2008年06月23日

食糧危機とクジラ

◇鯨肉横領事件、IWC(国際捕鯨委員会)関連報道

■鯨肉持ち出し英国人関与か 青森まで同行と上申書 (6/21,共同)
http://www.47news.jp/CN/200806/CN2008062101000787.html

■グリーンピースクジラ肉持ち出し 事務局長が事後承認 (6/22,読売)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/aomori/news/20080622-OYT8T00020.htm (リンク切れ)
■鯨肉持ち出しを事後承認 「犯罪防ぐ緊急性あった」|らち教
http://blogs.yahoo.co.jp/avatar4649/55537092.html

 GP側は、"そっちがそういう出方をするならば"と新戦術に出た模様。最初からこっちのシナリオをもっと詰めときゃよかったのに・・。
 青森県警さん、あなた方が事を不必要に大きくした所為ですよ。"逃げずに"突っ走るんですよねぇ? 東京地検さん、いまからでも遅くありませんよ。
 福田政権の外交手腕が問われる事態に発展しそうです。まさかこんなことで、ね。誰の所為?
 
■商業捕鯨再開へ期限通告 IWC加盟国に日本政府 (6/21,共同)
http://www.47news.jp/CN/200806/CN2008062101000434.html

 どうやら捕鯨ニッポンは北朝鮮と完全に同化してしまったらしい・・・。
 上記については明日にでもフォローする予定。 
 

◇メディア版捕鯨ヨイショ度ランキング

 北海道新聞の社説の出来がよかったので同列1位に。 
 

■鯨肉窃盗 「調査捕鯨」も問われる (6/21,北海道新聞社説)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/100120.html
■捕鯨報道・マスメディアランキング──その1・鯨肉横領疑惑・GP職員逮捕関連報道
http://www.kkneko.com/media.htm#1


◇食糧危機とクジラ

■食ショック第3部・飽食のコスト (6/19〜,読売)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/foodexp3/
■トレンド・環境保護の節度 (6/21,読売夕/論説委員丸山淳一)

 

 読売が日本の食糧廃棄事情に焦点を当てた連載特集記事を組んでいます。(筆者には意外なほど)まともな内容で、この体たらくでよく南極にまででしゃばって捕鯨をやれるもんだと、読むほどに恥ずかしさを覚えます。IWC前に特集してくれたことに感謝したいほどです。必読です。
 ちなみに、食糧廃棄量の数字は、農水省のほうを採用して約700万トンとしていますが、環境省は年間約2千万トンと推計しています。元のデータが異なるうえに、どちらも厳密に計測するのが無理なこともありますが、農水省の方は可食部分と不可食部分を切り分けて数字を出している模様。こっちの定義だと、マクロビや正食は食べられないゴミまで食べてることになっちゃいそうですが。。記事ではまた、養豚場への"リサイクル"も取り上げ、こんなもんは正しいリサイクルといえないことに一応少し触れており、この点も読売を誉めたいと思います。ゴミで燃やすよりマシとはいえ、二重三重の迂回生産に他ならず、飢餓で苦しむ第三世界に向かって胸を張れる話じゃまったくありませんから。
 もっとも、社説がアレなので、この先の展開がどうなるかは何ともいえませんが・・。またぞろ「余すことなく利用してきた」と嘘八百の主張を振りかざし、「見習いましょう」なんてことを平然と言い出すかもしれません。いや、そんなブンカがホントに日本にあったなら、他ならぬこの一連の特集で取り上げたとおりの、世界の恥ともいうべき食糧廃棄大国になってるわきゃないんですがね。。まあ、いまのところクジラのクの字も出てきませんが、論理的整合性をどこまで破綻させずに捕鯨擁護と結び付けられるか、興味深く見守っているところです。まともな記者さんだったら、最後まで触れない賢い選択をするだろけど・・。

