2009年01月06日

ヒトの命に関わるリスクまで背負った飽食の国の鯨肉という食品

■速報:南極海で捕鯨船員1人が行方不明、船から転落した可能性
(1/5,日経・読売・毎日・朝日・産経・時事・TBS・スポーツニッポン 1/6 0:00現在)
http://news.google.co.jp/news?hl=ja&tab=wn&ned=jp&ie=UTF-8&ncl=1264956324 (リンク切れ)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090105-00000118-jij-bus_all (リンク切れ)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090105-00000550-san-soci (リンク切れ)
■第二共新丸における落水事故の発生について|鯨研プレスリリース
http://www.icrwhale.org/090105ReleaseJp.htm
※農水省HPの報道発表資料ではまだ掲載なし

 鯨研の報道発表にあわせ、マスコミ各社もWeb上のニュースで報じています。産経は他紙より早く、ネット上では16:34に掲載(2番目はスポーツニッポンで1時間後)。TBSは夕方5時のニュースで伝えた模様。詳細は不明ですが、目視専門船第二共進丸(乗組員20名、372トン)の操機手(エンジン操作担当)の方が、5日午前3時の勤務交代時間になっても現れず、船内の捜索で所在が確認できなかったため、船の上から転落した可能性が高いということです。現在、他の船舶が捕鯨を一時中断して周辺の海域を捜索しているとのこと。
 鯨研も発表しているとおり、補給に戻ったシーシェパードの妨害とは一切関係なし。日本のネトウヨの流すデマがネット上で飛び交う恐れはあるでしょうが・・。
 南極の海で転落事故ということになれば、極寒の南極の海での救助は一分一秒を争います。一刻も早い発見と救命を願ってやみません。
 転落した可能性のある時間は、他の乗組員が見かけた非番の午前1時頃(産経のみ2時半と記載)から3時までということ。非番の時に目視船のエンジン操作の方が甲板(?)から転落し、2時間の間誰も確認できず、どのような状況だったのかまったく不明というシチュエーションがなんとも不可解です。
 体調が急に崩れたのでしょうか? その場合、長時間外へ出ることが認められているのでしょうか? 管理者は乗員の健康状態について把握できていなかったのでしょうか?
 それとも、天候が悪かったのでしょうか? その場合、やはり船員が船外にとどまっていないかどうか、確認していなかったのでしょうか?
 あるいは、たまたま波を受けて船が揺れたのでしょうか? その場合、操船の際の注意や、船が揺れた直後に乗員の安全を確認する体制は出来ていなかったのでしょうか?
 たとえ非番の時間帯(休憩時間・自由時間・生活時間)といっても、往復航行時を含めた操業期間のおよそ5ヶ月ほどの間、船員の方々は24時間片時も共同船舶の所有する船上から離れられず、会社に事実上拘束されているに等しい状態にあります。毎日新聞報道によれば、この方の場合、前日の勤務が終わったのが午後7時。1日の休みが8時間で、勤務が16時間ということでしょうか? 3交代シフトどころか、1.5交代シフトですね。外航船船員に関する労働法規の詳細についてはチェックしてませんが、こんな労働条件でも例外的に認められているのでしょうか?
 いずれにしても、共同船舶と業務委託者である日本鯨類研究所は、非常に苛酷で危険な労働に従事している乗員の方々の生命に対して、非常に重い責任を担っているはずなのではありませんか?
 共同船舶と委託者である鯨研は、社員の方々の労働管理・リスク管理について、少々認識が甘いのではないのでしょうか? 危機管理体制の整備を疎かにしていなかったでしょうか?
 シーシェパードの腐ったバター対策に税金を使って3億円を投じていますが、それどころの話ではないでしょう。産経の編集長の一人は、SSに勝手に殺意≠認定して殺人者呼ばわりまでしていますが、死と隣り合わせの危険な労働を従業員たちに行わせているのは、日本の調査捕鯨に他なりません。
 時事通信の報道に記述がありますが、1987年に南極海での日本の調査捕鯨が開始されて以来、5名の方が操業中に事故等により命を落とされたり、行方不明となっています。しかも、火災事故は'06年、昇降機の事故は'07年の発生で、近年になって増加しています。医療体制が限られている洋上で、病気で亡くなられた方もいます。今年の春のJARPN2の際には、出港直前に船内で動機不明の自殺をされた方もいます。
 母船は老朽化し、乗員の士気は下がって辞める方も後を絶たず、鯨肉も売れず、経営が悪化してコスト削減の圧力がかかる中、労働安全体制の見直し・強化が共同船舶にできるのでしょうか? 今漁期からは既に外国人船員が乗り組んでいるとの情報もありますが、合理化を目的とする多国籍化の方針が事実であれば、安全管理の面も今後一層なおざりにされかねません。
