2018年10月18日

「さらばIWC! 捕鯨ニッポン堂々退場ス」!? 江島議員発言の真意は?

 9月の国際捕鯨委員会(IWC)フロリアノポリス総会、10月のワシントン条約常設委員会(CITES-SC)ソチ会合と、ボロ負けが続いた捕鯨ニッポン。
 IWC総会で日本提案が否決された直後、政府代表として出席した公明党谷合農水副大臣は「あらゆるオプションを検討する」と表明。脱退への含みを残しつつも、一方で「IWCの可能性を信じ、引き続き様々な形で協力していく」とも発言。かつて国際連盟脱退時に松岡洋右全権代表がぶったパフォーマンスほど内外の受けは芳しくありませんでした。
 その理由は歯切れの悪さのみならず、脱退を示唆したのが今回が初めてではなかったからです。つまり、「またか」と真剣に取り合われなかったわけです。
 日本がこれまで繰り返し掲げてきたIWC脱退フラグ≠ィよび脱退した場合どういうことになるかについては、環境・漁業政策に通じたおなじみ早大客員准教授真田氏が非常にわかりやすく解説してくれていますので、そちらをご参照。

■国際捕鯨委員会第67回会合と日本提案|真田康弘のブログ
https://y-sanada.blog.so-net.ne.jp/2018-09-15

 ところが……CITES-SC会合が終わってまだ日も浅い10月15日、IWC脱退の是非をめぐる新たな情報が飛び込んできました。

■「IWC脱退すべき」江島参院議員、下関で総会の報告 (10/15, 山口)
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2018/1015/1.html
■IWC脱退を強調 江島参院議員、捕鯨再開へ持論 (10/16, みなと)
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/e-minato/articles/84737
■江島参院議員「IWC脱退」を主張 「国内の産業守るため」 対応など不安の声も 総会報告会(10/16, 毎日山口版)
https://mainichi.jp/articles/20181016/ddl/k35/020/315000c
■自民の捕鯨議連、IWC脱退意向 下関、幹部ら総会報告 (10/16, 朝日山口版)

 注目すべきは、発言したのが江島議員であること、場所が下関であること、そしてその内容
 まず、江島参院議員は自民党捕鯨議員連盟の副幹事長にして同党水産部会長。ただ名前を貸しているだけではなく、積極的に実務をこなしてきた筋金入りの捕鯨族議員。ブラジルまで乗り込んだり(自民党国会議員は江島氏、浜田氏、鶴保氏の3名)、昨年他の重要懸案を差し置いてあっという間に成立した美味い刺身*@(調査捕鯨実施法)の立案に携わった中心人物でもあります。
 そしてもう1つ。いわゆる捕鯨族議員には、沿岸捕鯨地である北海道・和歌山等の地元選出議員と、国が実施する公海調査捕鯨の業界方面とよりつながりが深い議員と2タイプありますが、参院山口選挙区選出の江島議員は後者。元大手捕鯨会社大洋のお膝元であり、捕鯨母船日新丸の母港誘致化を国に積極的に働きかけてきた下関市の元市長でもあります。それも、2002年のIWC下関総会当時の在職。
 ゴミため掲示板で純外野の反反捕鯨狂人が江島氏をしきりに攻撃しているようですが、同氏が最も業界事情に通じ、また捕鯨サークルのために最も汗水流してきた国会議員であることは論を待ちません。
 その江島氏が一連の発言をしたことは、非常に意味深といえます。
 以下は上掲各紙が報じた江島議員の発言のうち注目箇所(引用)。それ以外のIWC批判の部分は特に目新しいものではなし。

「南極海は諦めなければならないので、通年で北半球で操業するようになるだろう」
「自民党としては脱退するつもりでいる」
「年内に脱退を通告すれば、来年6月末に脱退できる」
「調査捕鯨すら次どうなるか分からない。日本が堂々とIWCを脱退し、商業捕鯨を再開する機会は今だ」

 正直、筆者は一瞬目を疑ったほどです。
 南極海捕鯨が不可になるのは国際法規上当然の帰結であり、「オプションを精査」するまでもなく、とっくに知られていたことでした。これまで捕鯨サークルに近い筋から発せられてきた脱退論は、国民に対してその事実を伏せたまま説かれていたわけです。外野のそれは単に無知なだけですけど。
 ところが、今回は捕鯨サークルに最も近いところにいる自民党議員の口からじかに「南極海は諦めなければならない」との言葉が飛び出したのです。
 美味い刺身法$R議中、自由党山本太郎参院議員が反対質問の中で南極海からの撤退を促したことはありましたが、賛成派の国会議員が南極海捕鯨断念に言及したのは初めてのこと。具体的なスケジュールが上ったのもやはり初めて。
 さて、ハッタリとは何でしょうか? それは交渉を有利に進めるために相手を惑わす見せかけの言動。その気もない嘘をつくことで何らかの成果を得ることを目的としているわけです。
 例えば、沖縄県知事選挙で米軍基地の県外移設を訴えて有権者を安心させ、当選してから態度を翻した仲井眞元知事の手口などがそれに当たるでしょう。
 しかし、今回の江島発言がもしハッタリだとすれば、誘導する対象は誰なのでしょう? 国内向けか、それとも国外向けか。捕鯨賛成派なのか、あるいは反対派なのか。
 捕鯨推進派の従来のハッタリは、確かに二重の意図を含んでいました。
 ひとつは、対立を演出することで保守的な国内シンパの煽情的な支持をとりつけるため。まさに文字通りのハッタリ。もうひとつは、IWCでちらつかせることで反捕鯨国の譲歩を引き出すため。前述のとおり、無駄に繰り返したことや、実際に沿岸と公海のバーター提案があっても肝心の日本側が応じなかったこともあり、こちらは効果がなかったわけですが。
 しかし、よりによって地元の下関市で、それも「南極海調査捕鯨支援の会」主催の報告会で、不安をそそるだけのハッタリをかますことが、江島議員にとって、あるいは自民党にとってどんなメリットがあるというのでしょう? 報告会参加者の口にした「不安」に対しても、江島氏は「再開する機会は今しかない」と言葉を濁すのみで、考え直す姿勢は見受けられませんでした。
 単に国内の反応を推し量るための観測気球≠ニいうわけでもなさそうです。
 なぜなら、江島氏は「党ではなく、あくまで私自身の私見だが」と前置きもしませんでした。それどころか、上掲のとおり、脱退は自民党/捕鯨議連としての総意である旨発言したのです。 
 もし観測気球≠打ち上げるのであれば、「地元の沿岸捕鯨を守るため」という言い訳も立つ、野党の徳永議員辺りにその役を押し付けるでしょうね・・。
 外交上のブラフ、すなわちIWCの反捕鯨国に対する牽制の意味はどうでしょうか? オーストラリアやブエノスアイレスグループを慌てふためかせ、思い切った譲歩を引き出す作戦??
 それも考えにくいことです。
 なぜなら、交渉の場がないからです。
 次回のIWC総会は2020年。谷合副大臣の発言の趣旨に則り、2年後の総会の場で「オプションを精査した結果、わが国としてはやはり脱退しかないとの結論に至りました。それで(もう本当に妥協の余地はゼロだという理解で)いいですね?」と反対陣営に迫るのが、正しいハッタリのかまし方≠ニいえるでしょう。
 ところが、江島氏の示したスケジュールに従えば、肝心のIWCの場で加盟各国と折衝する暇もなく、バタバタと勝手に脱退することになってしまいます。
 カードを切る前に、ターンが回ってくる前に、席を立ったまま勝負を投げ出して帰ってこないというパターン。
 これではまったく外交カードとしての意味をなしません。
 一部報道や、公明党の捕鯨族議員横山氏のブログ上の発言などから、対ユネスコライクな兵糧攻め=A分担金減額作戦も「オプション」には含まれていたようですが、このカードを使う間もなし。
 おそらく、全額未払だと投票権を失うだけでメリットがなく、結局効果が見込めない。それならやめても同じこと──という判断なのでしょうが。

 これまでの、ただ騒ぎ立てるだけに留まっていた脱退ムードと明らかに違うのは、江島氏の下関報告会の前に開かれた自民党捕鯨議連の報道からもうかがえます。

■IWC脱退論が噴出 反捕鯨国の強硬姿勢に自民党捕鯨議連 (10/9, みなと)
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/e-minato/articles/today
■「IWC脱退含め見直しを」 自民会合、商業捕鯨めぐり議論 (10/6, 朝日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13711404.html

 捕鯨議連最古参の1人である鈴木俊一会長が、過去の脱退検討時には外務省と官邸が非協力的だったと内幕を明かした一方、会合に出席した外務省幹部も歩調を合わせて「党と政府一体で対応する」と積極姿勢を見せており、頓挫してきた今までとは違うぞ、今度こそ前進させるんだ、との姿勢を誇示しています。
 ICJ判決の前、水産庁が老朽化した日新丸の改修のために1年の休漁を検討した際、「けしからん」と官僚を叱りつけ、乗員をリスクにさらし調査期間を遅らせてでも突貫で改修工事をやらせて出漁させた、泣く子も黙る自民党捕鯨議連が、本気度を見せつけたわけです。

 あるいは、江島議員の発言の裏には、ハッタリをかます余裕などないほどの、もっと重大な裏事情があるのかもしれません。
 美味い刺身*@の成立を受け、今年度には老朽化した日新丸に替わる代替捕鯨母船の調達の検討のための予算が組まれました。そのとき、鯨研関係者が、夏季の運用を念頭に置いた漁業資源調査兼用の多目的船に言及しています。イワシクジラ調査捕鯨がCITES違反により出来なくなる可能性が高いことは、この時点ですでに認識されていたわけです。
 裏作≠フ主力・北太平洋イワシクジラの捕獲が不可能になったことで、公海調査捕鯨はそれを支えていた二本柱の1つを失ったわけです。
 不採算事業の公海調査捕鯨を多額の財政出動により何とかここまで延命させてきたものの、ついに限界に来たということでしょう。このうえ、莫大な経費がかかる母船新造に加え、失うイワシ鯨肉収入分を毎年公費で補填するやり方では到底もたないと。
 そのことを強く示唆しているのが、江島議員の「調査捕鯨すら次どうなるか分からない」との発言。これは必ずしも法的にという意味ではなく、裏作≠ェ不可能になって調査捕鯨の運用体制が持続″「難になったという趣意に違いありません。(古参の議員たちがその辺をちゃんと理解できているかはやや心もとないですけど・・)
 そしてもうひとつ。前回の記事でお伝えした、CITES-SCの裁定を受けた後の日本捕鯨協会の「自分たちは国際条約に違反していない!」との、現実を受け止められない、悲鳴に近い嘆き節がすべてを物語っているのかもしれません──。
 復興予算流用、儲かる漁業、ICJ判決無視のための国連受諾宣言更新、刺身新法と、これまで可能な限りの手を尽くしてくれた大恩ある自民党議連の江島氏に「調査捕鯨の先も見通せない」「南極はあきらめるしかない」とここまではっきり言われてしまうと、頼りきってきた共同船舶/鯨研/捕鯨協会としても、さすがに黙り込むしかないのでしょう。
 脱退を決断した折には、共同船舶の上役はともかく、日新丸の乗組員の皆さんへの補償・転業支援のための予算をきちんと組んで欲しいもの。これまで捕鯨対策予算を下回っていた漁業全体の資源管理・調査予算が新年度からようやく上乗せされましたが、調査船を使った事業を拡大することで、再雇用先を創出し、日本の水産業の発展に真に貢献してもらうことも可能なのではないでしょうか。

 筆者自身は今までになく現実味を帯びていそうな感触を持っていますが、もちろん今回の「脱退」がブラフである可能性も依然として残っています。
 ブラフというより、目指しはしたものの、スケジュール的に来年6月までには間に合わないという場合もあるでしょう。
 公海母船式捕鯨を断念するとしても、国連海洋法条約の縛りがあるため、沿岸・EEZで商業捕鯨を再開するためには、ノルウェーやアイスランドが組織したNAMMCO(北大西洋海産哺乳動物委員会)の北太平洋版に相当する新たな国際管理機関を立ち上げる必要があります。
 北太平洋での国際管理機関となれば、最低でもロシア・韓国(捕鯨支持ながら総会で日本提案を棄権)、中国(同じく欠席)、そして米国やカナダの合意を得て、6月までに協定を結ぶことができるかが鍵になるでしょう。
 同海域で曲がりなりにも商業捕鯨の対象となり得るのは、先のIWC総会で捕獲枠ゼロ解除を要求したミンククジラくらい。その捕獲枠は、やはり日本自身が前々回の総会で提示した「太平洋岸で17頭」ということになるでしょう。さすがに脱退したからといって、口うるさく唱えてきた科学≠フ錦の御旗を引っ込め、チューニングして割り増しというわけにはいかないでしょうしね。
 それも、江島氏いわく「捕鯨文化を守るためには致し方ない」こと。
 まあ、捕鯨業者の中にも、再開の念願さえかなえばそれでいいと思っているところもありそうですし。

 一方、IWCはどうなるでしょうか?
 日本の財政負担がなくなることで空中分解、消滅の危機!?
 いや、たぶんそうはならないはず。
 EUと英国、ユネスコや国連万国郵便連合と米国も何やらすったもんだしていますが、EUやユネスコ以上に大きなダメージを受けることはないでしょう。
 日本の調査捕鯨のせいでこれまで余計な負担を強いられていた部分もあるのですし。
 POWER(日本とIWC共同の北太平洋鯨類目視調査)をどうするといった問題もありますし、日本の声かけで入っただけの支持国の間では混乱は否めないでしょうが。

 そうはいっても、筆者としては日本が引き続きIWCに留まり、あるいは脱退したとしても早期に再加盟して、国際貢献し続けてくれることを願ってやみません。環境省とウォッチング業界・自治体の横断組織にバトンタッチしてもらったうえで。水産庁も一緒に残ったほうがいいでしょうが、捕鯨セクション以外で・・。
日本はいまや座間味、小笠原、知床等全国各地で、ハワイやフロリアノポリスに負けず、ホエール・ウォッチングが盛況なWW大国の1つ。IWCで持続的なWWのノウハウを提供し、共有することができるはずです。
 そしてもう1つ。この前のIWC総会では「生態系において鯨類の果たす役割を解明する作業を推進する」決議が可決されました。残念ながら、日本はこの決議にも反対する非科学的な態度を示してしまったのですが。非消費的利用による直接的な恩恵のみならず、鯨類は炭素固定、低緯度や表層海域への栄養塩類供給による生産力向上等の形で多くの生態系サービスをもたらしてくれます。気候変動、プラスチック・有機塩素・重金属汚染、音響・船舶交通の増加等、鯨類を取り巻く海洋環境の悪化に適切に対処し、保全することは、漁業を含む人類の福利に必ず貢献するはずです。
 昔から、八戸や三崎や高知など各地で、クジラは魚を追い込んでくれたり、魚群の居場所を知らせてくれる恵比寿様として大切にされてきました。巷でもてはやされるクジラ食害論に科学的根拠はありませんが、クジラを大事にすることが漁業にとっても恩恵をもたらすことには、きちんとした科学的な裏付けがあるのです。
 表層の浮き魚を中心にした海面漁業の対象種には、魚種交代のメカニズムが働き、漁獲量が極端に乱高下して安定しない、食糧生産・漁業経営の面からは困った性質があります。実は、その時々に多い魚種を摂餌するクジラは、魚種交代の変動の振幅を緩やかにし、豊漁貧乏になったり、減りすぎるのを抑制してくれるのです。
 以下の図は魚種交代のシミュレーションにクジラ(選択的に摂餌する捕食者)の存在を加えた結果(わかりやすくするために効果を少々オーバーに見せています)。
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 元ネタはこちら。

■生態学第14回「魚種交替現象」(2001年9月20日)
http://minato.sip21c.org/oldlec/ecology_p14.html

 日本の捕鯨賛成派からはクジラを過保護に守りすぎと揶揄されるオーストラリア、ニュージーランド、米国等反捕鯨国の方が、せっせとクジラを殺している日本より海が豊かなのが何よりの証拠。
 IWCに残り、各国からクジラの保全について学ぶことは、乱獲の果てに疲弊しきっている日本の漁業を持続的に上向かせるためのヒントをきっともたらしてくれることでしょう。
posted by カメクジラネコ at 19:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2018年10月14日

捕鯨ニッポン、国際舞台で二連敗! 調査捕鯨、二度目の国際法違反が確定!!

 2018年の秋は捕鯨ニッポンにとって重要な国際会議が立て続けに開かれることになりました。
 1つは前回の記事でお伝えした9月の国際捕鯨委員会(IWC)ブラジル・フロリアノポリス総会。
 そして、この10月1日〜5日にはロシア・ソチで第70回ワシントン条約(CITES)常設委員会(SC)が開催されました。日本が深く関与している象牙の市場閉鎖問題やウナギの密輸問題なども俎上に上りましたが、中でも一番注目を引いたのが、昨年から継続審議となっていた調査捕鯨の条約違反問題。
 野生生物の国際取引を扱う機関がなぜ日本の調査捕鯨を槍玉にあげたのかというと、北西太平洋調査捕鯨(前JARPNII及び現行のNEWREP-NP)の対象となっているイワシクジラの北太平洋個体群がCITES附属書Iに記載されている絶滅危惧種であり、日本も留保外としているため(日本が留保しているのは「北太平洋・南半球・東経0度〜70度以外≠フイワシクジラ」)。そして、公海に生息する絶滅危惧種のクジラを自国内に持ち込む行為が事実上の輸入に当たるから。
 クジラのような野生動物は他国のEEZを含む広い海域を移動するグローバルコモンズ≠ナあり、一国が独り勝手に獲ってくることはもはや許されないのです。今の時代、たとえ自国にのみ生息する野生動物であっても、世界中の市民あるいは子孫に管理を委ねられているのだという自覚を持つことが肝要ですが。捕鯨協会などは「国産」「自給」を謳いますが、とんでもないこと。
 会議直前の9月26日に早大で開かれたシンポジウムでは米国の国際法学者ライマン氏が講演、イワシクジラ調査捕鯨の違法性の要点を日本の市民に伝えました。早大真田氏も指摘しているとおり、CITES事務局の報告書が出た時点で、日本にレッドカードが突きつけられるのは、始まる前から火を見るより明らかだったわけです。

■緊急プレスリリース : イワシクジラの販売は国際取引違反の可能性?!|IKAN
http://ika-net.jp/ja/ikan-activities/whaling/354-pressrelease2018sep
■イワシクジラとワシントン条約(CITES) :日本はなぜ留保を付さなかったのか|早大客員准教授真田康弘氏/IKAN
http://ika-net.jp/ja/ikan-activities/whaling/348-seiwhale-cites-j
■ワシントン条約事務局、イワシクジラの水揚げが条約規定に反するとの報告書を発表|真田康弘の地球環境・海洋・漁業問題ブログ
https://y-sanada.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25

 実際、2日目の午前中はこの公海イワシクジラ持ち込み問題が集中討議されましたが、日本は四面楚歌の状態でした。日本代表は最初に「商業目的」の定義が曖昧な所為だと弁明。「条約規則の方が悪い」と難癖をつけるやり方はIWC総会のときと一緒。しかし、そんな身勝手な主張が受け入れられる余地はありませんでした。SC勧告の中でも商業目的の「例外的状況(科学調査目的等)」について説明した現在のガイダンスは妥当であると明記され、日本の主張はきっぱり撥ねられています。
 SCメンバーとして出席した各国代表は、米国&カナダ、EU&イスラエル、オーストラリア&ニュージーランド、そしてラディカルな反捕鯨国の多い中南米も、「日本は条約違反」との見解で一致。アフリカ諸国のコンゴ、ニジェール、ガボン、ケニア、セネガルも揃って日本を批判。このうちガボンは反捕鯨国ですが、ケニアとセネガルは日本がIWCで味方として頼りにしている捕鯨支持国。コンゴ代表は「もし違反を犯したのがコンゴだったら貿易制裁を受けていたはず。なぜ日本だけ認められるのか?」と非難しています。日本の肩をもったのは、絶滅危惧種の繁殖を目的とする動物園への生体輸入と鯨肉販売を一緒くたにするトンチンカンな主張を開陳したロシア代表の他は、元CITES事務局長の肩書きで捕鯨協会等にしばしば担がれるジゾクテキリヨウ推進NGOのIWMC代表・ラポワント氏くらいもの。
 中でも米国は、日本のイワシクジラ捕鯨の主目的が商業捕鯨再開を前提としたものである点を強調し、強い懸念を表明。米国の指摘は実に的を射ています。仮にIWCでハードルをクリアして商業捕鯨を再開できたとしても、その時イワシクジラはCITESに抵触するため、(少なくとも附属書から外れない限り)その対象にすることは不可能なのです。要するに、調査捕鯨だからこそ売れるのです。そのイワシクジラ調査捕鯨が商業捕鯨再開を前提としていること自体、大きな矛盾と言わざるをえません。
 かくして、日本に対し「即刻貿易制裁を発動すべし!」との声も出たものの、「来年2月までに是正措置を講じ、来年のCITES-SCまでは許可証を発行しない」との日本側(水産庁諸貫氏ではなく外務官僚の方)が説明。南ア等数カ国が歩み寄って譲歩案を提示し、最終的には座長の采配により猶予の付いた是正勧告の形にまとまったわけです。日本のワシントン条約違反の認定は、下掲の英報道にもあるとおり「ほぼ満場一致」

■Japan faces potential trade sanctions after whaling operations deemed illegal (10/2, インディペンデント)
https://www.independent.co.uk/environment/japan-whaling-cites-trade-sanctions-sei-whales-illegal-meeting-sochi-a8564871.html

 日本がまた政治的な裏工作を進めているのではないかとの情報もあったため、正直筆者は気を揉んでいたんですけどね。IWC総会の62名には及ばないものの、日本は18名もの代表団をソチに送り込みましたし(2桁は日本のみ)。杞憂に終わって胸を撫で下ろしています。
 今回の北太平洋イワシクジラの公海からの持ち込み問題の詳細については、以下のCITES公式発表と会議前後のNGO解説等をご参照。10月25日にはオブザーバー参加した野生生物保全論研究会(JWCS)の報告会が都内で開かれます。

■70th meeting of the Standing Committee - Executive summaries|CITES
https://cites.org/eng/com/sc/70/sum/index.php
http://cites.org/sites/default/files/eng/com/sc/70/exsum/E-SC70-Sum-03.pdf
■70th Meeting of the Standing Committee of the Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (CITES)|IISD
http://enb.iisd.org/cites/sc70/
■【解説】イワシクジラ調査捕鯨による鯨肉流通はワシントン条約違反?|WWF日本
https://www.wwf.or.jp/activities/news/3739.html
■CITES常設委員会「イワシクジラ海からの持ち込み」は条約違反|ika-net日記
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2018/10/cites-4ab9.html
■【10月25日】ワシントン条約第70回常設委員会 参加報告会|JWCS
https://www.jwcs.org/event/907/

 会議の模様はインターネット動画でライブ中継されましたが、IWC総会同様、市井の反応はいまひとつ。
 マスコミでは時事・共同・日経・朝日・NHK等が報道しましたが、ほとんどベタ記事のレベル。いくら内閣改造とかぶったとはいえ、ウナギやマグロの扱いが主題となったときと比べても、あまりに小さな扱いといわざるをえません。
 筆者だったら、
『日本の調査捕鯨、二度目の国際法違反認定!』
『日本、ワシントン条約常設委員会で国ぐるみでの違反行為#F定!』
 と大見出しを付けて、一面トップで大きく報じたところですけどね。
 環境外交の専門家・東北大石井准教授も以下のように指摘しています。

https://twitter.com/ishii_atsushi/status/1047316621042180096
2014年の国際司法裁判所でのほぼ完全敗訴に続く、日本の国際法違反が認定。これらについて日本の国際法学者はほとんど何も言ってこなかったわけであり、猛省すべきです(引用)

 以下、本件の国内報道にチェックを入れておきましょう。

■日本の調査捕鯨で是正勧告=鯨肉流通は違反−ワシントン条約委 (10/2, 時事)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018100200793&g=eco
ロシア南部ソチで開催された常設委で、反捕鯨国を中心に多くの国が日本での鯨肉流通は「商業目的」と指摘した。(引用)
■日本の調査捕鯨を違反認定 ワシントン条約の常設委 (10/2, 共同)
https://this.kiji.is/419885113997018209
■イワシクジラの調査捕鯨に是正勧告 ワシントン条約委 (10/3, 日経)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36058720T01C18A0EAF000/
是正措置に対する常設委での協議で再び条約違反と判断されれば、事実上の販売禁止などが勧告される恐れもある。(引用)
■イワシクジラ捕鯨、是正勧告 ワシントン条約常設委 (10/4, 朝日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13707949.html
■イワシクジラ調査捕鯨 是正勧告受け 見直し検討へ (10/5, NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181005/k10011660071000.html (リンク切れ)

 問題アリは時事と日経。他は扱いが小さいものの基本的事実に沿っています。
 まず時事。すでに解説したとおり、「反捕鯨国を中心に」ではなく、反捕鯨国・捕鯨支持国とを問わず「ほぼ満場一致」。当然のことながら、国際法を遵守しているか否かの判定は捕鯨の賛否以前の話なのですから。
 通信社配信記事に頼ることも多い日経の記事は、昨年の問題提起・事務局による審査結果レポート・今回のSC裁定に至る流れをまったく理解できていません。「恐れがある」のはCITES加盟国との野生動植物取引停止です。
 以下は上掲IKANブログからの引用。

国内報道では、一部、反捕鯨国が〜とか、科学調査なのに〜とかいう頓珍漢なものも見られたが、今回はワシントン条約という国際条約の中で、その遵守義務が関係国間でどのようにして守られるのか、という試金石のようなものだったわけで、その意義は小さくない(引用)

 これで捕鯨ニッポンはIWCブラジル総会に続く二連敗目を喫することと相成ったわけです。NEWREP-A、ミンククジラ対象のNEWREP-NPも、IWC総会で採択された常設作業部会報告書の指摘により、国際法違反の疑いがますます強まったといえるのですが。

 ところが……外務省・水産庁とも、今回のCITES-SC会合に関する公式発表が出ないと思っていたら、10日になって水産庁からとんでもない報道発表が……。

■ワシントン条約常設委員会によるイワシクジラに関する勧告とイワシクジラ製品の国内流通について|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/whale/seiwhale.html
平成30年10月1日(月)から5日(金)まで開催されたワシントン条約常設委員会において、日本政府に対し、新北西太平洋鯨類科学調査において捕獲されるイワシクジラの我が国への「輸送」に関して、同条約の規定に適合するよう「速やかに是正措置を講じるべき」との勧告が出されました。
この件に関し、イワシクジラ製品の販売・購入ができなくなるのかとの問い合わせをいただいております。
現在、勧告を踏まえて是正措置の内容を検討中ですが、同勧告は、本年度のものも含め、既に国内に存在しているイワシクジラ製品の流通や消費については触れておらず、日本政府としても、これらを規制するものではございません。(引用)

 所轄官庁にあるまじき、驚くべき記述です。開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。ある意味巧妙(?)な印象操作でもありますが。
 まず、「『輸送』に関して」との表現は、あたかも輸送の仕方がどこかまずかったかのような印象を与えます。ちなみに、原文はintroduction、従来「持込」という訳が充てられてきました。しかし、違法性が問われたのは「(国内への)輸送」した後の利用のされ方。持ち込まれた鯨肉・脂皮等の部位が、科学目的ではなく、商業目的であったことが理由。
 さらに水産庁は「適合するよう」という用語を用いていますが、これは違法性をうやむやに誤魔化す非常に不適切な表現。
 上掲にリンクを紹介したCITES-SC勧告から原文を引用しましょう。

The Standing Committee agreed that the introduction from the sea (IFS) of certain specimens (e.g. whale meat and blubber) of sei whales (Balaenoptera borealis) from the North Pacific population was not in compliance with Article III, paragraph 5(c), of the Convention.
The Standing Committee recommended that Japan take immediate remedial action to comply with Article III, paragraph 5(c), of the Convention.

