる究極の愚策にほかなりません。
 原発事故の際、まったく活用されなかったSPEEDIに240億円を投じたのと同じように。

 すでに答えははっきりと出たわけですが、実のところ、日本政府は食糧危機にどう備えているのでしょうか? 鯨肉の出番≠ェあるなどと本気で考えているでしょうか?
 続いて、国の食糧安全保障政策の中で、捕鯨・鯨肉がどのような位置づけにあるか、チェックしてみることにしましょう。

■世界の食料需給見通し|農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_zyukyu_mitosi/
2050 年の全世界の食料生産量は69.3 億トンと将来の世界人口予測の1.5 倍を上回る1.6倍の水準に達する。(引用)

 ここでは2024年および2050年の予測結果が紹介されています。地域間の輸出入割合は大きく変化するものの、生産量は気候変動の影響等を考慮してさえ、需要を賄うだけ十分に確保されるというのが日本政府の見方。捕鯨協会の心配をよそに、当の日本政府は世界の食糧需給見通しについてかなり楽観的なようですね。
 ところで・・シミュレーションの中で水産物が考慮されていないのはなぜでしょうか?

■世界漁業・養殖業白書 2014年(日本語要約版)|FAO
http://www.fao.org/3/a-i3720o.pdf
■世界銀行レポート FISH TO 2030:世界の漁業は成長し、日本漁業のみが縮小する|勝川俊雄公式サイト
http://katukawa.com/?p=5396
国と地域別の生産量と成長率の予測
世界平均では23.6%の増加で、増加の割合は、国や地域によって異なっています。マイナス成長の国と地域は日本(-9.0%)のみです。このことからも、日本漁業の衰退は,世界の中でも特異的であるかと言うことがわかります。(引用)

 上掲FAO漁業白書のP13に「世界の海洋漁業資源の状況の推移」のグラフが示されています。
 天然の漁業資源のうち半数は限界まで漁獲されておりこれ以上開発の余地がない状態、3割近くが過剰に利用されているか既に枯渇に陥っている状態。「乱獲に歯止めをかけ、減らしていかなければ埒が開かない」状況にあるのです。これは水産庁自身も含め、広く認識されていることですが。
 で、下はおなじみ東京海洋大・勝川准教授による世銀レポートの解説。
 日本が世界で一番みっともない持続的利用の落第生なのは、世銀のレポートからも一目瞭然なのです。つまり、日本はよその国の何倍も「乱獲に歯止めをかける努力」をしなければならないわけです。
 これでは、なるべく明るい未来を描いておきたい日本政府としては、食糧需給見通しに水産物を入れて暗い影≠落とすわけにはいかなかったかもしれませんね・・。

 次に紹介するのは、まさしく日本政府自らが策定した、非常時・不測の事態における緊急マニュアル。ちらっと上でも触れましたが。

■不測時の食料安全保障マニュアル|農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/pdf/1sanko2.pdf
水産物については、我が国周辺水域における水産資源の適切な保存及び管理等に取り組む。(引用〜p10)
なお、国民に対する動物性たんぱく質供給において大きな役割を果たす水産物については、水産資源の持続的利用が確保される範囲内で生産の増大を図る
とともに、非食用(養殖用の餌料等)から食用への転換を行う。(引用〜p21)
〔石油の供給が大幅に制約される場合の対策〕
(1)燃料の供給の減少への対応
B 水産業における対応策
水産業において、石油は、主に漁船の燃料として使用されているため、供給の不足が直接的に生産量の減少に結びつくおそれがあるが、魚介類は動物性たんぱく質の供給源として重要であるので、生産量の確保のために必要な供給を行うこととする。また、その際には、経済速度の徹底や船団構成の見直し等石油の有効利用を基本とした生産体制への移行を推進する。(引用〜p42)

 これが、農水省の定めた食糧安全保障マニュアルの中の、水産物に関する記述のすべて(グラフ除く)。
 やはりクジラのクの字、捕鯨の捕の字も出てきやしません。
 「非食用(養殖用の餌料等)から食用への転換」、つまり迂回生産をやめるのはまさに正論であり、本来は水産養殖のみでとどめる話ではありません(先述)。
 注目点は燃油不足への対応。
 前述のとおり、食糧難時代に石油がふんだんに使えるという仮定自体非現実的。
 燃油高騰で誰よりも大騒ぎし国の補填を要求したのが水産業界であるのを見ればわかるとおり、一次産業の中でも圧倒的に石油に依存しているのが漁業です。とりわけ遠洋漁業。

