2014年04月18日

調査捕鯨継続なら、本川水産庁長官は更迭、林農相も辞任すべし!

◇調査捕鯨を継続するなら、林農相は本川水産庁長官を更迭し、自らも辞任せよ!──多額の税金をどぶに捨て、自ら敗訴を招いた大失策の責任を取ろうとしない厚顔無恥な捕鯨官僚&族議員


■第180回国会 決算行政監視委員会行政監視に関する小委員会 第3号(平成24年10月23日(火曜日))
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025318020121023003.htm


○本川政府参考人
ミンクというのは、お刺身なんかにしたときに非常に香りとか味がいいということで、重宝されているものであります。 (中略)
したがって、ミンククジラを安定的に供給していくためにはやはり南氷洋での調査捕鯨が必要だった、そういうことをこれまで申し上げてきたわけでございます。
(引用、強調筆者)


 はあ・・読む度にため息が漏れますね。。
 上掲引用で略した部分では、売れ行きが悪くて在庫がかさんでいる北西太平洋産のイワシクジラやニタリクジラ(IKANニュース51号参照)、地元では干し肉の形で消費しており都心の料亭で刺身にするには向かないツチクジラについて説明されています。でもって、それじゃ永田町のグルメ議員らの舌を満足させられないから、「美味いミンクを食い続けるためにも、南極まで行って捕ってこなきゃ駄目だ!」という本音につながる形。むしろ、質問に立った議員たちに対し、「やっぱり南極でやるのが大事なんですよ、だって美味いミンク食べたいでしょ?」と媚を売る発言にも聞こえますね。食道楽垂涎の的、ナガスの尾の身にはさすがに触れてないけど・・。
 無論、本川長官の責任は免れようがありません。しかし、佐々木副大臣、小野寺氏をはじめ委員会に出席した十名余りの国会議員らも、「調査捕鯨の合法性に疑義をもたらしかねない重大な発言だ」と撤回・訂正を求めることをしなかった以上、当然彼らも同罪です。

■孤立無援の日本の「捕鯨」、どうすれば伝統漁業を残していけるのか|JBPRESS
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40449

私は水産庁の「鯨類捕獲調査に関する検討委員会」の委員として、捕鯨についての政策論議に関わったことがあるが、豪州の日本提訴について、水産行政に関わってきた人たちの見方は「盗人たけだけしい」といった認識で、日本が負けることはあり得ないという楽観論がほとんどだった。(引用、強調筆者)

 論者は朝日新聞石巻支局長を務めた「さかな記者」高成田亨氏。
 「水産行政に関わってきた人たち」にとってみれば、南極海、南半球、というより世界のクジラはぜーんぶ俺様のモノ。だから、彼らの目には、自分たちのクジラをオーストラリア人が横取りしようとしているかに見え、平気で盗人呼ばわりしているわけです。
 なんというジャイアンな性格!
 こういう感覚の人たちが長年にわたって日本の水産行政を牛耳ってきたとすれば、ウナギ、マグロが瀬戸際に追いやられるのも当然の成り行きでしょう。

■調査捕鯨のオウンゴール 建前を貫く覚悟が大切 (4/13,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO69790750S4A410C1TY7000/?dg=1

 日本政府も科学的調査を目的に掲げて調査捕鯨を実施してきた。だが本川長官の発言では別の目的がはっきりしている。本音と建前に当てはめるなら、科学的調査は建前で、鯨肉の安定供給が本音という構図だ。
 この使い分け自体が見苦しいのは言うまでもない。が、それに劣らず問題なのは、日本の捕鯨政策の責任者が公の場で、建前をないがしろにする本音を開陳したことだろう。
(引用、強調筆者)

 浅はかさと傲慢さによって自ら墓穴を掘った完敗に近い敗訴。その決め手となった、水産庁トップの致命的な国会答弁は、国際司法裁判所(ICJ)の判決文の中にしっかりと記されました。日本は国際裁判史上前例を見ない恥ずかしい当事国として、永久にその名を歴史に刻みつけられてしまったのです(判決文#197,p58)。

■JUDGMENT|WHALING IN THE ANTARCTIC (AUSTRALIA v. JAPAN: NEW ZEALAND INTERVENING)
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18162.pdf

 一部の有識者、そして筆者をはじめICJの口頭弁論をウォッチした市民は、科学性の粗をパフォーマンスと論点外しで必死にごまかそうとする日本側の戦略を見て、「このままじゃ旗色がかなり悪いぞ」と昨年の段階から警告していました。その筆者らの予想さえ上回るほどの完敗の背景には、自らの非を認め、襟を正すという、人としては当たり前の能力が根本的に欠如した捕鯨サークルの恐るべき体質があったわけです。

■日本の調査捕鯨が国際司法裁判所で弾劾される日|天木直人氏 ('13/6/27,BLOGOS)
http://blogos.com/article/65118/
■ICJ調査捕鯨訴訟で日本は負ける|拙ブログ
http://kkneko.sblo.jp/article/70305216.html
http://www.kkneko.com/english/icj.htm
■調査捕鯨国際裁判敗訴は全て安倍と自民党捕鯨議連の責任|Togetter
http://togetter.com/li/650580

 この間政府関係者は、少なくともざっと一通り判決文に目を通しているはずで、この致命的な発言がしっかり入れられてしまったことも当然知っているはずです。
 ところが、敗訴の責任については、安倍首相が鶴岡代表を厳しく叱責するパフォーマンスのみで、すっかりうやむやにされてしまった感があります。知名度の高い国際弁護士数名に何千万円ものギャラを支払ったというのに。
 マスコミも、上掲のオンライン論説1本以外、本川長官と水産庁の重大な責任に触れた報道がひとつも見当たりません。
 TVは調査捕鯨が商業捕鯨に他ならなかったという事実を追認するように、鯨肉料理屋や客の怒りの声を流し続け、「このままでは伝統の食文化が・・」と危機感を煽るばかり。従来と何も変わらない捕鯨擁護論ばかりが伝えられ、ICJの判決の中身を詳細かつ冷静に分析する報道は皆無に等しい状態です。
 外務省の三段構えの戦術は、筆者ら捕鯨ウォッチャーの目には見苦しいものに映りました。それでも、公平性・公正性を世界で最も重んじるICJ判事たちの目を、本川長官の「ミンクは旨い!」発言からいかにして逸らすかという無理難題に対し、彼らはそれなりに善処したといえましょう。「自分たちは正しいのだから、負けるわけがない」と高を括り、建前と本音の使い分けさえできない自らの不始末を放置しながら、すべての戦略を外務省に丸投げした捕鯨サークル関係者や族議員には、他省の尻拭いに負われ、TPP交渉と掛け持ちで忙殺された外務官僚の苦労など理解できるはずもないでしょうが。

 ただ……一連の経緯からは、外務省がひたすら損な役回りだったかに見えますが、必ずしもそうとばかりは言えないかもしれません。
 レベルの低すぎる捕鯨官僚が負うべき責任を、外務省は自らの面目を思いっきり潰される形でかぶってやったわけです。当分の間、農水省/水産庁は、外務省に対して頭が上がらないでしょう。
 何しろ、水産庁長官の「ミンクは旨い」発言のせいで、「国際裁判初戦完敗」という永久に消えない屈辱を外務省に与え、看板に泥を塗ったも同然なのですから。
 農水省/水産庁は、外務省にあまりにも大きな借りを作ってしまいました。「クジラ」で。
 日豪EPA交渉で、直前にクジラで負けた相手でもあるAUSから、日本は対米交渉に有利なカードをも渡してもらいました。各所で指摘されるとおり、こちらのEPAについても、畜産農家やサトウキビ農家など、日本の農業者にとっては苦渋の選択を強いられる内容がいくつもあったようですが。
 ここのところ、靖国参拝や河野談話見直し等で米国の失望を買いまくり、今度のオバマ米大統領来日に際しても「国賓待遇なんて要らないから」と冷たい反応を返されるほど、ガタガタになった日米関係を修復することこそ、外務省にとって何よりも最優先すべき課題
 オバマ氏に対して、日本は相応の貢物を差し出す必要に迫られています。
 いま日本の手元にあって、大統領来訪中に差し出すことが可能なものは、2つしかありません。
 TPP日米交渉の大幅な進展、もしくは公海調査捕鯨からの撤退。
 TPPで米国の要求を丸呑みするならば、日本の一次産業従事者は、稲作農家、畜産農家以外も含め、一握りの起業家向きの人を除き、窮地に追いやられることになるでしょう。
 永田町では、捕鯨サークル主催の鯨肉パーティーを兼ねた族議員の決起集会が開かれ、衆参両院で調査捕鯨継続を求める決議を提出されました。TPPに関しても同様に5品目の聖域確保などを求める決議が出されましたが、威勢のよさでは「クジラ」が主食の「米」をも上回った感がありますね・・