 条約・法律・規則等に関して「conpliance」「comply」という用語を使う場合の正しい訳は「適合」ではなく、「準拠」ないし「遵守」。霞ヶ関のエリートが間違えていい話ではありません(いくら発音がもろジャパニーズイングリッシュだろうと)。
 CITES-SCは「日本が条約規則を遵守していなかった=vとはっきり認定したのです。そして、「しっかり遵守するように」と勧告したのです。
 その後の記述はあまりにもふざけています。
 「触れておらず」? CITES-SCが勧告の中で現在流通している鯨肉等について触れなかったのはなぜでしょうか?
 確かに、勧告は南ア等の温情による提案によって、日本自身の是正措置を待つ形になりました。しかし、それはCITES-SCが現在流通している鯨肉等を合法と認めたことをまったく意味しません。会議の中で改めて議論されなかっただけのことです。あまりにも当然のことですが、ここでいう「待つ」とは、「商業目的での鯨肉利用の禁止」を待つという意味ではありません。あくまで「日本に対する貿易制裁等のペナルティの発動」を待つという意味です。
 そもそも、「(最初のイワシクジラ調査捕鯨が始まった2002年以降)現在に至る鯨肉の商業目的での利用が条約違反だった」からこそ今回の勧告が出されるに至ったのです。
 「違法に流通されている鯨肉」の取扱について勧告中で言及がなかったのは、日本政府自身がCITESの国内法、国内流通を規制する種の保存法で対処すべきことだからです。ヤフーオークション等を通じて未だに取引されている象牙製品と同様に。
 そして、象牙の場合は規制以前に輸入された製品は合法とし、密猟・密輸品と区別するための登録制度が導入されています。実効性の観点からは不十分だと内外で強い批判を浴びているわけですが。
 それに対し、イワシクジラ鯨肉はすべて100%非合法製品なのです。規制以後に違法に国内に持ち込まれた密猟象牙とまったく同じ。責任はすべて、商業目的であるにもかかわらず科学調査と偽って許可証を発行した水産庁にあるにしろ。
 これでは、水産庁は違法行為を黙認するどころか、公然と国民に推奨したとの謗りは免れません。
 「販売・購入ができなくなるのかとの問い合わせ」が、経産省に対して、他の野生生物に関してあったとしたら、その回答はどのようなものになるでしょうか。
 2016年のCITES締約国会議でイワシクジラと同じ附属書I入りが決まったヨウムを例にとりましょう。
 ヨウムであろうとイワシクジラであろうと、「例外的状況」が同じように認められる可能性はあります。実際には年間数百羽を殺す調査捕ヨウムなどまったく行われていないわけですが。
 だからといって、「これらを規制するものではございません(キッパリ)」などと答える担当者がいるはずもないでしょう。
 問い合わせが2016年の時点だったとすれば、模範回答は「2017年の1月以降、野生個体の国際取引は禁止されます。国内での譲渡等も禁止となります。繁殖個体の取引には、繁殖個体であることを証明する登録証を発行する手続を行っていただきます。現在飼育されている個体を飼い続けるのは問題ありません」となるでしょう。所有しているヨウムを他人に譲渡等もせずに自分で殺して食べた場合は、動物愛護法の範疇。死体を剥製等で取引することは、野生種であれば種の保存法により禁止。そして、死体を食用で取引・流通させるのも、法律上は剥製の取扱と何の違いもありません。ヨウムであれば。
 もちろん、これがイワシクジラであってもヨウムと同じこと。両種の間に法律上の線引(サベツ)は存在しないのですから。
 コンゴや米国、オーストラリア等が発言したように、本来なら問答無用であらゆる野生生物製品のCITES加盟国との取引が停止されるペナルティを食らっていてもおかしくはないところ、日本はお目こぼしをもらったのです。国際条約・実施機関としての厳格さ・公平さを犠牲にする形で。何年も前から指摘され、是正することが可能だったにもかかわらず。前年の同じCITES-SCでも今年と同様ほぼ満場一致の違法性の指摘を受け、事務局の審査で改めて事実上の違反が指摘された後も、なおその条約違反行為をやめることをしなかったにもかかわらず。
 条約も国内法規も蔑ろにする水産庁の姿勢は、日本への配慮から即座に制裁措置の発動をしなかったCITES-SCに対する裏切りでしかありません。

 さらに……政府機関以外で今回の会議の一件について、驚くべき公式声明を出したところがありました。それは日本捕鯨協会。

■ワシントン条約常設委員会による調査捕獲したイワシクジラの海からの持ち込みに関する勧告について|日本捕鯨協会
https://www.e-kujira.or.jp/news/#1539053526-707297
 さらに、マスメディアの言葉足らずの報道により、消費者や鯨肉の販売業者に対し、イワシクジラは「違法鯨肉」だという誤った認識が広がっていることは極めて遺憾です。(引用)
 また、水産庁からもリリースされているように、既に海から持ち込まれ、国内に存在している調査副産物については、今回の勧告でその流通・販売を妨げられるものではありません。
以上から現在国内で販売されているイワシクジラ製品は、国際条約を順守した上で流通しているもので、安心してお取り扱い、ご購入いただけるものであることをご理解ください。(引用)

 捕鯨協会の発表には水産庁発表へのリンクが貼られていますが、奇妙なことに、水産庁の報道発表は10月10日なのに対し、捕鯨協会の方はその前日の10月9日。つまり、問い合わせをした、ないし問い合わせに対する回答を水産庁に用意させたのが捕鯨協会だったということがわかります。
 「言葉足らずの報道」については筆者も同感ですが、捕鯨協会の発表も他人のことは言えません。「鯨肉が国内で販売されていることを理由に『商業目的』と判断された」、つまり、CITES事務局もSCもそれをもって違法と判断したのです。ストレートに黒を白と言ってのける捕鯨協会担当者の図太い神経はいつもながらたいしたもの。
 繰り返しになりますが、イワシクジラ鯨肉は間違いなくワシントン条約第3条第5項(c)に抵触する違法な製品≠ネのです。
 勧告の中で「遵守していない」とはっきり明記されているにもかかわらず、「国際条約を遵守したうえで流通している」などと、息をするように平然と嘘をつく、遵法精神の欠片もない極悪組織──それが日本捕鯨協会なのです。永田町も霞ヶ関も、裏で糸を引いているのは日本捕鯨協会。
 かつて『IWC条約を愚弄する輩』というトンデモ本(訳者はあのドン米澤邦男氏)を発行した日本捕鯨協会ですが、『ワシントン条約を愚弄する輩』こそは日本捕鯨協会に他なりません。

 水産庁はワシントン条約および種の保存法に従い、ただちにイワシクジラ鯨肉の流通販売禁止を通達すべき。無論、非は業者(捕鯨協会のもう1つの看板・共同船舶の子会社共同販売以外の)ではなく全面的に国にあるため、損失は補填すべきですが。
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2018年09月19日

税金でブラジルまで出かけて無能ぶりを晒した捕鯨族議員は惨敗の責任を取れ

 9月10日〜14日にかけて、ブラジル・フロリアノポリスで国際捕鯨委員会(IWC)第67回総会が開かれました。
 西日本と北海道が台風・地震による大きな被害に見舞われたり、テニスや自民党総裁選の話題にかき消されたこともあり、マスコミの扱いも一般市民の関心も低調。それ以上に、「もうシーシェパードとのプロレスには飽きただよ」という方が多かったのでしょうが。捕鯨の国際会議に対する無関心ぶりは、閉鎖した犬吠埼マリンパークに1頭取り残されたイルカのハニーに、全国的に大きな注目が集まったこととも対照的です。筆者としてはやや複雑な心境。
 今回の日本が出したパッケージ提案は、国際捕鯨取締条約(ICRW)そのものの改訂まで視野に入れた、過去に提出された前例のない非常に大胆なもので、本来であれば外交問題としても大きな関心を呼んでよかったはずなのですが・・。
 5日にわたる協議の模様はユーチューブで生中継されました。が……地球の真裏の現地とは12時間時差のある日本では深夜にあたるとはいえ、ライブでの視聴数も伸びず、閑散とした有様。
 今でも再生できますので、捕鯨をめぐる国際会議の場で実際にどのような協議が行われたかに興味がある方は、ぜひチェックしてください。


 海外の一般市民にしてみれば、商業捕鯨モラトリアムの採択、そして国際司法裁判所(ICJ)による日本の南極海調査捕鯨違法判決で、もう蹴りがついた話。海の野生動物たちがプラスチック汚染や気候変動など深刻な脅威に直面する中、そちらの方で具体的な取組を政府・国際機関に求めることが優先されるのはやむをえないかもしれません。「まだグダグダやってんの?」「日本はほんとにどうしようもないね」と白い目で見られ続けるにしろ。
 そんな中、非常にうれしい動きもありました。捕鯨支持国である西アフリカのガーナで野生生物保護に積極的に取り組んでいる市民団体が、政府に対して南大西洋サンクチュアリ(SAWS)提案に賛成し日本提案に反対するよう要請し、現地のメディアもそのことをきちんと報道してくれたのです。

■Ghana Wildlife Society Urges Government Officials To Vote In Favour Of SAWS (8/31, MODERN GHANA)
https://www.modernghana.com/news/879046/ghana-wildlife-society-urges-government-officials-to-vote-in.html
■Our Whales and Dolphins in Danger! | ガーナ・ワイルドライフ・ソサイエティ
https://www.blog.ghanawildlifesociety.org/our-whales-and-dolphins-in-danger/

 ガーナは外務省の捕鯨セミナーを受けて2009年に加盟。同年度のODAに水産ODAは含まれないものの、国道改修計画約87億円他しめて140億円超、前年度の約15億円、前々年度の約36億円から桁違いに増額されています。これだけ大盤振る舞いするから「ひとつIWCの方もヨロシク」と頼まれたのでしょう。対日貿易では魚介類が主要な輸出入品目に入っていますが、輸出は絶滅危惧種(VU)のメバチなど大西洋のマグロ類中心、輸入では日本が乱獲の果てに小型化し養殖餌としか売れなくなったサバを東南アジアの代替市場として引き取っている状況。たいしたジゾクテキリヨウ同盟関係もあったものです。
 そんなガーナでの現地NGOの活躍ぶりは何とも頼もしい限り。ぜひガボンを見習い、日本のODAマネーの呪縛≠ゥら解き放たれてほしいもの。と同時に、票を買い漁っている当事国に住む国民としては、肩身が狭い思いに駆られますが。
 筆者としても一日本人として、ICJ判決以降強まっている捕鯨サークルおよび応援団による悪質な歴史修正デマ≠ノ対抗すべく、今総会に合わせて英語版のコンテンツを用意しました。合わせて日本語のコンテンツの方もヨロシクm(_ _)m

■Historical transition of Japanese whale meat diet
https://www.kkneko.com/english/history.htm
■Is whale meat a savior to save humankind from the food crisis?
https://www.kkneko.com/english/foodsecurity.htm
■日本の鯨肉食の歴史的変遷
https://www.kkneko.com/rekishi.htm
■捕鯨推進は日本の外交プライオリティbP!? (6)セントビンセント・グレナディーンのケース
https://www.kkneko.com/oda6.htm
■捕鯨カルチャーDB
https://www.kkneko.com/culturedb.htm

 会議の経過と日本提案、IWC脱退論の詳細については、下掲のお馴染み早大客員准教授真田氏の解説をご参照。

■国際捕鯨委員会第67回会合と日本提案|真田康弘の地球環境・海洋・漁業問題ブログ
https://y-sanada.blog.so-net.ne.jp/2018-09-15

 開催場所となったフロリアノポリスは国際的に有名なリゾート地で、その目玉のひとつが冬に繁殖に訪れるミナミセミクジラを中心とするホエールウォッチング。NHKも会期直前に紹介していましたが。会期中もそのミナミセミクジラのブリーチがホテルから間近に見られたとのことで、NGO関係者がSNSに写真をアップしていました。市民の環境意識も非常に高く、クジラたちに毎年来てもらえるように(目当てで来た観光客にも満足してもらえるように)、浜辺や海をクリーンに維持しているそうです。
 今回ホスト国のブラジルは、そんな「身近な野生動物・クジラとともに生きる町」にふさわしい宣言をまとめ、各国の理解を得るべく尽力し、念願かなって見事可決成立させることができました。そのフロリアノポリス宣言の和訳を鯨類学通の学生さんがまとめてくれました。どんな内容か、ぜひ皆さんも確かめてください。

■2018年度IWC総会 「フロリアノポリス宣言」の和訳|迷子のオガワコマッコウの放浪日記

 日本が脱退した場合、現行の調査捕鯨および公海での商業捕鯨が事実上不可能になることについては、毎日(捕鯨擁護より)と朝日(ほぼ中立)が報じています。

■政府与党に脱退論、実現にはリスクも IWC、商業捕鯨再開案を否決 (9/16,朝日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13681032.html
■日本手詰まり IWC脱退、慎重論強く (9/17,毎日)
https://mainichi.jp/articles/20180917/k00/00m/020/074000c

 拙ブログでは、今回の総会で採決が行われた5つの決議の星取表≠ご覧に入れましょう。
iwc67votej.png
 結論から言うと、日本の惨敗・・・・。
 対戦成績で行くと、先住民生存捕鯨改訂捕獲枠を除き、1勝3敗の形。
 1勝は可決に3/4以上の得票が必要なSAWSをブロックしたからですが、実は過去20年間提出され続けてきたSAWS提案は、日本側の反対意見を汲む形で科学的にもブラッシュアップされたこともあり、年々得票を延ばしています。前回のIWC66では賛成38票だったのが今回は39票に。まあ、反対も1票増えましたし、賛成派としてはもう後数票欲しかったところですけど。
 SAWSも含め、得票差は13票から17票で、日本陣営はいずれも10票以上水を開けられています。
 かつて2006年には今回のフロリアノポリス宣言のまさに対極にあたる、モラトリアムを不要とするセントキッツ宣言が可決されましたが、わずか1票差でギリギリ。せっせとODAで票を集めた全盛期に比べても、捕鯨支持勢力は明らかに減衰しているのです。日本は今総会に向けてリベリアやサントメプリンシペを新たに陣営に加えたものの、援助外交頼みでは勢力を維持することも困難になっているのが実情です。
 そして、日本側が代表団の説明や報道で「反捕鯨国側に配慮」「共存」と謳い、コンセンサスを目指して反対陣営の説得、落としどころを見つける作業を粘り強く続けていたハズ≠フパッケージ提案は、反対が41票と5つの決議のうちダントツで最多。SAWSやフロリアノポリス宣言に対して棄権ないし不参加だった1、2カ国も明確に反対の意思を表示したことになります。
 つまり、一番のボロ負け
 ちなみに、不在の1票、モナコはたまたま呼ばれたときちょっと席を外していたようで、取り直したはずなのですが採決には反映されず。本当なら反対は42票になるはずでした。
 国民の無関心をよそに、日本側は国会議員7名を含む総勢62名、過去最大級の万全の体制で今総会に臨んだのです。それでいながらこの体たらく。
 特に大きいのは、捕鯨支持国であるはずの韓国ロシアが、日本のパッケージ提案に対し棄権に回ったこと
 採決後、ロシア代表は投票態度について「(鯨類の保全の必要性を理解するとともに)持続的利用を支持しているが、対立する意見をまとめてコンセンサスを得るには時間が足りなかったし、これ以上の分断は避けるべきとの趣旨説明をしました。
 本心から共存のためのコンセンサスを目指すのであれば、見込みがないとわかった時点で取り下げ、次回までに相手方に受け入れられなかったポイントを検証したうえで練り直し、再提案を目指すのが合理的な態度というものでしょう。
 ロシアの指摘は実にもっともであり、棄権したのは合理的な判断だったといえます。日本と同じ陣営にありながら、日本の非を諌め、反捕鯨国に対する節度と礼儀を示すことで、捕鯨支持陣営にポイントを取り戻す役割を果たしたのです。外交の手さばきの巧みさがこういうところに表れていますね。
 翻って日本はといえば、パッケージ案を最初から「次はもう提案しない」と断ったうえで提出。あたかも「我々が譲歩≠キるのは今回限りだ、次はもうないぞ」と脅すかの如く。しかも、真田氏の解説にあるとおり、条約改訂を含むきわめて重要な内容でありながら、提示されたのはたった3ヵ月前のこと。代表団全員にロシアの爪の垢を呑ませたいもの。
 ロシアの発言はまた、日本の提案が「共存」「配慮」との言葉とは裏腹に分断を煽るだけだとはっきりと指し示すものであり、提案国の日本に限ってはロシアを説得できなかった所為で失点をさらに重ねてしまったといえます。自業自得ですが。
 ロシアとともに日本の隣国である韓国は発言しませんでしたが、やはりロシアと同じ動機と考えていいでしょう。
 ただし、日韓両国の関係は日中、日露と異なり政治的にかなり冷え切っている中、IWCにおいては比較的連携が取れていると言われていました。にもかかわらず、棄権されるという結果に。
 日本提案は、友好的なハズ≠フ捕鯨支持国から同調を得られなかったわけです。採択に付してしまったことで、わざわざ℃^成票を減らしたのです。それも、中身が受け入れられなかったわけではなく、「コンセンサスが無理な以上、やめた方がいいんじゃない?」という、ある意味非常に消極的な動機で。
 カリブ、大洋州、アジア、アフリカの捕鯨支持国は、セントビンセント・グレナディーン(SVG)を除いて自ら捕鯨を行う意思はなく、多額の援助を受け取るのと引き換えに日本に右へ倣えするだけの被援助捕鯨支持国。IWCの場では常に日本を「リーダー」と仰ぐ立場。
 日本から援助を受け取らず対等な関係にある捕鯨支持国は、ノルウェー、アイスランド、ロシア、韓国の4カ国。
 つまり、鍵を握る4カ国のうち半分から支持を取り付けることに、日本は失敗したのです。
 4カ国うちノルウェーとアイスランドは日本と並ぶ現近代捕鯨国の三巨頭。異彩を放っているのは、名目上は商業捕鯨でないはずの調査捕鯨を公海、それも赤道を越えた南極まで出張ってやっている日本ですが。両国にとって日本は鯨肉の輸出先市場、お得意様≠ナもあります。
 この2国はモラトリアムを留保しているため、日本提案によって何が変わるわけでもなく、自国にとって直接のメリットはありません。仮に日本が商業捕鯨を再開して鯨肉生産量を増やした場合、輸出が縮小・消失するリスクさえあります。
 それでもなお日本案に同調したのは、むしろ可決する見込みがないとはっきりわかっていたからと推察できます。
 過去には日本とともに最後まで母船式捕鯨を行い、やはり日本とともに悪質な規制違反を犯した事実が発覚したロシアですが、現在はチュコト半島での先住民生存捕鯨しか行っておらず、今回の決議でも無難に3/4票以上を得て捕獲枠が更新されています。
 韓国は混獲によって供給される鯨肉の消費市場が存在する国で、過去に一度調査捕鯨実施を検討し、猛反発を受けて引っ込めた経緯があります。仮にモラトリアムが解除された場合、同一のストックをめぐってわずかな枠を日本と獲り合う競合関係となる可能性もなきにしもあらず。ただ、対象のミンククジラ黄海・東シナ海・日本海系群(Jストック)は混獲による減少が強く疑われており、少なくとも現在申告されている混獲数より大幅に少ない捕獲枠しか設定されず、監査の目も一層厳しくなるはずなので、名乗りを上げれば返って損ということになるでしょう。また、オーストラリアと共同で混獲の実態調査なども進めており、日本のように公海・南極海での大規模な商業捕鯨に進出することも考えられません。
 いわばこの2国は、今回の日本提案によって特段利害が発生しない国。
 言い換えれば、今回の日本提案の意義、コンセンサスが通らず採択になった場合にも賛成票を投じてもらうことの意義を、純粋な外交折衝によって納得してもらう必要があった国です。
 リーダーとしての日本の指図に唯々諾々と恭順する被援助捕鯨支持国と異なり、札束による懐柔策ではない、真の外交手腕が求められる相手。
 今更説明するまでもなく、両国は地理的に日本と近いだけでなく政治・経済面で密接なつながりのある、日本にとってきわめて重要なポジションにある国。ギクシャクしているところもありますが。
 こういうときこそ、まさに国会議員の出番であったはず。
 日本代表団はなぜ、ロシアと韓国の投票態度を確認しなかったのでしょう?
 事前の口裏合わせどころか、まともに意見交換していなかったことが明らかな、あのような発言をロシアにさせてしまったのでしょう?
 特に、「与党代表の一人として商業捕鯨再開に向け努力してきます」(引用〜横山議員のツイート、9/7)と胸を張ってブラジルに乗り込んでいった7人の国会議員たちは一体何をやっていたのでしょう??
 思い起こすのは、IWC本会議最中の12日にウラジオストックで開かれた首脳会談の際、「その場の思いつき」と明言しながら領土問題棚上げ平和条約の締結を進言したプーチン大統領、その場でまともな返答を返すことさえできなかった安倍首相の一幕。両首脳の間に信頼関係などまるで構築できなかったことが赤裸々に暴露された、日本の外交史上に残るであろう屈辱的な大失態。
 安倍首相をあからさまにバカにした態度を取ったプーチン大統領とは違い、ロシアIWCコミッショナーは会議の度に日本の顔を立てる気配り上手な方なのですが、会議の全体を見渡す能力も備えていたことがわかります。
 さらに、最終的には反対に回ったものの、日本提案に対して非常に興味深い発言をした国がありました。それはインド。同国代表は「モラトリアム解除については同意できないが、附表修正の可決のハードルを過半数に下げるのは賛成だと述べたのです。そうすればSAWSも通すことができたのに、と。そもそも日本が1つのパッケージに詰め込んだことに無理があると、インドはズバリ指摘してみせたわけです。それでコンセンサスが得られるわけがないと。
 「共存」を目指す中立・公正な立場で、「反捕鯨国にもメリットがある」と強調するならば、日本が択るべきは次の2つに1つでした。

1.パッケージから一部の鯨種のモラトリアム解除の附表修正を外し、決議要件緩和一本に絞るか、少なくとも別建てにする。
2.パッケージに捕鯨支持側の附表修正案だけでなく、SAWS設立等の反捕鯨国側の附表修正案を含める。

 これができない時点で、「共存」は見せかけにすぎずきわめてエゴイスティックな要求であることはだれが見ても明らかです。
 日本提案をめぐる議論の応酬は会議4日目のことで、審議が翌日に持ち越された後で日本は提案の一部を修正してきました。しかし、その中身は、パッケージの中でモラトリアム解除の附表修正を優先するという、妥協の姿勢とは程遠い、コンセンサスを得るための努力など微塵も感じられないものでした。
 せっかくインドが親切に意見を述べてくれたのに、日本は耳を傾けるどころか、後足で砂をかけるまねで返したわけです。同国が棄権ではなく反対に回ったのは当然のことでしょう。
 そして、今回日本のパッケージ案が鍵を握っていたハズ≠フもう1つの国が米国
 日本国内ではとかく強硬な反捕鯨国という目で一般から見られがちな米国ですが、実は豪州やNZ、EU、今回のホスト国であるブラジルをはじめとする南米諸国に比べると穏当な立場です。少なくとも現在は。理由のひとつは、アラスカで先住民生存捕鯨を行っていること。もうひとつは、日本と強固な政治的同盟関係にあること。あるいは、二国間交渉によってモラトリアムの留保を取り下げさせた所為で返って日本を意固地にさせ、調査捕鯨という形での延命を許したことへの反省もあるかもしれません。そのため、外部専門家を招いた2009年のデソト案和解交渉時には裏方に徹し、オーストラリアと日本の間を取り持とうと尽力しました。
 オバマ前大統領は建前上、日本の調査捕鯨に明確に反対する姿勢を表明していました。しかし、現職のトランプ大統領は地球温暖化陰謀論を鵜呑みにするエコ嫌いで知られており、捕鯨を含む漁業国際交渉を担当する米大気海洋局(NOAA)の予算も大幅に削られる始末。ある意味、日本にとっては米国の譲歩を一番引き出しやすい政権が誕生してくれたといってもいいでしょう。
 以下は上掲した会議後の17日掲載の毎日記事から引用。