■遠洋調査捕鯨は地球にやさしくない|拙HP
http://www.kkneko.com/co2.htm
■世界の漁業は気候変動に備える必要がある|FAO
http://www.fao.or.jp/media/press_090302.pdf
実際の漁獲操業に比べると、魚穫後の水産物1キロあたりの空輸における排出量はかなり高いとSOFIA は付け加えた。大陸間の航空貨物は、輸送される1 キロの魚につき、8.5 キログラムの二酸化炭素を排出する。これは海上輸送に比べ約3.5 倍であり、漁獲された場所から400 キロメートル以内で消費される地域の魚の運送に比べると90 倍以上である。(引用)

 FAOの資料が示すとおり、公海・遠洋漁業は200海里内の沿岸・近海漁業の地場消費のケースに比べ、なんとCO2排出量が25倍
 そして、筆者の試算では、鯨肉の単位生産量当りのCO2排出量は、そのさらに3.5倍にあたる航空輸送水産物にほぼ等しい値です。
 国のマニュアルにある「船団構成の見直し等石油の有効利用を基本とした生産体制への移行」が遠洋から沿岸への転換を意味するのはあまりにも当然のこと。南極海に船を出すのは愚の骨頂です。

 引き続き食糧安全保障マニュアルから引用しましょう。

しかしながら、我が国の食料自給率は年々低下し、供給熱量ベースでは、昭和35年度の79%から平成18年度の39%へと大きく低下しており、今や主要先進国で最も低い水準となっている。また、我が国の食料は、少数の特定の国・地域への輸入依存度が高いという特徴を有している。(引用〜p8)
不測時の食料安全保障のためには、平素から、農業生産の基本となる農地・担い手の確保、農業技術水準の向上等を通じ、先進国中最も低い水準となっている我が国の食料自給率を高めるとともに、不測時に対応した農業技術の研究開発を促進することにより、不測時における食料供給力の確保・向上を図る必要がある。また、適切かつ効率的な備蓄の運用及び安定的な輸入の確保により、食料の供給が不足する場合に備えることが必要である。(引用〜p10)
我が国の穀物自給率は、175の国・地域中125番目、OECD加盟30か国中26番目(引用〜p75)

 当然ながら、食糧安全保障の基本中の基本は自給率を高めること。
 最も合理的なのは、平時のうちからなるべく自給率100%以上を達成しておき、いざという時には融通してもらえるよう、農業生産に余力のある国々と仲良くしておくことですよね。そう……米国や豪州みたいな。
 平時のうちは自らの首を絞めるような売国的TPPを推進して危機への備えを放り出し、ピンチになったら頼るべき相手の神経をわざわざ逆撫でするような真似をするなんて、食糧安全保障の観点からは一番やっちゃいけないことのはず。
 実際、マニュアルの中でも、昭和48年の「豆腐騒動」時の対応に関して、以下の記述があります。

1.当面の対策
 @大豆の主要輸入相手国である米国、中国の政府及び貿易関係機関に対し、積み出しの促進を要請
2.今後とるべき措置
 @ 国産大豆の生産振興。
 A 大豆の開発輸入を促進し、海外供給源を多角化。(引用〜P81)

 残念ながら、今まさに食糧安全保障の観点から択るべき道とは真逆の方向に突っ走っちゃってますけど・・
 TPPの影響に関して、国は自給率が変わらないするとどう考えてもおかしな試算を発表していますが、それに対するJA側の反論を紹介しておきましょう。

■政府の意図が明確すぎるTPPの影響再試算 ('15/12/29,農業協同組合新聞)
http://www.jacom.or.jp/nousei/rensai/2015/12/151229-28867.php
■「TPP の影響に関する各種試算の再検討」東大・鈴木宣弘
http://www.think-tpp.jp/shr/pdf/report03.pdf

 TPPに参加し、十年で米関税を撤廃すれば、生産農家への所得補償があっても米の自給率は50%にまで下がるという試算。
 そもそも、国内生産量自体、経産省の試算で7割弱、農水省の試算で9割も減少することになっていますが。
 年間生産量の上限が1人当りわずか22gないし68gにすぎない南極産鯨肉どころの話ではありません。
 TPPを強力に推進したのは、米国の現オバマ政権ですが、次期大統領候補は民主党も共和党もTPPに対して批判的。
 その一方で、日本の自民党と経団連はその米国をつなぎとめようと躍起になっているように見えます。筆者には実に滑稽に思えてならないのですが・・。

 奇妙なのは、あまりにもバカげた鯨肉食糧危機救世主論≠唱えている日本捕鯨協会、森下IWC政府代表ら捕鯨サークルの間から、食糧安全保障の根幹を揺るがすTPPに対する懸念の声がまったく聞こえてこないことです。御用新聞産経は社説でTPP大筋合意を絶賛。
 唯一TPPに言及しているのは、小松氏のこれくらい。食糧安保上の危機感はうかがえません。