 と思っていたら、21日の夕刊に、この好企画と連携(?)したIWC前のタイムリーな短いコラムが載りました。内容は「今度のIWCサンチアゴ会議で、中米とアフリカ諸国が、世界的に食糧が足りないのだからクジラを食べさせてくれと主張する」というもの。
 なんで始まる前にそんなことをこの記者が知っているのか、よっぽどの外交通で各加盟国の出席者と通じているのか・・。ま、ありそうなのは、全部日本政府のお膳立てで"言わせる"という情報を、"日本の"関係者にもらったということですかね。。中米ってのは、ご存知のとおり、すでにIWC票を日本に"売却済"のカリコム。外務省・水産庁がアフリカ開発会議の際に各国の代表を呼んでレクチャーを開くなどして、「あなたの一票をぜひぜひ買わせてくださいニャ〜」とせっせと働きかけてきたことも、もはや周知の事実です。
 まだモラトリアムが決まる前、捕鯨業界は「日本人の貴重な蛋白源」という主張を打ち出し、まったく説得力を持たなかったためにすぐ引っ込めたことがありました。国内で"デントウ食ブンカ"プロパガンダの効力が薄くなってきたもんだから、補強すべく少々言い回しを変えて復活させようという目論見でしょうか。十年一日の如く同じ主張を唱え続けてきた大隈大センセのようなヒトもいますけども・・。
 それにしても、短いコラムとはいえ、記事の内容はもうメチャクチャです。話は唐突に飛躍し、ユネスコから危機遺産に登録されるほどいろいろヤバイ状況にあるガラパゴスに。記者はまず、エクアドル政府によるナマコ禁漁を、背景や俯瞰情報を一切無視していきなり米国の圧力の所為に。「中国で"黒いダイヤ"と呼ばれているのだから」と、まさに記者自身が書いているとおり、アフリカ諸国の食糧危機とは何の関係もない話です。大体、高値で売れることに目を付けただけの連中が、まともな資源管理などできるわけがありません。一体この記者は、日本の沿岸各地で行われているナマコの密漁も、同じ論法で認めたいんでしょうか?? コメントを寄越した研究者も、国内のTAC制度が有効に機能していないことすら自覚できない捕鯨学者タイプのダメ資源学者か、ガラパゴスから捕鯨賛美まで強引に結び付けるこんなコジツケに自分が担ぎ出されるなんて"聞いてなかった"ヒトなんじゃないの?
 で、結び。
66億の食欲を満たしつつ、他の地球の住人とどう共存していくか。簡単ではないが、こんな知恵も出せないようでは「万物の霊長」失格である。(以上引用)
 お茶を濁して放り出してチャンチャンという、どこにでも転がってるパターンですね・・。何が言いたいのやらさっぱりわけわかりません。"共存"という単語は、いまのニッポンでは何もせずに現状を正当化したいヒトたちの常套句に成り下がってしまった感がありますが・・。
 「食欲を満たす」ですか・・。筆者は、飢餓問題の文脈でこういう表現にはお目にかかったことがありません。確かに国語としては間違いじゃないですが、骨と皮一枚になったこどもたちの姿を瞼の裏に浮かべながら、"食欲を満たす"って表現、出てこないんですよ。書けないんですよ。パーティーでナガスの尾の身を頬張りながらメタボの心配してるヒトたちと、何日も水だけで過ごして明日を生き延びられるかもわからないこどもたちを、同列に考えるってことを、頭が拒否するんですよ。
 ・・とまあ、単発コラムで見事にツッコミどころ満載ですが・・いいでしょう。
 筆者は思いました。この記者はスゴイ! 感動しました。捕鯨を正当化できる唯一の理由です。この理由なら、筆者は捕鯨賛成に回ります。