反捕鯨国の米国は今回、アラスカ先住民の捕獲枠を6年に1度要求する時期に当たり、日本は「特別扱い」を求める米国の協力に期待。他の反捕鯨国も反対表明をしない消極的支持を取り付けるシナリオを描いた。(引用)

 「」付の表現は、毎日の加藤記者が捕鯨擁護色が強いうえに、森下氏や横山氏同様、先住民政策のグロスタに無理解なことを示すにすぎません。ただ、米国としてはやはりスムーズに改訂を済ませたい意図はあったでしょう。つまり、水産庁がマスコミにちょろっと漏らして期待感を抱かせたように、日本の立場からすれば先住民生存捕鯨枠改訂をカードに米国と取引をしない手はありません。
 実際、2002年の下関総会の折には、まさに今回と同様、先住民生存捕鯨枠の更新のタイミングと重なっていため、日本側はこれを積極的にカードとして利用したのです。
 ただし、そのやり方はあまり褒められたものではありませんでした。当時交渉を仕切っていたのはあのミスター捕鯨問題こと小松正之氏(現東京財団政策研究所上席研究員)。ちなみに、今回総会に出席した江島議員は当時下関市長。自国開催となる下関総会のため、日本は勧奨活動を積極的に推し進めたうえで、米国に対し日本の小型沿岸捕鯨暫定枠とのバーターを要求したのです。協議が物別れに終わったことから、日本側は先住民生存捕鯨枠の改訂を阻止。「米国のダブルスタンダードを示した」とは当のタフネゴシエーター(?)小松氏の弁ですが、これではただのケンカ、外交交渉とは呼べません。一部筋によれば、このとき米国の怒りを買ったことが小松氏の左遷につながったとも言われていますが・・。
 とはいえ、そのようなごり押しの手法に頼らずとも、ちらつかせつつ交渉を有利に運ぶ余地も決してゼロではなかったハズ=B
 それこそ、国会議員の外交の腕の見せ所というものでしょう。
 ところが……蓋を開ければ、先住民捕鯨捕獲枠改訂に日本は素直に賛成票を投じたのに対し、日本パッケージ提案に対して米国はきっぱり反対票を投じたのです。
 国内向けには威勢のいいことを言いながら、一方的に譲歩しっぱなしの安倍政権の不甲斐ない対米・対露外交のパターンをそっくり踏襲する形。
 まあ、過去の小松氏の強攻策が裏目に出た結果、取り付くシマもなかったのかもしれませんが。だとすれば、毎日記者にあんな記事を書かせた水産庁の担当者は相当罪作りと言わざるをえませんね。
 一体、7人の国会議員は、米国に対してきちんと協力を要請したのでしょうか? それとも、「ただ期待しただけ」で、話し合いの場を設けることさえしなかったのでしょうか? 目線を送れば意思が通じるとでも思ったのでしょうか??
 毎日が報じた、日本の思惑とはかけ離れた日米それぞれの投票は、お互いの間にまともな意思疎通がなく、深刻な隔たりがあることを如実に物語っています。族議員たちはボタンのかけ違いに気づいてすらいないのかもしれませんが。
 一方的な片思いの日米関係とは対照的に、大人の外交を示した国があります。それはブラジルとSVG。
 今回の先住民生存捕鯨枠改訂に対しては、ブエノスアイレスグループと呼ばれるラディカルな南米諸国のうち7カ国が反対票を投じています。これらの国々は決して先住民生存捕鯨そのものを否定しているわけではありません。主な反対の理由は、捕獲枠の自動更新と、地域毎に事情も保全状況も異なる4箇所を一括で処理することに対して。中でも一番問題視しているのが、生存捕鯨としての定義上グレーな、同じ中南米のSVGによるザトウクジラ捕鯨。
 本来ブエノスアイレスGを代表するホスト国のブラジルは、それでも今回同附表改訂に棄権票を投じました。一方、捕鯨支持のカリコム5カ国のうち、SVGだけがSAWS提案に対して棄権票を投じました。
 お互い、相手国への配慮もあったことは想像に難くありません。
 国民に対してはさも深謀遠慮≠ェあるかに見せかけながら、その実何も考えていなかった(としか考えられない)という、外交と呼ぶに値しないお粗末ぶりを晒した日本とは雲泥の差。
 以下は真田氏のツイート(日本政府出席者リスト付)。

https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1040545943743946752
参加者リストには日本側62名載っているので、エコノミークラス節約プランで一人40万としても62×40=2480万。議員・大臣・上級官僚はビジネスでしょうから、3000万円かけて地球の裏側で無理筋交渉の挙句バンザイ突撃するみたいです。(;´д`)(引用)

 繰り返しになりますが、一体全体国会議員たちは会期中ブラジルで何をやっていたのでしょう?? 被災地の住民が日常生活を取り戻すのに四苦八苦している中、税金使ってブラジルに遊びに行ってた??
 以下は、出席した国会議員7名のうち4名による現地からの発信。まずは自民党鶴保議員のフェイスブックから。

 自民党捕鯨議連の重鎮3名で仲良く記念写真。明らかに会議のコーヒーブレイクの間に撮ったと思われます。他国との情報交換なり折衝なりに勤しんでいて然るべきだと思いますが・・。
 鶴保氏、江島氏については以下の過去記事をご参照。

■太地を庇って沖縄を脅す捕鯨族議員・鶴保氏のとてつもないダブスタ
http://kkneko.sblo.jp/article/176384491.html
■ちぐはぐ族議員とグルメ好事家官僚が明かした美味い刺身*@のデタラメ
http://kkneko.sblo.jp/article/180420343.html

 で、こちらは公明党の捕鯨族議員・岡本氏、谷合氏、横山氏のツイッター。


 期間中のブラジルからのIWC関連のツイートは岡本氏1回、谷合氏3回、横山氏7回。
 岡本氏は外務政務官、谷合氏は農水副大臣の立場で、岡本氏は初日、谷合氏は初日と最終日にスピーチもしています。
 公明党の3人は、自民党に比べるとまだそれなりに頑張った感があるかもしれませんが・・。
 この中で、現地でのロビイングの模様を伝えているのは族議員レベルの高い横山氏。登場する相手国はカリブ諸国、カメルーン、カンボジア・モンゴル・ラオス、アフリカ大西洋岸諸国、そしてニカラグア。
 いずれも被援助捕鯨支持国です。つまり、リーダー%本に同調することがあらかじめわかっている国々。
 ここでニカラグアについて補足しておきます。まずは以下の横山氏のツイートと拙ツイートにお目通しを。

https://twitter.com/gagomeyokoyama/status/1040293092866379776
IWC4日目。商業捕鯨モラトリアムを継続するフロリアノポリス宣言が採択された。採決後にIWCが機能しないとの意見。このあと、日本の改革案について32か国から意見表明。カンボジア、モンゴル、ラオスのコミッショナーとの昼食懇談では、鯨だけを特別扱いする考えには同意できないとの意見で一致。(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1040552638566195201
この3カ国は外務省の方針で東アジアの中の重点的な援助対象。ラオスは首相訪日時「友好の証にIWC入ってるし、援助ヨロシク」と挨拶、わかりやすい日本の勧奨活動の例として知られる。「右へ倣え」する国々と会食するばかりで、対立陣営と対話する気はないの? 税金でブラジル行く必要あったの??
https://twitter.com/gagomeyokoyama/status/1040571443958960128
IWC最終日。午前中に日本提出の改革案が採決される見通し。昨日は反捕鯨国のニカラグアが「商業を理由に商業捕鯨を一切認めないとする態度は欺瞞」「これがIWC正常化の最後のチャンス」として賛成を表明した。昨日の会議後にアフリカ大西洋沿岸の皆さんと懇談。日本を応援するよと激励されました。(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1040581138241093633
ニカラグアは会議が始まる前から反捕鯨国にあらず。前総会では拠出金未払で不参加。日本の改革案に対して事前に日本の調査捕鯨を支持する(自国はやらないけど)旨の教科書的な回答を出している。捕鯨族議員横山氏のロビイングの結果、会場で考えが変わって反捕鯨から捕鯨支持に変わったわけじゃないよ

 14日の横山氏のツイートは画像がニカラグア代表と会食等のシーンではないことからも、拙引用RTの批判に対する応答と見ていいでしょう。
 ニカラグアは2003年にIWCに加盟、当初は日本の勧奨に応じた捕鯨支持国でしたが、ブラジル等のブエノスアイレスGの説得を受け反捕鯨陣営に鞍替え。その後いったん分担金未払で投票権停止状態に。分担金は納入したものの、近年の総会には参加していませんでした。前回・前々回も欠席。
 上掲拙ツイートのとおり、ニカラグアは7月に公表された日本の改革案に対し寄せられた応答の1つとして、日本を支持する立場を明確に表明していました。会議が始まる前の時点で、すでに引き抜かれていたわけです。
 そして、拙批判に対して横山氏が画像抜きで反論し得たのはこのニカラグアだけだったということになります。
 話を戻しましょう。
 ひょっとして、100%味方とわかっているハズ≠フ国々でも、国会議員7人がかりでランチをともにし、必死の説得工作を続けないと態度を翻される恐れがある、それほどまでに今回の日本提案は心もとない内容だったのでしょうか?
 しかも、東カリブ海諸国にはブラジル総会直前の今年7月に岡本氏自身が足を運び、日本のIWC改革案への支持を要請しているのです。

■岡本外務大臣政務官のグレナダ訪問(結果)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/fsh/page1_000604.html
■Japan lobbying EC countries to support its proposal to resume commercial whaling
http://www.nowgrenada.com/2018/07/japan-lobbying-ec-countries-to-support-its-proposal-to-resume-commercial-whaling/

 なお、SVG首相の接待招請については上掲拙HP解説記事を参照。
 これだけアプローチしているにもかかわらず、まだ自信が持てなかったのでしょうか? カリブの国々が日本を裏切るかもしれないと考えたのでしょうか?
 それ故に、説得の見込みが薄いロシアや韓国、インド、米国などにかまっている余裕がなかったということでしょうか?
 だとすれば、コンセンサスを目指すこと自体、最初からあまりに無謀だったと結論せざるをえません。
 豪州、NZ、EU、ブエノスアイレスGは当初から否定的な立場でした。
 コンセンサスを目指すのであれば、突破口になり得るのは上記以外の第三勢力。すなわちロシアと韓国、インド、米国などを懸命に説得し、日本側についてもらい、中立軸を動かすことが重要だったはずです。
 コンセンサスを断念し採決を選択するにしても、少しでも賛成票を増やすために必要なのは、すでに陣営に取り組んで票を確保しているハズ≠フ相手に念押しを重ねることではなく、賛否が確定していない国々にコンタクトを取ることのはず。
 選挙の際、最初から自党候補に投票することがわかりきっている党員の家に何度も足繁く通うより、無党派層を意識して街頭に立った方が当選の可能性を高める──政治家ならそう考えるハズ≠ナはないのでしょうか。
 しかし、ブラジルまで足を運んだ国会議員たちからは、そのステータスをフルに活かし、鍵を握る国々と膝詰めで談判しようという姿勢がうかがえませんでした。彼らはただ、仲良しクラブで食事と内輪のおしゃべりを愉しんだだけ。
 もう一点、これらの国会議員の渡航が不要だったことを端的に示す発言がありました。
 4日目に日本提案が討議された後、交渉役の水産庁諸貫代表代理は「日本は深夜で東京と話す必要もあるのでこの議題はオープンしてほしい」とコメントしたのです。
 要するに、司令塔は東京にあったわけです。
 この提案がコンセンサスを得られる見込みがないのは、関係者なら最初からわかっていたハズ=B思惑が外れたというより、想定どおりの結果。
 トップといえる外相・農相(実際には裏方の事務次官)に判断を改めて仰ぐ必要のある、想定外の困難な状況に直面したとは到底いえません。
 にもかかわらず、副大臣の谷合氏、政務官の岡本氏とも、現場で判断して物事を決める権限を委譲されてはいなかったのです。ただの飾り。
 現地に派遣された7人の国会議員は、いてもいなくても関係ない下っ端だったということです。
 東京に相談した結果が上掲のあまり意味のない修正案だとすれば、司令塔の程度もたかが知れますが。
 
ビジネスクラスでブラジルまで足を運びながら、ロシアと韓国、インド、米国などを説得しきれなかった、あるいはしようともしなかった国会議員7人公明党:横山信一氏、谷合正明氏、岡本三成氏、自民党:浜田靖一氏、江島潔氏、鶴保庸介氏、国民民主党:徳永エリ氏)は、無能の謗りを免かれませんロシアメディアに「ジョーク外交」とまで揶揄された売国奴首相ほどではないにしろ。

 その他、横山氏の先住民生存捕鯨否定ツイート、豪州代表による日本提案批判発言直後の森下議長の渋面、国内向けには決して言わない諸貫代表代理の「日本は昔は悪ガキだった」発言等々、今回のIWCウォッチングの見所については下掲ツイログでチェックを。セーリングW杯開会式が新江の水で行われ、イルカショーまで披露したために国際セーリング連盟からクレームがついた件も取り上げています。


posted by カメクジラネコ at 18:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2018年08月26日

トンデモ竜田揚げ映画監督八木景子氏はクジラよりカラスがお嫌い?−2


◇日本の調査捕鯨は国際法違反!! CITES公海イワシクジラ持込問題、いよいよ王手!

 昨年取り沙汰された北西太平洋調査捕鯨のワシントン条約(CITES)規則違反問題について、日本での聞き取り調査等を行っていた同事務局が調査報告書を公表しました。
 後は常設委員会の判断次第ですが、鯨肉・脂が科学研究目的ではなく「商業目的」で用いられていることは明らかとし、常設委員会が目をつぶらない限り、公海からのイワシクジラ持込はCITES規約に違反しているとはっきり認定しています。
 日本の調査捕鯨の国際法違反(2例目)確定にいよいよ王手がかかった状態!
 詳細は真田先生の解説をご参照。

■ワシントン条約事務局、イワシクジラの水揚げが条約規定に反するとの報告書を発表|真田康弘の地球環境・海洋・漁業問題ブログ


◇究極の生物音痴・トンデモ竜田揚げ映画監督八木景子氏はクジラよりカラスがお嫌い?(その2)

 前回の続き。元記事のリンクは以下。

■クジラの情報 正しく伝えたいと研究者が「鯨塾」を開催(八木景子|ヤフーニュース個人)
https://news.yahoo.co.jp/byline/keikoyagi/20180717-00089302/
■封じ込められてきた鯨の情報 正しく伝えたいと研究者が「鯨塾」を開催(同アーカイブ)
http://archive.is/xmAr2

 さっそく八木氏本人の持論の検証にかかりましょう。引用強調箇所は筆者。

これまで、捕鯨についての正しい情報が一般民間人にあまり伝わってこなかった。
過激な行動をとる活動家への拒否感から、多くの企業やマスコミがこの問題を避けてきたと関係者はいう。その所為もあって、捕鯨関係者と一般民間人の間には明らかに捕鯨に関する情報の溝が広がっていった。その傍ら欧米、特にアメリカではイルカ・鯨に関するテレビや映画が70年代から急速に量産されてきている。2010年に米国のアカデミー賞を受賞した『ザ・コーヴ』という和歌山県・太地町のイルカ漁を批判した映画そのうちの1つであり反捕鯨家の多くが現地へ押し寄せるきっかけにもなった。(引用)

 「一般市民」ではなく、政府機関職員や軍人と対置される「一般民間人」と表現してしまう辺り、捕鯨産業を特殊視する八木氏の認識がにじみ出ていますね。捕鯨サークル関係者は一般民間人とは別格の特殊階級鯨界人で、自分もそちら側に含まれるという認識なのでしょう。
 「関係者」とは、ズバリ利害当事者であるところの捕鯨サークル関係者。まあ、十中八九捕鯨協会でしょう。
 ここに書かれている赤字の部分は、全部八木氏個人の主観です。「そういうことにしておいてほしい」という利害関係者の言うことを鵜呑みにしたうえでの。
 そして、全部デタラメ
 梅崎氏/捕鯨協会が八木氏をどのように誘導しているかが伺える点で非常に興味深いのですが。
 以下、その証拠を、梅崎氏がPRコンサルタントとしてクライアントの日本捕鯨協会に宛てたレポート『捕鯨問題に関する国内世論の喚起』(『日本PR年鑑』1983年版収録)から引用しましょう。

それにも拘らず、政府が捕鯨の維持、存続の方針を変えないのはなぜか。その大きなバックボーンとなっているのが、強固な国内世論である。“クジラ戦争”が激化するにつれて、「捕鯨中止の理由は筋が通らない。不当な圧力をはねのけて、日本人の伝統的な食習慣を守れ」との主張は強まる一方である。本稿においては、捕鯨存続のための国内世論をいかにして形成してきたか、について述べてみたい。(引用)

 おやおや・・八木氏の主張(ないし関係者の主張)とまるっっきり違うことが書かれてますね・・。1983年の時点で、政府の強硬な捕鯨推進政策を正当化するだけの強固な国内世論≠ェ形成され、ますます強まっていたそうですよ?

1974年1月、日本捕鯨協会内に、プロジェクト・チームが置かれた。「捕鯨問題対策協議会」という名のもとに、大洋漁業、日本水産、極洋三社の各捕鯨部から一人ずつ、それに日本捕鯨、日東捕鯨からそれぞれ一人、合わせて五人のメンバーが加わった。国際PRが起用されたのは同年3月であった。これより1ヵ月前に、国際PR・カナダの社長、ディーン・ミラーから、東京に手紙が届いていた。グリーンピースの動きを伝え、効果的なPR活動の必要性を指摘した内容だった。われわれはこれを参考にPRプロポーザルを作成、「捕鯨問題対策協議会」に提出した。これが先方のニーズとぴたり合い、契約締結となった。捕鯨については孤立無援の日本の主張を背負い、国際世論の荒波へ出航したのである。(引用)

 この後国際PRは米・加・英の3拠点でPR活動を展開しますが、惨憺たる失敗に終わります。そこで方針を転換、国内でのPR活動に全力投入することになったわけです。

日本共同捕鯨の設立によって、捕鯨協会の事務局も同社内に移された。それ以降のPR活動は、捕鯨協会の名のもとに、実質的には共同捕鯨によって実施されることになった。日本の捕鯨の維持、存続を計るためには、どのようなPR活動が有効か。クライアントの担当者と検討した項目の中で、全員が再優先の印をつけたのが、国内の世論固めだった。ふたつの戦術を練った。ひとつは論説委員対策、もうひとつはオピニオン・リーダーのグループ化である。(中略)農林水産担当の論説委員は捕鯨の実態や資源管理の実状には明るい。IWCが厳しい資源診断のもとに、増加頭数以下の捕鯨枠を決めている点や、資源減少の恐れがないのに、日本が捕鯨をやめる理由はない点を訴えたところで、全面的な同意は得られなかった。一般の日本人が日常口にすることのなくなった鯨肉を、国をあげてまで守る必要があるのか、という疑問が浮かぶのだろう。(引用)

 マスコミ内で最も事情に通じていたはずの論説委員が当初捕鯨業界サイドの主張に真剣に取り合わなかったのは、決して「過激な行動をとる活動家への拒否感」が理由ではなかったわけです。いやはや、顧客向けの報告書の中での梅崎氏は本当に清々しいほど正直ですねぇ・・。
 付け加えるなら、当事者である元捕鯨会社大手が将来の商業捕鯨への参入を明確に否定したり、以前新母船建造話が持ち上がったときに造船業界が二の足を踏んだのは、国際的に事業を展開しているこれらの企業が消費者や株主に敬遠されるなどビジネスに差し障ることを避けたがったためと考えるのが合理的。
 マスコミに関して言えば、例えば中東の紛争地域に入り込んで取材するとなれば、過激派に命を狙われる危険を考慮せねばならず、現に今も1人日本人ジャーナリストの方が拘束されているわけです。北朝鮮や中国チベット地方等での報道も、相手はテロリストではなく専制主義国家ですが、それに近いリスクがあるといえるでしょう。そのおかげで、中東のような地域で何が起こっているか、日本の一般市民はなかなか情報を得にくいわけです。「身の危険を感じること」と拒否感とではニュアンスがまったく異なりますが。
 NGOの捕鯨反対キャンペーンに対する拒否感からマスコミが捕鯨問題の報道を避けた? 反捕鯨団体は本物のテロリスト≠竦齔ァ国家以上に報道機関の活動を制限すると言いたいのでしょうか?
 沖縄についてはどうでしょうか。辺野古米軍基地移設問題では、海上保安庁や県警・機動隊から暴力的な扱いを受けながらも、反対派の市民が海上デモなどで体を張って必死に抵抗している状況。まあ確かに、地元紙といわゆる本土のマスコミとの間では、基地問題をめぐる報道の質・量に温度差があるように感じます。本土のマスコミの取り扱いが小さいのは、過激な活動家に対する拒否感で説明できることなのでしょうか?
 ジャーナリストの鈴木智彦氏は長年ヤクザの世界を取材し続け、ウナギの密輸・密猟と裏社会との関わりを暴いて一般市民に情報をもたらしてくれましたが、反捕鯨活動家への拒否感は強面のヤクザより圧倒的に上だと八木氏は言いたいのでしょうか?
 バカも休み休み言えです。それこそジャーナリズムに対する侮辱であり、冒涜というものでしょう。NGO活動に対してもですが。
 それにしても、嫌悪感・アレルギーに類する感覚の拒否感という独特の言葉遣いがいかにも八木氏らしいですね。関係者(まず捕鯨協会)はきっと別の単語を使ったでしょうけど。
 事実は梅崎レポートに書かれているとおり。日本のマスコミは彼の撒いた陰謀論という餌≠ノ見事に引っかかり、「強固な国内世論」の醸成に大きな役割を果たしたのです。
 拒否感なる個人的感情に縛られるようでは、企業もメディアも成り立ちゃしませんものね・・。

われわれは論説委員、解説委員に対する緊密なコンタクトと、キメ細かな情報の提供がパブリシティの成功のすべてとは考えていない。(中略)
クジラに対する特別の愛着心をなぜ断ち切らねばならないのか。それも不純な仕掛け、筋の通らない言いがかりによって・・。ジャーナリスト特有の正義感、公正な判断基準、反抗精神を発揮する場を、われわれは提供したに過ぎないのである。(中略)
初会合は77年3月10日に開かれた。クジラ好きの人たちばかりであったため、種々のクジラ料理を用意した。「捕鯨懇」の運営で、われわれがもっとも留意した点は、捕鯨協会の応援グループではなく、自主的な、独立した機関という性格を持たせることであった。(中略)
捕鯨懇は79年11月までに7回の会合を開いた。当初、捕鯨問題に関しては漠然とした知識しかなかった各メンバーは、いまやこの問題の専門家である。(中略)
各分野で活躍するメンバーは、それぞれの立場で、自主的にパブリシティ活動を実施している。(中略)
捕鯨懇はいまや業界にとっては百万の味方といえよう。79年11月の会合では、年2〜3回の頻度では少ないので、もっと会合の回数をふやすことを申し合わせた。そして「外国とケンカできるのはわれわれしかいない」との発言も出た。捕鯨懇の存在で、政府は捕鯨問題を軽視できなくなることは確かである。メンバーに対する“お返し”は会合のたびに、鯨肉のおみやげと若干の交通費を渡すだけである。時間と智恵を商品とする文化人が、なぜこれほど打ち込んでくれるのか。われわれは不思議に思う。ただ、“クジラは大きくて深い存在”という感慨をかみしめているだけである。(引用)

 もうおわかりでしょう。モラトリアム成立当時に発足し、高齢化した「捕鯨懇親会」に代わる、新世代の広告塔として白羽の矢を立てられた人物こそ、新宿の鯨肉居酒屋で梅崎氏が発掘した監督志望の映画業界人・八木景子氏に他ならなかったわけです。
 当時の捕鯨懇と同じように、「外国とケンカできるのは私しかいない!」とばかり、鯨肉嗜好と欧米へのルサンチマンだけで精力的に動いてくれる人材。
 前世紀の懇親会で声をかけ集まったのは、すでに高い知名度の確立した文化人・著名人でしたが、無名の新人映画監督ではあっても強烈なキャラを武器にあることないこと拡散してしまえる八木氏は、むしろ21世紀・インターネット時代の広告塔としてうってつけだったといえるでしょう。
 捕鯨協会/国際PRは、一方的で歪んだ情報をマスコミ・著名人を通じて国民に植え付けたのですから、一般人が「正しい情報」に接する機会は確かに少なかったといえます。ただし、「伝わってこなかった」のではなく、意図的に正しくない情報を流したわけです。この点に関しては、環境保護団体側も日本国内での啓発活動がうまく実を結んでいなかったのも事実ですが。
 梅崎氏の果たした役割、参加メンバーの顔触れを含む捕鯨問題懇親会の詳細については以下の解説をご参照。

■真・やる夫で学ぶ近代捕鯨史 その4:モラトリアム発効と「国際ピーアール」の陰謀
http://www.kkneko.com/aa4.htm

 そして後半の、欧米でイルカ・鯨に関するテレビや映画が「70年代から」「2010年」にかけて「急速に量産」されたという部分ですが、他の環境・野生動物を扱ったコンテンツと比較して鯨類モノ≠ェ突出して多いことを示す(社会)科学的データはありません。また、前回ほんの一部をご紹介したとおり、鯨類モノ≠フ多くは海洋環境問題(捕鯨だけでなく)をきちんと取り上げています。
 ここも八木氏個人の感想=B「急速に量産」って、B級ホラー人食いザメ映画じゃあるまいにねぇ・・。
 むしろ日本国内では、捕鯨懇の成立・梅崎氏自身の著した陰謀本発刊以降、多数の捕鯨擁護コンテンツが量産≠ウれており、4年前に八木氏が突然目覚めるまでの間も、捕鯨サークルにとって都合のいい一方的な情報を国民にインプットする役割を担ってきたのです。こちらもその一部を以下にご紹介。