 もうかる漁業補助金の超優遇をはじめ、捕鯨サークル最優先の陰で常に割を食わされ続けてきた沿岸漁業者の方々を含む、日本全国の一次産業従事者の皆さん。
 農水省/水産庁は、「クジラ」で取り返しのつかない愚策を犯したうえに、その責任をすべて外務省に押し付けてしまいました。
 外務省は「じゃあ、そういうことでかまいませんね?」と、米国にあなた方を売り渡すでしょう。彼らにとっては、それが省益にも重なる最大の国益にほかならないからです。
 いま、農水省/水産庁は、「クジラというご神体≠ウえ死守できれば、後はどうなろうと別にかまわない」という、驚くべき姿勢を示しつつあります。
 本川水産庁長官による「ミンクは旨い」発言が招いた国際裁判完敗の恥辱に対し、見て見ぬフリをする形で。そのあまりにも重大すぎる責任を一切負おうとしないことで。
 世界最高の国際司法機関から国際条約違反と断じられた擬装商業捕鯨である調査捕鯨を延命させんがために。
 当たり前のことですが、外務省は農業にしろ捕鯨産業にしろ、潰してやろうなどと考えているわけではありません。国際外交の場で日本にとって国益にかなう、最も有利な選択は、日米同盟を堅固に保つことだ──というのが、彼らの揺るぎない信条です。彼らにとって、農業あるいは捕鯨産業は、日米同盟の維持によって日本が生き延びるためなら、場合によっては差し出してかまわないカード≠ニいうこと。
 先の記事で最悪のドツボにはまる可能性について指摘したとおり、外務省サイドも調査捕鯨訴訟がまさかここまで完敗に至るとは考えていなかったと思われます。ただ、TPP交渉の進展が捗らない中、オバマ訪日とまさにぴったりのタイミングで、農水省を完全に抑えこめたことで、「棚からぼた餅ならぬクジラ」と、一部の外務関係者はほくそ笑んでいるのではないでしょうか?
 もし、族議員らの決議を慮って、日本政府が北西太平洋での調査捕鯨を強行するならば、米国への手土産はTPP/農業で確定です。日本の一次産業の未来も。美食の追求のために南極の野生動物を屠る行為とは対照的に、地域の風土と文化に密接に結び付き、環境保全にも一定の役割を果たしていたはずのこの国の農業は、米国のそれに似たビジネスの形でしか生き残れません。それはもはや、かけがえのない日本の伝統文化である農業とは相容れないものです。私たち日本人の魂のよりどころだった、日本の原風景である美しい農村も、失われていくばかりでしょう。

 本当にそれでいいのですか!?


 日米関係を大きく修復させ、なおかつ、日本が被る損失を圧倒的に小さくできるカードはあるのですよ。筆者ら少なからぬ日本国民にとっては、そもそもお荷物でしかなくメリットのほうがはるかに大きいものですが。
 確かに、識者が指摘したとおり、ICJから日本の調査捕鯨が違法認定された時点で、「南極海捕鯨からの撤退」というカードは失われてしまいました。裁判所に言われたことをただやるだけ、ではカードになりようがありません。
 しかし、ほんの少し上乗せするだけで、不人気の民主党オバマ政権を大いに喜ばせ、米国市民の日本に対する評価・好感度を一気に上昇させるのに十分なサプライズになるはずですよ。
 安倍首相が、オバマ大統領の隣で、世界に向かって「公海調査捕鯨からの完全撤退」を宣言するならば、同氏と日本の株は飛躍的に上昇することは間違いありません。
 お隣のいくつかの国には、面白くないと思う人もいるでしょう。けど、中国・韓国の市民だって、戦前の帝国主義を彷彿とさせる強硬な捕鯨政策を日本が改めるならば、見直す方も決して少なくはないはずです。


 日本の一次産業従事者の皆さん。
 独善的な捕鯨サークルの業界益のために、あなた方が犠牲になる必要はありません。なるべきではありません。
 もし、日本政府が公海調査捕鯨の続行を表明し、代わりに農業そのものを米国に差し出すならば、あなた方は一丸となって、外務省に頭が上がらなくなる原因を作った主犯である本川水産庁長官の更迭と、林農相の辞任を農水省に対して求めるべきです。
 また、海洋環境・野生動物に関心のある内外の市民は、ICJに対し米中韓三カ国共同で日本の北西太平洋調査捕鯨を提訴するよう働きかけるアクションが必要になってくるでしょう。

参考リンク:
■「鯨肉が売れない!」〜鯨研自らが公表した、入札結果の惨状〜|IKA-net
http://ika-net.jp/ja/ikan-activities/whaling/250-sluggish-sales-of-whale-meat
■ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html
■捕鯨ニッポンが最悪のドツボにはまる可能性
http://kkneko.sblo.jp/article/93046598.html

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2014年04月16日

今年の小笠原/公海調査捕鯨からの撤退を

◇今年の小笠原

 先週同地を訪れた人からいただきました。
 ギスギスした話ばっかりしてきたので、たまには目の保養に、微笑ましいザトウ親子の写真をお楽しみください(^^;;
 お母さんがずいぶんのんびり屋さんだったみたいで、おチビさんがはしゃぎまわる姿を存分に堪能できたそうです。ウォッチング船の船長さんも、こんなのは初めてだとのこと。
 最後の陸に上がったクジラは、小笠原WW協会にある海洋堂のフィギュア(非売品)。。

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 小笠原は日本、そして世界でもモラルを守った理想に近いホエール・ウォッチングが根付いている場所。時間をかけて、クジラたちもヒトが危害を加えない存在だと学習してくれたから、こうして距離を縮めることができたわけです。
 近すぎず、さりとて遠すぎず、お互いの存在を意識しながら、過度に干渉しない。野生動物とヒトとの最も望ましい関係。
 他の生きものに対して生殺与奪の権利とその能力を持つ万物の霊長≠ニして、威張り散らしながら自然の豊かさを奪うのではなく、他の生きものたちとともに自然を分かち合っているのだという事実をしっかり認識し、あくまで謙虚に自然に向き合うこと。

 どうか、小笠原のザトウクジラたちと同じように、はるか南の氷の海で命を謳歌するクジラたちにも平和が訪れますように。

 ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 この15日、鯨研・共同船舶・日本捕鯨協会という3つの頭を持つキングギドラじみた組織が、威勢よく炎を吐き出す怪物の巣窟・永田町で、各党の国会議員ら関係者を招き、大々的な鯨肉パーティーを兼ねた決起集会を開いたとのこと。

 議員の皆さん。
 出水や釧路など、全国各地の水辺で、大勢の日本人の目を楽しませてくれるツルやハクチョウたちを、この国は(それなりに)手厚く保護しています。もし、地域の歴史・文化と切っても切れない関係を持つ、まさにかけがえのない日本の文化にほかならない野鳥たちが、日本の200海里を出た途端、赤道を越えてやってきた南半球の国の船に、年間何百羽も殺され続けたとしたら、日本の愛鳥家たちはどう思うでしょう?
 
「季節のたびに訪れ、目を楽しませてくれる鳥たちを、あなたたちがたくさん殺していることで、私たち日本人はとても悲しい気持ちでいっぱいです。どうかやめていただけませんか? あなた方が自分たちの国の野鳥を殺すことに対しては、胸が痛むこととはいえ、文句を言うつもりはありません。けれど、せめて、私たちの国に渡ってくる鳥たちだけは、どうか見逃してやってくれませんか?」
 そうお願いしても、件の南半球の国は「Xマスの焼き鳥は長い歴史を持つ俺たちの神聖な伝統文化だ! 貴様たちの感情論など知ったことか!」と罵るばかりで、耳を一切貸してくれなかったとしたら、あなた方はどんな気持ちになりますか?