 南極海でこのような事故が発生した場合、日本は何もできません。仮に今回のような事故が、商業捕鯨の隠れ蓑にすぎない非科学的な調査捕鯨ではなく、国際協調に基づく合同の非致死的調査における事故であったなら、緊密な連携関係を築き非常事態における連絡体制・救助体制が敷かれていたなら、オーストラリア、ニュージーランドの軍その他の航空機・ヘリに、迅速かつ広範な救助・捜索活動を躊躇なく求めることができたでしょう。今回の事故が起きた海域は、海難救助に関して定めた国際条約であるSAR条約上ではニュージーランドの管轄とのこと。命が助かる確率は飛躍的に上がり、人命が失われるリスクは大きく下げられたはずです。
 ちなみに、鯨研のプレスリリースによれば、SAR条約(「海上における捜索及び救助に関する国際条約」)に基づいてNZ政府に救援を要請したとのこと。条約が加盟国に課すのは、体制整備に関する一種の努力義務のうえ、各国の二国間協定を促すもの。WIKIや海保の資料を見ると、日本と米国、ロシア、韓国等近隣諸国との間では協定が結ばれていますが、豪州・NZ政府との間で締結されているかは不明。最寄といっても沿岸からは離れていますし、とくにNZにとっては南極海までわざわざカバーするのは負担でしょうね。
 せめて、沿岸の二百海里内での調査・商業捕鯨であったなら、まだしも海上保安庁や海上自衛隊、近傍の漁業関係等の船舶に救助・捜索活動にあたってもらうことができたでしょう。水温や海況だけを考えても、人の命が失われるリスクは格段に低くなったはずです。
 南極の自然は、本来亜熱帯出身のサルであるヒトを寄せつけない場所です。クロミンククジラその他の南極海に暮らす海棲哺乳類にとって、ヒトは生態学的に相容れない存在です。甘く見れば即座に命を奪われる、触れてはいけない苛酷な環境です。そっとしておくべき原生自然です。南極の自然のバランスを崩したのは、捕鯨業者・捕鯨学者の未熟さと傲慢さであり、管理できるなどというのはあまりにもおこがましい思い込みにすぎません。
 現在の日本は、世界中の命をかき集めながら年間約2千万トンも捨てています。世界に恥ずべき飽食の限りを尽くしており、深刻な食糧不足に直面していた戦後当時とはまったく異なります。もはや鯨肉は、特定の嗜好を持つ一部の人々に供給される贅沢な高級グルメにすぎません。
 日本の都市で、極寒の自然とはまったく無縁の安寧な生活を送っている鯨肉消費者には、鯨肉の高価格に不平をいう向きもあるようです。しかし、乱獲を未然に防止する科学的で厳格な捕獲管理・監視体制と、きわめて高い環境負荷に対して支払うべき対価と、乗員の生命を危険にさらさないための万全の体制、そのためのコストが十分に反映された価格設定であるとは、いまでさえいえません。あなた方が舌鼓を打つ鯨肉が、南極・公海上の野生動物を貪る飽食行為として、世界中の反感を買う外交上の深刻なデメリットとともに、ヒトの命を危険にさらすというリスクまで負っているという事実を、どれだけ認識していますか?
 一方、労働衛生管理に関する社会認識も、商業捕鯨全盛期に比べれば変化してきたはず。未だに過労死大国ではありますが・・。そんな職にあえて就きたがる労働者、必要のない大きなリスクを負いたがる経営者、またそのようにして生み出される製品を購入したがる消費者は、いないのではありませんか? 
 共同船舶の社員のみなさん。命懸けで挑むに足る仕事だと、本当に思っていますか? あなたの命は、家族の人たちにとってのあなたの命は、現在の日本の捕鯨産業と鯨肉市場のために供されるべきだと思っていますか? それでいいのですか?
 そして、日本政府殿。捕鯨推進の国策にとって、ヒトの命は捨て駒にすぎませんか? たかが鯨肉にかけるリスクにしてはあまりに大きすぎるのではありませんか? すべての日本国民の皆さん、そう思いませんか? それだけの価値があるものだと、本気でそう思いますか?
 少なくとも、南極からは直ちに撤退してください。


参考リンク:
■SAR協定|Wikipedia
š">http://ja.wikipedia.org/wiki/SAR協åレジスタードマークš
■海上保安に関する国際活動|海上保安庁
http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/books/h10haku/2-9.htm
■捕鯨母船、日新丸でまた死亡事故 ('07/10/7,GPJ)
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/oceans/whale/sato/87
■"ただの自殺"で終わらせていいのか (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/15768486.html