■捕鯨カルチャーDB
http://www.kkneko.com/culturedb.htm

日本の捕鯨ばかりが海外から残虐だと言われるが、近年注目されている鯨類へのダメージの要因をあげるならば、海中のプラスチックゴミ、漁具による混獲、商業船との衝突、そして音によるストレスで脳や耳に出血までさせてしまう海軍のソナーテストによる甚大な被害を無視出来ないしかし、これらは報道されたり、映画化されたりなど、メディアに取り上げられることが極端に少なく、あたかも日本の捕鯨だけがイルカ・鯨を減らしているというイメージ操作がメディアや反捕鯨活動家によって行なわれ続けている。
日本からの情報発信には言葉の壁を乗り越える事、そしてメディアがこの問題をしっかりと報じてくれるか、が鍵となっている。(引用)

 上掲の八木氏の主張を、ホシナ氏の論説や一般の方のツイートを含め、筆者が前回青字で示した部分とぜひ読み比べてみてください。まるでどちらかが地球外の別世界の出来事ででもあるかのようですね・・。
 「本当に海洋資源を守ることをうたうのならば、マリンデブリ問題も日本が主導するべきでは」というホシナ氏の諌言も、八木氏の心には届かないでしょう。確かに日本人としては大変耳の痛いことですが。柏ニャンニャウェーさんの「海洋プラスチックゴミには目をつぶる一方で、これは引くわ」という感想ツイートにも、八木氏は露ほどの共感も覚えないことでしょう。「私が言いたいのはそんなことじゃない。あなたの考え方はおかしいし、話にならないから無駄」とただ頭ごなしに怒鳴るだけでしょう。実際に京大シンポジウムで参加者の方にそのような応対をしてしまったように。
 きわめて残念なことに、ホシナ氏のように「プラスチック規制・海洋環境悪化への取組で反捕鯨国に大きく遅れを取っているようでは(捕鯨を続けるうえでも)困る!」「なぜG7憲章への署名に拒否したのか!? 捕鯨国だからこそリードすべきではなかったのか!?」と、日本政府を問い質すことすら八木氏にはできないのです。あるいは、「どうせ報道されることが極端に少ないに違いない」と頭から決め付け、G7でプラスチックごみ問題が協議されたニュースも右から左へ聞き流したか、関心がなくニュースそのものさえ知らなかったかもしれませんが。
 自分にとって都合の悪い情報は完璧にシャットアウトできる、ずいぶん便利な目と脳ミソをお持ちなご様子──。
 あえて言うなら、上の主張は八木氏が自身の脳内で作り上げたファンタジーの世界の出来事。
 現実の世界の出来事と一致しているのは、「近年注目されている」の部分だけ。注目されるようになったのはもちろん、研究者および協力関係にあるNGOの努力の賜物ですが。
 「注目され」てるのに「メディアで取り上げられることが極端に少ない」とか、同じ一文の中でここまで矛盾した支離滅裂なことが言えるのもたいしたものですけど・・00。
 「残虐なのは日本の捕鯨だけだ」「クジラを減らしているのは日本の捕鯨だけだ」などと唱えているNGOは世界で1つもありません。あのシーシェパード(SSCS)を含め。前回解説したとおり、乱獲と悪質な規制違反の歴史を持ちトータルの捕殺数で2位に立った捕鯨大国であり、1位のノルウェーと違って南北両半球で捕鯨を続けていること、飽食の限りを尽くす先進国であることから、日本への風当りが強くなるのは当然といえますが。
 そんなことを言っているのは、八木氏が脳内ででっち上げたバーチャル反捕鯨団体だけ。
 前回筆者がごく一部を紹介したとおり、プラスチックごみをはじめとする海の環境問題をテーマとする映画やTV番組は、他の環境問題・野生生物保護問題を取り上げたドキュメンタリーに比べて特に多いわけでも少ないわけでもありませんが、たくさん作られています。だからこそ注目≠ウれ、市民がNGOを通じて行政に声を上げ、反捕鯨先進各国で具体的な規制が進められるようになったのです。エコ嫌いのトランプは捕鯨ニッポンと一緒に足を引っ張ってますけど・・。
 付け加えれば、マイクロプラスチックが話題になったのは確かに近年ですが、一連の問題は前世紀のうちからGPをはじめとするNGOと研究者たちがずっと警鐘を鳴らし続けてきたことばかりです。日本の責任も大きい「漁具による混獲」問題に関して言えば、1992年に国連で公海大型流し網の禁止が実現したのは、「ウミガメ・海鳥・クジラたちを守れ」という捕鯨モラトリアム支持と同程度に大きな国際世論の後押しがあったからです。八木氏の年代なら知っていていいことのはずですが・・。
 要するに、「『日本の捕鯨だけ≠ェ残虐で、クジラを減らしている』と海外から責められている」いうまったく事実に反するイメージ操作が、日本捕鯨協会・元国際PR梅崎氏・映画監督八木氏・市井の反反捕鯨活動家らによって行なわれ続けているのが真実なのです。
 日本自身の海洋プラスチックごみ対策の後進性をスルーしたこと以上に、八木氏がきわめて陰湿なのは、前回紹介した『ソニック・シー』:反捕鯨活動家£c体のIFAW・NRDCの資金援助で制作され、反捕鯨国を中心に海の環境問題(軍事ソナーの問題を含め)を告発し、エミー賞も受賞したドキュメンタリー映画について一言の言及もなかったこと。
 実はこの『ソニック・シー』、海外で好評を博しただけでなく、日本国内でも今年になって世界自然・野生生物映像祭で上映されています。よりによって八木氏の『ビハインド・ザ・コーヴ』と一緒に・・。

■「ビハインド・ザ・コーヴ」の第13回世界自然・野生生物映像祭出品について
http://www.kkneko.com/jwff.htm

 同映像祭で、八木氏のプロパガンダ映画は「もう1つの視点賞」を受賞(筆者なら「トンデモ大賞」ないし「いろいろザンネンで賞」を差し上げるところですが)。「環境保護賞」を獲ったのは『ソニック・シー』でした。
 八木氏は自作の出品や講演のことで頭がいっぱいで、ノミネートされた他の作品にまったく目がいかなかったのでしょうか?
 どうもそうではなかったようです。

https://www.facebook.com/behindthecove/posts/2018-04-09/1222856614483759/
今回、ノミネートされていたもので特に私が一番気になっていたのは同じく鯨を扱ったディスカバリーチャンネルから出品作品「ソニック・シー:海の不協和音」でした。
この映画では、イルカ・鯨が海軍によるソナーテストや商業船による身体のストレスを証明しています座礁した鯨類をスキャン、脳や耳から出血していることや、2001年9月11日(テロ事件時)に商業船が運行停止時にはストレスがなくなったことを解説されていました。正に「Behind THE COVE」の話を裏付ける内容になっていました。
本映画祭は、圧力に関係なく独自に作品を選んでいるそうで、クジラ問題をこれまでとは違った角度で捉えた作品「ソニック・シー:海の不協和音」(環境保護賞)と並び「Behind THE COVE」に「新しい視点賞」をくださった事は大変光栄であり感謝しています。(引用)

 いやはや、牽強付会なんてレベルじゃありませんね・・。それにしても、八木氏はなぜ、4月にこのFB記事を書いた後、8月にあのヤフーニュース個人記事を書くことが出来てしまうのでしょうか?
 2016年に『ソニック・シー』が公開されたことを知りながら、自作と同じ映画祭に出品され、自身が獲れなかった「環境保護賞」を受賞したことを知りながら、なぜ「映画化されたりなど、メディアに取り上げられることが極端に少なく」「イメージ操作がメディアや反捕鯨活動家≠ノよって行なわれ続けている=vなどと言えてしまうのでしょうか?
 はっきりしているのは、八木氏が(本人の認識しているところでは)自作の内容を裏付け≠トまでくれた『ソニック・シー』の存在を完全に無視・黙殺していることです。
 「『ソニック・シー』はたった1本だが、環境問題に触れない反捕鯨映画はゴマンとあるから、『極端に少ない』でいいんだ」「私の映画の数々の受賞暦に比べたら、エミー賞や世界自然・野生生物映像祭環境保護賞なんて小さい小さい。そんなんじゃ『メディアに取り上げられる』うちに入らない」「IFAW・NRDCなんてきっと弱小団体で、『反捕鯨活動家』のうちのごくごく一握りに決まってる」──そう思ったのでしょうか??
 たとえ他の数多くの欧米発海洋環境ドキュメンタリーの存在を調べる気がなかったとしても、「数少ない例外」という修飾付でも、「これだけは推薦します」といって紹介しますけどね。筆者だったら。礼節を重んじる日本人として。
 八木氏がやるべきは、自画自賛の自作宣伝ではなく、『ソニック・シー』の和訳・国内上映支援、同映画と同じ内容を訴えた著作『War of the Whales』の和訳・国内発行支援、NRDCの対米軍訴訟キャンペーンへの寄付を含む支援の呼びかけではないのでしょうか?
 まあ、「イルカ・鯨が<Xトレスを証明しています」という文章も相当イカレてますが。驚くべき知能の高さですね。反反捕鯨の口にするイルカ狂≠フ中でも、ニンゲンに対してストレスを証明する能力のあるイルカまでいるとは誰も信じてやしないでしょうに。
 FBならまだしも、記事本文も八木氏の文章は主語述語、てにをはがかなりおかしな具合になっています。どうしてこれでプロのクリエーター・映画監督としてやっていけるのか、筆者はいつも不思議に思います(佐々木氏の日本語はほぼ及第点ですけど)。まあ、個人支援企画だからといってきちんと校正しないのはヤフージャパンの責任ですが。
 もう1つの特徴を挙げれば、捕鯨サークル当事者発の一部を除き、八木氏は情報の出所・出典をほとんど明記しません。基本的に、自分の思ったまま、感じたままのことを書き殴っているからでしょうけど。ジャーナリストとしての資質はゼロ。結果として、一方の利害関係者である捕鯨サークル当事者の言うことを鵜呑みにしたうえで、未消化のまま自分の言葉に置き換え、インプットした関係者さえ予想もできないような枝葉≠付け加えてしまうため、見事にトンデモな主張に仕上がってしまうわけです。さらに、収拾がつかないほど裾野を広げて大見得を切っちゃうと。ネトウヨ流人種差別撤廃提案ネタ、「韓国はIWC不参加」、「CITESからクジラを外すのが目標」等の爆弾発言がその典型。
 『ソニック・シー』がディスカバリーチャンネルで公開されたのは2016年のことですが、同作品は2000年にバハマで起こったマスストランディングから鯨類の座礁と人為的な音響妨害の関連を追い続けた、八木氏が太地に押しかける以前から多大な時間と労力をかけて作られた作品です。繰り返しになりますが、監督が何度も謝辞を述べているとおり、反捕鯨団体のIFAW・NRDCからの資金援助がなければ日の目を見ませんでした。音響妨害に関する科学的知見が蓄積していったのは1990年代以降ですが、環境保護団体は以前から船舶交通やソナー(米軍を含め)が鯨類に与える影響を憂慮し続けており、それ故の映画製作タイアップとなったわけです。
 そもそも米国でアクティブソナー中止を求める訴訟が起こったのは2002年のことであり、米海軍を提訴したのは誰あろう『ソニック・シー』をサポートしたNRDC。下級審ではソナー使用の仮差止命令まで出たものの米海軍側が控訴、残念ながら、最高裁では海軍側が勝訴しています。環境/鯨類の「生態学的、科学的、レクリエーション上の価値」とその重要性を認めながらも、野生生物保全への配慮より国防/安全保障上の公益が優先された形。ただし、米海軍は下級審で示された規制の一部を受け入れ、NOAAへの事前申請と環境影響評価提出も義務付けられた他、海産哺乳動物の調査研究に予算を拠出することも約束しています。他の形でソナーの使用中止を求める米海軍に対する提訴はなおも続行中。

■米海軍軍事ソナー訴訟 Winter v. NRDC事件 : 軍事ソナー演習時の環境配慮義務|佐々木浩子・海洋政策研究財団研究員/慶應義塾大学法学研究会
http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00224504-20130328-0025

 ある意味では、日本における原発再稼働と活断層の危険性をめぐる訴訟、厚木基地や普天間基地などにおける自衛隊・米軍の航空機による周辺住民の騒音被害、そして何より、先日やはり残念ながら差し戻し審で訴えが棄却されてしまったジュゴン訴訟と通じるものがあります。
 そしてもう1つ。八木氏は証明と言っていますが、気候変動/海洋酸性化、有害物質による汚染、音響妨害等の影響は、現在のレベルの生産・排出等が継続した場合、各種・系統群の死亡率・乳児死亡率・繁殖率がどれだけ下がり、百年後の生息数が何頭になるといった定量的な評価は未だ十分にはできていません。NGO・市民はあくまで「不確実性がある場合は環境/野生生物の利益に」という予防原則≠ノ則って行動しているのです。米海軍や日本の自衛隊は、それより国防上の利益を優先する立場。近代国家といえど死刑制度や軍隊のある国では、ヒトの命さえ絶対的な価値を持つとは言えないわけですが、裁判になれば対立するそれぞれの利益の軽重が斟酌されるのは仕方のないことでしょう。
 軍事ソナー問題に関しては、日本でも八木氏が4年前に突然覚醒する前から、反反捕鯨ネトウヨたちが騒ぎたててきましたが、彼らは米海軍を相手取って法廷闘争を続けるNRDCを寄付などの形で支援するでもなく、ただひたすら日本の捕鯨を正当化するのみでした。そう、まさに「日本だけじゃないのに、なぜ植民地主義や慰安婦問題で日本だけが責められるのか?」と主張するのと同じメンタルで。
 外野の反反捕鯨ネトウヨはともかく、日本捕鯨協会・八木氏らは次のいずれの立場なのかをはっきり明示するべきでしょう。
@国家安全保障上の公益 ≒ 美味い刺身≠フ価値 > 環境・野生生物の生態学的、科学的、レクリエーション上の価値
A美味い刺身≠含む右以外のすべての価値 > 環境・野生生物の生態学的、科学的、レクリエーション上の価値
 筆者個人の価値観は以下ですが。
Bジュゴンやクジラを守ること(環境・野生生物の生態学的、科学的、レクリエーション上の価値) > 武力に頼る″痩ニ安全保障上の公益、美味い刺身≠フ価値

 続いて、注目の超珍説です。

「鯨って絶滅しかけているんじゃないの?だから日本の捕鯨が反対されているんでしょう。」鯨類の生息状況に詳しくない一般民間人の中で、そんな疑問を抱く人は少なくない。実際はどうか、というと答えはNOだ。
鯨という生物は現在86種類以上確認されており、その中でも例えば日本が調査・捕獲している南極海のクロミンク鯨は50万頭以上いることがわかっている。では、なぜ“絶滅の危機にある”というイメージが一人歩きしてしまったのか。事実、戦前・戦後に鯨の中でも一番大きな種類であるシロナガス鯨やザトウ鯨が捕鯨国の乱獲によって絶滅に瀕した時期はあった。その時の強い印象が、いつの間にか鯨種全体の事と捉えられてしまったのであろう。しかし、これは全ての鯨に当てはまる訳ではない。例えるなら、鳥類の中でトキが絶滅しかけているからといって、カラスも同様だと考えるようなものだ。鯨も種類によって少ないものもいれば、豊富なものもいるのだ。(引用)

 特殊階級鯨界人≠フくせに「鯨類の生息状況に詳しくない」八木氏ならではのデタラメ
 「50万頭いるから絶滅危惧種じゃないハズだ」というのは、生物音痴らしい八木氏の思い込みにすぎず、完全な誤り
 個体数はあくまでIUCNの判定基準の1つにすぎません。より重視されるのは減少傾向。
 ミナミイワトビペンギンの個体数は250万羽(2007年)ですが、絶滅危惧種(VU:危急種)。キタオットセイの個体数は129万頭(2014年)ですが、やはり絶滅危惧種(VU:危急種)。ホシチョウザメの個体数は810万尾(2008年)ですが、最もリスクの高い絶滅危惧種(CR:絶滅危惧TA)。ニホンウナギは個体数に換算すればおよそ4,500万尾(2011年)いると考えられますが、それでも絶滅危惧種(EN:絶滅危惧TB)。
 IUCNレッドリストにおけるクロミンククジラのカテゴリーはDD(データ不足)。ただし、これはIWCでIDCR/SOWER(国際鯨類探査十ヵ年計画)の結果をめぐる議論に決着がつく前の判定(2008年)で、IUCNの基準に正しく従うなら、最もリスクの高い絶滅危惧種(CR)に該当することになります。気候変動に対して脆弱なことや、カドミウムの高蓄積と腎障害の発症を示す調査データなどからも、同種は今まさに絶滅に瀕しているといっても決して過言ではないのです。
 八木氏はまた「シロナガス鯨やザトウ鯨が捕鯨国の乱獲によって絶滅に瀕し時期はあっ=vとあたかも過ぎたことのように主張していますが、こういう書き方がまた八木氏の嫌らしいところ。シロナガスクジラは過去形ではなく今現在$笆ナに瀕しています(EN)。八木氏は触れていませんが(これまた嫌らしいことに)、ナガスクジラも同じく絶滅危惧種(EN)。前回解説したとおり、南半球ナガスクジラは1920年比でわずか4%以下に落ち込んだまま。戦後の乱獲五輪でトップに躍りだし、同種を絶滅危惧種に追い込んだ主犯は間違いなく日本の捕鯨業界そのナガスクジラを違法判決の下ったJARPAUで捕獲対象にし、今なお北大西洋から輸入しているのも日本。
 ザトウクジラに関しては、確かに捕獲禁止が早かったこともあり、現在は回復が順調に進んでいるとみられますが、それでも1940年代の半分の水準に達するまでまだ年数がかかると見られています。今日野生生物種の保全を議論する際には種ではなく個体群/系群を対象にするのは常識。同種も紅海・アラビア海系群やオセアニア島嶼系群は絶滅危惧種(EN)に指定されています。ところが、やはりナガスと同じように日本は島嶼系群を含む南半球ザトウクジラを違法なJARPAUで捕獲対象に設定。実際には捕獲せずにオーストラリア・ニュージーランドに対する脅迫カードに使ったわけですが。主に日本の捕鯨による乱獲が原因で減少した北太平洋の系群も、他の海域に比べると回復が遅れています。もっとも、なぜか日本はモラトリアムからこの方調査捕鯨の対象に含めていないのですが。紅海系群やオセアニア島嶼系群のように絶滅危惧種指定を受けているわけではなく、古式捕鯨でも主要な捕獲対象となっていたのに。
 ミンククジラもIUCNではLCの扱いですが、系群単位で見た場合、東シナ海・黄海・日本海系群(Jストック)は過去の乱獲と現在の混獲により、IUCNの基準で正しく判定されれば間違いなく絶滅危惧種(EN)相当。減少が強く疑われる絶滅危惧系群に対し、日本は「どうせ混獲で減っているんだから少しくらいたいしたことはない」という驚くべき言い訳のもと、IWC科学委員会の勧告も無視して捕獲を強行しているのです。日本はまさに絶滅危惧種(系群)を新たな捕鯨のターゲットにしたのです。あろうことにも、NEWREP-NPにおける同種の捕獲枠は、日本が自ら持続可能な捕獲枠として算出し、IWCに提案した17頭をも大幅に上回っているのです。調査捕鯨は規制を回避して乱獲を可能にする裏技以外の何物でもありません。
 さらに、昨年からイルカ猟の新たな対象種として捕獲枠が追加されたシワハイルカは、IUCNレッドリストの正しい基準に従うなら大幅な減少が見られ、ENに相当する絶滅危惧個体群。その他の捕獲対象種も、日本近海の個体群として見た場合はデータ不足ないし絶滅危惧カテゴリーに含まれるものばかり。
 ところが、水産庁は昨年IUCNの判定基準・カテゴリーとは似ても似つかない独自の基準に基づく偽ブランド≠フ海洋生物レッドリストを発表。IUCNで絶滅危惧種にランクされる鯨種もすべて「ランク外」に蹴落とされてしまいました。国内の野生生物保全関係者が特に驚いたのが、各都道府県レッドデータブックで絶滅危惧種にしっかり登録され、広島では天然記念物としても保護されているスナメリ、そしてツチクジラと近縁の新種カラスの扱い。
 つまり、事実は八木氏の主張とまったく逆なのです。海外で「すべての鯨種が(IUCNの基準における意味での)絶滅の危機にある=vと唱える団体・国は存在しませんが、日本という国は「すべての鯨種が絶滅の危機にない=vというIUCNのレッドリスト判定を無視する誤ったイメージを一人歩きさせようと目論んだのです。
 水産庁と御用学者の許しがたいレッドリスト詐欺*竭閧ノついての詳細はこちら。

■徹底検証! 水産庁海洋生物レッドリスト
http://www.kkneko.com/redlistj.htm

 いずれにしても、野生生物の絶滅の意味については注意深く見ていく必要があります。
 確かに、70〜80年代当時、商業捕鯨モラトリアムを求める国際世論が盛り上がる中で「クジラを絶滅から救え!」というフレーズがしばしば用いられてきました。今以上にクジラの生態・生息状況に関する情報が乏しく、生物多様性の概念、その保全の意義がまだ浸透していなかった時期です。一方で、旧ソ連や日本による大規模で悪質な密猟もまだ発覚していませんでした。当時IWC科学委員会の科学者たちが全鯨種のモラトリアムに否定的だったのは、乱獲を食い止める実効性を発揮できなかった水産資源学オンリーの立場で、生物多様性保全・生態系サービスの認識が欠如し、密猟・規制違反に関する情報もなかったためです。
 基本的に野生生物はすべて、「絶対絶滅しない」などと断言・保証することはできません。
 IUCNレッドリストでランクが一番低いLC(Least Consern):軽度懸念種(あまり適切な和訳とはいえないのですが)は、将来絶滅する恐れが低いということであり、決してリスクがゼロであることを意味しません。
 気候変動(地球温暖化)や開発、上掲で取り上げた(八木氏自身も取り上げている)化学物質汚染や船舶交通の増加、音響妨害などの要因は、十分な定量的評価ができていないものの、すべての鯨種≠フ生息に影響をもたらし、絶滅リスクを引き上げているのです。
 重要なポイントは2つ。
@日本の捕鯨・イルカ猟対象種ももちろん♀C洋環境悪化の影響を受ける。
A日本の捕鯨・イルカ猟の捕殺による直接的なダメージは、海洋環境悪化によるダメージにさらに付け加えられ、場合によっては掛け合わされる。

■クジラたちを脅かす海の環境破壊
http://www.kkneko.com/osen.htm

 常識がある人なら、@にすぐ思い至るでしょう。ホシナ氏や柏ニャンニャウェーさんのように。
 ところが、八木氏の場合は「甚大な被害を無視出来ない」と言ったそばから、自分で無視することが平気で出来てしまうわけです。

 今日の環境問題においては、複数の要因が互いにどのように作用し合うかを考慮しないわけにいきません。
 日本の小型捕鯨の対象であるツチクジラ、太地等でのイルカ猟の対象であるハンドウイルカやコビレゴンドウ、オキゴンドウ等は人為的な音響妨害にとりわけ敏感です。ヒゲクジラも聴覚が優れているうえに音声によるコミュニケーションに依存する社会性を持つため、やはり音響妨害の影響を受けます。日本はそれらの鯨種に対し、騒音被害(米軍との合同演習等を含む)+捕鯨という二重のダメージを与えているわけです。あるいは騒音被害×捕鯨。
 ミンククジラ、ザトウクジラなどのヒゲクジラが索餌の際に頼りにする硫化ジメチルは、プラスチック片によっても生成されるため、海鳥同様誤食するリスクが非常に高く、有害物質の蓄積による長期的な影響が懸念されます。つまり、日本がやっているのはプラスチックごみ+捕鯨(プラスチックごみ×捕鯨)。G7憲章署名拒否の日本はプラスチックごみの影響もさらに上乗せしたといえますが。
 実は、捕鯨サークルの御用学者らの言い分は、「健康なうちに殺しちゃうんだから考えなくていい」というもの(聞いた一般の皆さんはびっくりするでしょうけど・・)。しかし、もっとも頑健といわれるPBRやRMPも現時点の目視個体数/捕獲数(それも数年・十数年置き)をもとにしたフィードバックでしかありません。しかも、日本やノルウェーは捕獲数を目いっぱい増やせるよう勝手にパラメータをいじっているわけですが。
 有害化学物質の蓄積による影響は表面化するまでに時間がかかり、死亡に至らなくても繁殖率を低下させる形で作用します。また、有害物質を回収するなどしてすでに汚染された海洋を元の状態に復元するのは、陸上・陸水よりはるかに困難です。「気づいたときには手遅れ」ということになりかねません。捕鯨は明らかに、海洋環境悪化に苦しめられる鯨類から、汚染に対する耐性、回復に必要な体力≠ニ時間的猶予を奪っているのです。
 IUCNレッドリストで絶滅危惧種に分類されないからといって安心できない要素はもう1つあります。
 それは、そもそも絶滅のおそれのなかった種を乱獲によって絶滅寸前に追いやり、規制されてもなおその裏をかいて、絶滅危惧の度合を高めてきた捕鯨産業・鯨肉市場の体質にあります。
 以下は、これも少し前の記事ですが、主要な反捕鯨NGOが捕鯨に反対する理由。あくまで捕鯨に対する反対理由であって「食べるな」ではないので、日本語の見出しには問題がありますが。

■英国で活動する環境保護団体の皆様に聞きました「クジラを食べるな」その理由
http://www.news-digest.co.uk/news/features/2020-whaling-antiwhaling.html