 日本がこれまで、南半球の人たちの文化や価値観を踏みにじりながら、南極海のクジラに対してやってきたことは、まさにそういうことです。

 あなた方の独善的な振る舞いは、私たち日本国民の目から見て、あまりにも目に余るものです。
 引き際を見極め、潔く身を引くことは、政治家として決して恥ずかしいことではありません。
 今回の判決は、この国が自制心を取り戻し、国際社会との正常な関係を取り戻すために、国際司法裁判所が差し出してくれた救い≠フ手とさえいえるでしょう。
 これ以上、飽食の国の身勝手な価値観を、南極の自然と野生動物、彼らに関心を持つ世界中のたくさんの人たちに対して、押し付けるのはやめてください。
 いまこそ公海調査捕鯨からの撤退という英断を!!
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2014年04月13日

捕鯨ニッポンが最悪のドツボにはまる可能性

◇捕鯨ニッポン、最悪のドツボにはまる!?──ICJ完敗が外交にもたらす深刻な影響

 おかげさまで、前回の記事へのアクセスが掲載後1日で1万アクセスを突破しました。やはり、調査捕鯨国際裁判に対する皆さんの関心はそれだけ高いようです。
 マスコミ記者の方も、判決文中の例の箇所に着目してくれました。タイトルはちょっと変ですが(国際社会を前に建前を貫かれるのも困るし・・)、外国人技能実習制度の問題も例に挙げ、よくまとまっています。アナログ版でも掲載してほしいところ。


■調査捕鯨のオウンゴール 建前を貫く覚悟が大切 (4/13,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO69790750S4A410C1TY7000/?dg=1


 日本政府も科学的調査を目的に掲げて調査捕鯨を実施してきた。だが本川長官の発言では別の目的がはっきりしている。本音と建前に当てはめるなら、科学的調査は建前で、鯨肉の安定供給が本音という構図だ。
 この使い分け自体が見苦しいのは言うまでもない。が、それに劣らず問題なのは、日本の捕鯨政策の責任者が公の場で、建前をないがしろにする本音を開陳したことだろう
 この発言の2年前、日本の調査捕鯨の実態は商業捕鯨だと主張するオーストラリアが、国際司法裁に中止を求めて提訴していた。係争中だったことを長官は知っていたはずで、ワキが甘いと言うしかない。周知の通り日本は豪州に敗れた。
(引用、強調筆者)
 
 この日経記事で「やっと出てきた」という感じですが、判決文とその波及効果について、きちんと冷静に分析したメディアがまだ少ないのは残念なことです。
 国際司法裁判所(ICJ)の公表したプレスリリースをわざわざ訳してくれたのは、律儀な反反捕鯨活動家君ですし、筆者も判決文のごく一部を紹介しただけにすぎません。本来なら、外務省/日本政府が率先して判決文全文の和訳版をホームページ上で公開し、広く国民に知らしめるべきだと思うんですけどね。鶴岡代表の冒頭と最終の口頭弁論はしっかり載っけてるんだし。
 まあ、これ以上恥をさらしたくないという気持ちもわからなくはありませんけど・・。でも、一流国際弁護士の高額報酬分を含め、多額の税金をつぎ込んだ国際裁判デビュー戦の試合結果≠ナある以上、敗因の分析も含めて国民に詳細に説明するのは国の義務のはず。
 ただ、そんな余裕すらないほど、彼らは切羽詰まった状況に追い込まれているのかもしれません。


■宮城沿岸などの調査捕鯨 実施か慎重に検討 (4/11,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140411/k10013656931000.html


 これらの海域での調査捕鯨は、中止を命じた判決の直接の対象にはなっていません。
 しかし政府は、捕獲する頭数など調査の方法などによっては、今後、判決が適用される可能性があるとして調査方法の検証を始めており、予定通り調査捕鯨を実施するかどうか慎重に検討を進め、来週にも結論を出すことにしています。
(引用)


 皆さん、奇異に感じませんか?
 JARPNU(北西太平洋調査捕鯨)三陸沖沿岸調査の名目で行われるこの調査、事業主体は共同船舶ではなく、沿岸捕鯨事業者の組合に相当する地域捕鯨推進協会です。工船モラトリアム違反に該当する捕鯨母船・日新丸を運用するでもなく、操業場所もサンクチュアリ決議違反に当たる南緯60°以南の南極海からは遠い日本の二百海里内、目標捕獲数は60頭前後で対象種はミンククジラ1種のみですから、JARPAUで追及された対象種拡大・捕獲枠増大の問題も、相対的には大幅に小さいといえるでしょう。唯一引っかかるとすれば、胃内容物等の生態解明を目的とした調査手法について、非致死的な代替案を検証したかどうか。実際、バイオプシーによる脂肪酸解析という手法があり、この点は確かに突っ込まれても当然なのですが・・。
 いつも居丈高な水産庁が、内外の誰の目から見ても、少なくともかなりマシ≠ノ見える沿岸調査で、「慎重な検討」を強いられ、実施するかどうかさえ明言を避けたのには、それなりの理由があるはずです。

 一方、それと対照的な反応を示したのがこちらの当事者。

■15年度以降に調査捕鯨再開へ 鯨研、米地裁に意見書提出 (4/14,共同)
http://www.47news.jp/CN/201404/CN2014041201001846.html


 日本政府は、捕獲頭数削減など計画内容を変更し15年度以降の再開を目指す考え。鯨研は内容の異なる計画で、15年度以降の調査捕鯨実施は、これまでの計画を対象にしたICJの判決に背くものではないと説明している。(引用)


 見出しの前半分だけ見ると、国際裁判にずっと注目してきた人たちはみなギョッとしたところでしょうが、これは明らかに鯨研の先走り。国際条約附表に基づき審査する国際捕鯨委員会(IWC)ではなく、一組織の事情で因縁の相手と争うことになった米国地裁に対して、「自分たちは再開したい! するつもりだ! するぞ!」という意見を送っただけ。
 そうでないはずがありません。当の水産庁が、ジリジリしながら待たされている沿岸捕鯨事業者に対し、直前まで実施を明言できないのですから。
 むしろ、水産庁トップの致命的な発言をはじめ、自業自得で調査捕鯨再開の可能性が刻一刻としぼんでいく中で、破れかぶれの反応を示した、というのが正解かも。族議員や外野の応援団が、シーシェパード(SSCS)とのプロレスに引っかけたSOS要請≠ノ応じ、南極海での続行のゴリ押しを手伝ってくれるものと、期待してのことでしょう。

 莫大な税金を投入して債務超過団体に転落した身を引き上げてもらった当事者が、どれほど「絶体絶命のピンチ」を叫ぼうと、国民も、合理的な現実主義者が多数を占めていいハズの政府関係者も、今回ばかりは「じゃあ、救済してあげる」と二つ返事で請け合える状況にあるとは、筆者は思いません。
 賢明にして優秀なる外務官僚諸兄は、きっとお気づきになられたでしょう。
 今回のほぼ完敗に近い敗訴が、日本の外交戦略に致命的な打撃をもたらす爆弾となりかねないことを。
 いざという場面で使うはずだったカードがゴミ屑と化し、代わりに敵の手に有用なカードを渡してしまったかもしれないことを。

 前回の続きになりますが、いま日本政府の頭を悩ませているのは、他の国からJARPNUまでICJに訴えられやしないか、ということです。
 最初に思いつく候補として米国を挙げ、なおかつ米国自身が提訴する可能性は高くないかもしれないと指摘しました。そして、他にも該当する国があると──。
 ここで、その2つの国を、仮にA国B国としておきましょう。
 そして、日本との間で懸案になっている問題を、A国とのT島問題B国とのS諸島問題として
おきましょう。
 ・・・・・・。
 バレバレな感じですが、まあいいよね(^^;;
 訴えるはずがない、とおっしゃる?
 そうとばかりも言えないことを、これから説明していきましょう。

 A国B国は、ともにIWCに加盟しています。そして、ともに北西太平洋に面しています。
 しかも、両国はユニークな位置づけにありました。日本の主張にそっくり右へ倣えしてきた、カリブ海、太平洋、アフリカの加盟国は、日本の水産ODAと引き換えにIWCの票を売っただけで、自分たちが南極海などで捕鯨を始める可能性はゼロです。そんな中で、A国とB国だけが、独自のスタンスを取っていたといえます。アイスランド、ノルウェー、デンマーク(フェロー諸島)、ロシアとは別に。
 ちなみに、ロシアが日本を訴える可能性もありますし、その戦略的意味合いもこれから述べるA国B国のそれに近いものがあるかもしれません。
 これまでのIWC報道では、二国はどちらかというと日本に同情的、と報じられてきました。しかし、この2国はただ自国で捕鯨を行う可能性を吟味していたにすぎません。潜在的捕鯨国というわけです。
 A国では現在でも地方で鯨肉が消費されており、主に問題の大きな混獲という形で提供されています。B国では現在捕鯨は行われていませんが、伝統捕鯨はありました。そもそも、日本に古式捕鯨の技術が伝わったのは同国からだったという説もあります。また、B国がある意味で最も商業捕鯨参入のポテンシャルが高い国であることも、日本国内の一部の関係筋が指摘しているところです。
 「捕鯨国同士はいつでも利害が一致する」というのは、もちろん意味のない前提です。他の産業を見ても、歴史を振り返ってみても。それは、現在南極海・母船式捕鯨になど興味のないノルウェーとアイスランドが、常に日本と同じスタンスだったわけではないことからも明らかでしょう。
 
実は、A国は日本と同じように「調査捕鯨をやりたい」と、IWCの場で表明したことさえあるのです。それはつい昨年のことでした。
 そして、内外の反発を受け、反対派の意見に真摯に耳を傾けたうえで、いったん出した宣言を引っ込めたのです。まさに捕鯨ニッポンとは対照的な振る舞い。捕鯨に限らず、ここまで大人の対応ができる政治家は、残念ながら今の日本にはいそうもありませんね・・。


■韓国の調査捕鯨参戦宣言が招いた波紋 (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/56904118.html
■韓国調査捕鯨断念報道 (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/67764403.html