 さあ、世界から飢餓をなくしましょう。こどもたちの命を助けましょう。仮に、調査捕鯨で生産される鯨肉6千トンを全部アフリカの飢えに苦しむこどもたちのために回したとすれば、カロリーベースでは年間5万人ほどのこどもたちの命を救えることになります。飢餓問題の全面解決には足りませんが、栄養失調が原因で亡くなるこどもたちはおよそ500万人に上るとみられますから、そのうちの1%を救えるわけです(注:すべて鯨肉のみで賄ったと仮定した場合のものすごく単純な計算です。必要タンパク質のみ補うにしても、毎日鯨肉なんて食べさせたらそれこそ重金属と有機塩素にやられて、返ってこどもたちの命がアブナイため、前提としてもともと無理があります・・)。湯水のように食べ物を捨てることが常態化している飽食ニッポンに消費させるより、よっぽど命と資源の有効活用になります。永田町の会館に集うメタボなセンセイたちに舌鼓を打たせるのと違い、飢えて死ぬはずだったこどもたちの命を救うためであれば、クジラの命も報われるというものでしょう。今年からでも、ぜひこの5万人のこどもたちを実際に死の淵から救ってみせてください。鯨肉を使って。そうすれば、捕鯨ニッポンに対する世界の評価はガラリと変わるはずです。
 もちろん、提案する日本政府が全予算を拠出し、こどもたち一人一人の手元に渡るところまで輸送手段から技術からすべて提供・手配してくださいね。本当は相手国の食文化の破壊に他ならず、これまでの日本の捕鯨擁護論を全部引っ繰り返すことになりますが、この際大目に見ましょう。捕鯨操業及び輸送・冷蔵にかかるCO2排出などの環境負荷も、本来なら計算する必要がありますが、飢餓の解決のほうが優先順位が若干上ということで目をつぶりましょう。
 ただし、コスト計算は重要です。もっと安上がりにこどもたちを救う方法があれば、あり得ない選択ですから。果たして、鯨肉利用のコストパフォーマンスはどのくらいでしょうね? 他の先進国や飢餓難民を抱えている当の国々が、「なるほど、現実的で実行可能な選択肢だ」太鼓判を押してくれる結果が出るとお思いですか? もし、同じコストで鯨肉ならたった1人のこどもしか救えないところを、食材を変えたら千人救えたということになったら・・日本が世界中から白い目で見られるってこと、理解してます? 恥ずかしくて恥ずかしくて、穴があったら入りたいなんてもんじゃないですね。ハラキリですね。自分が餓死して詫びでもしなりゃ、とてもじゃないけど気が済まないでしょう。
 え、そうじゃない? もしかして、鯨肉は日本人が食べて、アフリカや中米の人たちにはその分の食糧を回すと言ってます? なるほど・・。じゃあ、票を買ってもらった国の代表に言わせる台詞の原稿急いで書き換えないとね。。ところで、読売新聞の特集記事に連載されてるんですけどね、日本という国では年間少なくとも700万トン以上食べ物捨てているんですってよ。上にも書きましたっけ? 素朴な疑問なんですが、なぜその分を減らしてこれらの国々に回そうとしないのですか?? 鯨肉の生産量なんて、あなた方が食べ残して捨てている量のたった0.1%にすぎないんですよ??? 先日開かれた「食文化を守る会」の鯨肉パーティーに、この記者か同僚が招かれたのかどうか知りませんが、出席していたのなら当日どれくらいの食糧がここで廃棄されたか、ジャーナリストとしてチェックしておくべきでしたね。
 日本では行政に見捨てられる場合を除いて餓死者はいませんが、世界を見渡せば6秒に1人、こどもたちの命が飢えで確実に失われているのです。そんな世界の悲惨な状況など目に入らないかの如く、罰当たりな飽食三昧をやめることのできない日本が、一体どの面下げてそんなこと言えるんですか?? 巨大母船団を組んで南極の海で捕殺した野生動物を高級嗜好品として飽食国家に供給することが、最貧国の食糧供給向上につながるなんて、世界中の誰がそんな"突飛なこと"を思いつくのですか???
 世界を納得させたければ、まずは食糧廃棄量を年間6、7千トン以下に押えることです。このだらしない国にとっては、相当な時間がかかりそうですが・・。それまで鯨肉の出番が回ってくる余地はありませんよ。そのことを承知のうえで、本気で、早急に食糧廃棄ゼロ社会を目指すと宣言しますか? IWCの席上で、世界に向かって? CO2排出も、自分の国で開催した会議上で6%削減と言っといて逆に6%増えちゃった国が? 国内のネット右翼以外の一体誰が信用するというのでしょう? そんな愚にもつかない提案をする前に、実際にゼロにしてみせる以外にないんじゃないですか。