 どこも、「すべての鯨種が今現在(IUCNレッドリストにおける意味での)絶滅危惧状態にある」という主張はしていません。そのような主張をしているのは「日本だけ、捕鯨だけが残虐」と同じく、八木氏の脳内にあるバーチャル反捕鯨団体だけ。
 いずれも、日本の捕鯨を許せば「また絶滅に追いやられてしまう」という趣旨。そうした懸念を抱かれるのは実にもっともなこと。
 日本の捕鯨は世界に「まったく信用されていない」のです。持続可能な水産業で先進各国に大きく遅れを取っていることも含め。
 モラトリアム成立後も、日本の捕鯨業界が直接間接に関わった密輸・密猟は後を断ちませんでした。
 捕鯨会社自身が公式報告の数字をごまかしていた事実が発覚した他、日本の大手捕鯨会社の関係者がバイヤーとして関わった海賊捕鯨船は絶滅危惧種のシロナガスまで密猟していました。
 絶滅危惧種として早期に捕獲が禁止されたコククジラ・セミクジラで、密猟された疑いが濃厚な死体が座礁し報告された事例もあります。
 最近でもアイスランドの捕鯨業者がシロナガスとナガスのハイブリッドを捕獲していることが発覚、日本を含む研究者が連名で懸念を表明しました。ハイブリッドと外的特徴の変わらない禁止対象種のシロナガスが誤って捕殺されるリスクはきわめて高いといえます。また、違反の発覚を恐れて投棄による証拠隠滅が図られたことがはたしてなかったかも、甚だ疑わしいところ。
 そして何より、つい4年前まで美味い刺身の安定供給目的で行われ続けていた国際法違反の南極海調査捕鯨。CITES規約違反(現在チェックメイトの段階)の現北西太平洋調査捕鯨──。
 八木氏は次の段落でいけしゃあしゃあと事実を捻じ曲げていますが。
 日本の捕鯨業界を単純に美化し、過去を粉飾する八木氏のような歴史修正主義者が出てくればなおのこと。悪いことは全部外国の所為にしてしまう欺瞞に満ちたプロパガンダ映画『ビハインド・ザ・コーヴ』によって、日本の信用度はさらにガタ落ちしたといえます。以前は河野談話に相当する「もう過去のような乱獲はしません」という反省の弁も聞かれていたのですが・・。
 国際社会が「これなら大丈夫だね」と認められる、これまでのような違法捕鯨のリスクをすべて除去できる完璧な管理システムについて合意することなしに、「商業捕鯨をやらせろ」と要求すること自体、「盗人猛々しい」の一語に尽きるのです。

 続いて、トンチンカン八木節炸裂の件・・やっとここまできましたか・・。もう一度引用し直しましょう。

例えるなら、鳥類の中でトキが絶滅しかけているからといって、カラスも同様だと考えるようなものだ。鯨も種類によって少ないものもいれば、豊富なものもいるのだ。(引用)

 元川元水産庁長官の「美味い刺身≠フ安定供給」も歴史に残る見事なオウンゴール発言でしたが、これまた強烈ですね。
 日本ではクジラ好きよりずっと層の厚い野鳥好きの皆さんは、この一文を見てきっと目を丸くされていることでしょう。ここまでバカな奴がいるのか、と。
 一言でクジラといった場合、一般の日本人の方がイメージとして思い浮かべる種は、セミクジラかマッコウクジラあたりでしょう。最近ではザトウクジラの方が多いでしょうか。食べる方専門の方はミンククジラかもしれませんが・・。イルカならやっぱりハンドウイルカ(バンドウイルカ)でしょうね。
 一言でカラスといった場合、一般の日本人の方がイメージとして思い浮かべる種はハシブトガラスないしハシボソガラスでしょう。小学校中・高学年なら、はっきり種名を言える子もきっと多いに違いありませんが。
 広義・狭義の定義の差はあれど、「クジラ」、「イルカ」という種≠ェいないのと同様、「カラス」という種≠ヘいません。3つとも総称≠ナす。
 クジラ、すなわち(鯨偶蹄目)クジラ下目(Cetacea)という分類群に属する種が今わかっている範囲で約86種(研究者によりますが、ここは八木氏/石川氏に合わせましょう)。
 カラスとは広義には(スズメ目)カラス科(Corvidae)、狭義にはカラス属(Corvus)の鳥類(鳥綱:Aves)を指します。鳥好きはみんな知ってのとおり。
 カラス科は25属128種、カラス属は46種ほど(〜ウィキペディア)。
 このうちカラス属に限っても、その中にはCRが2種(バンガイガラス、クバリーガラス)、ENが1種(フロレスガラス)、VUが1種(ヒスパニオラガラス)が含まれ、準絶滅危惧(NT)に該当する種も数種います。さらに、ハワイガラスに至っては野生下絶滅(EW)。原因はよくわかっていませんが、寄生虫病の影響が指摘されています。飼育下で繁殖された個体の再導入が何度か試みられ、2017年までに放鳥された個体のうち11羽は順応したとみられていましたが、今年発生した噴火の影響が懸念されています。地域絶滅後中国から再導入されたトキや、野生下絶滅後再導入されたコウノトリによく似た境遇(絶滅のおそれはさらに高い)。

■Rare Hawaiian crows released into native forests of Hawai’i Island

 カラスの中にもトキのように絶滅しかけている種がいるにもかかわらず、この御仁は「カラスはカラスというだけでトキと違って絶滅しない」と言いきってしまえるのです。これは実に驚くべきことです。
 何度も繰り返しますが、現在海外の反捕鯨活動家=A環境保護団体には、クジラの種すべてが(IUCNの定義の上で)絶滅危惧種であると唱えている者はいません。八木氏の脳内のバーチャル反捕鯨活動家だけ。
 しかし、反反捕鯨論者の中には間違いなく同列の間違いを犯している人物がいるのです。「絶滅しそう」より「絶滅なんかしない」の方がよっぽど有害でひどい過ちですが。しかも、その人物は捕鯨協会・水産庁・鯨研の関係者と懇意にし、外務省の予算を受け取り、ブラジルまで押しかけてせっせと広報活動に従事しているのです。
 八木氏が石川氏に事前に原稿のチェックをお願いしていたら、さすがにマズイと思って赤を入れてくれたでしょうにね(彼じゃそのままスルーしたかもしれないけど)。
 実は筆者はカラス、大好きなんですよ。当ブログの読者さんやフォロワーさんはご存知の方も多いでしょうが。
 筆者が身近でよく観察できるのはハシブトガラス、ハシボソガラス、オナガですが、カケスやホシガラスも森・山で見かけたことがありますし。仕事で疲れたときには、彼らの営巣地がある家から40分ほど離れた森へ行き、夕空を円舞する彼らの幻想的な姿に心を和ませたものです。
 全身黒色に包まれた美しい鳥──ただの黒ではなく、構造色の羽毛はときに鉱物のような光沢を放ちます。
 鳥類の中でも夫婦の絆がとりわけ強く、発情期に限らず行動をともにし、ペアを観察していると微笑ましい仕草につい口元がほころんでしまいます。
 ゾウやクジラに負けないバリエーションを持つ音声言語で社会的なコミュニケーションを交わし、遊びを開発する能力に長けることでも広く知られています。
 ヒトに迫害を受けながらも適応力で切り抜け、それでもなおヒトのそばでたくましく生き抜いてきた鳥。
 スカベンジャーとして生態系で大切な役割を担ってきたのに。東洋では八咫烏:神聖な神の遣いとして崇められていたはずなのに、伝統なんかほっぽりだして害鳥扱いされて。
 なんて不憫な鳥なんだろうと同情せずにはいられません。


 一体何が八木氏をして「いつのまにか種全体のことと捉えさせてしまった」のかはわかりません。よっぽどカラスという生き物が嫌いで、カラスという生き物についてほんの少しでも勉強しようという気さえかったのでしょうね。クジラと同じく。
 「ビハインド・ザ・コーヴ」上映会でのトークショーや観客とのやりとりでもぶっ飛んだ発言が飛び出しますが、とある上映会では、捕獲したイルカの親子を引き離すことについて「かわいそうだとは思うが、ペット店の犬猫と何の違いがあるのか」と平然と言ってのけたそうです。水族館・動物実験・レッドリスト等々と同じように、愛玩動物行政においても日本と他の先進国の間には大きな隔たりがあり、その具体例としてよく挙げられるのが生体販売の8週齢規制問題。動物愛護に関心のある方ならみな知っていることなのですが。

■「捕鯨ヨイショ度」診断テスト・パート2
http://www.kkneko.com/sindan2.htm

 ああ、このヒトは本当に、本当に生きものが嫌いなのだなあ・・とため息が漏れます。
 クジラの敵であり、カラスの敵であり、すべての生きものの敵なのだなあ・・と。
 否、このとんでもない生物音痴を広告塔として祀り上げて利用している日本捕鯨協会こそ、すべての生きものの敵に他なりません。
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posted by カメクジラネコ at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

トンデモ竜田揚げ映画監督八木景子氏はクジラよりカラスがお嫌い?−1


◇捕鯨票買ODA最新記事

■捕鯨推進は日本の外交プライオリティbP!? (6)セントビンセント・グレナディーンのケース
http://www.kkneko.com/oda6.htm

 ホームページに最新の情報を加えた解説記事を掲載しましたのでぜひご一読くださいm(_ _)m

◇究極の生物音痴・トンデモ竜田揚げ映画監督八木景子氏はクジラよりカラスがお嫌い?(その1)
 夏になると増えるものといえば、蚊、熱中症患者、ビールの消費量、後は……そうそう、平和について考えさせられる季節だけあって(?)歴史修正主義者/陰謀論者も挙げられるでしょうか。数が増えてるというより、声がでかくなるというのが正解でしょうけど・・。
 過去記事でも何度か取り上げてきましたが、よその国の謀略のせいにしたり、過去を正視せず事実をねじ曲げ美化したり、都合のいい相対主義を持ち込んで自己正当化するのは歴史修正主義者と反反捕鯨論者の共通属性。だからこそ、この2つの層はもろにカブッているわけですが。
 そんな夏という季節にふさわしい(?)捕鯨問題の解説記事が登場。

■海に親しむこの季節に考えるクジラ・そしてマリンデブリのこと (8/10, 日本気象協会)
https://tenki.jp/suppl/kous4/2018/08/10/28351.html

 論者はホラー漫画家ホシナコウヤ(小川幸辰)氏。掲載されたのは、気象情報サービスを手がける一般財団法人・日本気象協会のウェブサイト。同協会は気象庁を外局に持つ国交省所管の元公益法人ですが、捕鯨サークルと特に関係があるようにも思えません。お天気関連のコラムなんていくらでも作れるでしょうにね・・。
 残念ながら、このオピニオン記事には非常に多くの誤謬が含まれています。まあ、主なソースが水産庁の『捕鯨問題の真実』なので、仕方ないっちゃ仕方ないのですが・・。
 権威ある国の機関であるハズの水産庁の広報資料『捕鯨問題の真実』ですが、前南極海調査捕鯨(JARPAU)が国際司法裁判所(ICJ)に国際法違反、「美味い刺身≠フ安定供給目的の違法な商業捕鯨」と認定されるに製作・公表されただけあって、まあデタラメばっかりの代物。真実ならぬポストトゥルースです。
 以下、ホシナ氏が付け加えた尾鰭の部分も含め、ざっと問題点を指摘しておきましょう。

室町末期から江戸時代初期にかけて、船団による捕鯨が徐々に形成され始め、17世紀末には紀州(和歌山県)の太地で投網による狩猟と本格的な捕鯨船団の組織が発足し、近世〜近代捕鯨が幕開けします。船団捕鯨は、長崎、土佐、東海、関東など各地に広がっていきます。引用)
ペリーの日米通商条約も、捕鯨のための補給という理由のためでした。日本の古式捕鯨が適正な漁獲量であったことは、日本の近海にクジラが多く居たことからもわかります。(引用)

 組織的な古式捕鯨(突取式)の発祥地は太地ではなく尾張。太地等紀州や関東には尾張から技術が伝えられ、各地で乱獲のため瞬く間に捕獲が激減、鯨組間の競合や途絶が起こります。そんな状況を打開してターゲットをザトウクジラにまで拡大すべく開発されたのが網取式で、太地発というのが有力仮説。沖合での外国捕鯨船操業の影響も一部にはあるものの、特にコククジラ、セミクジラ、ザトウクジラに関しては、日本自身の捕鯨による乱獲が枯渇の主因であるのは史料からも明らかです。

■哀しき虚飾の町・太地〜影≠フ部分も≪日本記憶遺産≫としてしっかり伝えよう!
http://kkneko.sblo.jp/article/175388681.html
■民話が語る古式捕鯨の真実
http://kkneko.sblo.jp/article/33259698.html

 ちなみに、ペリー来航の真の動機については興味深い説も。まあ、たかが一産業にすぎない捕鯨のためってのは、国が外交で動くには弱すぎますものね・・。

■黒船来航の真意を知らない人に教えたい本質
https://toyokeizai.net/articles/-/222796

日本は一貫して捕鯨については欧米の後追いをする控えめな後進国だったのです。(引用)
 
 真っ赤な嘘です。が、先に以下の記述の問題点から。

こんな乱獲をして、問題が出てこないわけがありません。第二次大戦後、世界的な乱獲によるクジラ頭数の減少枯渇が問題となって、適切な捕鯨環境を整備する目的で、1948年、IWC=国際捕鯨委員会(International Whaling Commission)が発足します。(引用)

 ここはソースにない、ホシナ氏が勝手に付け加えてしまった部分ですが、間違いです。IWCは戦前のジュネーブ捕鯨条約/国際捕鯨協定を継承・発展する形で定められた国際捕鯨取締条約(ICRW)のもと設立した機関で、当初捕鯨産業を国際ルール下に置くという以上の意味合いはありませんでした。IWCのもとでも科学的管理はなされず、乱獲は手遅れになってモラトリアムが叫ばれるまでずっと続きました。なお、セミクジラやコククジラは戦前の段階で捕獲禁止。日本は抵抗して戦前の協定には加わりませんでしたが。

■真・やる夫で学ぶ近代捕鯨史
http://www.kkneko.com/aa1.htm

かつて、IWCが発足する以前の20世紀前半には、過当競争が頂点に達し、各国がクジラの捕獲頭数を競ったために「捕鯨オリンピック」などと言う言葉も使われていたそうです。最盛期の1930年にはなんとシロナガスクジラが3万頭も捕獲され、以降シロナガスクジラは激減すると、今度はナガスクジラを乱獲し始めるという残酷さ。特にノルウェーとイギリスのナガスクジラ類の乱獲は、1960年代まで続きました。ナガスクジラが激減し、捕獲が禁止されると、今度はロシア(当時はソ連)がザトウクジラの乱獲を始めます。1950年代から70年初頭にかけて、多い年には一年で15000頭ものザトウクジラが乱獲されました。それほどの資源量が、人類にとって本当に必要だったのでしょうか。(引用)

 総枠だけ決めて後は早い者勝ち≠フオリンピック方式は後進的な日本の漁業の問題点としてしばしば指摘されるところですが、IWCのもとでも典型的なオリンピック方式が1950年代まで続き(科学的根拠がなく乱獲に拍車をかけたシロナガス換算:BWU制はその後も継続)、国別捕獲枠が設定された後は日本の捕鯨会社同士で他国の枠を買い取り、熾烈な競争が繰り広げられるに至ります。
 近代捕鯨のピークは第二次世界大戦を挟んで2つあるといえます。シロナガスクジラ中心だった戦前の捕鯨オリンピック前半は、確かに日本は規制に参加しない後発国で、ノルウェーから首位の座を奪ったのはやっと1941年のことでしたが、戦後の最盛期では日本が捕鯨オリンピックの主役でした。シロナガスのピークはごく短期でしたが、ナガスクジラの捕獲数は1950年代後半から1960年代初めにかけて3万頭台が続き、60年以降の捕獲数トップはすべて日本が占めます。要するに、クジラたちを最後まで追い詰め、引導を渡したのが捕鯨ニッポンの役割だったわけです。
 トータルの捕獲数では、日本はノルウェーに次ぐ2位、つまり乱獲五輪で銀メダルを獲ったわけですが、最終的に日本が南極海乱獲捕鯨の覇者≠ノ立ったといえるでしょう。現場の砲手など捕鯨関係者自身が南極海の明らかな荒廃を肌で感じながら、なおも手を緩めることが出来なかったという事実がそれを裏付けています。

■乱獲も密漁もなかった!? 捕鯨ニッポンのぶっとんだ歴史修正主義
http://kkneko.sblo.jp/article/116089084.html

 捕鯨オリンピックの三強はノルウェー・日本・ロシア(旧ソ連)でした。3国とも現捕鯨国(ロシアは現在は先住民生存捕鯨のみ)。
 なぜホシナ氏は「一貫して捕鯨については欧米の後追いをする控えめな後進国だった」という完全に誤った情報を発信してしまったのでしょうか?
 犯人は水産庁
 近代捕鯨史を学んでいる方であれば、ホシナ氏の記述のおかしな点に気づかれるでしょう。そう、「ノルウェー・イギリスのナガスクジラ乱獲の後、ロシアがザトウクジラの乱獲を始める」という部分。
 水産庁史料『捕鯨の真実』のp19、世界の捕鯨の解説図に国別捕獲頭数の推移を示したグラフが掲載されていますが、どういうわけか、シロナガスクジラとザトウクジラの2種しかありません。日本がノルウェーと並んで戦後の乱獲の主犯となったナガスクジラがないのです。その事実は、反反捕鯨が代替わりして歴史修正主義が蔓延する以前は、捕鯨賛成派の間でも一定の理解があったはずなんですがねえ・・。
 さらに、非常に奇妙なことに、ザトウクジラのグラフの方には、国別頭数といいながら、主要な捕鯨国であるノルウェーが見当たらないのです。
 ザトウクジラは1900年代後半から1910年代前半にかけ年間数千頭捕獲され、1910年からの4年間は1万頭を越えていました。捕獲数トップがノルウェー。捕鯨問題ウォッチャーなら知ってのとおり、ザトウクジラは近代捕鯨初期にターゲットとされた種。それ故、捕獲が禁止されるのも1963年(南極海以外は1966年)とシロナガスクジラと同じタイミングで、ナガスクジラより先なのです。つまり、合法的な@衰lのピークは戦前
 すなわち、シロナガス、ザトウとも、1960年代後半から1970年代の捕獲はただの乱獲ではなく、旧ソ連による違法な密漁なのです。1947年から1972年にかけて、旧ソ連が実際に捕獲したザトウクジラの数は48,651頭。しかし、公式に報告されたのは2,820頭で、その6%にも満たない数字でした。事実が発覚したのは1990年代に入ってからですが、おかげでロシアはトータルの捕獲数で英国を抜いて3位に。「ドーピングで獲った銅メダル」みたいなもの。
 水産庁がナガスクジラのグラフ、ザトウクジラ捕獲数のノルウェー分、捕獲統計の修正を余儀なくしたロシアの違法捕鯨についての説明を完全に省いたため、ホシナ氏の誤解を生んだのでしょう。近代捕鯨史についてきちんと勉強していれば避けられた誤解とはいえ。
 実は、NOAAのレポートで悪質な規制違反を行った国としてロシアとともに名指しされたのが日本でした。捕鯨オリンピックのドーピング2大国。水産庁がだんまりを決め込むのも当然かもしれません。決して褒められた話じゃありませんが。
 戦前の協定未加盟、戦後の監督官ぐるみ違反、大手捕鯨会社がバックに絡んだ海賊捕鯨船シエラ号事件、その後も続く密漁・密輸と、連綿と続く違法・脱法体質で日本はまさに一貫して≠「たとはいえます。
 『捕鯨の真実』の編纂に携わった捕鯨セクションの担当水産官僚が、ナガスクジラの捕獲数グラフや規制違反の情報を伏せ、国民の目から隠そうとしたことに対しては、たとえ日本捕鯨業界や自民党捕鯨議員連盟等に忠誠を示し奉仕する意図があったとしても、卑劣にして狡猾≠ニの謗りは免かれません。

調査によるとたとえばナガスクジラは12000頭(引用)

 この数字(南半球)は日本政府が勝手に主張しているだけで、IWC科学委員会での合意は得られていません。同種は1920年には南半球に30万頭以上はいたと推測されており、わずか4%にすぎません。捕獲禁止から40年以上の年月が経つにもかかわらず、回復は遅々として進んでいないのが事実なのです。増えているという日本の主張は、最高級鯨肉部位の1つとされるナガスの尾の身″Dきの永田町の食通のために年間数頭捕獲してきた調査捕鯨のデータに基づいています(目視含む)。『捕鯨問題の真実』のp9にグラフが載っていますが、2つの海区を2年置に調査したデータのうち、V・W区側では2005/06年から2007/08年にかけて大幅に減少しているのに無理やり指数近似を当てはめています。
 いずれにしても、ナガスクジラはIUCNの定義上疑いを差し挟む余地のない絶滅危惧種であり(EN:絶滅危惧TB)、絶滅危惧に追いやった主犯が日本の捕鯨業界といっていいのですが、その日本はあろうことにもワシントン条約(CITES)で同種を留保しているのです。

■Balaenoptera physalus|IUCNレッドリスト
http://www.iucnredlist.org/details/2478/0

ミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラのこの頭数を維持した場合に、そのうちの4%ほどを毎年漁獲した場合、それらのクジラが食料とするイワシ、サバ、カツオなどの漁獲量が増加する、というシミュレーションも出ています。(引用)

 内外の研究者も含めて強い批判のあるトンデモ鯨食害論の中でも最悪の主張。筆者は該当論文を存じ上げないのですが、確かに『捕鯨問題の真実』p14には出典がまったく明記されていない当該グラフが載っていますね・・。生態系モデルを使わないと出てき得ない数字ですが、少しパラメータをいじるだけでまったく異なる結果が出力されるのが生態系モデルの都合のいい≠ニころ。日本の捕鯨御用学者が掲げる生態系モデルに対しては、種数が少なすぎ、しかもほとんど商業漁業対象種で占められる、肝心のシャチが考慮されていない、海鳥・鰭脚類等より代謝・繁殖率の高い競合種が考慮されていない(クジラを間引く結果もっと魚が減る)、クジラがいるおかげで栄養塩類の水平・鉛直分布が変化し漁業生産を増加させる効果が考慮されていない、気候変動・海洋酸性化・有機塩素/重金属/プラスチック汚染が鯨類の再生産に与える影響も考慮さていないなど、問題を数え挙げればきりがありません。クジラを獲ればビンナガが増えるに至っては、相当ろくでもないパラメータ調整を行ったことが火を見るより明らかで、ろくでもないシミュレーションを提供した人物は研究者の風上にも置けない輩です。
 トンデモな食害論が仮に事実であれば、日本周辺では魚がガンガン増えまくっていいはずですが、現実には近海の主要漁業対象種の半数が資源枯渇状態で、FAOの将来予測においても唯一漁業生産が大幅に減少している有様。一方、鯨類を手厚く保護しているので魚が激減していて然るべき米国・オーストラリア・ニュージーランド等の反捕鯨国は、水産資源の持続的管理に関して日本よりずっと先行しているのです。乱獲と水産行政の無策無能をクジラの所為にして憚らないのは、水産庁の許しがたい欺瞞です。
 なお、トンデモ食害論・生態系アプローチの問題点については以下を参照。
oomachigai.png
■持続的利用原理主義すらデタラメだった!
http://www.kkneko.com/sus.htm
https://yarchive.emmanuelc.dix.asia/1834578/a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa_1/board47126.html
■びっくり仰天、都合の悪い事実に蓋をする非科学的な水産庁広報資料
http://kkneko.sblo.jp/article/176346053.html
■捕鯨に関する資料集|3500-13-12-2-1
http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-152.html
■クジラを捕らないと魚はいなくなるのか?|トゥゲッター
https://togetter.com/li/13920
■「クジラが魚食べて漁獲減」説を政府が撤回|JANJANニュース(魚拓)
http://megalodon.jp/2009-0713-2240-37/www.news.janjan.jp/living/0906/0906290018/1.php

そして家畜を飼育して食べるよりも、野生生物を適切な量を守り狩猟するほうがエネルギーコストや食料分配の上からも正しいことは言うまでもありません。(引用)

 これも物事を単純化しすぎた誤った主張です。言うまでもなく・・と言いたいところですが。
 少なくとも莫大な燃料を消費する遠洋漁業・遠洋捕鯨には当てはまりません。狩猟では現在の地球人口のごく一部しか養えず、食料分配の観点からはむしろ問題大ありです。菜食・昆虫食の方がはるかに現実的。再生産率の高い魚種を対象にした沿岸漁業ならまだ貢献できるでしょうが。

■鯨肉は食糧危機から人類を救う救世主?
http://kkneko.sblo.jp/article/174477580.html
■捕鯨は牛肉生産のオルタナティブになり得ない
http://www.kkneko.com/ushi.htm

 ──とまあ、さんざんにこき下ろしてきましたが、その後に来る文章はなかなかの卓見です。ホシナ氏は最低限のバランス感覚はお持ちのようですね。誰かさんと違って・・。

しかし、「クジラ食は日本の文化だ」と言うには、現代日本の現実と食い違う点が多くあります。和牛の肥育のために高カロリーの飼料を与え霜降りの高級肉を作り、普段から牛肉や豚肉、鶏肉を常食にしている日本人が、クジラを食文化だ、と果たして胸を張って言えるのでしょうか。
また、クジラなどの海洋動物の多くが苦しんでいるマリンデブリ、すなわち海に投棄された人工ゴミの問題があります。プラスチックやビニールなどの石油生成品は、自然で溶解せず、クジラが大量にそれらを飲み込んで健康を害し死にいたる、ということが起きています。既に世界60カ国以上の国でプラスチック販売への規制法が行われ、EUでは使い捨てプラスチックの販売禁止法案が策定されました。今年6月のG7サミットでは「海洋プラスチック憲章(Ocean Plastics Charter)」が発議されました。これは、世界的環境問題となっているプラスチックごみによる海洋汚染にG7として対策に乗り出すことを宣言するものでしたが、日本とアメリカは国内産業への影響を理由に拒否しました。
本当に海洋資源を守ることをうたうのならば、マリンデブリ問題も日本が主導するべきでしょう。そうなってはじめて、日本の捕鯨への立場は、正当なものであると証明できるのではないでしょうか。(引用)