■政策研究大学院大学教授 小松正之氏 「日本の魚はどうなる」(於東京国際文化会館)|武藤記念講座
http://www.kokuminkaikan.jp/chair/detail20111022.html
TPPについては、(水産業は入っていないが)、24項目の内の農業等の構造的問題を解決せずに補助金で解決しようとしているが、それならば参加しない方がよい。バイ(2国間)かマルチ(多国間)かはよく検討すべきである。日米はバイでやるべきではないか。いずれにしても自分の意見を持たず人の土俵に乗ることだけは止めてもらいたい。 (引用)

 こうした態度が意味することはひとつ。
 捕鯨サークル関係者は日本の食糧安全保障になど実際にはまるで関心がなく、「業界益・自己存続のため」(小松氏の場合は自らの実績を否定されたくないため)というシンプルかつエゴイスティックな動機で、深く考える気のない一般市民にバカげた鯨肉救世主論を吹き込んだのだということ。
 ベトナム戦争陰謀論が、そもそも核問題や環境問題、平和の問題に無関心な連中の手で捏造されたのとまったく同じように──。

 捕鯨業界のPRコンサルタントを務め、その成果を「捕鯨問題に関する国内世論の喚起」で得々と披露した陰謀の立役者、水産ジャーナリストの梅崎義人氏は、著書『クジラと陰謀』の中で以下のように記しています。

中曽根の基本的な外交姿勢は、いまさら言うまでもなく、米国重点主義で、小さな問題はどんどん譲り、まず、大統領の評価を得ることに関心を払う。その結果、貿易黒字などの大きな問題を小さな問題でかわしていくというやり方になる。中曽根は、その小さな問題の中にクジラも含めてしまった。(引用〜同書p263)

 梅崎氏は、TPPの問題・対沖縄基地問題・安保法案・憲法改正等の一連の政策を含む安倍政権の姿勢について、一体どう見ているのでしょうか?
 再び「クジラの陰謀」が蠢きだしたと思っているのでしょうか?
 それは一体何の陰謀なのでしょう? ベトナム戦争? 湾岸戦争? イラク戦争? アフガン戦争? IS等対テロ戦争?
 あるいは、安倍首相は中曽根元首相と違い、米国重点主義ではなく、小さな問題も大きな問題も米国に譲っていないという評価なのでしょうか?
 TPPについて、米大統領候補がみな二の足を踏んで、経団連が必死に引き止めている状況を、どう説明するつもりなのでしょうか?
 クジラの問題と違い、米をはじめとする農業全般は小さく、譲れる問題だと、そう思っているのでしょうか?

 筆者が気になるのは、梅崎氏は一体捕鯨協会からいくらのギャラを受け取ったんだろう? ということなんですけどね・・・・・

「TPP参加を見送る」
「乱獲を厳に戒め、沿岸の水産業を持続的な形に立て直す」
「気候変動に真剣に取り組む」
「昆虫食や菜食を普及させる」
「一次産業の価値を銭勘定で測らず、(本当の)自給率を高める」
「食糧廃棄を徹底的に削減する」
 できること、やるべきことはいくらでもあります。
 本当にやるべきことをきちんと実行しさえすれば、年間1人当り22gなり68g程度の蛋白食品の不足を憂える必要などまったくないのです。
 将来の食糧危機に備えるなら、私たち日本国民は鯨肉の美味い刺身∞竜田揚げ≠ノ税金をびた一文注ぎ込むべきではありません。
 そして、食糧問題をダシにしてはばからない捕鯨サークルの醜いエゴを、決して許してはなりません。
posted by カメクジラネコ at 19:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2016年03月08日

クジラたちの海─the next age─(追記)

 陰謀論が盛り上がったので、小説中にも追記しました・・
 登場(名前のみ)するのは「世界PR」のコンサルタント・桜崎善人氏と、元大日本水産副社長・麦沢國男氏。
 以下に一部を抜粋して紹介しちゃうニャ~
*   *   *   *   *

