2008年06月21日

逮捕の前提

■グリーンピース部長 鯨肉窃盗罪「成立せぬ」 開き直り、専門家は「犯罪」 (6/20,産経)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080620-00000106-san-soci (リンク切れ)
http://megalodon.jp/2008-0620-2128-37/headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080620-00000106-san-soci
■持ち出し行為は「窃盗」か?分かれる識者の見解 (6/20,スポニチ)
http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20080620012.html (リンク切れ)
■グリーンピース幹部らを逮捕 (6/20,報道ステーション)
http://www.tv-asahi.co.jp/dap/program/hst/backnumber.php?20080620_1 (リンク切れ)
■「出頭するつもりだった」 逮捕は不当とグリーンピース (6/20,JanJan)
http://www.news.janjan.jp/living/0806/0806200158/1.php (リンク切れ)
http://janjan.voicejapan.org/living/0806/0806200158/1.php

 
 とうとうGPJ側だけ逮捕、横領の件は不起訴という最悪の結果に。しかも、GP側が「逃げも隠れもしないし出頭要請に応じる」と再三表明しているにも関わらず、立件の前提となるはずの相手側の不起訴に先行する形で、当局は家宅捜索と逮捕を強行しました。GPのほうでは早朝に記者会見をセッティングしていましたが、青森県警+警視庁はその直前を急襲して事務所の"ガサ入れ"が行われることに。つるんでいるメディアの関係者が事前に通知し、弁論の機会すら与えまいとしたのでしょうか。
 筆者は、A.IWC総会/洞爺湖サミット以降に引き延ばす(GPのアクションに対する牽制に使う)、B.共同船舶側を不起訴にする代わり、GP側も書類送検止まりにする(公平性に配慮するポーズをとって、IWC前に調査捕鯨に対する批判が高まるのを少しでも和らげる)という2ケースを想定していました・・。ところが、捕鯨ニッポンは、今回のGP側の問題提起を上手にかわして相対的に矮小化する高度な政治戦略を働かせるどころか、会議が始まる直前に、わざわざ事を荒立て、日本の強硬姿勢を世界に強く印象付ける選択をしたわけです。これで批判の火をかき消せるものと思いっきり息を吹きかけて、煽って極大のに燃え盛らせ、世界中に延焼させる結果にならなければいいですけどね。。
 強行逮捕の背景には、水産庁や捕鯨議連の要請というより、サミットを控え市民団体に対する見せしめとして利用する考えもあったのでしょう。ただ、水産庁/共同船舶側にも、世論とマスコミの援護を背景に、横領疑惑を完全に握りつぶしてしまえるという自信があってのことでしょう。
 いくつかこの件について報道したニュース番組をチェックしたのですが、淡々と取り上げただけのところも多い中、とくにひどかったのはテレビ朝日・報道ステーション。以前から捕鯨よりのコメントをしていた古舘伊知郎キャスターですが、かなりガチガチの捕鯨教信者になってしまったようです。番組中では、本件と直接関係ない鯨研提供シーシェパードの抗議行動の映像を流し(よそも使っているところはありましたが)、コメントを求めたのは鯨研と共同船舶の上役、元社員(告発者ではない)に対してだけ。
 しかも、GPIの大掛かりなデモンストレーションな映像、そして国家公安委のコメントと合わせ、GPのアクションをブンカの問題にすり替えてしまったのです。今回の行動については、GP側の担当弁護士が具体的な"国内の判例"を挙げて正当性を主張しています。最終的にはもちろん裁判所の判断に委ねるしかないわけですが、いずれにしても、これは単なる法解釈の問題であって、ブンカの違いとはまったく関係ありません。あるいは、巨悪に立ち向かう市民運動を異文化として真っ向から否定する新手の攻撃論法を、後ろめたいことをやっている諸兄に提示したつもりなのかもしれませんが・・。
 古舘氏は、「捕鯨についてはさまざまな議論がありますが・・」と前置きしておきながら、女子アナとともに自身の持論の賛成論を一席ぶちました。「ノルウェーのタラが減っている」(乱獲が原因ですよ!)だの、「北洋の鯨が増えている」(だれがそんなこと言ったんですか?)だの、「食糧問題を考えるとノルウェーでの捕鯨がうんたらかんたら」(つい先日対日輸出問題が明らかになったばかりですが・・なぜ輸出したいかわかってんの?)だのと、今回の事件の背景、日本の捕鯨とまっったく無関係な"遠まわしの捕鯨援護論"をぶつ始末。。さらに"仮に"乱獲があったとすれば・・」と、明々白々の事実を仮定の問題にすり替え、ジャーナリストがその気になればいくらでも入手できるはずの商業捕鯨史についてまったく不勉強であることを露呈しました。それでいて、窃盗行為と直結するところの調査捕鯨の妥当性=なぜ擬似商業捕鯨として内外から批判を浴びているのかということについては、何一つ触れずじまい。容疑者の動機を様々な角度から鋭く分析するのがメディアの仕事ではないのですか? それに比べれば、上記リンクのスポーツ新聞記事のほうがまだ公平性に配慮しており、よっぽど一流報道機関らしくみえます。
 権力を監視すべき立場の報道機関が、権力の濫用を擁護する側にまわってしまうというのはなんとも哀しい話です。マスメディアがやるべき仕事をしないなら、市民が代わって権力をチェックし、追及しなければ、真実を暴くことはおよそ不可能になってしまいます。それはすなわち、今回のGPの行為がやむを得ないものだったと立証するようなものでしょう。
 残念ながら、筆者個人ですべての報道内容を追うことはできません。「こういう番組、新聞でこういうふうに報道されていた」という情報があれば、ぜひお寄せください。マスコミの捕鯨擁護度ランキングといった企画も本当はやんなきゃいけないですねぇ。。
 いずれにしろ、この逮捕は少なくとも一つの前提に基づかない限り明らかな不当逮捕です。それは、日本の調査捕鯨が100%潔白であることの厳密な証明です。国内で、そして国際会議の席上で、日本政府と鯨研・共同船舶は、日本と世界の市民に対し、以下の問いに明確に回答しなければなりません。

  • 水産庁、共同船舶は、なぜ事前に「お土産は渡していない」という発言をし、それを翻したのか。
  • 現物支給の給料として"冷蔵ウネス肉"を全船員に配布したことを示す書類一式を地検に提示したのか(つまり地検がやるべきだった仕事ですが・・)。
  • 横流しされた鯨肉を使ったという証言がある料理屋の鯨肉入手ルートを詳細に調査したのか(これも同じく・・)
  • 高級部位流用による一部船員の不法所得(ウネス御殿・・)の監査(同じく・・)
  • IWCで認められた科学的調査捕鯨で、かつての商業捕鯨の慣習を納税者にもIWCにも何の断りもなく続行することが許されると考えているのか(日本が臆面もなくYESというなら、条約改正は絶対必要
  • その他内部告発によって明らかになったランダムサンプリングの虚偽と洋上投棄、病変の問題については、もちろんIWC上で徹底的に議論し、少なくとも結論が出るまで調査捕鯨を中止するのは当然のことです。
 

■GPリポート「奪われた鯨肉と信頼」
http://greenpeace.or.jp/docs/oceans/wm2008/doss.pdf

関連ブログ:
■鯨と緑豆|今日、考えたこと
http://tu-ta.at.webry.info/200807/article_2.html

posted by カメクジラネコ at 01:13| Comment(106) | TrackBack(1) | 社会科学系