2008年06月28日

2つの顔を持つ農水省??

◇IWC関連ニュース
 

■気候変動、捕鯨賛否両派の論拠に IWCで意見表明 (6/26,朝日)
http://www.asahi.com/international/update/0626/TKY200806260270.html (リンク切れ)
http://megalodon.jp/2008-0628-1345-38/www.asahi.com/international/update/0626/TKY200806260270.html

 記事見出しからすると、まるで一つの主題に対する正反対の結論が両陣営から出されたかのように受け止められかねませんが、中身は全然次元の異なる話です。
 まず、お馴染みWWFによる正統派環境保護団体らしい主張から。氷縁で摂餌するクロミンククジラが温暖化によってとりわけ強い影響を受ける種であることは、ホッキョクグマやイッカクの場合と同様に、生態学・環境科学的見地からは疑いの余地がありません。WWFの指摘の正しさに対する反証は、門外漢の水産資源学者には出しようもありませんしね・・。
 一方、WFF(官製道路擁護団体そっくりの捕鯨擁護団体、ウーマンズフォーラム魚。WWFとすっごく紛らわし・・ねらってるのか?)の主張は温暖化対策として捕鯨が有効というもの。IWCの場で水産庁が主張するのはそもそもお門違いで、IPCCや今度の地球サミットで取り上げるべきこと。ま、取り上げられるはずもないですが。こっちはただのフィクションですから。改定管理体制(RMS)下での高コスト商業捕鯨を、大隈氏の壮大な"構想"に沿って、食習慣も供給体制もない日本以外の国で主要な食肉代替需要に充てようなどというのは"妄想"以外の何物でもありません。嘘だと思うなら、第三者機関に厳密な社会科学的シミュレーションをやらせ、その結果を公表してみせてご覧なさいな。ノルウェーの団体や日本の関係者が示している小型沿岸捕鯨と畜産業の比較データは、片手落ちもいいところで使い物になりません。そのうえ、共同船舶は肝心の自社のCO2排出量すら環境省に提出せず、まともに計算できないか少なく"偽装"しているかどちらかですし。あらぬ疑いをかけられたくなければ、まず数字を公開してはいかがですか?

参考リンク:
■地球温暖化とクジラ (拙HP)
http://www.kkneko.com/ondanka.htm
■食糧危機とクジラ (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/16285138.html

 

■クジラの個体数は回復していない、専門家らが指摘 (6/23,AFP-BB)
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2409087/3067744

 「クジラは精神的に疲れている」という研究者の表現を、捕鯨シンパが物笑いの種にしている模様・・。生物学(社会学・行動学)にまったく疎い捕鯨擁護派には理解不能なようですが、これは何もクジラに限った話ではまったくありません。地上の野生動物でも、多少なりとも社会性を備えた動物にとって、捕獲や人為的な生息環境の改変によってもたらされるストレスは、特に繁殖行動に関わる社会行動を阻害し、個体数の大幅な減少をもたらす重要な要因となります。

 以下もご参照(アフリカゾウの事例)。

■シロナガスとミンクのPTSD (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/archives/20080605-1.html

 


◇ウナギとクジラ・その3

■偽装隠蔽?ウナギの産地証明書送付状、卸売業者が廃棄 (6/27,読売)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080627-OYT1T00456.htm (リンク切れ)
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/eels_mislabeling/
■うなぎ 偽装指摘後も出荷続行 (6/27,NHK)
http://www.nhk.or.jp/news/k10015544491000.html (リンク切れ)

 元大手捕鯨会社マルハニチロホールディングスの子会社・神港魚類他によるウナギ表示偽装問題で、担当課長が産地証明の送付状を廃棄していたことが新たにわかりました。偽装を隠蔽するために破棄した疑いが持たれています。また、神港魚類側の説明では、農水省の聴取を受けるまで偽装を知らなかったとのことでしたが、それ以前に他の業者から情報を得ていながら、なおも販売を続けていたことも明らかに。ブローカーへの確認を怠るなど、農水省側のチェックの大甘ぶりも浮き彫りに。果たして業界最大手の偽装工作をどこまで暴くことができるのか、今後の同社に対する処遇にも注目したいところです。

 


◇2つの顔を持つ農水省??

■<諫早干拓訴訟>農水省も騒然 幹部、判決に「まさか」 (6/27,毎日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080627-00000041-mai-soci (リンク切れ)

 またもや、IWCと直接的には関係ナイけど、間接的には関係大アリのタイムリーなニュースが流れました。干拓事業と漁業被害との間に「相当程度の因果関係」を認め、開門と詳細な影響調査を求めた佐賀地裁の判決は、良識に沿ったきわめて妥当なものといえましょう。もっとも、農水省側はどうやら控訴する方針のようです。一体これが、本当に守るべき漁民に対する行政の仕打ちなのでしょうか!?
 偽装から消費者を守れない農水省
 それどころか、消費者を騙すメーカー側の便宜を図るかのように、丸一年食品偽装問題に振り回されてきた消費者を尻目に、実効力のある規制や監査体制の強化に本気で乗り出す姿勢が一向に見えない農水省
 開発から零細漁民を守れない農水省
 お手盛りのインスタントアセスのみで、差し止め勧告にも耳を貸さずに工事を強行、完成したら今度は既成事実を盾に、目の前で起きている漁業被害との因果関係を調査・立証する責任すら認めない農水省。塩害のリスクも、減反政策と真っ向から矛盾する必要性に対する議論もないまま、早計に入植させた農民を盾に、土建屋を潤すだけのために行った公共事業を正当化する農水省
 科学から目を背ける農水省
干拓事業によって、実際に海流変化や土砂堆積が起こり、工事開始・閉門と見事に相関する漁獲量の減少も数字ではっきりと示されているにも関わらず、科学的因果関係は証明されていないといって逃げ続ける農水省

 一方では、まるで国際会議で世界(反捕鯨国とNPO)を相手に、日本の全一次産業を守る砦として戦っているかのように振る舞う農水省
 科学の権化であるかの如く、鯨食害論をふりかざし、調査捕鯨の科学的成果と必要性に胸を張る農水省

 一体、どちらが本当の姿なのでしょうか???
 もっとも、沿岸捕鯨の再開を声高く謳い上げながらも、大手業者による国策捕鯨を守る取引材料としてしか考えていない点は、諫早干拓問題の構図と実によく似通っているといえるでしょう。また、IDCRの結果、クロミンククジラの目視数は明らかな減少を示したにもかかわらず、干拓事業の影響よりはるかに曖昧で根拠のない定性的な主張でもって数字を否定する姿勢(しかも、76万という旧い暫定合算値のほうは否定することなく!)からは、科学を恣意的に都合に合わせて取捨選択する姿勢が透けて見えます。クジラ以外の水産生物学者の間では議論されない食害論もまた然り。
 そして、野生動物保護、海洋生態系保護に対する国民の関心が食品偽装問題と同程度に高かったなら、NGOが非常手段に頼らずとも、マスコミが調査捕鯨"偽装"を追及し、農水省も渋々重い腰を上げるという展開もあり得たかもしれません。逆に、杜撰な調査捕鯨が罷り通ってしまう現状は、偽装がクローズアップされる前、国民が何も知らずに騙され続けていた頃の食品表示の実態と重なるのかもしれませんね。
 農水省の"二重人(省)格"──国際会議の舞台でいくら仮面を被って正義のヒーローを気取っても、"変身前"の水産行政の素行強きになびき弱きをくじく本性は、世界と日本の市民の目にはもはやバレバレですよ。

posted by カメクジラネコ at 01:28| Comment(4) | TrackBack(1) | 社会科学系