 ついでに、ホシナ氏と同意見の一般の方のツイートもご紹介。これこそが正常な反応というものでしょう。

https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1010190323128008704
えーっ…海洋プラスチックゴミには目をつぶる一方で、これは引くわ(引用)

 そして、以下は同オピニオン記事で紹介されている報道へのリンク。他のリンクソースはバリバリ捕鯨サークル当事者のものですが、こちらは論者本人がきちんと海洋環境の問題にアンテナを張り巡らし、このニュースに触れて、捕鯨サークルの主張に対し違和感を感じられたということでしょう。誰かさんと違って・・。こちらのオンライン記事からも一部引用しておきます。

■「G7マイナス2」 海のプラごみ対策、日米はG7文書に署名せず (2018/6/12, ニュースフィア)
https://newsphere.jp/politics/20180612-2/

しかし、環境保護団体グリーンピースなどは、拘束力のない任意の合意で問題解決は難しく、青写真が描かれたことは評価するものの、計画自体は生ぬるいと述べている(ドイチェ・ヴェレ)。(引用)
UNEPによれば、すでに世界60ヶ国以上で使い捨てプラスチック製品の使用禁止や課税が行なわれているというが、ドイツのメルケル首相は、欧州だけや各国レベルでの取り組みでは十分ではないと述べている(ドイチェ・ヴェレ)。(引用)

 では、なぜこのような動きが起こったのでしょう? それは、反捕鯨団体として悪名(?)高いグリーンピース(GP)やクジラ・イルカ保護協会(WDC)が精力的に啓発キャンペーンを展開して一般市民に情報を提供し、スタッフ・ボランティア会員・賛同する著名人が自ら先頭に立ってビーチクリーンアップ等の活動に参加し、さらに各国のマスコミ・政治家・政府職員に強力かつ粘り強く働きかけたからこそ、課税や禁止法制定等の具体的政策やG7での憲章制定という形で結実したのです。
 最近では、これらの団体のツイッターやフェイスブックでも、捕鯨問題(日本以外を含む)以上に気候変動や海洋汚染に関する問題提起が多くなっています。捕鯨に触れるツイートはたぶん10回に1回もないでしょう。
 こちらはWDCの制作した、プラスチック海洋汚染問題についての啓発サイト。子供にもわかりやすく問題を伝えられるよう動画等を駆使した、大変素晴らしいコンテンツですね。センスの高さにもうならされます。

■NOT WHALE FOOD
https://notwhalefood.com/

 同じくこちらはGP日本支部のサイト。ロビイングとその成果としての各国政府・企業の声明も具体的に示されています。

■プラスチック・フリーの暮らしをつくろう!
http://plasticfreelife.jp/about-us/
あなたのような一人ひとりからの支持を得て、 韓国と台湾の政府にマイクロプラスチック製品を禁止させることに成功しました。これは大きな勝利です! また、エスティローダー、アムウェイ、LG、コーセーなどの国際的な化粧品ブランドが、 マイクロビーズ製品を段階的に廃止すると発表しました。香港の小売り流通業A.S.ワトソンズと759ストアも、マイクロビーズ製品を段階的に廃止することを約束しています。 (引用)

 日本政府、コーセー以外の日本の企業の名がないのは残念なことです。ホシナ氏の指摘するとおり、これでは日本の捕鯨への立場が正当なものだとは到底言えませんね。
 プラスチックごみ規制に向けた国際的な動きは、もちろん一朝一夕に始まったものではありません。マイクロプラスチック汚染の実態が明らかになってきたのは近年のことですが、廃プラスチックが鯨類や海鳥・ウミガメを始めとする海洋生物に与える影響については前世紀から警鐘が鳴らされ続けてきました。昨年のG7環境相会合の場でも海洋プラスチックごみ問題はパリ協定とともに俎上に上りました。さらに、以下は昨年の国連広報センターのプレスリリース。

■国連海洋会議が開幕: 海洋環境破壊を食い止めるための自主的コミットメントが本格化
http://www.unic.or.jp/news_press/info/24623/
各国は「行動の呼びかけ」の採択により、ビニール袋や使い捨てプラスチック製品をはじめ、プラスチックとマイクロプラスチックの利用を減らすための長期的かつ本格的な戦略の実施に合意します。(引用)

 日本国内で初めて使い捨てプラスチック製ストロー廃止(2020年までに)を掲げたのが外食大手すかいらーく。海外とは逆に、廃止に批判的な$コが挙がっているみたいですが・・。なお、「ヤフーニュース個人」については後述。

■すかいらーくなど、日本でプラスチック製ストロー廃止の動きと、アメリカや海外の取り組み (8/23, 安部かすみ|ヤフーニュース個人)
https://news.yahoo.co.jp/byline/abekasumi/20180823-00094175/

 対する日本の取組はどうなっているでしょうか? G7に合わせる形で今年6月に改正海岸漂着物処理推進法が成立しましたが、中身は具体的な数値目標や罰則規定等が何もない単なる企業へのお願い≠ノ留まっており、実効性があるとは到底いえません。G7憲章署名拒否と合わせ、使い捨てプラスチック製品の製造・流通の段階的禁止にまで踏み込んでいるEU等に比べ、後ろ向きの姿勢ばかりが目立ちます。
 プラスチック汚染についての研究や海外の動向については、環境ジャーナリストの第一人者である共同通信の井田徹治記者が丁寧な記事を何本も書いてくださっています。日本にも事実を伝えようと尽力してくれるプロのジャーナリストがいてくれるのは、まだせめてもの慰めといえますが。

■プラごみ年3億トン発生、損害は1兆円超 OECD (8/6, 共同配信記事)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33836590W8A800C1CR0000/
■深海魚70%にプラスチック粒子 大西洋、水深600メートルまで (7/14, 共同通信)
https://this.kiji.is/390786503330612321?c=39546741839462401
■北極の海氷にプラ粒子 世界最悪レベルで蓄積  (5/21, 共同配信記事)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30748970R20C18A5CR0000/
■視点:署名拒否は責任放棄だ (6/22, 京都新聞)
https://twitter.com/TETSUJIDA/status/1010333956133158912/photo/1

 このように海洋プラスチック問題については、何周分も遅れた日本を除き、国際的な規制の動きが加速しつつあります。クジラたちはプラスチック汚染以外にも様々な海の環境破壊に直面していますが、GPやWDCといった環境保護団体は、やはりプラスチックごみ問題と同じく、市民の啓発や各国政府・国際機関へのロビイングに努めています。捕鯨問題以上に。
 こちらはWDC、GP同様国際的な反捕鯨運動を牽引してきた天然資源保護協議会(NRDC)及び国際動物福祉基金(IFAW)の協力のもとに制作されたドキュメンタリー映画『Sonic Sea(ソニック・シー)』。ディスカバリーチャンネル以外のカナダCBC等各国のTV局でも放映され(残念ながら日本のNHKはまだですが)、全米テレビ芸術科学アカデミー主催のニュース&ドキュメンタリー・エミー賞の2部門で受賞しています。映像としても大変見応えのあるクオリティの高い作品です。画質・音質に難のある誰かさんのトンデモプロパガンダ映画と違って・・。

■Sonic Sea
https://www.sonicsea.org/
■“Sonic Sea” Wins Two Emmy Awards | NRDC
https://www.nrdc.org/media/2017/171016-1

 『Sonic Sea』以外にも、海外では鯨類を取り巻く環境の悪化について取り上げ、一般市民に訴えるドキュメンタリー映画・TV番組が数多く製作されてきました。そのうちのほんの一部をご紹介。

■Blue Planet I | BBC
https://www.bbc.co.uk/programmes/b008044n
■Blue Planet II | BBC
https://www.bbc.co.uk/programmes/p04tjbtx
■How We Can Keep Plastics Out of Our Ocean | National Geographic
https://www.youtube.com/watch?v=HQTUWK7CM-Y
■Ocean Rescue | Sky
https://skyoceanrescue.com/
■A Plastic Ocean
https://plasticoceans.org/
■The Islands and The Whales
http://theislandsandthewhales.com/

 で、ここからがいよいよ本題・・。
 日本気象協会/ホシナコウヤ氏のオピニオン記事は、基本的に捕鯨推進サイドの発信する情報をもとに書かれた捕鯨ヨイショ記事には違いないのですが、海洋環境保護に後ろ向きな日本の姿勢についても忌憚のない意見を述べられている点は高く評価できます。
 こちらに比べれば百倍も千倍もマシに思えるほど……。

■クジラの情報 正しく伝えたいと研究者が「鯨塾」を開催(八木景子|ヤフーニュース個人)
https://news.yahoo.co.jp/byline/keikoyagi/20180717-00089302/
■封じ込められてきた鯨の情報 正しく伝えたいと研究者が「鯨塾」を開催(同アーカイブ)
http://archive.is/xmAr2
 
 ICJ判決後に突然クジラに興味が沸き、日本捕鯨協会のコンサルタントとして世論操作戦略を練った水産ジャーナリスト・梅崎義人氏と新宿の鯨肉居酒屋で意気投合、水産庁には記者会見のサポートを受け、自民党本部で一般公開前に族議員向けの試写会の場が用意され、さらに外務省には海外上映のための予算まで付けてもらった(〜水産紙報道)国策プロパガンダ映画、その名も『ビハインド・ザ・コーヴ』を制作したお馴染みトンデモ竜田揚げ映画監督八木景子氏の新ネタ=B
 これは通常のヤフーニュース記事ではなく「Yahoo!ニュース個人」という動画クリエーター向け支援企画サイトの記事。取材費はヤフージャパンが負担とのこと。
 公開日に保存されたアーカイブとタイトルが変わっていますが、本文は修正されていない模様。見出しの余計な部分を切ったのは、1行タイトルで趣旨が伝わるようにしたいというヤフー担当の判断でしょう。ちなみに、アーカイブを取得したのは筆者ではありません。
 同企画コーナーには、八木氏の格上のライバル(?)佐々木芽生映画監督も太地での取材記事を2本寄稿しています。

https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakimegumi/
■アメリカと日本でクジラを追った日本人漁師「人生に悔いはなし」 (8/21, 佐々木芽生|ヤフーニュース個人)
https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakimegumi/20180821-00093935/

 こちらのポータルトップページでも注目クリエーターの先頭に佐々木氏の名が(八木氏の名はなし)。


 先に佐々木氏の8月の記事の問題点に簡単に触れておきましょう。

「もったいないですよね」(中略)偉大なクジラがペットフードの材料だったことは、アメリカでも殆ど知られていない。「クジラを救え!」と声高に唱えている活動家たちがこのラベルを見たらどう思うだろうか。 (引用)

 事実を言えば、特にマッコウクジラ捕鯨に関しては日本もまったく同じです。大手捕鯨会社はサイドビジネスとして毛皮獣養殖を手がけたほか(つまり飼料用)、ペットフードとして海外に輸出したりもしていました。
 今日のノルウェーでも鯨肉はペットフードとして加工販売されており、2009年には4トンの鯨肉がペットフードメーカーの倉庫から見つかり、安全性への懸念が指摘されています。

■日本の鯨肉食の歴史的変遷

 「殆ど知られていない」とありますが、少なくともNGO関係者は欧米の捕鯨会社を含めた近代捕鯨史をきちんと理解しています。一方、佐々木氏が日本の捕鯨会社の行状について知らなかったことは記事からも明らかでしょう。「(偉大なクジラを<Cヌに食わせるのは)もったいないですよね」という佐々木氏・脊古氏の感覚と、高濃度の有機塩素で汚染されている可能性のある鯨肉を家族≠ェ口にすることを心配する欧米市民の感覚、双方の動物観・クジラ観(「欧米人は偉大だと思っているに違いない」という勝手な思い込みを含め)の差は拭いがたいものがありそうです。

脊古らが捕獲したのは、主にナガス、イワシ、マッコウクジラ。(引用)

 佐々木氏が故意に省略したのかは定かではありませんが、動画の中で脊古氏ははっきり「グレイホエール、コククジラ」とコメントしています。しかし、コククジラは戦前から国際条約上捕獲が禁止されていました。
 むむ・・もしかして、脊古氏は米国の捕鯨会社で密漁していた??? どうやらそうではなさそうです。
 実は、1965年から数年間、米国はコククジラを対象に数十頭規模の調査捕鯨を行っていたことがあります。おそらく、脊古氏の在籍していた捕鯨会社は、現在の日本の共同船舶と同じく位置づけで国の委託を受けたのでしょう。しかし、1969年にカリフォルニア沖で大規模な石油流出事故が発生、コククジラ数頭が死体となって海岸に打ち上げられたため、「海洋環境破壊にさらされているクジラを今更捕鯨とは何事か!」と環境保護団体から猛烈な反発が巻き起こります。この事件を契機に、米国政府は調査捕鯨の中止を決定、鯨類各種が種の保存法対象種にリストアップされるに至ったのです。
 詳細は環境外交・漁業外交のプロフェッショナル・早大客員准教授真田康弘氏の論文をご参照。

■科学的調査捕鯨の系譜--国際捕鯨取締条約第8条の起源と運用を巡って|真田康弘
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ceispapers/ceis22/0/ceis22_0_363/_article/-char/ja/

 今回の佐々木氏の記事には第三者の立場からの視点がなく、映画・書籍『おクジラさま』より中立性の点で後退しているように見受けられるのは残念です。表現もちょっぴり竜田揚げじみてますし・・。
 ただ、映像はまさしくプロの作り。
 一方、八木氏の撮影した動画の方は、冒頭の下関市内の様子を写したシーンでフレームのパン、ティルトの際の手振れが素人かと思うほどひどく、筆者は気になって仕方がありませんでした。
 だからこそ、八木氏より佐々木氏の方がある意味厄介だとも言えるのですが・・。

 さて、本家竜田揚げ記事に話を戻しましょう。
 脊古氏を物語の中心に据えた佐々木氏に対し、八木氏が主役に選んだのは石川創氏
 ただ、ドキュメンタリー監督・ライターとして影の役割に徹している佐々木氏とは対照的に、八木氏の記事は取材した鯨塾と下関市について書かれた最初の二段落以降、見出しと直接関係ないバリバリの主観に基づく八木氏自身の持論(石川氏のではなく)を全面に展開しています。主役・主演は八木氏本人。
 ちなみに、元鯨研で調査捕鯨船団長を務めたこともある下関鯨類研究室長の石川氏は、あの「いつ自動小銃が火を噴くんですか?」発言のお方・・。関係筋によれば、船団長当時の彼はSS憎しのあまり壊れてしまっていたとのことですが。
 実は石川氏自身は、八木氏が梅崎氏・米澤氏に刷り込まれて盲信しているベトナム戦争陰謀論について、以下のとおりかなりつれない態度を示しています。

■月とマッコウクジラ|下関鯨類研究室
http://whalelab.org/2017isana19.pdf
ベトナム戦争は1975年に終結しており、IWCにおけるアメリカの10年にわたるモラトリアム実現へ熱意までもが、ベトナム戦争と関連があったかという点については疑問が残るところだ(引用)

 もっとも、上掲エッセイ記事では代わりに同じくらいトンデモなアポロ陰謀論をご開陳。
 氷点下でも凍らない化学合成エンジンオイル「モービル1」はストックホルム会議のたった2年後、ベトナム戦争終結より前≠フ1974年に市販されており、旧ソ連が仮に独自開発が進んでいなかったとしても容易に入手・解析できたはず。膨大な航宙技術のうちたった1素材で数年先行するためだけに、NASAと無関係なセクションのリソースまで注ぎ込んだとは何とも考えにくいことです。根拠のない我田引水の憶測という点で梅崎&米澤ベトナム戦争陰謀論と大差なし。
 米ロはトランプ・プーチンの蜜月よりずっと以前から、宇宙開発の分野では国際協調へと舵を切っています。国際社会に絶大な影響力を行使してきた大国アメリカが、宇宙開発というきわめて重要な分野で大胆な方針転換ができるのに、たかがクジラで♀本的政策が一貫していることを「陰謀で始めたけど引っ込みがつかなくなった」との無茶な説明で済ませること自体、米国民に対して大変失礼な話というもの。外交・国際政治に無知無頓着な専門バカらしい発想なのかもしれませんが。
 まあ確かに、日本政府自身のベトナムや沖縄に対する責任など眼中になく、陰謀論好きの共通属性で、八木氏とはウマが合いそうですけどね。
 最初の2段落にも突っ込みどころはありますが、また長くなるので(汗)、石川氏のぶっ飛び発言、下関市と国の捕鯨政策については過去記事をご参照。「ベトナム戦争と捕鯨」についても改めてリンクをご紹介。

■『正論』v.s.『諸君!』──保守系オピニオン誌の捕鯨関連記事
http://kkneko.sblo.jp/article/28972939.html
■調査捕鯨と下関利権
http://kkneko.sblo.jp/article/69075833.html
■復興予算を食い物にしようとした調査捕鯨城下町・下関市
http://kkneko.sblo.jp/article/56253779.html
■検証:クジラと陰謀
https://togetter.com/li/942852
■「ビハインド・ザ・コーヴ(Behind the Cove)」の嘘を暴く〜いろんな意味で「ザ・コーヴ」を超えたトンデモ竜田揚げプロパガンダ映画
https://togetter.com/li/941637
■「ベトナム戦争」と「核問題」に直結する本物の陰謀≠暴き、かけがえのない日本の非核文化をサポートしてくれた「グリーンピースの研究者」と、竜田揚げブンカのために「広島長崎の虐殺」を掲げながら贋物の陰謀≠ノ引っかかったトンデモ映画監督
http://kkneko.sblo.jp/article/174248692.html

 今回はここまで。上掲記事の青字の部分をよーく覚えておいてくださいね。
 次回、いよいよ八木氏オリジナルのトンデモカラスサベツ論を徹底解析!
posted by カメクジラネコ at 19:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2018年07月28日

嘘つきデタラメ水産庁──歴史を捏造する捕鯨族議員と傀儡水産官僚たち



 去る6月26日、水産庁が2ヶ月前から募集していた捕鯨に関するパブコメの結果を公示しました。

■「鯨類科学調査を安定的かつ継続的に実施するための基本的な方針(案)」に関する意見募集の結果について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002675&Mode=2

 経緯については下掲の過去記事及び拙提出意見をご参照。

■調査捕鯨の根拠は支離滅裂──美味い刺身♀本方針案パブコメに意見を!
http://kkneko.sblo.jp/article/183298610.html
■「鯨類科学調査を安定的かつ継続的に実施するための基本的な方針(案)」に関する意見
http://www.kkneko.com/pubcom5.htm

 集まった意見は55件。
 正直、筆者は拍子抜けしました。たったの55件≠ニいうのが正解でしょう。
 通常、日本の行政機関が実施するこの手のパブコメは、直接関わりのある業界当事者以外の国民から意見が送られることはほとんどなく、せいぜい数件から数十件どまり。0の場合も少なくありません。
 ただ、原発や残留農薬関連等、比較的国民の関心が高いテーマになると数百件以上に上るものもありますし、5年前の動物愛護法改正に対しては1万6千件以上もの意見が集まりました。
 ですから、当事者にして圧倒的な動員力を誇るハズの日本捕鯨協会と全日本海員組合、同様に水産官僚の天下り先である水産・水産ODA関連外郭団体、鯨肉取扱事業者、美味い刺身*@を押し通した捕鯨族議員たちの支持者、さらには前米駐日大使に猛然と噛みついた実績のある外野の反反捕鯨ネトウヨ応援団が、国民の総意≠世界に見せつけてやろうとばかり、挙ってパブコメサイトでボタンを押しまくったに違いないと、筆者も半ば諦めの気持ちでおりました。軽く千件はいくだろうなあと覚悟したうえ、「数字が国民の意見をそのまま反映するものではない」と、拙パブコメ中でも苦言を呈したわけです。
 ところが、蓋を開ければ「たったの55件」。
 実は、筆者が「軽く千件はいくだろう」と踏んだのにはそれなりの根拠があります。
 というのも、他でもない水産庁の実施したパブコメで、284件もの声が寄せられた件があったのです。それがこちら。

■「指定漁業の許可及び取締り等に関する省令の一部改正案についての意見・情報の募集について」の結果について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002463&Mode=2
■イルカビジネスで胃袋を拡げる太地とエコヒーキ水産庁
http://kkneko.sblo.jp/article/179432844.html
■指定漁業の許可及び取締り等に関する省令の一部を改正する省令案についての意見
http://www.kkneko.com/pubcom4.htm

 さて、上掲過去記事で解説しているとおり、これはイルカ猟の対象種を新たに付け加えることに対する意見の募集。言い換えれば、同じ捕鯨関連といっても、国会で議決された法律に基づく国全体の総合的な施策・基本方針ではなく、和歌山県太地町と沖縄県名護市の2自治体限定の、ローカルかつマイナーチェンジの話。枠の数字で言えば、その後の追加発動枠も含めると太地が沖縄の約4.5倍ですが。
 にもかかわらず、集まったパブコメは284件でした。
 しかも、寄せられた意見のうち賛成意見の1〜274件は、e-Gov HPに掲載されているリストのPDFファイルを見てもわかるとおり、事情に通じた地元のイルカ猟関係者の提出意見とは思えず、ほぼ無関係な一般市民から寄せられたものばかりに見受けられます。何しろ、「捕獲に賛成」の一言だけで145件ですからね・・。
 それに比べると、調査捕鯨基本方針案パブコメに対する回答はやや長文が多めで、賛成意見の半分ほどはコアな反反捕鯨=Aその一部に業界筋が含まれると見受けられます。国の捕鯨政策の基本方針に対するパブコメの方は、数字も去ることながら、提出意見の性格も沿岸のイルカ猟に対するパブコメとはガラリと異なっているのです。
 ちなみに、数字で賛成反対の比率を比較してみましょう。イルカ猟増枠パブコメでは賛成276:反対8。賛成が約97%、反対が約3%。一方、国の基本方針パブコメでは賛成50:中立1:反対4。賛成が約91%、反対が約7%。
 賛成票は前回のパブコメに比べて1/5.5にまで激減、反対票の比率は2倍以上に増えたことになります。
 つまり、「捕鯨賛成」と一口に言っても、国が公海で実施(委託)する調査捕鯨についての国民の関心は、太地等沿岸でのイルカ猟に比べて圧倒的に低いということが言えるでしょう。
 残念ながら、いずれにしても水産庁は「提出意見を踏まえた意見の修正」をしなかったのですが。

 ここで、水産庁の実施したもう一つの注目パブコメ、タイヘイヨウクロマグロの管理基本計画の変更に関する意見に少し触れておくことに。

■「海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画の変更(第1の別に定める「くろまぐろ」に関する事項の追加等)案の意見・情報の募集」の結果について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002685&Mode=3
■クロマグロ漁獲枠配分のパブリックコメントへの意見|横浜国立大学教授・松田裕行氏
http://d.hatena.ne.jp/hymatsuda/20180606/1528246987
■クロマグロの漁獲枠配分を見直すべき二つの理由|東京海洋大学准教授・勝川俊雄氏
https://news.yahoo.co.jp/byline/katsukawatoshio/20180704-00088033/
■公平さを欠く沿岸漁業者へのクロマグロ漁獲枠配分|早稲田大学客員准教授・真田康弘氏
https://news.yahoo.co.jp/byline/katsukawatoshio/20180704-00088033/

 上掲各専門家の解説でも指摘されていますが、驚くべきことに、水産庁はたった9日間で意見の応募を締め切ってしまいました。捕鯨関係の2つのパブコメは行政手続法に従って通常どおり1ヶ月。意見の数でいえば、クロマグロ管理変更はイルカ猟増枠の半分にあたる140でしたが、短縮された期間を併せて考えれば、間違いなくこちらを上回ったでしょう。調査捕鯨基本方針パブコメは、3倍以上の期間をかけて半分にも届かなかったわけですが。
 極めつけが、クジラとマグロそれぞれのパブコメに対する対応の不誠実さ。法律を捻じ曲げて期間を短縮するのみならず、「寄せられた御意見につきましては、取りまとめの都合上、類似意見については要約しております」の一言で、各意見の数字すら示さない始末。そして、その短い期間に著名な水産学・環境科学の研究者やしわ寄せを食らう当事者である沿岸漁業者から寄せられた、大手巻網ばかりを優遇して沿岸の零細漁業者への締付を強化するあまりに不公正なやり方の是正を求める切実な意見に対し、まったく耳を貸そうとはしませんでした。この辺は捕鯨に対するパブコメとまさに対照的。
 3つのパブコメに対する水産庁の対応を以下にまとめてみましょう。

        イルカ猟増枠   調査捕鯨基本方針   クロマグロ管理計画変更
 募集期間    30日         30日              9日
 意見総数    284           55               140
  賛否    賛成多数  賛成多数(数・率とも減) 反対圧倒的多数(内訳不明ながら賛成意見は見当たらず)
  変更       無           無             無(全無視)

 これでは一体何のためにパブコメがあるのやらわかりませんね。少なくとも、《国民のため》、《漁業者のため》でないということははっきりしていますが。

 では、今回の基本方針パブコメで寄せられた各意見とそれに対する水産庁側の回答について、順に見ていきましょう。拙意見(51番)については最後に。
 まず、賛成意見から。水産庁が十把一からげに「御意見として承りました。今後の施策の参考とさせていただきます」で答えをまとめてる前半は端折るとして、いくつか興味深い意見を拾ってみましょう。水産庁回答の重複部分は端折っています。強調は筆者。