 記事中に国名が入っちゃってますが、とりあえず気にしないでください。。。
 続いてB国ですが、IWCでの立場はやや日本よりだったものの、同国内では捕鯨に対しさまざまな意見が聞かれます。今回のICJ判決に対しても、日本に同情的な声から辛辣な批判まで多様な主張がある模様。ネットメディアの捕鯨報道に関する限り、B国は別に検閲などしておらず、日本よりむしろジャーナリズムの公平性が保たれているくらいかも・・。


■調査捕鯨に中止命令、中国では矛盾指摘の声も=中国版ツイッター|Searchina
http://news.searchina.net/id/1528607
■違法な捕鯨が暴き出す“日本人の腐った根性”―中国メディア|ZINHUA.JP
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/photonews/379038/
■中国発捕鯨批判 (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/34860899.html 


 こちらも国名が入っちゃってますが、同じく気にしないでください。。。。
 では、両国が本当に日本を訴えられるのか、またその気があるかどうか。
 まずA国自身が国際的な批判を受けて調査捕鯨計画を撤回したにもかかわらず、AUS・NZとの裁判で違法認定された日本が、ほとんど同じ内容の大規模調査捕鯨をいけしゃあしゃあと北西太平洋で続行するとなれば、同国とその市民にとっては面白いはずがありません。
 しかも、おそらく同国の計画した調査捕鯨の内容は、近海に限った小規模なもので、少なくとも日本のJARPAUに比べればはるかに違法性が少なかったはずなのです。
 つまり、A国にはJARPNUをICJに訴える大義名分が十分にあるのです。
 そして、同じくB国にとっても、北西太平洋の資源を日本が事実上占有している状態に、いい顔をするはずはないでしょう。ICJが違法性を指摘した以上、B国がここぞとばかり追及しない道理はないわけです。
 今回の訴訟では、B国出身の判事も含まれていました。某週刊誌がどうでもいい記事を書いてるようですが。。
 また、A国はハーグで大使を傍聴させていたことを、捕鯨擁護記者が確認。

■元産経木村正人氏もやっぱりトホホ反反捕鯨記者 (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/73531621.html

 前回も指摘しましたが、両国が今回の日本とAUS・NZの訴訟の経緯を、細心の注意を払って見守っていたとしても、何ら不思議はありません。
 この訴訟への対応が、T島S諸島の問題を睨んだものだということは、当の日本政府関係者もマスコミも、あっけらかんと言いふらしていたわけです。聞いていないはずがないでしょう。


 両国とも、上記したとおり大義名分はあります。
 しかし、建前とはまったく別の理由で、日本を提訴することが大きな意味を持つと考えるかもしれません。日本が公にしていた裏の動機と同じく。
 ICJはすべての国連加盟国に開かれ、さまざまな国に活用されているとはいえ、訴訟コストはバカにはなりません。日本はこれまでICJで争ったどの国よりも、無駄金を投じたといえそうですけど・・。
 とはいえ、A、B両国は、その価値に十分見合う対価とみなすことでしょう。しかも、このケースに限っては、非常に低コストで済む可能性が高いわけです。事前提出資料はAUSのそれを参考にすればよく、後述するように、審議の準備の方は不要にさえなるかもしれません。
 また、AUSとNZのように、タッグを組むことも可能。むしろそのほうがお互いメリットになるでしょう。


 さて、A国B国が、「日本のJARPNUは国際捕鯨取締条約違反だ」とICJに訴えたとします。内容はAUSとほぼ同じ。
 この両国は、ICJに対して義務的管轄権受諾宣言を提出していません。
 ですから、AUS戦と異なり、日本はあっさりと逃げられます。AUSに対しては先決的抗弁を使う手法があり、そのほうが合理的だったのですが、その手続さえ不要です。
 確実に負けるとわかっているのですから、合理的に考えるなら、応訴しないで無視するのは当然のこと。
 しかし……そこで「日本は逃げたぞ!」と言われるわけです。
 国際司法裁判所に違法性を指摘されながら、間違いなく同様に違法な調査捕鯨を、対象外だという理由で別の場所で強行してしまう。判決に従うどころかICJの権威に泥を塗る、国際法規を重んじる精神など欠片も持ち合わせない国として、徹底的に批判されるでしょう。ついでに、相手がAUSのときは応じたのに、同じアジア諸国であれば無視する点も、一種の差別という謗りを免れないでしょう。
 話はそこで終わりません。
 今度は日本側がいよいよT島S諸島問題で両国を訴えようとしたとき、やはり彼らは同様に簡単に逃げることが可能です。
 しかし……そこで両国には格好の言い訳が与えられます。
「おあいこじゃん」
「先に逃げたのはそっちでしょ?」
「判決を守ろうとしない、調子のいい国の相手なんかしてられないよ」

 国際社会も、「まあ、どっちもどっちだね」という評価を下すでしょう。

 そもそも、日本政府が調査捕鯨裁判を、自国の絡む国際紛争(とりわけT島、S諸島)を処理するためにICJを活用するモデルケースとみなしたのは、次のような狙いとシナリオがあったからでした。
 本音では重要な国益だとは考えていないクジラで、引き分けに近い、あるいは実質勝訴といえる軽い#s訴を受け入れ、国際社会に対して自分たちが国際法規を尊重する模範的な優等国なのだということを精一杯アピールする。
 そして、本丸≠ナAB両国を土俵に引っ張り上げ、あるいは逃げられたとしても、そのことによって自分たちの正当性を声高に世界に知らしめる
──という。
 ところが、日本の思惑は大きく外れてしまいました。軽い#s訴で済むはずが、重い#s訴になってしまったのです。水産庁長官ら、捕鯨サークルのポカで。

 ここでもし、族議員や捕鯨サークルのわがままを受け入れ、JARPNUを小手先の変更で済ませたり、南極海での再開を強行するようなことになれば、国際社会から「なんだ、日本は口では守ると言いながら、判決に従う気なんて全然ないじゃないか」と強い批判を浴びるでしょう。優等生であることをアピールするはずが、脱法国家のイメージがさらに強化されてしまうのです。そうなれば、AB両国を睨んだ日本の戦略は台無しになってしまいます。
 逆に言うなら、日本からICJオプションを奪う、少なくともその効果を大きく減殺してしまえる非常に有効な手段を、日本はAB両国に対して与えてしまうことになります。

 日本には、両国のJARPNU提訴に対し、逃げずに受けて立つという選択も一応あります。AUSの提訴に対してそうしたように。
 しかし、その場合、200%負けが確実の茶番と化すわけです。 まさに究極の不合理。
 いくら高いギャラを積まれたって、海外の弁護士は絶対に日本の依頼に応じるはずもなし。免責事項がついても、看板に傷がつくのは誰だってごめんです。お人好しのワロー氏に代わって証人を引き受けてくれる海外の研究者なども、見つかりはしないでしょう。前回負けた京大の法学部教授他、代表団は全員日本人で構成するしかないでしょうね。
 顔ぶれは変わっても、ICJ判事たちはそれこそうんざりするでしょう。「AUSとの裁判で既に指摘されたことを、なぜ守ろうとしなかったのか?」と、日本が一段と厳しく責任を問われるのは間違いありません。
 内外のメディアはシラケるばっかり。欧米豪の市民は、特にクジラ好きでなくたってAB両国を応援するでしょう。各国政府も沈黙するしかなし。
男なら、負けると分かっていても戦わなければならないときがある(〜某昔のアニメ)! どうだ、逃げずに戦ってやったんだぞ、偉いだろ! もう1回、(領土で)尋常に勝負!!」
 満身創痍でそんな見得を切ってみせたって、ウケるのは国内のサブカル世代のネトウヨだけでしょうね・・。
 裁判に応じようと応じまいと、日本のイメージダウンは必至です。
 最近の日本の首相の猪突猛進ぶりに業を煮やしているAB両国にとっては、低リスクで得るものの大きい、検討に値する戦略だと思いませんか?