◇イスラエル軍ガザ侵攻

 既に多数の民間人を含む500人以上の人命が失われ、少なくとも1/4以上は民間人とのこと。フランスなど他の先進国のメディアでは、重傷を負ったこどもたちの痛ましい姿や子供の死を嘆き悲しむ親たちの様子まで報道されています。しかし、日本のマスコミのニュースは、配信された爆撃の映像に、たまにアラブ系の市民デモの模様が挟まれる程度に見受けられます。死刑肯定論や拉致問題の文脈では、感情論が前面に押し出されるのに、この温度差は一体何なのかと、不思議に思えてなりません。
 何百人もの人が殺されているというのに。
 「ロケット弾が飛んできたから、仕返しに何百人分の命を奪う」のが知性なのでしょうか?
 「ニンゲンの盾にするほうが悪い」といって民間人を巻き添えにして殺すのが理性なのでしょうか?
 ヒトという動物にとって、ヒトの命とは一体何なのでしょうか? 国家という、哺乳類に相応しからざるいびつな群れのステータスのために、いくらでも切り捨てていいものなのでしょうか?
 万物の霊長にとって、命とは、その程度のシロモノとしてぞんざいに扱ってしまえるものなのでしょうか? あるいは、それこそが万物の霊長の証なのでしょうか?
 だとしたら、やはりニンゲンはケダモノ未満、畜生未満の卑小な存在でしかないのではありませんか? 



◇いただいたお便りご紹介

31点でした。「鯨も食べるしホエールウォッチングもいってみたい」程度のゆるい人間なので、そんなものかもしれません。
気になった点としては、Q4の回答aがひっかかりました。ペットと家畜は別であって、ペットはどうか、で家畜の話をするのは関係ない話をしているように感じます。
あとblogの方では自己相対化を勧められているのに、脳が鯨ベーコン、等と異なる価値観を持つ人間(捕鯨賛成者)を馬鹿にしているような表現はどうかと思います。(mさん)

 大変貴重なご意見ありがとうございます。“自称ニュートラル”というネトウヨ君は何人も来られましたが、適度に関心をお持ちの“真性ニュートラル”の方からは、なかなか直接声を寄せていただくことはできないもので・・。筆者にとっても、一番有用で参考になるのは、こうした方々のご意見であります。フォームメール(ブログの上にリンク有)は個人情報を記入する必要はまったくありませんので、たまたま検索で引っかかって見にきたという方でも、どうぞドシドシご意見・ご感想をお送りいただければ幸いですm(_ _)m
 で、診断テストのQ4ですが、

Q4.家族に「ペットが欲しい」とせがまれたらどうしますか?
a.昔日本では食べていたし、今でも食べている国があることを教える。


 これですね。回答のa.は「犬を」という一語を付け加えたほうがわかりやすかったかもしれません。ただ、過去の日本の犬肉食については、文化性の有無は現代の鯨肉食とまったく同程度といえるにしろ、食用家畜という位置付けではなかったようです。韓国・中国の食用犬は愛玩用とはまた別に食用として取り扱われていますが(愛玩用が回されるケースもあると聞きますが・・)、内外で論争になっているのはご存知のとおり。それぞれ国内で反対運動が起きている一方で、日本の捕鯨擁護派は盛んにエールを送っているのが現状です。
 最後のご指摘は耳に痛いお話であります。適切な表現を別途思いついたら差し替えたいと思います。反・反捕鯨派の主張が思考が完全に硬直して柔軟性に欠ける%_を、読者のみなさんにイメージでご想像いただけるようにと、関連するモチーフを使った比喩ですので、あからさまな差別用語等をふんだんに使用してくる攻撃的なネトウヨ君たちよりは、むしろウィットを交えたやわらかい表現のつもりではありますが・・。
 まあ、ハマスに対するイスラエルほど横暴ではないでしょうし、「テロリスト」だのなんだのと“言いたい放題”の鯨研どのに比べても、相当におとなしい方じゃないかと思っているんですけどね。付け加えれば、捕鯨を批判しているよそのNPOや個人ブロガーの皆さんは、筆者などより全然温和な表現を使われていますので、その辺りはご理解いただきたいと思います。
 一般の方が「どっちもどっちだな」と感じていただく分には、むしろそれが正しい認識であろうと思います。筆者も確かに脳がニャンコ化してるニンゲンですし。。ただ、日本政府/水産庁とマスコミが片方の極に位置していて果たしていいんだろうか?という点は、納税者・有権者である国民の皆さんがもう少し真剣に憂慮して然るべきじゃないでしょうか・・・

■捕鯨ヨイショ度診断テスト
http://www.kkneko.com/sindan.htm
 

posted by カメクジラネコ at 01:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系