 繰り返しますが、いまこどもたちのために日本ができることを何から何まで全部やったうえで、そういう提言をしているのですか? 救えるこどもはもう全員救って、後はもう捕鯨に頼る以外に道はない、そういう理解でいいのですか? 捕鯨を推進することで、南北格差も取り払い、政治体制・民族対立・環境難民対策、その他諸々の課題もきれいさっぱり解消できると。あるいは、飢餓問題の背景にあるそうした根深い構造上の問題を一気に解決できるウルトラCの秘策こそが捕鯨であると。結果を出してそれを証明すると。そういうことなのですか? ねえ!? 違うの!? どうなの!?!?
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 こんな記事を書いて、ジャーナリストとしてよく恥ずかしくないですね。「万物の霊長」としてどうなのですか。幼いこどもたちの命をダシにすることが万物の霊長の証だというのなら、筆者は万物の霊長などまっぴらごめんです。
決議案は、「1頭のクジラ」を、「1人の人間」に置き換えて、環境保護の「節度」を問うものといえる(以上引用)
 筆者は断言します。日本の捕鯨はたった1人のこどもの命すら救うことなどできやしない。絶対に。この首を賭けましょう。
 朝日の"死神"も、確かに「受け手の反応読めなきゃまったくの逆効果だろうが」と思いましたけど・・。右左問わず、自分の言葉に酔う若手(もしくは落ち零れの年配)論説委員の自己満足(ウサ晴らし?)のためでしかないこの手のコーナーは、紙面の無駄だから廃止すべきだニャ〜。どうせなら、各記者にブログを開設させて新聞社のHPからリンク張ってやったほうがまだマシなんじゃないのかね。。あんたたち、読者の購読料からサラリーもらってる、書いた文章に対して重い責任を負うべきプロの書き手と違うんですか!?
 ところで記者さん。ベジタリアン/菜食主義ってご存知ですか? 日本以外の先進国で人口の概ね5%、広義でなら1割を超える人々が菜食を選択しているのは、何故だか知ってますか? 過半数の菜食主義者は、別に動物がかわいそうだからやってるわけじゃなくて、飢えて死ぬニンゲンのこどもたちがいることが耐えがたい"苦痛"だからですよ。単なる感情論ではありません。それが、食糧問題を解決する現実的、合理的、科学的、実効的な方策だからです(政治的には高い壁が立ちはだかっていますが・・)。少なくとも、捕鯨による食糧危機打開などという空論に比べればはるかに。もし、本当に食糧問題に関心があるのなら、詳しいことは自分でお調べなさい。プロのジャーナリストなのでしょう。
 別に菜食を強要するつもりはありません。食生活は各自の意志で選択することです(税金を使って南極の野生動物を捕りに行くのはまた次元が異なる話ですが・・)。食を取り巻く"環境"を考えても、日本が他の先進国のレベルに追いつくのはまだ十年は無理でしょうし。もともと日本人は、歴史的にみれば長い間人口の9割が"両方"食べていなかったわけですが、クジラすらやめられないヒトが一朝一夕にウシをやめられるとも思えませんし・・。ただし、次のことだけははっきり述べておきましょう。
 仮に商業捕鯨が再開されたとて、鯨肉は将来にわたって飽食ニッポンのグルメにしかなり得ません。5千万年の歴史を持つ一分類群のあっという間の絶滅と引き換えの形で、ほんの一時凌ぎの延命(それもたぶん日本人だけ)のためにクジラたちに犠牲になってもらうのは、ひょっとするとアリなのかもしれない。人類がそこまでのっぴきならない状況に陥ったとき、母船式捕鯨操業が可能なステータスにあるとも、冷凍・輸送のインフラが無事に機能しているとも思えませんが・・。
 要するに、「クジラ(の死体)が世界を救う」などというのは、食糧問題の本質を何も理解していない厚顔無恥の輩が提唱する、あまりにもお粗末なフィクションでしかないのです。

 

クジラと飢餓の問題についてはこちら
■日本の食文化キーワードで診断する鯨肉食
http://www.kkneko.com/bunka.htm

posted by カメクジラネコ at 01:32| Comment(8) | TrackBack(0) | 社会科学系