 

 正直、筆者自身は領土のことなんて知ったこっちゃありません。
 大切なのは、命、自然、そして平和。
 日中双方の識者が指摘するとおり、尖閣諸島の主権をめぐる問題で、両国にとって恩恵を最大化できる選択は「永久棚上げ」です。
 台湾との間で、水産資源管理の点では十分とはいえない、当の八重山の漁業者にも納得のいかない拙速な漁業協定を結べるくらいなら、日中台で公平・公正かつ厳格な資源管理に基づく漁業協定を結ぶべきであり、またそれは可能なはず。
 日中および米国が真剣に取り組むべきは、緊張緩和・軍縮のための膝詰めの交渉のはずです。
 韓国との間の歴史問題等にしても、未来志向といいつつ談話を見直そうとしたり、バカげた観測気球を打ち上げ続けたり、やってることは常に後ろ向きでは、米国に愛想をつかされて当たり前です。竹島は韓国が実質的な施政下に置いていますが、交渉の前提となるはずの慰安婦問題をはじめとする歴史認識で復古主義を前面に押し出すようでは、相手を硬化させるばかりで、対話が進むはずがありません。

 とはいえ、とくに保守主義の立場でなくとも、領土問題に関しては非常に強い関心をお持ちの方も少なくないでしょう。そんな諸兄のために、この問題をA国B国に利用されないようにするための対処法を提案したいと思います。
(「領土なんかより鯨肉のほうがずっと大事な国益だ!」と言えちゃうヒトたちには、筆者から申し上げることは何もありませんけど。。)
 日本が、自らの犯した重大な失策を埋め合わせる方法は、やはりひとつしかありません。
 国益としては(少なくとも領土に比べれば)実に瑣末でチッポケな、特定の事業者と癒着した官僚・族議員の利権のためでしかないクジラを、きっぱりとあきらめること。
 可及的速やかに、疑念を差し挟む余地がないほど判決を遵守するのがベター。要するに、一番手っ取り早いのは、公海からの完全撤退です。詳細は前回の記事をご参照。
 JARPNUをほとんど内容を変えずに今年強行したり(もう時間はあまり残されていませんが)、再来年の南極海での再開を宣言するなどは、もちろんもってのほか。
 そのとき日本は、クジラなんぞよりはるかに大きなものを失うことになるかもしれませんよ──。


 領土問題で、3国がお互いに頭を冷やしたうえで、罵り合いにならない実のある話し合いのテーブルに着くまでには、まだまだ長い時間を要することでしょう。
 日本はここで、最低限の自制心を、クジラから、今回のとても痛い敗訴から、真剣に学ぶべきです。


参考リンク:
−メディアが伝えぬ日本捕鯨の内幕 税を投じて友人なくす|WEDGH Infinity
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/721
−ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン (前回記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html


 次回は今年の小笠原のザトウクジラの画像をお届けしますニャ〜

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2014年04月12日

ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン

◇ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン

■JUDGMENT|WHALING IN THE ANTARCTIC (AUSTRALIA v. JAPAN: NEW ZEALAND INTERVENING)
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18162.pdf

 国際司法裁判所(ICJ)の調査捕鯨訴訟、筆者も政府関係者に倣って判決文を精査しているところですが、読めば読むほど日本側に不利なことが明らかになってきた感じ。
 例えば、ICJが認めているのは、国際捕鯨取締条約(ICRW)8条に書かれた定義上の調査捕鯨のみで、第一期のJARPAについては本件の争点ではないと判断を完全に保留しています。双方の言い分を一応紹介したうえで、「今回の件とは関係ないから、あんたたちの意見の不一致にコートは取り合わないよ」といっているわけです。巷で言われているように、決して日本の調査捕鯨を認めたわけではありません(#99-108:ICJ判決文)。認めたのはIWCへの事務手続きだけ。

 The legality of JARPA is not at issue in this case. #99(p35)

Overall, the Parties disagree whether JARPA made a scientific contribution to the conservation and management of whales. The Court is not called upon to address that disagreement. #108(p37)


 また、非致死調査の検討がきわめて不十分だったことについては、AUS側の主張をそのまま認めており、「ザトウとナガスの致死調査なしでも一定の成果が挙がっているのに、なぜクロミンクで致死調査にこだわるのか?」と問題視しています。「ザトウとナガスを計画数どおりに殺せ(さ)なかったことが問題で、もっと増やしゃよかったんだ」という擁護派の主張は明らかに誤っています(:ICJ判決文)

The Court also notes Japan’s contention that it can rely on non-lethal methods to study humpback and fin whales to construct an ecosystem model. If this JARPA II research objective can be achieved through non-lethal methods, it suggests that there is no strict scientific necessity to use lethal methods in respect of this objective. #211(p62)

 その中で、敗訴を決定付けた日本側の致命的なポカを発見しました。


The use of lethal methods in JARPA II focuses almost exclusively on minke whales. As to the value of that species, the Court takes note of an October 2012 statement by the Director-General of Japan’s Fisheries Agency. Addressing the Subcommittee of the House of Representatives Committee on Audit and Oversight of Administration, he stated that minke whale meat is “prized because it is said to have a very good flavour and aroma when eaten as sashimi and the like”. Referring to JARPA II, he further stated that “the scientific whaling program in the Southern Ocean was necessary to achieve a stable supply of minke whale meat”. In light of these statements, the fact that nearly all lethal sampling under JARPA II concerns minke whales means that the distinction between high-value and low-value species, advanced by Japan as a basis for differentiating commercial whaling and whaling for purposes of scientific research, provides no support for the contention that JARPA II falls into the latter category.
  #197(p58)

 これはオーストラリア(AUS)側が昨年6/28の口頭弁論時に指摘してみせたもの。

■Public sitting held on Friday 28 June 2013, at 10 a.m., at the Peace Palace, President Tomka presiding, in the case concerning Whaling in the Antarctic (Australia v. Japan: New Zealand intervening)
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/17400.pdf

60. As recently as October 2012, the Director of the JFA openly admitted to a Japanese Parliamentary Subcommittee that maintaining its purportedly “scientific” whaling program in the Southern Ocean was necessary to perpetuate the market in minke whale meat. (Tab 108):
“Minke whale meat is prized because it is said to have a very good flavour and aroma when eaten as sashimi and the like . . .
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
[T]he scientific whaling program in the Southern Ocean was necessary to achieve a stable supply of minke whale meat.”12
 (p18)


 で、該当する国会答弁はこちら。

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025318020121023003.htm

第180回国会 決算行政監視委員会行政監視に関する小委員会 第3号(平成24年10月23日(火曜日))

○本川政府参考人
 少し補足をさせていただきます。
 被災前でありますが、調査捕鯨として大体八割、三千八百トン、七百トン前後をとってきておりますが、そのうち南極海が二千トンであります。ただ、これはミンククジラというものを中心にとっております。ミンクというのは、お刺身なんかにしたときに非常に香りとか味がいいということで、重宝されているものであります。
 それから、北西太平洋で千七百トン程度、二十二年はとっておりますが、そのうち百二十トンが沿岸の調査捕鯨であります。千五百トン強はいわゆる鯨類研究所がとっている鯨であります。ただ、こちらはイワシクジラとかニタリクジラというものを中心にとっております。
 それから、沿岸の小型捕鯨というのが二十二年で四百十七トン捕獲しておりますが、これはツチクジラという、イルカに非常に形が似た鯨でありまして、ジャーキーのような、干し肉になるようなものでございます。この前、鮎川に行かれたときに、鮎川の捕鯨の方がとっておられましたが、これはまさにツチクジラをとる業を営んでおられる方でありまして、この方が南氷洋でとられるミンククジラを扱うということはまずないのではないかなというふうに思っております。
 したがって、ミンククジラを安定的に供給していくためにはやはり南氷洋での調査捕鯨が必要だった、そういうことをこれまで申し上げてきたわけでございます。
 それから、今のデータにつきましては私どものホームページで公開させていただいております。積極的に提供申し上げなかったことについては申しわけないというふうに申し上げたいと思います。
(中略)
○小野寺小委員
 長官、これは誰が見たって今回違和感がありますよ。復興の予算でこうやってつけるというのはおかしい。だから、もうこれはだめということになるんだけれども、迷惑しているんだ、あなたのおかげで。
 誰が迷惑しているかというと、鯨産業の人全体が迷惑しているんですよ。こうやって、何か捕鯨がいかにも復興予算の流用の悪い人にとられてしまったら、捕鯨事業全体が困ってしまう。実際、この石巻地区だって、日本だって、やはり捕鯨というのは大事な文化ですよ。ですから、あなた方がそういう変なことをするから逆にこういうことに迷惑がかかるんだから、しっかり必要な予算はとっていく、しかも本予算でとっていく、それをはっきり言っていただきたい。
(引用、強調筆者)

 まあ・・誰がどう見たって、調査捕鯨が商業捕鯨に他ならないことを自ら白状しているとしか思えませんわな・・・
 とはいえ、ここで本川長官個人のうかつさを責めたてても始まりません。「そういうことをこれまで申し上げてきた」とは、歴代の水産庁長官が調査捕鯨についてそのように説明してきたことを意味するのですから。
 そして、質問に立った国会議員らも、「調査捕鯨に対する疑義を招きかねない問題発言だ」として撤回・修正を求めることなど誰もしていないわけです。風評被害≠心配して啖呵を切った代表的な捕鯨族議員、小野寺氏も含め。
 これは言わば、捕鯨サークルという組織の慢心からきた身から出たサビ

 このときの衆院委員会質疑は、東北大震災復興予算流用に関するもの。
 水産官僚だって、族議員に「何とかしろ」と尻をたたかれ、深刻な鯨研の赤字問題を解決するために復興予算に飛びついたんでしょうが・・。

■日本鯨類研究所(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%AF%A8%E9%A1%9E%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80