・海洋生物資源の一部である、鯨類資源の持続的な利用は、人口増加を続ける人類が将来も生存を維持するためには、許されるべき活動である事を基本理念とする。方針案の基本は、商業捕鯨の復活を明記しているが、これから開始されるであろう捕鯨は、再生産可能の生物資源の持続的な利用であって、かつてのような、大資本漁業会社による、利潤を目的にした大規模な商業捕鯨の復活はあり得ないと考える。その意味から、「商業捕鯨の再開」ではなく、「持続捕鯨の創造」へと、捕鯨への発想の転換が図られるべきである。その意味から、商業抽鯨を前提とする、ICRWは時代遅れの国際法であり、これを廃棄して新たな鯨類資源の利用を是とする国による国際法を樹立するべきである。
・科学調査の継続のみを目指して、捕鯨の再開を謳うだけでは、その実現は期待できない。政府は再開に向けての、明確な工程表を示して欲しい。
・調査結果に基づく、ICRW付表の見直しも、科学調査の条約への質献の一部であり、今からでも、その検討を始めて欲しい。
・わが国は率先して、新たな国際捕鯨条約の草案を提示して、国際的理解と賛同を得て、持続捕鯨の実現を達成するべきである。
・新調査母船の建造は、調査の継続のために必須であると共に,複雑な捕鯨技術を伝承し、わが国の鯨類科学調査と持続捕鯨の創造に対する断固たる決意を国の内外に示す、大きな意義があり、早期の建造を強く希望する。大型のナガスクジラを引き揚げて調査できるような広さの解剖甲板や製油装置を設置する大型の船体にしてほしい。
(引用〜意見38)

・御意見につきましては、本基本方針の内容と方向性は同一のものと理解しましたので、原文のままとさせていただきます。
・調査母船に関する御提案については、今後の施策の参考とさせていただきます。(引用〜同水産庁回答)

 意見の特徴から、捕鯨に強い関心のある外野の方と見受けられます。
 「かつてのような利潤を目的とした大規模な商業捕鯨の復活はありえない」、つまり税金投入・公共事業型の捕鯨を想定しているのでしょう。水産庁は「方向性は同一」の一言で片付けていますが、「復活」「再開」を目指す基本方針とまったく新たな捕鯨の創造を謳う意見者の考えは明らかに大きな隔たりがあります捕鯨協会や族議員らがぶち上げた「商業捕鯨復活」の狼煙が単なるハッタリで、実は公共事業型調査捕鯨の存続が狙いなのか、あるいは字義どおりの商業捕鯨再開を目指すのか──捕鯨賛成派の意見に対しても水産庁が明確な回答を避けたところがポイント。
 なお、商業捕鯨として成立せず、多額の税金・燃料を投じた上でようやく成り立つ小規模な日本製官営捕鯨は、人類の将来の生存維持にはまったく役に立ちません。詳細は以下。

■鯨肉は食糧危機から人類を救う救世主?
http://kkneko.sblo.jp/article/174477580.html

 他の部分、新たな国際捕鯨条約も国連海洋法条約の縛りがあるので非現実的。水産庁はきちんと回答すべきでした。
 ナガスクジラを想定した大型新母船の建造もやはり非現実的ですが、水産庁が「今後の施策の参考に」と答えたことは海外に強く注意喚起すべきでしょう。

(前略)鯨類科学調査の目的の第一が、「商業捕鯨を実施する際に適切な捕獲枠を含む管理方策等を策定する・・・」としているものの、現状では今後いかに必要な科学的情報を収集しても、政治的な対立が解決されない限り商業捕鯨の再開は実現不可能のままです。基本方針の第八「その他鯨類科学調査の安定的かつ継続的な実施に関する重要事項」の二の口で、国内外の理解を深めるための適切な情報発信等として、その対策についてわずかに触れているものの、本方針案の中には、IWCにおける政治的対立の解決を実現するためのより具体的な方策についても明記していただくことが肝要と考えます。
また、第七「鯨類科学調査のために捕獲した鯨類の調査終了後における利用に関する基本的事項」には、商業捕鯨再開後の鯨肉需要を維持するために必要な措置を追加していただくことが必須だと考えます。商業捕鯨モラトリアムが30年以上も解除されず、その間鯨肉の供給量は低水準のまま、希少で高価な食品というイメージがすっかり定着し、庶民の食卓から遠い存在となってしまいました。鯨肉はそもそも低価格で栄養価が高い食材として日本人にとって古くから当たり前の食べ物であったし、商業捕鯨再開後もそうあるべきだと考えます。調査副産物としての鯨肉の販売収入を調査経費に充当することも必要ですが、そのために鯨肉価格が庶民感覚を超えたまま需要を喪失してしまっては鯨類科学調査のそもそもの意義が失われかねないと懸念するものであります。(引用〜意見40)

・鯨類科学調査により得られる科学的情報は、政治的対立を解決する大きな助けとなるものですが、基本的に政治的対立はIWCでの交渉や外交的努力により解決されるものであるため、本基本方針には特段明記しないこととしており、原文のままとさせていただきます。
・副産物についての御意見は、今後、具体的な施策を実施する上で参考にさせていただきます。(引用〜同水産庁回答)

 こちらも捕鯨に強い関心のある外野の方ですね。
 太字強調部分にご注目。興味深いことに、賛成派でありながら、反対の筆者らと同じく、現状を正しく見抜かれておいでです。そして、美味い刺身*@および今回の基本方針が、核心の部分で破綻していることが、水産庁の支離滅裂な回答からよーくわかります。意見者が教示してくれるよう求める具体的方策なんて何もないから(ODAによる買収といった汚い手口以外)、こう書くしかなかったのです。
 要するに、意見者が指摘しているとおり「調査捕鯨をいくら続けたところで政治的対立は解消されず、商業捕鯨の再開なんて無理だ」ということ。担当者の水産官僚も本当はそのことをわかっていながら、族議員にせっつかれて矛盾だらけな基本方針を策定せざるをえなかったわけです。
 意見40の後半、この方は「庶民の食卓」が乱獲によって成立していたという史実を知らない模様。「商業捕鯨再開後もそうあるべき」という、38番とは真逆の認識。永田町の族議員らはこの40番と同じレベルが多いに違いありませんが。そして、両方を「参考にする」と言ってのける水産庁がいかに二枚舌なことか。

(前略)1) 1 ページの科学的知見の公開については、調査によって得られたデータそのものも原則として科学者に公開し、利用できることが望ましい。
2) 6 ページの調査の方式や手段についての記述は、科学技術が急速に発達している今、新たな調査手段も積極的に取り入れる旨の記述が望まれます。(後略)(引用〜意見41)

・科学的知見や調査の方式については、本基本方針の記述において包含される内容と考えています。(引用〜同水産庁回答)

 日本が実施してきた調査捕鯨は加工済の二次データしか公開されないことが長年にわたって問題にされてきました。北西太平洋調査捕鯨・NEWREP-NPの前身であるJARPNUも、レビューでトラックラインを勝手に外れて捕獲していたことが発覚し、IWC科学委員会のレビューで問題視されたばかり。にもかかわらず、日本は目視ではない致死調査に関しては計画書上でガイドラインを遵守する宣誓をしていません。しまいには妨害を言い訳にしだす始末。スタップ細胞論文を髣髴とさせるネイチャー掲載鯨研脂皮厚論文のデタラメ然り。水産庁がいくら太鼓判を押したところで、調査捕鯨発のデータ自体が信憑性を強く疑われているのが実情なのです。

■史上最悪の調査捕鯨NEWREP-NP──その正体は科学の名を借りた乱獲海賊捕鯨
http://kkneko.sblo.jp/article/177973131.html

 今日日本以外の鯨類学界では新たな非致死的£イ査手段が次々に生まれ、意欲的で斬新な研究に活かされていますが、日本の御用学者は見て見ぬふりをし続けています。お座なりに非致死調査をやったふりをすることはあっても、調査捕鯨において新たな調査手段が積極的に取り入れられることはありません。耳垢栓の切片と胃内容物の標本をひたすら積み上げ続けるだけ。

■ミンクの非致死調査
http://kkneko.sblo.jp/article/72090360.html

(前略)調査で捕獲した鯨は、国際捕鯨取締条約第8条2項に則り調査副産物(鯨肉)として合理的に有効利用しているにも関わらず、それに対し反捕鯨団体等が国内外で不買運動・サイバー攻撃等不当な圧力をかけてくる事態となっております。
我が国固有の鯨食文化を継承したいとの思いで取り組んでいる鯨料理専門店や鯨肉販売業者の不安を解消するためにも、調査捕鯨の正当性や鯨類資源の健全性と同様に鯨肉の利用・消費の合法性をこれまで以上に国内外に発信し、違法に行っているという根拠のない誹謗中傷や誤報・虚報を払拭する必要があります。
また、鯨類資源の持続的有効利用および鯨食文化の尊重等に理解を示している国々や人々がたくさんいることも発信していただき、誤った情報に騙されて反捕鯨活動を支援している人々の考えを改めるための活動もおこなっていただきたい。実施主体や業界団体等の発信力にはどうしても限界があります。政府が主体となって取り組んで頂けることを切に願います。(中略)
鯨類科学調査でおこなっているランダムサンプリング(無作為抽出)では、偏りのない幅広い生物学データ等(主産物)が収集されており、資源量算出に必要なデータとして信憑性はかなり高いと伺っております。(中略)
商業的価値のある副産物は今までどおり市場ベースで販売し、満たない副産物は鯨食普及等公益目的で使用する法もあるかと思います。(引用〜意見42)

・副産物についての御意見は、今後、具体的な施策を実施する上で参考にさせていただきます。(引用〜同水産庁回答)

 過去に連綿と行われてきた悪質な密漁・密輸・規制違反等の違法行為に日本の捕鯨業界は密接に関わっており、つい2014年まで行われてきた南極海調査捕鯨JARPAUはまさに合法を謳った違法行為に他なりませんでした。イワシクジラのCITES規約違反疑惑、ICJ判決文パラグラフ61違反等、今の調査捕鯨に対する違法性の指摘はすべて明白な根拠に基づいています。違法性の疑いを払拭したければ、国連受諾宣言の書き換えなどしなければよかったものを、日本政府自ら国際裁判から逃げる≠ニいう誤った選択をしてしまった以上、いくら合法性を発信したところで説得力を持つはずなどないでしょうに。
 まあ、「日本に捕鯨を教えたのはペリーだ」とか「韓国は日本より多くクジラを殺しているのにIWCに参加してない」といった、根拠のない誤報・虚報を拡散している人物もいますし、捕鯨協会の世論操作を請け負ったPRコンサルタントに誤った情報を植え付けられて熱心に反反捕鯨活動をしている御仁もいますけどねえ。だからといって、政府が主体となって洗脳をしろとでも言いたいんでしょうか??
 ランダムサンプリングについては、前述のとおり、JARPNUはIWCガイドラインに違反し、NEWREP-NP沿岸調査も「ランダムは途中まででいい」というとんでもなくズサンな代物。そもそも野生動物の分布・移動は偏りがあるのが当たり前で、それをなるべく減らす工夫はしても、「偏りのない」と言いきってしまうようではその時点でまともな研究者ではありません。調査捕鯨はクジラあるいは他の野生動物の目視調査と比べても必然的に大きな偏りが生じるのです。いずれにしても、資源量の算出は目視調査で行うもの。調査捕鯨で得られる特性値は資源量ではなく補足情報。本当に鯨研の御用学者にインタビューした経験があるのかもしれませんが、聞いた内容もちゃんと理解できてなさそうですね・・。
 最後の一文がまたぶっ飛んでいます。儲かる、売れる部分はビジネスで、商業的価値がなく売れないもの(よりマズい部位?)は税金使って給食やPRイベントに回せ、ですってさ。それって逆効果なんじゃないですか?
 「伺っております」といった記述から、多少内野に近い外野という感じでしょうか。それにしても、見事な竜田揚げ脳の持ち主ですね。

(前略)• これから先、国民がクジラを必要としなくなれば、商業捕鯨の再開を目指す今回の基本方針の大義が消滅するばかりか、調査捕鯨に国費を投入すること自体、国民の理解が得られなくなります(業界内でさえ南鯨無用の声があります)。(中略)
『鯨肉をもっと身近に!』クジラに関するイベントはいつも大盛況です。でも、参加者はいつも同じ顔ぶれのようにも感じます。駆けつける関係者の方々には敬服しますが、誰もが気軽に参加でき、「みんなが笑顔になれる」イベントの開催を望みます。
『鯨食伝道師の育成を!』「おさかなマイスター」や「お魚かたりべ」などに倣い、クジラとその文化を熱く語れる人材を育て、「鯨食応援団」をつくりましょう。
私たちの料理教室に参加した、鮮魚店で働く青年は「やはり自分たちが食材を知らないと売れて行かない」と感想をもらしていました。
『情報発信拠点を!』国民の多くが「捕鯨は国際法に違反しているのではないか」と疑念を抱いています。捕鯨の正当性を訴え、「鯨食は健康的でカッコいい」というイメージを広めるため〜アンテナショップのような情報発信の基地がぜひ必要です。
いま需要を喚起する手を打たなければ、クジラは近い将来、「未利用」になってしまうかも・・。私たちはそんな思いから、魚食普及活動の中にクジラを取り入れました。今回の基本方針が商業捕鯨の再開を意図するのであれば、その消費の復活に向けた相応の施策があって然るべき、と私たちは思料します。(引用〜意見43)

・頂いた御意見は、今後、具体的な施策を実施する上で参考にさせていただきます。(引用〜同水産庁回答)

 イベントを主催している旨の発言その他から、おそらく御用業界団体WF○ですね。
 大変興味深い発言が3つ。

でも、参加者はいつも同じ顔ぶれのようにも感じます。

 やっぱりね!!! 

国民の多くが「捕鯨は国際法に違反しているのではないか」と疑念を抱いています。

 よ〜くおわかりで。そりゃそうでしょう。事実4年前まで違反していましたし、現在も違反している疑いが濃厚です。日本政府は国際裁判での決着から逃げたんだから、いくら情報発信したところで国民の疑念は解けやしませんよ。ましてや「健康的でカッコいい」から違法行為に目をつぶっていいなんて、日本人のモラルを見下しすぎてるんじゃないの??
 水産庁の担当者さん、関係者も「国民の多くが『捕鯨は国際法に違反しているのではないか』と疑念を抱いています」と吐露してますよ。「具体的な」とある以外、一般の意見に対する返答と同じなのは、触れずにすませたかったから・・に違いありませんよね!? でも、聞かなかったフリはいけませんな。

>クジラは近い将来、「未利用」になってしまうかも・・。

 近い将来も遠い将来もクジラは魚にはなりません。あんたバカ??
 日本の魚食業界の現状、非持続的利用による資源枯渇の一方で混獲した未利用魚を大量に廃棄している命の無駄にもっと国民の目を向けるよう、NGOとしてまともな活動をしてください・・。

(前略)一般に販売される副産物については、販売価格の高値により消費者離れが生ずることがないよう需要に即した適切な価格が形成されること(後略)(引用〜意見44)
(前略)一般販売枠については、販売価格の上昇により消費者離れが生ずることがないよう需要に即した適切な価格を形成すること(後略)(引用〜意見45)

・御意見として承りました。副産物についての御意見は、今後、具体的な施策を実施する上で参考にさせていただきます。(引用〜同水産庁回答)

 ほぼコピペ文でお二人とも同じ業界関係者とわかります。問題は、生産を無視していること。そして、市場原理ではなく、コストを度外視し、国が税金を投入して価格を維持しろと臆面もなく主張していること。そりゃ、コストを一切考えずに税金で売価を下げられれば、どんな食材だろうとそれなりに需要は生まれるでしょうけどね・・。
 国からはろくに支援を受けられないまま、需要減退や安価な輸入品との対抗、後継者不足など社会的・経済的要因で悪戦苦闘している数々の伝統食品関連業界の皆さん、わかりますか? これが、永田町と癒着した鯨食関連業界の「自分たちは特別なんだ」「他の伝統食とは別格の聖食なんだ」との自負。あまりにも傲慢すぎると思いませんか??

(前略)欧州の空港では機関銃を持って警備している所も少なくなく、危険と感じれば警備員が発砲出来る、攻撃をすれば返り討ちに合う可能性がある文化で過ごしてきた人達にとって、何をやっても命の心配のない警告などは蚊に刺された様なものとしか感じないと思います。(中略)
日本の考え方、対応の仕方が、必ずしも有効とは限らないので船を体当たりする様な者達には、テロの対処と同じ対応をしていく必要があると痛切に感じています。
日本政府の調査機関が攻撃されることは、日本が攻撃される事と同じなので攻撃されない様な装備、テロ攻撃を鎮圧できる武力の携帯、装備、自衛艦の同行なども、必要かと思われます。(後略)(引用〜意見46)

・妨害行為の対応については、本基本方針に基づき、関係省庁が連携して必要な措置を講じてまいります。(引用〜同水産庁回答)

 英国在住時代に議論してこじれたタイプみたい・・。「いつ機関銃が火を噴くんですか?」発言の石川氏ではありませんが、人の命を驚くほど軽視しているのも強硬な反反捕鯨の特徴といえるでしょう。
 空港警備は現実のテロの発生事案の有無で対応が異なるのは当然のことで、テロ対策は先進国で連携・協調して行っていること。また、日本でも警察官・自衛隊員・海上保安庁職員はいずれもシチュエーションに応じて銃を携行・発砲する許可が与えられています。
 この意見者にとっては「一部の海外の人達による捕鯨や鯨肉を食べる事に対しての嫌がらせ」が、いつのまにか銃武装したテロ組織によるテロ行為と同格になってしまっているのですね。
 SSCS(シーシェパード)は確かに過去に過激な実力行使を行ってきましたが、そうしたスタイルは日本の調査捕鯨がICJで違法判決を受けるかなり前までの話。当時も手製の酪酸瓶を投げるくらいで、銃火器で攻撃してきたという事実はなく、一方の日本側も多額の税金を投じて設置した放水砲や音響兵器LRADで応戦しています。また、過去にフランスの諜報機関の攻撃に遭いスタッフが死亡した国家テロの被害者でもあるGP(グリーンピース)に対しては、日本側から船をぶつけてきたという指摘もあります(GP側は泣き寝入りを迫られましたが)。
 さらに言えば、反捕鯨団体の妨害による死亡等の重篤な人的被害はありませんが、日本の調査捕鯨事業においては火災・転落・重機事故等での死亡事故が何例も起こっています。
 前段の引用部分はとてつもない飛躍。「西洋は『攻撃をすれば返り討ちに合う可能性がある文化』だが日本はそうではない」なんて聞いたら、テロを憂慮しつつも銃規制強化に賛成している人も決して少なくない、平和的な大多数の欧米の市民の皆さんは、きっと目を丸くされることでしょう。さらに驚くべきは、そうした日本とは異なる西洋の文化(?)はどんどん受け入れろと主張しているように見える点。何かと言うとすぐ銃に頼る真似をしない平和を愛する日本の文化(?)はさっさと捨ててしまえと。捕鯨と鯨食は比較にならないほど重要な文化だと思われている模様。こうした人物が増えていった暁には、日本は米国と遜色ない銃社会に変貌してしまいそうです。また、引用下段から察するに、この人物はきっと核武装論者なのでしょう。
 しかし、水産庁の回答からは、「命の心配のない警告」から本格的な武力行使への移行を検討している節もうかがえます。過去の戦争の苦い経験を踏まえ、何より平和を愛する国に生まれ変わったハズの日本のイメージを、水産庁は覆すつもりなのでしょうか?

(前略)関係行政機関の相互に情報共有、調査実施主体への情報提供、監視船の派遣程度では妨害行為防止への効果は期待できない。もっと妨害を受ける当事者として積極的行動を伴う防止策の策定が必要である。巡視船若しくは自衛艦派遣などより実効性の高い方針とすべし。(中略)
何れにしても調査実施主体と副産物販売主が同一では要らぬ誤解を生じさせ、海外からの批判に結びつきやすいため早急に改善すべし。(引用〜意見48)

・妨害行為の対応については、本基本方針に基づき、関係省庁が連携して必要な措置を講じてまいります。
・副産物についての御意見は、今後の具体的な施策の実施する上で参考にさせていただきます。(引用〜同水産庁回答)

 こちらもやはり外野の方ですね。46と共通しているのは、明らかに公海捕鯨を国の威信がかかった事業だとみなしている点
 要するに、本来であれば外目を気にする必要などまったくないアイデンティティにまつわる伝統文化ではないのです。食文化でいえば、そっちに対応するのはヒトデ食やフナムシ食の話。対する公海捕鯨は、欧米と相対化されることで初めて自覚される、国威を内外に示すための示威行動なのです。伝統は伝統でも、むしろ靖国神社の例大祭などに近いと言えるでしょう。歴史の浅さも含め。
 下段の意見に対し、水産庁は「参考に」と答えていますが、実は鯨研の債務超過団体転落を防ぐ対処として、共同船舶との一体化が進められてきました。事実上、鯨研と共同船舶は表の看板が違うだけで中身は一心同体。住所も同じですし。捕鯨協会も同じビルに入ってます。つまり、現状では誤解をますます生じさせる方向へと進んできたわけです。沿岸捕鯨も捕鯨事業者の業界団体が直接仕切る形に。
 調査捕鯨の公営化(水研機構にやらせる等)については以前から議論もありましたし、水産庁は「参考に」と回答していますが、はたして本気で移行する気があるかどうか。
 続いて、駆け込みと見られる賛成意見2つ。

(前略)・商業捕鯨再開・鯨類科学調査において、関係当事者の自助努力は当然として、「世論の支持」がなければ、安定的かつ継続的に実施することは困難であります。(後略)(引用〜意見54)

・御照会のとおりと考えます。(引用〜同水産庁回答)

 43、44の要求「需要に即した適切な価格を形成」からも自助努力の放棄は一目瞭然。共同船舶/捕鯨協会と永田町族議員の要求がエスカレートした結果、注ぎ込まれる税金がますます膨れ上がっているのが実情なのに。
 同様に、WF○曰く「国民の多くが『捕鯨は国際法に違反しているのではないか』と疑念を抱いて」おり、「世論の支持」を受けているとは到底言えないのが実情ですが、黒(違法)を白(合法)と言い換える基本方針を策定すれば世論の支持が得られると、水産庁は本当に考えているのでしょうか?