 捕鯨サークルはマスコミ各社に内通者を送り込んでいる。垂涎物の鯨肉で釣り、欧米に対するルサンチマンの種を仕込むことで、率先して業界の矛となり盾となってくれる強力な捕鯨シンパを、これまで何人も育て上げてきたのだ。中でもとくにひどいのが富士経新聞と公共放送JHKだったが。
 このマスコミに対する懐柔工作は、一九七二年にストックホルム国連人間環境会議で商業捕鯨モラトリアムが採択されたのを受け、危機感を抱いた捕鯨業界が七〇年代後半から裏で推し進めてきたものだ。大日本捕鯨協会が世論操作戦略のアドバイスを求めたのは、通信社にも在籍していた水産ジャーナリスト・桜崎善人氏が代表を務める広告代理店、その名も「世界PR」。 桜崎氏が召集した捕鯨問題懇談会には、大手新聞社や論説委員のほか、作家・芸能人等各界の著名人が名を連ねた。鯨鯢亭の宴のルーツがここにある。
 桜崎氏が最初に考案したキャッチコピーは「蛋白自給論」だった。七〇年代のメディアの論調には「伝統」の文字はひとつも入っていなかった。だが、だれの目からも説得力の乏しいこの主張は受けが悪く、世論の反応は鈍かった。次に登場したのが「伝統食文化論」だ。新たなコピーは大当たりした。保守的な知識人層の間でくすぶっていた、アメリカに対する鬱屈した感情──かつては鬼畜米英と罵り、戦争を挑んで敗れた相手に、安全保障から経済までどっぷり依存し、外交面においても政府自ら追従してきたことへの怨嗟の念≠ノ、火を着けることに見事成功した。桜崎氏は顧客である捕鯨協会宛の報告書の中で、自らの手腕と成果を得々と自讃している。
 さらに、桜崎氏は、ストックホルム会議とモラトリアムが通過した八二年のIWC総会ともに政府代表団メンバーとして参加した麦澤國男氏の証言をもとに、「捕鯨禁止はベトナム戦争から世界の目を逸らすために米国が突然持ち出したもので、日本はスケープゴートにされた」との陰謀論まででっち上げた。これがまた、「人種差別論」とセットになり、米国嫌いで陰謀話の好きな国内オピニオンに絶大な効果をもたらした。
 実際には、ベトナム戦争はストックホルムの会議場でも、米国内でも、終始批判され続けてきた。米国の商業捕鯨モラトリアム提案は、前年のIWC総会で日本がマッコウ規制を頑なに拒んだことで、国内の突き上げがあったからだ。米国は同会議で、多額の途上国資金援助を約束したり、CITES、世界遺産条約、ロンドン条約等、今日の環境保護で欠かせない役割を担っている国際条約の締結に向けたたたき台を出しており、クジラはそれらのパッケージのひとつにすぎない。デタラメな陰謀論は、当時真剣にアイディアを練っていた米国スタッフに対する侮辱以外の何物でもない。
 このベトナム戦争陰謀論には、さらに致命的な欠陥がある。日本は米軍にとって不可欠な補給基地の役割を果たし、特需で最も恩恵に預かった国でもあった。米国をかばって国内の報道機関に圧力をかけ、北爆の真実を訴えようとした、知久の先輩にあたる大物キャスターを降板までさせたのは、だれあろう日本政府なのだ。さらに、ベトナム戦争で展開された米海軍空母タイコンデロガの艦載機が水爆を積んだまま沖縄沖の深海に沈んだ事実を、非核三原則を掲げる日本への核持込と合わせ、白日のもとにさらしたのも、我らがROだった。
 桜崎氏が書いたレポートを茉莉に読まされたとき、業界のエゴのために戦争と核の悲劇を利用してはばからない卑劣な捕鯨サークルに対し、七央斗は胸の内にふつふつと怒りがこみ上げてきたものだ。
 麦澤氏は桜崎氏の著書『クジラの陰謀』の中で、「会議の日程がずれたことを日本だけが知らされなかった! 米国の罠にはめられた!」と、まったく事実に反する相当に悪質な嘘まで吐いている。麦澤氏は、各種の国際漁業交渉の場で捕鯨業界の利益を代弁した後、大日本水産に天下って副社長のポストまで得た、まさに官業癒着の象徴といえる人物だ。米国二百海里内での北洋漁業操業との二択を迫られた日本は、モラトリアムへの異議申立を取り下げたが、最終的に日本漁船が締め出されたことを、交渉当時者として猛烈に恨んでいるらしい。遠洋漁業の規制強化は時代の流れであり、逆恨みもいいところだ。いずれにせよ、あからさまな嘘を吐いていい理由にはならない。
 そう……陰謀を企てたのは米国等の反捕鯨国や国際NGOではなく、まさに捕鯨サークル自身だったのだ。
 そして、彼らは今なお闇で蠢き、マスコミを操っていた。

~*七央人*(5)より抜粋

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 本作品はフィクションです。実在の人物、団体、地域、事件とは無関係です・・が、トンデモ竜田揚げ映画よりは捕鯨・イルカ猟問題についてためになる情報がたくさん入ってるニャ~
 クジラを取り巻く海の環境問題についても学べる前作・本格的動物ファンタジー『クジラたちの海』と合わせ、ぜひ読んでみてくださいニャ~♪


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クジラ・ジュゴン・イルカたちが問う南極、オキナワ、タイジ、そしてフクシマ
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posted by カメクジラネコ at 23:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 特設リンク