震災復興資金流用への批判
税金投入問題に派生する形で2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の震災復興資金のうち、石巻の復興の為として約23億円が調査事業費として計上され、うち18億円が調査捕鯨の費用に、5億円がシー・シェパード対策に使われた事実に対する批判があり、当の石巻市からも地元に恩恵がない、当地の関係者から調査捕鯨で捕った鯨は一頭も流通していないとされており。この件で衆院決算行政監視委員会の理事である自民党の平将明衆院議員は調査捕鯨の必要性を訴えられたが調査したら鯨肉の在庫は余っており、役所に嘘をつかれたと非難している。また、2012年10月23日の衆院決算行政監視委員会で、水産庁の本川一善長官は18億の調査捕鯨の費用で当時の8億7千万円の債務超過を解消してゼロにした旨を答弁した。尚、この件は最初に英豪メディアで取り上げられたものの、この報道を見て災害の義援金が使われたと誤解した人からの抗議が豪日本大使館に殺到した為、義援金使用に関しては否定のコメントを出した。
(引用、強調筆者)

 調査捕鯨の本質を最もわかりやすい形で、当事者の口から、国会という場で説明させたのは、まさに復興予算を平気で流用してしまう捕鯨サークルの体質でした。
 この問題が海外メディアに取り上げられたことで、AUS政府にも証拠として提供されることになったのでしょうね。
 ちなみに、AUS側の審議前の提出資料には含まれていないため、隠し玉として用意されたのでしょう。AUSの今回の提訴が、国内受けを狙った内向きのパフォーマンスではなく、本気で結果を出そうと知恵を絞った証ともいえますが。
 してみると、水産庁の最高職から自爆発言を引き出し、ICJに思い切った判決を下させるうえで大きな貢献を果たしたのは、ほかでもない、捕鯨サークルや国会議員たちを復興予算流用問題から逃れられない状況に追い込んだ日本国民、ということになるでしょう。具体的には、調査捕鯨に対して特に含むところがあったわけではなく、震災復興予算の使われ方への関心と公平な視点を持ち、調査捕鯨が聖域≠ニして見過ごされることをよしとしなかったジャーナリストと研究者、そして取り上げざるを得なくなった多くのマスコミ、「これはひどい」という正常な反応を示してくれた、被災地を始めとする全国の国民の皆さん。まさに殊勲賞ものですね。

 ほぼ完敗といえる敗訴に至った理由は、まず一義的には、演出によるイメージ戦略でもって不利な戦況を乗り越えようとした外務省の戦術のマズさにありました。しかし、勝ち目のない負け戦をあえて受けて立たせたのは、理をわきまえず「ともかく勝て!」とせっついた自民党捕鯨議連であり、TPP首席担当と兼任させる形でわざわざ外務官僚のエースを起用した安倍政権に他なりません。
 しかし、最初から勝ち目のない戦にしてしまった主因は、もちろん捕鯨サークル自身にあるわけです。責任の大きい個人の名を挙げるとするなら、自爆発言の本川一善現水産庁長官と、ICJ/AUS&NZにツッコミどころを山ほど提供したJARPAUを立案・主導した小松正之氏ということになるでしょう。AUSが口頭弁論で用意したプレゼン資料の中には、小松氏の「It's none of your business!(余計なお世話だ!)」発言や、「捕獲枠拡大のおかげで鯨肉が安価に提供できるようになった」と紹介する自著なども入っていました。クジラ本、山ほど書かれましたもんね・・。
 いずれにしても、こんなバカげた訴訟の負担を国民に強いた責めを負うべきは、族議員と歴代官僚を含む捕鯨サークルであることは間違いありません。

■調査捕鯨国際裁判敗訴は全て安倍と自民党捕鯨議連の責任|Togetterまとめ
http://togetter.com/li/650580


 さて……あるとき、とある国が何年もの間、赤道を越えた南極に向けてぶっ放し続けていたのは、人工衛星などではなく、国際条約に違反するミサイルだったと、世界で最も権威ある司法機関からきっぱりと駄目出しを受けました。
 ところが、「人工衛星か? ミサイルか?」が問われていたにもかかわらず、その国の中ではどういうわけか、「うちのミサイルは、中世の花火に歴史をたどれる美しい伝統技術だ! 南極に向かって打ち上げ続けろ!」というわけのわからない屁理屈をマスコミが盛んに流し続けています。国民の大多数が、「あれが花火でも人工衛星でもない、ミサイルだってことは、とっくにわかってたさ・・」とつぶやいているのに。
 前約束で、国際法を遵守する旨宣言した以上、「仕方ない、これ以上ミサイルを南極に飛ばすのはやめよう」と、現実に向き合う政府関係者も多い中、なおも「うるさい! 国際条約機関から脱退してでも、ともかくミサイルを南極に飛ばすんだっ!」と息巻いている人たちもいます・・

 一体日本は、そんな目も当てられない国だと、世界から白い目を向けられるようになってもいいのですか??

 アイルランドの提案、米国の打診、外部専門家を招き多くの関係者の時間と労力を注ぎ込んだIWCでの歩み寄り交渉──あたかもミサイル人工衛星と嘯き続ける近くの独裁国家と見まがうような、強硬な唯我独尊の姿勢を貫き、テーブルをひっくり返してきたのが、捕鯨ニッポンに他なりません。

 先日、地方紙の一紙で産経のポエムとは比較にならない、思わず読者をうならせる名コラムが掲載されました。以下はその一説。


 (デ・ソト提案に沿った交渉の)当時「南極海での調査捕鯨中止」は、日本にとって強力な交渉カードだった。もし、このカードを交渉で切っていれば、得られたものは大きかったはずだ。だが、今回の判決でこのカードの意味はなくなってしまった。(引用〜岐阜新聞・時言「捕鯨をめぐる幻の妥協」)


 指摘されているとおり、裁判所で国際条約違反と認定されてしまった時点で、日本は立場も、代わりに何かを要求する権利も、すべて完全に失ってしまったのです。その時点では、一定範囲の沿岸捕鯨を許容してもらえる余地もまだあったというのに。
 しかも、国際裁判至上にいつまでも汚名を刻み込まれる形で。

 日本が自らの愚策の果てに失った誇りを取り戻すには、一体どうすればいいのでしょう?
 なすべきことは、ひとつしかありません。
 それは、世界中の人々に対し、ミサイル人工衛星だとずーーっと偽り続けてきたことを、深々と頭を下げて心の底から謝ることです。
 何年も国際条約を破り続けてきたことが明らかになったのに、一言の謝罪もなく、「失望した」などと逆ギレしたうえ、一切のペナルティなしに済ませようとするのは、あまりにも虫が好すぎるんじゃありませんか?
 もし、日本との間で係争を抱えている国が、同じような振る舞いをしたなら、国内で増殖しつつある新世代のナショナリストたちはきっと、怒り狂って暴動を起こすことでしょうね・・・
 実際、政府関係者はICJでAUS・NZを迎え撃つにあたり、今回の訴訟対応を、対中国・対韓国の領土問題を念頭に置いたICJでの紛争処理のモデルケースとして捉えていると、臆面もなくメディアに語っていたわけです。最強布陣の必勝体制で臨み、負けるはずがないと高を括っていたからなのでしょうが。
 中国や韓国の人々はもちろん、今回のICJ判決を受けて日本がどのように振る舞うかに、非常に大きな関心をもって注目しているはずでしょう。

 無論、世界の日本に対する評価を気にするならば、口先だけの謝罪と反省で終わらせるわけにはいきません。国際社会に対して自らの犯した罪をきちんと償う必要があります。それを具体的に行動で示さなければなりません。

1.南極海からは即時、完全に撤退すること。
 一年間だけ休んだら再びクジラたちの楽園を脅かすべく舞い戻ろうなどとは、二度と金輪際考えないことです。

2.北西太平洋からは段階的に撤退すること。
 カードは失われてしまいました。南極海撤退だけで目こぼしをもらうことを、国際社会に乞うことはもうできません。
 AUS・NZ・米国等には、あらかじめお願いして了承を取り付けることが必要でしょう。現実的な観点から、各国には土下座しつつ、少しばかり猶予期間をいただきましょう。せいぜい3、4年の期間が目処でしょうね。
 その間に、市場縮小のロードマップを提示し、副産物≠セったハズのものの需給を調整するとともに、共同船舶の船員の一時補償と再雇用の支援を国が確実に行うこと。繰り返しになりますが、捕鯨批判派を含め、復興予算流用に厳しい目を向ける国民だって、誰一人文句を言いやしません。
 副産物≠ノついては、都市部の食通どもがネット通販で取り寄せていいものではありません。全量沿岸捕鯨地に回すべし。江戸時代から続くという意味では、資格があるのは太地と和田浦くらいですが、鮎川、釧路は含めていいでしょう。そして、東北の被災地を尻目に自分たちだけ20億の経済効果にありつこうとした、同情の余地など一片もない下関ではありますが、大マケにマケて一定の期間は認めてもいいでしょう。
 どーしてもどーしてもどーーーーしても鯨肉が食べたい!という人は、沿岸捕鯨地に出向いて、現地にさまざまな形でカネを落とし、地域経済に貢献することです。
 学校給食への活用などは無論禁止。こどもたちに食べさせるべきは、地産地消の究極のアンチテーゼというべき南極産の野生動物の肉などではなく、雑穀、地域野菜、地先の海で取れる小魚です。
 捕鯨協会/国際PRがでっち上げた虚飾の鯨肉食ブンカは、ドングリ、ヒトデ、ヒザラガイなどと同じ、地産地消の文化に反しない、身の丈にあった地域の食習慣の水準に回帰するべき。

