2008年06月03日

鯨類学

■『鯨類学』 東海大学出版会、村山司編著
http://www.press.tokai.ac.jp/bookdetail.jsp?isbn_code=ISBN978-4-486-01733-2
 
 先月(5/20)発行された久しぶりの「一般向け専門書」。
 巻頭で編者の村山東海大海洋学部助教授が、巷のクジラブームが去ったことへの、一種の嘆きともあきらめともとれるコメントを寄せています。確かに、ひところは書店に<クジラコーナー>が設けられ、この手の生物学教養ものから写真集、小松氏や梅崎氏をはじめとする面々の捕鯨擁護本まで、平積みにされていたものでした。モラトリアムからしばらくして、日本がどん底の不景気に陥る前、第一次エコロジーブームが到来したあたりでしょうか。
 今でさえ、本来ならそのジャンルの学生しか買わない、7千円もする分厚い専門書が一般書店に並ぶだけでも、まだたいしたものだとは思います。クジラが他の野生動物と同格の扱いを受けること自体は、当のクジラたちにとって必ずしも悪いことではないかもしれませんが。
 本書の1章から11章までは、一般的な生物学的トピックであり、研究内容や予算規模の点で動物学一般の水準に即したものといえます。
 ただし……12章は、他の動物学では見られない特異な内容。鯨類学・クジラへの一般市民の関心が落ち着き、他の動物と同レベルになった中で、今なお突出して桁違いの税金が投入されている例外分野、すなわち"資源学"/"致死的研究"。
 生物学の教養書としてみるならば、このパートは完全な蛇足です。終章以外に置きようがなかったともいえますけど。。ほとんどの読者がバリバリの違和感を覚えられることでしょう。
 この章の担当者は、他でもない鯨研の調査室長・松岡氏。相変わらずJARPATの成果を強調しています。が、IDCRの目視調査"でも"「国際的に高い評価を受けている」んじゃなくて、評価されているのは"そっちだけ"。計画終了前にUに移行した時点で、科学的業績もへったくれもないのですが。。そのうえで、3周目の集計結果報告がなぜか前2回と違って大幅に遅れていることにも触れ、ヘンな理屈をつけて、「今後はもう目視をやめてJARPAUだけにしたほうがいい」との声も出ていると紹介しています。声が出ているのはもちろん日本からだけですが。評価されていた目視の方をやめにしたら、ますます科学的価値が下がるばかりだというのに・・。都合の悪い数字が出てきかねないので、もうやめたいという本音もわかりますが・・。
 「バイオプシーなど非致死的調査もやっている」と生物学フリークに媚を売っているものの、"片手間"にしかやっていないことを隠そうともしません。せめて逆にすればいいのに・・。
 内部告発でランダム・サンプリングが行われていなかったことが表沙汰になったのは、折りしも本書発行直前ですが、知っていたにしろ知らなかったにしろ、この章で取り上げられた研究成果は使い物にならない偽りのデータに基づいていることがはっきりしました。
 そういうわけなので、買った人は12章は読み飛ばしましょう。
 
posted by カメクジラネコ at 01:24| Comment(0) | TrackBack(1) | 自然科学系