3.沿岸捕鯨については、乱獲と規制違反の歴史に対する真摯な謝罪と反省を世界に表明したうえで、国際機関の厳格な管理のもと、小規模な地場利用の形で認めてもらうよう、お願いすること。
 今回のICJ判決報道の中で、和田の捕鯨会社は「罪悪感を伴うものにならなければいいが」などとコメントを寄せ、捕鯨業者でありながら日本の伝統捕鯨の精神の真髄を何も理解していないことを露呈してしまいました。あまりにも情けないことです。何のための供養碑だと思っているのだろう? 自分たちも先祖に倣ってやっていることは、形式だけのパフォーマンスにすぎないと思っているのでしょうか?
 また、太地は凝りもせずに次回IWC総会への外遊予算を確保したとのこと。国際会議への出席は、本当に必要ならば政府が費用をもって代表団に加えればいい話。視察に名を借りた地方自治体の議員・首長らの海外旅行は、市民オンブズマンの批判を浴びて久しいですが、どこ吹く風という感じですね。伝統の真珠養殖を潰して画餅の「鯨の海構想」を強引に推し進めることといい・・。太地はご神体への自縄自縛の状態から自らを解放しなくてはなりません。

4.イルカ猟については、追い込み猟を突きん棒猟に切り替えること。また、国連海洋法条約に則りIWCの管理下に置いたうえで、水産庁はデータが不足している対象種・個体群をきちんと調査し、厳格なPBRに基づく捕獲枠を設定しなおすこと。
 
捕鯨と同様、イルカ猟も国際法の観点から問題があることは明らか。イルカフリークの皆さんには申し訳ないと思いますが、筆者はここであえて、かなり譲歩した現実的な提案を示します。ガイアツで追い込まれる前にきちんと襟を正すことが生き残る唯一の道だと、関係者は胸に刻むべきです。


 いやだとおっしゃる? どーしてもどーしてもどーーーーしてもいやだと?
 日本はカードを失ったのですよ。そんな贅沢なことを言えた立場ではないのです。
 東北大石井准教授が指摘されていますが、JARPNU(北西太平洋調査捕鯨)は間違いなく、今回違法認定を受けたJARPAUと同様の問題を抱えています。NHKが報道したように、事業者も海域も船の規模も捕獲数も捕獲対象種も異なる沿岸調査にさえ、水産庁が慎重な検討を強いられているのは、もちろんそれが理由。もっとも、族議員の反発が少ない沿岸調査にしわ寄せをできる限り押し付け、共同船舶の母船式捕鯨の傷をなるべく少なく済ませようとの意図もあるのかもしれませんが・・。
 北太平洋の捕鯨に対して日本を訴える相手といったら、思いつくのはやっぱり米国。ただ、みなさんもご承知のとおり、日米関係は主軸となる貿易・防衛問題で重要な局面を迎えており、米国がクジラで日本にイチャモンをつける余裕はないかもしれません。
 なら安心だと思いますか?
 いや・・ワイルドカードも考えられます。
 もし、どこかの国どこかの国が、日本のJARPNUをICJに訴えたとしたら──日本はクジラよりはるかに大きなものを失うことになるかもしれませんよ?
 次回は、日本がはまりかねない最悪のドツボについて、詳細に検証してみたいと思います。
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2014年04月06日

今こそ南極海捕鯨から全面撤退のとき 日本政府は英断を!

 日本の調査捕鯨をめぐる国際裁判・日本VSオーストラリア&ニュージーランドに対する国際司法裁判所(ICJ)の判決が示されました。

■ICJ Press Release 2014/14
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18136.pdf
■JUDGMENT|WHALING IN THE ANTARCTIC (AUSTRALIA v. JAPAN: NEW ZEALAND INTERVENING)
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18162.pdf


 正直驚いています。ここまでの判決が出たことに。
 敗因については、直後に毎日が触れ、また3日には朝日が2面で大きな特集を組んでいます。毎日ブリュッセル支局の斎藤記者は以前かなり偏向した記事を書いたことがありますが、今回はとても冷静かつ的確にまとめてくれています。朝日の編集委員小山田記者は、今のマスコミの中では一番の捕鯨問題通の一人といえそう。これまでも興味深いネタを発掘してきてくれました。いつもミスリードの意図が見え見えな産経記事とは対照的に、記事自体は淡白で、そこはプロのジャーナリストならでは。


■叱責の首相・釈明する担当者…調査捕鯨、日本完敗の訳は (4/3,朝日)
 ※ アナログ版記事見出し:捕鯨外交 自信が裏目 「最強布陣にあぐら」
http://www.asahi.com/articles/ASG42630CG42UTFK01B.html


最低でも数千万円単位の弁護報酬を支払い、世界的権威の弁護士を雇った。完敗はあり得ないとなめていた」(政府関係者)と打ち明ける。(引用、強調筆者)
 欧米諸国では、日本に批判的な記事が目立つ。フランスのフィガロ紙は1日付で「日本は(商業)捕鯨を継続できるよう調査捕鯨プログラムを『でっち上げた』」ために豪州から訴えられたと批判的に報じた。米ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は「判決は南半球のみが対象。クジラを守る戦いは終わっていない。日本は国際的な非難を待たず、すべての捕鯨をやめるべきだ」と同日付の社説で論じた。オランダのトラウ紙は同日付の記事で「中国との尖閣諸島の問題で日本は『国際法のもとで解決を』と強く主張している。ICJ判決を無視すれば、日本の外交的信頼に大きくマイナスになるだろう」とした。 (引用)

■調査捕鯨中止:「透明性欠いた」点、受け入れられず (3/31,毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20140401k0000m030115000c.html


 一方、捕鯨を批判する欧米やオセアニアとの外交交渉で捕鯨問題が常に障害となってきた事実は否定できない。日本が調査捕鯨を断念すれば、外交的には評価を受けることになりそうだ。(引用、強調筆者)

 その傍らで、戦前を髣髴とさせる大本営愛国放送と化しつつあるNHKは、今回の訴訟と関係ないハズの北西太平洋調査捕鯨の画像と主張を混ぜ込んで、実にえげつない誘導解説記事を出しています。主張自体デタラメですが・・。解説の解説≠ノついては下掲リンクをご参照。

■くらし☆解説 「調査捕鯨国際司法裁判所判決の意味は」 合瀬宏毅解説委員 (4/1,NHK)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/184379.html


 こちらはニュースですが、IWC副議長の傾聴に値するコメント。


■IWC副議長 捕鯨方法の抜本的見直しを (4/2,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140402/k10013430391000.html


この中でシュメイ副議長は、「国際司法裁判所の判決は、IWCの加盟国の間で政治的な理由から停滞してきた議論の論点を中立的な立場から明確にした」として、判決を歓迎しました。
そのうえで、日本は現在のやり方のままでは調査捕鯨を続けられなくなったことを踏まえ「鯨を殺さないで行う調査をほかの国と連携して実施するなど、ほかの選択肢があると思う」と述べ、日本は調査捕鯨の方法の抜本的な見直しが必要だという考えを示しました。
(引用、強調筆者)


 今回の調査捕鯨国際裁判については、筆者も市民の皆さんとともに昨年6、7月に行われた口頭弁論を国連ウェブキャストで傍聴し、固唾を飲んで行方を見守ってきました。
 結果的には、筆者の予想(というより期待)にかなり近い判決となったわけです。
 当時の筆者が指摘した問題点と合わせ、判決を受けての筆者と多くの市民の皆さんの感想を、以下のまとめサイトで取り上げていただきました。
 マスコミ記事の細かいチェックまで、大変なまとめを引き受けてくれた富さんに改めて多謝m(_ _)m


■調査捕鯨国際裁判敗訴は全て安倍と自民党捕鯨議連の責任|Togetter
http://togetter.com/li/650580
■調査捕鯨の科学性を解体する|Togetter
http://togetter.com/li/486896
■ICJ調査捕鯨訴訟で日本は負ける|拙ブログ
http://twilog.org/kamekujiraneko
http://b.hatena.ne.jp/entry/kkneko.sblo.jp/article/70305216.html
■Japan will lose the legal suit on of whaling in the Antarctic at the ICJ|拙HP
http://www.kkneko.com/english/icj.htm


 裁判の結果が大きく報じられたこともあり、拙管理サイトにも大きな反響がありました。
 拙ホームページには3日に2100、ブログには2日に1900、3日に2500を超えるアクセスが。これは、ウヨガキ君たちが殺到した調査鯨肉横領(世間的には窃盗)事件のとき以上。はてなブックマークの方にも多くの皆さんに指定をいただいたところ(Ika-netブログのブクマはさらに1桁上ですが)。
 そして、まとめのほうはなんと3日間で驚きの28,000アクセス超え。お気に入り120、つぶやき回数も700以上。
 別の野生動物関連のコンテンツで1万以上の方のご訪問をいただいたことはありましたが、クジラ関連では新記録(^^;;
 数よりも驚いているのは、横領事件のときとは対照的に、非常に多くの方から筆者の指摘に対するご賛同、好意的な反応をいただいたことです。
 判決後のツイッターのタイムラインにも、座布団をみんなにサービスしたいほど名言・名句の数々が流れ、筆者としてはうれしい悲鳴をあげていた次第。

 やっぱりみんな、わかってたんだよね・・・本質を。

 その辺りの事情はマスコミに関してもいえるでしょう。これ以上捕鯨サークルをかばいだてすることが困難な状況になったことが、各紙の社説からもうかがえます。
 残念ながら、これまで精一杯応援してきた後ろめたさが尾を引いているのか、「大変だ、なんとかしなきゃマズイ!」と言いつつ、結論が不明瞭で歯にものが挟まったような言い方が多数。そのせいか、読売、朝日、日経、東京とも、社説に関しては論調が驚くほど似通ってしまっています。どちらかというと、声が大きい捕鯨擁護派に配慮してぼやかした印象。どれも食文化論や食害論、漁業規制脅威論などトホホな主張をこれまでどおり入れちゃってますね(--;; 一方で、過剰鯨肉在庫、収益悪化、復興予算流用問題など、「調査捕鯨に問題がある」ということも、ほとんどのところがはっきりと指摘しています。捕鯨報道のあり方としては、従来からのかなり大きな前進といえるでしょう。
 その中で、一歩リードといえるのが、毎日新聞と宮城県中心の地方紙・河北新報
 河北新報は沿岸捕鯨地である鮎川が圏内にあることから、これまで捕鯨擁護色の強い主張が目立っていました。むしろそれだけに、事態の厳しさも肌で感じたのでしょう。復興予算の流用が象徴するように、東北の沿岸捕鯨者と中央の公海捕鯨事業者との利害はときに相容れず、その際苦汁を味わわされてきたのはいつも沿岸でした。それはこの社説の文中からも明瞭に読み取れます。
 鹿児島の南日本新聞の社説も、冷静なトーンで良質な内容。

■社説:調査捕鯨で敗訴 南極海から撤退決断を (4/2,毎日)
http://mainichi.jp/opinion/news/20140402k0000m070169000c.html

食文化を守るために南極海で商業捕鯨を再開する必要性は乏しい。そのために年間数十億円の国費を使って調査を続ける意味はないだろう。政府は今回の判決を受け入れるとしながらも撤退の意思を明確にしていないが、もう決断すべきだ。(引用)

■調査捕鯨敗訴/「文化」守りつつ政策転換を (4/3,河北新報)
http://www.kahoku.co.jp/editorial/20140402_01.html

 ただ、今回の判決で捕鯨に向けられる視線が厳しくなるのは必至で、国際的な批判にさらされながら調査が続けられるかどうかは疑わしい。
 数年前、国際捕鯨委員会で日本が調査捕鯨を停止する代わりに、捕獲数を大幅削減した上で沿岸や南極海で事実上の商業捕鯨を認める案が出され、各国が前向きに議論したことがある。
 南極海の調査捕鯨から全面撤退し、その代わりに伝統文化とも深く関わる沿岸商業捕鯨の再開に道を開く案を提起する。そうした政策転換もあっていい。(引用、強調筆者)

■[調査捕鯨敗訴] 根本から見直す機会に (4/4,南日本新聞)
http://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201404&storyid=55918

 そもそも捕鯨国と反捕鯨国の勢力が拮抗きっこうし、不毛な対立に終始しているIWCの現状をみると、商業捕鯨の再開は望めそうにない。国内では鯨肉離れが進み、ビジネスとして成り立つ見込みも薄い。
 捕鯨政策はとうに曲がり角にきていたといえる。今回の敗訴を根本から見直す機会にすべきだ。(引用)

 ただ一紙、ポエムを2日連続で声高に唱えた産経は、まあサンケイですから・・・

 インターネットメディアになると、熱烈な捕鯨サークル応援団のばら撒くゴミの割合がやや高くなり、サンケイと変わらず斜め方向に思いっきり捻じ曲がった解説もチラホラ。
 しかし、オンラインの論評の中でも、コラムニスト小田嶋氏のコラムが光っています。熱烈な鯨肉ファンに反発を受けることを覚悟のうえ、中途半端に彼らに媚びることなく、ストレートにご自身の考えを述べられており、若い世代を中心に、脳がベーコン化していない日本人の多数が共感を持てる内容です。日経BPのID持ってる方は必見!


■クジラの凱歌|小田嶋隆のア・ピース・オブ・警句
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20140403/262310/


 振り返ってみれば、当の捕鯨サークル・日本政府関係者も、筆者を含むウォッチャーにとっても、予想だにしなかった判決をICJが下した一番のポイントは、ここにあるのではないかと、筆者は思うのです。
 すなわち、私たち日本国民の大半が、程度はどうあれ、調査捕鯨がいかがわしい代物だと感じていた、ということ。
 いかに御用メディアのNHKや産経が、あたかも北朝鮮の統制報道のごとく、国内の捕鯨礼賛派の声ばかりを取り上げ、批判の声を封じ込めようとも、国民の大半が冷静に判決を受け止めるであろうことを、ICJ判事たちは確信していたのでしょう。


 翻って、本当に残念でならないのは、安倍首相と自民党捕鯨議連の反応です。詳細はTogetterをご参照。
 これでは本当に世界の恥

 族議員たちのぶち上げた脱退の主張は非現実的の一言に尽きますが、身内(票田)を意識したくだらないパフォーマンスによって、確定した司法判断にケチが付けられることはあってはなりません。

 これから日本に求められるのは、真摯な反省の姿勢です。
 かつて、米国が内々に持ちかけたり、IWCでも外部専門家を招いて歩み寄りが促されるたびに、日本は唯我独尊の姿勢を貫き、強硬に突っぱね続けてきました。
 日本国民にとっても決して小さくない財政負担を敷いた、科学を擬装した商業捕鯨の延命工作が、こうして脆くも崩れ去ったいま、潔く進退を決するのが、日本人らしさではないのですか?


 日本がやるべきことについて。
 まず、北西太平洋調査捕鯨(JARPNU)について、「今回の判決とは無関係」の一言で済ませず、JARPAUと同様の問題点が存在することは明らかなのですから、自らの手で徹底的に検証することです。本来なら休止が望ましいところですが、最低でも今漁期については大幅に捕獲数を削減すること
 もし、自制心を働かせ、エゴイスティックな振る舞いを改められなければ、そのときは、米国等に北太平洋での調査についてもICJの判断を仰ぐことになりかねませんよ。そしてまた、日本の脱法姿勢は、判事たちの心象をさらに一段と悪化させるであろうことは、想像に難くないでしょう。
 モラトリアム成立時と同じく、外圧によってしか解決できないとすれば、日本人としては無念の一言に尽きますが。
 そして、南極海からは完全に撤退すること。ICJで日本側証人のノルウェーの鯨類学者、ワロー氏が正直に「less than 10」と認めたとおり、また条約そのものが起草時に想定していたとおり、許容範囲は年間数頭です。
 「生態系の解明」を掲げ続けるのであれば、科学的にナンセンスな4鯨種モデルは放棄し、カニクイアザラシ等鰭脚類、ペンギン等海鳥各種、魚、イカ等を含むオキアミ捕食者について、等しい精度で致死ないし非致死の調査を行うこと。いま致死調査を優先する必要があるとは思いませんが・・
 ICJでもこれ見よがしに成果として自慢した、「クロミンククジラの脂皮厚減少の発見!」も、単一種のみの調査では、それがいかなる環境変化の応答なのかという肝腎な答えが得られません。STAP細胞と同じ
 有害物質汚染の調査も、「薄く広く」がこの分野の常識。GPJも声明で指摘していますが、本物の生態系調査・環境調査こそがいま南極圏で求められているのです。


 ようやく花道が用意されました。
 いまなら、「お疲れ様」と関係者の労をねぎらうことができます。
 日本は全国民の雇用が完全保障された共産主義国家ではありませんが、復興予算流用とは異なり、国が関係者に補償することに対しては、筆者のような捕鯨反対派も含め、異を唱える人は日本には一人もいないはずです
 いまなら、国際社会も「日本は英断を下した」と勇気を讃えることができます。
 これ以上、みっともない真似をするのは、世界にをさらすのは、終わりにしましょう。
 いまこそ南極海捕鯨から撤退を!

posted by カメクジラネコ at 21:53| Comment(8) | TrackBack(0) | 社会科学系