(前略)我が国は科学的根拠に基づく調査捕鯨により鯨類の資源量の確定や適正捕獲数を算出し、商業捕鯨の再開をIWCに求めているにもかかわらず、いまだに賛意を得ていない。しかしこの先IWC参加国の理解を得、商業捕鯨を再開するためには、どこからも異議を唱えられない科学的根拠に基づいて議論していかなくてはならない。。(後略)(引用〜意見55)

・基本方針に対する御意見として承りました。今後の施策の参考とさせていただきます。(引用〜同水産庁回答)

 最後の意見、これも一般ですね。意見40とそれに対する回答に再度注目。水産庁は「基本的に政治的対立はIWCでの交渉や外交的努力により解決されるものであるため」と明記し、意見者の大きな誤解を解くべきでした。担当者がもう疲れちったのかもしれませんが・・。
 55通のうちには含まれませんが、PDFの最後に添付されているもう1つの施行規則案パブコメへの意見に対する回答が非常に興味深いので、こちらもご紹介。

(7)鯨類科学調査のために捕獲した鯨類の調査終了後における利用に関する基本的事項につきコメントです。商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査において、現在行われている国費によって捕獲された鯨肉の販売について下記の問題があると考える。鯨類捕獲調査の本質的問題は今後訪れるであろう世界規模でのタンパク質確保の問題等に捕鯨の有効性について説得力のある説明結果を出せていないことでないか?今後は資源保護のための捕鯨に舵を切り替えるべきである。食物連鎖を含めた海洋水産資源の持続的なバランスをとりながら、つまり鯨を間引きしながら、その他の資源量を増やしていき人類がそれを利用して行く海洋資源管理システムの構築を多くの水産関係者と共に構築すべきと考えます。そのうえで間引いた鯨の有効活用として、鯨食および鯨商品の消費拡大が前提とあると考えるが、消費拡大に寄与しない下記問題としてあげた副産物利用が現在進められていると考える。
問題1:調査副産物鯨肉の安値販売による民業圧迫国民の税金と法整備により、潰れない会社である調査主体の一つである共同船舶の子会社である共同販売が、その特殊な地位を利用して、過度な安値販売を特定の業者に行っていると顧客から聞いている。購買力のある特定の業者に基準なく安価に販売し、その他零細鯨加工会社の経営を圧迫することは、調査副産物の性質上許されるのか。外国において商業捕鯨を行い、その鯨肉を輸入販売する業者からしてみれば、民間であれば成り立たないような価格で販売されては、公正な競争ができない。将来の商業捕鯨再開を目途につけるのであれば、捕鯨にともなうコストに基づいた商業的に成り立つ価格で販売すべきではないか。無軌道に価格を下げるのであれば、むしろ給食などの公益用に国産品は振り向けるべきだ。
問題2:製品販売による民業圧迫 公金で営まれている会社が、ここ数年において原料の公正なる販売をしないばかりか商品開発を行い製品販売を積極化しているのは問題である。マーケットにない新規商品であればまだしも、民間各社が製造販売する同じ商品を圧倒的に有利な立場(政府をバックとした信用)と価格で販売することは、マーケット拡大に全く寄与しない対応であり明らか民業を圧迫している。
問題3:調査副産物販売方法における透明性の欠如 現状の一社独占による販売方法は公共事業の入札などと異なり、全く透明性がないように思われる。副産物販売が一社独占である上に、実際の販売価格が不明瞭なために、新規に参入することができない。顧客ごとに実際の販売価格が異なっているのだろうが、その基準が不明瞭なため、副産物の販売会社に過度な権限が集中している。販社に嫌われた業者は冷や飯を食わされているのが現状とみている。(引用〜意見PDF末頁)

・御意見として承りました。副産物についての御意見は、今後、具体的な施策を実施する上で参考とさせていただきます。(引用〜同水産庁回答)

 前半の食糧安全保障論は無理筋なのですが(上掲拙解説リンク参照)、強調部分にご注目。
 いやあ、非常に興味深いですねえ。こちらは流通関係者(輸入鯨肉も扱っている)と見て間違いないでしょう。
 実は、捕鯨サークルは「儲かる漁業」補助金の特例、その名もクジラ改善プロジェクト(KKP)の審査を受ける過程で、いわゆる中抜きによってコストダウンを図るよう指示された経緯があります。自助努力もなしに永田町とつるんでウハウハなのは、捕鯨サークルの中核だけ。周辺事業者は都合が悪くなれば切って捨てられる世界なのです。
 同意見はまさに共同船舶の自己中体質、日本の捕鯨の闇の部分が手に取るようにわかる内容です。
 そして、WF○の正直な意見と同様、水産庁としてははぐらかすのが関の山だったこともわかります。

 次に、唯一の中立意見。

今回の方針の目的として、「商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査」とある中で、調査を「安定的かつ継続的に実施」するという部分に若干の違和感をもちました。実際に商業捕鯨を再開する見込みがないのか、もしくは再開した場合にはこの法律はどのように扱われることになるのでしょうか。過去の商業捕鯨による乱獲という事実を鑑みれば、資源状態を維持しながらの捕鯨が求められると思いますが、商業捕鯨が再開された暁には、同法律をもって、現状把握のための科学的調査等が継続されるのでしょうか。もしくは、同法律は廃止となるのでしょうか。商業捕鯨の実施という目的が達成されたときのことにも少し言及されてもいいのではないかと思いました。(引用〜意見49)

・商業捕鯨の再開を目指し、必要な科学的情報を得るための鯨類科学調査を行っているところですので、再開後については、今後の参考とさせていただきます。(引用〜同水産庁回答)

 この方、外野ながら割と事情通かもしれませんね。
 「違和感」という言葉からは、「再開と言いつつ調査捕鯨をズルズル続けるのではないか」との疑念が見て取れます。再開したら一体調査捕鯨はどうなるのか、ノーテンキで単細胞の捕鯨賛成派には思いつかない指摘。この調査捕鯨の致命的な矛盾については、前回の記事と合わせ、以下の過去記事で詳細に解説しています。

■調査捕鯨は不必要or商業捕鯨は不可能/コスト意識ゼロのたかり企業共同船舶
http://kkneko.sblo.jp/article/54058582.html

 水産庁の回答からは、彼らが「何も考えてない」ことがバレバレ。まあ、天下った後のことなんて知ったこっちゃないですもんね。

 最後に、基本方針案に対する反対意見4つをご紹介。

調査といっても実際には商業捕鯨と変わりなく、クジラ肉も余っているし、その冷凍保存にも多額な税金を投入しての無駄遣いでしかないので、やめてほしいです。(引用〜意見50)

捕鯨政策全般への御意見として承ります。鯨類科学調査は、商業捕鯨の再開に必要な科学的情報を得るために実施しておりますので、御理解をお願いいたします。(引用〜同水産庁回答)

 わざわざ労を割いて大多数の国民の意見を代弁してくれた方に深く感謝したいと思います。パブコメ送るのだって決して楽なことじゃありませんからね。
 水産庁はここでもまた矛盾した回答を寄せています。担当者が自分で白状したとおり、商業捕鯨の再開に必要なのは「政治的対立」を解消するための「IWCでの交渉や外交的努力」であり、調査捕鯨はまったく役に立ちません。「ご理解をお願いします」の一言で納得すると考えること自体、あまりに国民をバカにしています。

基本としては、捕鯨以外の形で調査を行うべきであると考えるのであるが、どうであろうか。
調査を行うために対象を殺さなければならない、というのは、どうも理性的に考えて解しかねる。
であるので、調査捕鯨にはあまり賛成の立場を取れない。
日本政府(の一部)は、エゴを抑え、基本としては専ら対象を殺さなくても行えるような調査を行っていく事とし、非理性的・残虐等の非難を行われないようにしていただきたいと考える。
確かに鯨等は大型哺乳類であり知能も高いのである。またシロナガスクジラ・ナガスクジラ(まだナガスクジラを獲っている事には国民として眩暈がしそうである。)などは希少であり獲るべきではないのである。であるので、方針として、捕鯨を行わないようにしていっていただきたい。(数が多いミンククジラについては例外扱いしても良いが、IUCN Red ListでLC(Least Concern)以外となっているものは獲らないのが適切であるはずである。(上記ナガスクジラの様に日本はLC以外も獲っているのであるが…。))
意見は以上であるが、捕鯨に関して言うと、非理性的な部分を故意に持とうとしないようにしていただきたいと考える。
IUCN Red ListでのLC以外のものは保護を行うべきであるので、殺さない形での調査のみを行うようにしていただきたい。
要約すると、IUCN Red ListでLCとなっているものについては可と考えるが、それ以外は調査捕鯨を停止されたい。(引用〜意見53)

・我が国としては、鯨類について他の水産資源と同様に、科学的根拠に基づき持続的な形・伝統的な食文化を含む鯨類に係る文化等の多様性は尊重されるべきものであり、そのために必要な商業捕鯨の再開を目指し、鯨類科学調査を実施いたします。また、鯨類の利用は、我が国の文化に根ざすものであり、文化の多様性の観点から、尊重されるべきであると考えています。
・我が国は、現在ナガスクジラは捕獲しておりませんが、科学的根拠に基づき、資源が健全な鯨種・系群については、持続的に利用していくべきと考えております。(引用〜同水産庁回答)

 こちらはある程度野生動物問題に詳しい動物好きの方ですね。
 ナガスクジラは違法認定されるつい4年前まで実施されていたJARPAUでは捕獲対象とされていましたし、現在もCITESで留保しアイスランドから輸入しているのが事実。
 いずれにしても、この回答から水産庁はナガスクジラも獲る気満々だとわかります。日経報道でも伝えられるとおり。
 IUCNレッドリストへの掲載にはもちろん明白な科学的根拠がありますが、水産庁はそれを否定しているわけです。クジラであれ魚であれ、資源を不健全な枯渇状態にまで追いやり、現在もなお非持続的な利用をやめられないほど日本の漁業を駄目にしてしまった当事者が口にしていい台詞じゃありませんね。

<意見1>
1 制定の背景
これまでの経緯から、かつて共同捕鯨を構成してきた大手水産会社3社が、採算の合わない公海における捕鯨への今後の参入を否定しており、政府補助金なしには不可能な事業になっている。クジラは日本も加盟している国連海洋法条約の前文にあるように「人類共有財産」であり、利用したいのであれば国際的な合意が必要である。可能性があるのは小型沿岸捕鯨だが、これまで、再開するために調査捕鯨の実施が役立ったという事実はない(むしろ邪魔をしてきた)。商業捕鯨の実施と調査捕鯨は相反するもので、法律そのものが矛盾を抱えている。‘鯨類調査’と名打つなら、非致死的調査の実施と成果を、国際的な合意形成に生かすべき。
<意見2>
昨年成立した法の矛盾に加え、今回の方針は、国の方針というよりも、全体的に捕鯨推進のプロパガンダ。将来に禍根を残さないためにも、異なる意見や、国際的な動向を示しつつ客観性を心がけ、市民が間違った解釈をするのを避けるべき。政府が継続を支援し、経費を負担するのであれば、捕獲しなくても調査が可能。捕獲を前提とするのは一部利害関係者の利益授与。国の方針として国際的な基準に従い、非致死的調査を行い、国際的な信頼を回復することこそ将来展望につながる。
以下意見:
第一 意義に関する事項6行目「科学的根拠に基づき捕獲枠が管理されてきた」を→クジラを大きい順に取り尽くす結果となり、捕鯨の管理に失敗したのが事実。資源管理の不十分さによる鯨類の個体数の減少を根拠として規制が行われたことを明記すべき。
<意見3>
3p5行目「鯨種や系群による・・・一律に商業捕鯨を全面的に認めない」という文言は、文中の「不確実性による大型捕鯨類の商業捕鯨が一時的に停止」という文言に矛盾する。不必要な記述なので削除。
<意見4>
3p最後から3行目「その一方で・・・遅くとも1990年までに」→日本が捕獲しようとしているミンククジラの推定個体数はその時点では不明。実際に合意されたのは2012年で、日本の調査捕鯨(JARPA)の結果からは増えているか、減っているか変わらないか確かではないという2006年の評価会議の結果が出ている。
<意見5>
4p2行目「しかし、その後現在に至るまで、IWCにおける政治的対立が原因で」→改定管理方式のもとでの管理制度に関する合意が得られないことが原因
(捕獲枠に関しては、日本はこれまで南極で2千頭の捕獲枠があると主張してきた。また、2012年には、小型沿岸枠としてミンククジラ17頭を要求。枠の設定を前提で主張しているので「捕獲枠がない」という記述と矛盾。)
<意見6>
第二「一 鯨類の個体数、系群構造、年齢組成、性成熟情報その他 」
これらは非致死的調査で可能。これまで、IWC科学委員会、評価会議などで致死的調査の必然性が証明されていない。鯨類調査の内容を検討し直すべき。
<意見7>
「商業捕鯨を実施する際に適切な捕獲枠を含む管理方式を策定するため必要」→より多くの捕獲数を得るための調査は、現在は不必要。
「二 鯨類の食性・・」「三」
非致死的方法がすでに利用されており、それらの科学情報を得るためにクジラを殺す必要はない
<意見8>
第三 三「科学的な合理性に照らして・・捕獲を伴う調査と非致死的手法による調査とを」
「非致死的調査を前提とし、国際合意のもとで必要最小限の捕獲が可能であれば実施する」に変更
<意見9>
第五 妨害行為については、南極で致死的調査を行うことが「違法操業」と考えられていることを考慮し、合意形成に努めることで乗組員や抗議者の被る可能性のある危険性とかかる経費を回避できる。IWCで決議されたサンクチュアリにおける致死的調査の再考、ICJ判決、科学委員会の評価会議の勧告などをきちんと表記し、致死的な調査を実施しないことがまず必要。
<意見10>
第七「調査終了後における利用」について、二、三「鯨類にかかる伝統的な食文化」は、調査捕鯨を実施が必須条件ではない。むしろ、「食べるために調査の名を借りている」という指摘を強めるので削除すべき。科学調査の正当性を訴えるなら、食文化の部分を分け、どうしても必要と思っている人たちへの配慮のためにも混同させないことが重要。(引用〜意見52)

・本基本方針は平成29年6月23日に成立した「商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律」に基づき定められるものです。
・鯨類科学調査は、商業捕鯨再開に必要な科学的情報を得るために実施しています。
・我が国が実施してきた調査により、いくつかの鯨種や系群では、持続的な商業捕鯨が可能な資源状況にあることが分かっています。
・遅くとも1990年までに見直されることとなっていたモラトリアムは、南極海のミンククジラ等の個体数についてIWC科学会で合意された後も、依然として見直されていません。
・IWCが資源管理機関として機能していないのは、捕鯨を巡る持続的利用支持国と反捕鯨国の根本的な対立に起因していると考えています。(引用〜同水産庁回答)

 こちらは事情通の方。あえて全文引用させていただきました。
 水産庁の回答は4つ。10の意見として基本方針の中で具体的に問題のある箇所とその修正案が述べられてあるのに対し、まったく回答の体をなしていません。きわめて不誠実な対応です。
 1段目の回答は、そもそも立法府が決めた法律に従ってるから「パブコメなんて無視するよ」という宣言に等しいもの。クロマグロパブコメ同様、とことん国民をなめています。
 回答2段目は、上掲で何度も指摘したとおり事実に反していますが、当の回答の4段目、5段目とも矛盾するもの。
 回答3段目、過去に非持続的な乱獲を行い、現在も非持続的な水産業をやめられずにいる日本が主張しても説得力を持ちません。チンパンジーもオオハクチョウも個体数の桁はクロミンククジラと同じ、キタオットセイやミナミイワトビペンギン、カニクイアザラシははるかに多い生息数。しかし、いずれもIUCNのレッドリストで絶滅危惧種として扱われたり、絶滅危惧ではなくともオオハクチョウは日本の国内法や国際条約(日本は未加盟)で、カニクイアザラシは国際条約で手厚く保護されています。いくら個体数についての合意があっても、レッドリストの判定基準となる一定期間における大幅減少と気候変動や重金属汚染に対する脆弱性についての考慮なしに、そして捕獲統計の報告の信憑性を大きく揺るがした悪質な規制違反や密輸・密漁に対する効果的な管理方策の国際合意なしに、モラトリアムの解除などできるはずもありません。そもそも、国際約束のモラトリアムの見直しイコール解除ですらないのですが。
 まあ、いずれにしても、「分かっている」ならもう調査捕鯨の必要はないはず
 <意見4>および<意見5>に対する4段目・5段目の回答がとことんふざけています。「少なくとも1990年の時点では検討できなかった(日本もそれを要求する術がなかった)」のが事実であり、その事実に反する記述があるため、修正すべきだというのが意見の内容。基本方針の記述の具体的な誤りを指摘しているのにもかかわらず、水産庁は事実を認識しながら修正する作業を拒否しているわけです。2006年以降も見直されていないのは、<意見5>に示されているとおり、改訂管理体制(RMS)での合意が成立していないためですが、こちらは全スルー。

 商業捕鯨再開にRMSの合意が必要かについては口チャックだよ。
 商業捕鯨再開できないのは政治的対立のせいだから、基本的にIWCでの交渉や外交的努力がなきゃ解決できないのはわかってるんだよね。だけど、基本方針にそのことは書かないよ。なぜ書かないかは口チャックだよ。
 商業捕鯨再開にはともかく調査捕鯨が必要!!! だけど、本当は根本的な対立が解消されない限り再開なんて出来やしないんだよ。基本方針には書かないけどね。

 これが水産庁の態度というわけです。今回のパブコメをやってくれたおかげで、日本の捕鯨政策の支離滅裂ぶりが改めて浮き彫りになったといっていいでしょう。
 最後の最後、52番が拙意見。内容はリンク上掲。
 で、水産庁の回答がこちら。

・御意見として承りました。我が国としては、鯨類について他の水産資源と同様に、科学的根拠に基づき持続的な形で利用すべきと考えています。また、鯨類の利用は、我が国の文化に根ざすものであり、文化の多様性の観点から、尊重されるべきであると考えています。
・また本基本方針は、平成29年6月23日に成立した「商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律」に基づき定められるものです。(引用〜同水産庁回答)

 筆者はクジラに限らず野生動物保護・動物福祉関連の農水省・環境省あるいは自治体主催のパブコメに多数意見を提出しており、一部を拙HPにて公開しております。
 行徳野鳥観察舎の件では、森田知事の千葉県に要約にすら含められず完全に無視されてしまったため、郵送で送った拙意見にわざわざ別紙のPDFファイルまで用意してくれた水産庁さんの方がまだ真摯に対応していただけたといえるんですけどね。おそらく拙HPからコピペされたんだと思いますが。まあ、クロマグロの担当者よりよっぽど楽な仕事だったでしょうけど。。
 とはいえ、上掲の回答は他のいくつかの意見へのそれと同じ内容をコピペしただけ。真摯と言うには程遠いものだったと言わざるをえません。
 「事実に反したり、重大な誤解を招く記述が多数含まれており、また、国民の多様な意見が反映されていないため、当該方針の発表は見送るべきである」という要約意見は、筆者個人のみではなく約1,000人のツイッターフォロワーさん(捕鯨そのものに反対ではない方々を含む)の意見を代弁するものだと、筆者は思っています。
 筆者は当の意見中で「日本における鯨類と他の水産資源の扱いが別格であること」「他の水産資源すら必ずしも利用されていないか、非持続的な形で利用されていること」、「文化の多様性を口実にすることの矛盾」を具体的な事例や根拠を挙げてはっきり説明しているのですが・・
 さて、皆さんは上掲の水産庁の回答が筆者の意見に対する「答えになっている」と思われますか??
 何より、「事実に反したり、重大な誤解を招く記述が多数含まれており」という筆者の指摘(具体的事例を含む)に対し、水産庁は何の回答も提示しませんでした。
 本来ならば、「基本方針案に事実に反する部分はないと考えます」「(これこれの理由から)誤解を招く恐れはないと考えます」というのが模範的回答のはず。担当者はそれをせずに沈黙したのです。
 あえて挙げるなら、回答の下段、「法律に基づいているから」つまり「国会議員が決めたことだから」ということになるでしょうか。
 パブコメの回答を担当した水産官僚が、美化した偽の日本捕鯨史を真に受ける歴史修正主義者のタイプであれば、「事実に反したりしてないぞ!」と模範回答を寄越していたでしょう。それをしなかったということは、あるいはひょっとしたら、ほんのちょびっとは良心の呵責が働いたのかもしれません。
 けれど、「親(永田町)が白といえば黒いものでも白という」タイプには該当しそうですね。官邸・自民党の前にひれ伏すばっかりですっかり卑屈になってしまった昨今の霞ヶ関事情を考えれば、まあ仕方がないのでしょうが。
 
 日本政府は今回、悪質な乱獲と規制違反を犯し続けてきた日本の重大な責任をなかったことにし、殊更に美化する調査捕鯨政策の基本方針を、国民からの批判に一切耳を貸すことなく、強引に押し通してしまいました。その姿は、やはり戦前の軍国主義の日本を彷彿とさせます。
 同方針の策的に関わった水産官僚も、それを命じた永田町の国会議員たちも、平然と事実を捻じ曲げる歴史捏造主義者の謗りはもはや免れません。
 以下は若手の自民党捕鯨族議員、山下雄平氏(参院佐賀)のFBコメント。


鯨肉の高騰により日本の食卓でのクジラ離れが進んでいます。
調査捕鯨の妨害などにより目標の頭数が確保できなかったことは、科学的な調査にとってマイナスだけでなく、鯨肉を売って調査捕鯨の費用を工面するという仕組みにも多大な影響を与えています。
そして何より鯨肉の価格が高くなってしまって、日本人からクジラの文化がどんどん遠のいてしまっています。
世界には、カンガルーを食べる国もあれば、キツネ狩りをする国もあり、サルを食べる国もあります。
各個々人がそれをどう思うか、他国がどう感じるかはいろいろあるかもしれませんが、国の文化に他国が介入するというのは是認できません。
日本人の中からクジラなんか獲らなくていいという声を上げさせることが他国の狙いなのかもしれませんね。
だからこそ、商業捕鯨の再開に真正面から取り組みたいと思います。(引用)

 過大な枠設定の果てに財政的苦境に陥ったが故のJARPAU末期の自発的減産=A違法判決後のNEWREP-Aの自発的減産=i妨害なし)、「調査捕鯨の費用を工面する仕組み」を変えて湯水の如く税金を投入することを決めた族議員主導の美味い刺身*@制定等、一連の経緯をまるで理解していないことがモロバレ。一般の捕鯨問題ウォッチャー(賛否問わず)に比べても相当に無知。まったく、担当官僚は一体何をやっているんでしょうね。
 「国の文化に他国が介入」とは、近代以降のアイヌや沖縄、あるいは戦前のアジア諸国に対する日本の振る舞いを省みずに口にしていいことではありませんが、南半球の殺さない文化に介入しているのは間違いなく日本の方なのです日本はシカを食べ、イノシシを食べ、サルやキツネは食べずとも大量に殺し(原則保護対象でありながら)、野生動物ではないイヌやネコも食べずとも大量に殺している国です。そのことにケチをつける国は存在しません。しかし、日本に渡ってくるハクチョウやツルを科学調査の名目で大量に殺す国もまた、どこにも存在しません。日本がオーストラリアやニュージーランドのサンクチュアリ内で強行している調査捕鯨はそれとまったく一緒なのです。繰り返しますが、南半球の殺さない文化に介入しているのは間違いなく日本の方なのです。国境を越えて移動する鯨類は国際法でも定められた世界共有の財産=Bもはや一国が独善的に扱っていい対象ではないのに。
 「日本人の中からクジラなんか獲らなくていいという声を上げさせることが他国の狙い」とはまたすさまじいトンデモ陰謀論もあったものですが・・国の方針に対して異を唱えるだけでスパイ・非国民扱いするかのような言い草には背筋が寒くなります。しかもたかがクジラ≠ナ、ですよ?
 IWC・加盟各国にしてみれば、日本政府が国民の意見にすら耳を貸さず、史実を偽り嘘で塗り固めたデタラメな基本方針をこうして押し通してしまったこと自体、「モラトリアム解除など言語道断」と判断するに必要十分な材料となるでしょう。
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2018年06月29日

日経スクープ「日本の新提案」で改めて浮き彫りになった調査捕鯨の違法性


 6月も下旬に入り、日経新聞が捕鯨に関する奇妙なスクープ報道を連発しました。内容は9月に開かれる国際捕鯨委員会(IWC)年次会議で日本政府が行う提案について。

■「豊富なクジラの商業捕鯨再開を」IWCで日本提案へ (6/22)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32097760S8A620C1EAF000/
■商業捕鯨「復活」の好機 IWC総会 (〃)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32119270S8A620C1QM8000/
■鯨肉 10年で4割安く 目標数捕獲、加工品消費も拡大 (6/26)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32235790W8A620C1QM8000/
■「捕鯨枠決議 要件緩和を」 水産庁、IWC提案へ (6/27)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO32266010W8A620C1QM8000/

 変ですね・・同紙は国際司法裁判所(ICJ)の違法判決以降、日本政府のがむしゃらな公海捕鯨推進政策・調査捕鯨の強行に対し、冷静で現実的な視点で苦言を呈する社説・論説を発表してきたのですが・・。
 美味い刺身法$ャ立後に捕鯨サークルが新たに鯨肉を大盤振る舞いした所為で、釣られたおかしな記者なり論説委員が出てきちゃったのかしらん? まあ、一新聞社といっても中にいる記者はピンキリですが、何とも残念なことです。

■捕鯨の現実を見つめ直そう ('14/4/3)
https://www.nikkei.com/article/DGXDZO69306970T00C14A4EA1000/
■調査捕鯨のオウンゴール 建前を貫く覚悟が大切 ('14/4/15)
https://www.nikkei.com/article/DGXNZO69790750S4A410C1TY7000/
■調査捕鯨の強行を懸念する ('14/9/24)
https://www.nikkei.com/article/DGXDZO77436610U4A920C1PE8000/
■調査捕鯨の再開は拙速だ ('15/12/6)
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO94825620W5A201C1PE8000/

 政府は鯨類を重要な食料資源とし商業捕鯨の再開をめざす方針を変えていない。世界の食料需要が増える中で権益を守ることは重要だ。だが、実際に再開が認められたとして、水産会社が再び遠洋に出かけ流通大手が鯨肉商品を店頭に置くようになるのだろうか。
 年間約600万トンある食肉供給に対し、鯨肉の消費量は5千トン前後にすぎない。商業捕鯨再開という目的に合理性があるのか、よく考えてもらいたい。(引用)

 以下に、ツイッター上での記事への反応をご紹介。捕鯨そのものには必ずしも反対でない方でさえ、日本の漁業があまりにひどすぎて国際的に恥ずかしいレベルであるため、いくら「持続的に捕鯨をやります!」と世界に訴えても誰も聞く耳を持ちやしないと、みなさんちゃーんと理解されているようで・・。

https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1010533549814902784
「科学的根拠に基づいた持続的な水産資源の利用を訴える」って、どの口がそれを言うのか。(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1010526338086723584
「科学的根拠」を言う日本が一切科学的根拠を示せずに裁判で負けたことをきちんと報じていればこの記事の日本の言い分が笑いものでしかないことがわかるが知られているかな?(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1010533743793065984
「日本は科学的根拠に基づいた持続的な水産資源の利用を訴える」マグロやウナギでそれが全くできてない日本の説得力を省みようぜ。(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1010190589587943424
えー、国際的に孤立するだけやん。国内ばかり見ないで、国外の動きに神経尖らしてよー。日本人はもはやクジラは食べないんだから。(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1010190323128008704
えーっ…海洋プラスチックゴミには目をつぶる一方で、これは引くわ…(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1010190624383909888
こんなこと敢えてするメリットあるのかな。外交コストがあまりにも高くつく気がするんだけど。(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1010192618926379008
反捕鯨団体の主張は酷いけど、漁業に関しては鰻を絶滅に追いやりつつありながらも保護ができない日本にも説得力は無いよなぁ。(引用)
https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1010192674530340864
こういうことは「意識高い系」の欧米諸国からボロカスに言われてでも堂々と主張すればいいと思うけど、ただしそれは日本が科学的な水産資源管理をちゃんとできるという前提があってこそ。ウナギとかマグロとか、今の現状を放置したままでは相手にされまい。 (引用)

 今総会での日本政府の方針については、日経に続いて他紙も一様に報じました。これは自民党の族議員会合でのレクチャーに続いて水産庁が農水記者クラブにリリースし、それを受けてのものでしょう。

■商業捕鯨再開をIWCで提案へ 反対強く、脱退論も (6/26,共同)
https://this.kiji.is/384260001335968865?c=39550187727945729
■商業捕鯨の一部再開提案へ=日本政府、9月IWC総会で (6/26,時事)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018062601164&g=eco
■政府、商業捕鯨の再開提案へ 9月のIWC総会 (6/26,産経)
https://www.sankei.com/politics/news/180626/plt1806260031-n1.html
■日本、IWC総会に商業捕鯨再開を提案へ (6/27,読売)
http://www.yomiuri.co.jp/national/20180626-OYT1T50092.html
■IWC総会 日本政府が商業捕鯨再開を提案へ (6/27,毎日)
https://mainichi.jp/articles/20180627/k00/00m/020/180000c
■商業捕鯨再開、提案へ 国際捕鯨委総会で 水産庁 (6/27,朝日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13558388.html

 では、改めて22日の日経記事(リンク1番上)およびそこに示された日本政府の主張の問題点を解説しましょう。
 大きなポイントは2つ。

@調査捕鯨の目的と主張内容が大きく矛盾しており、その違法性を改めて明示している。
A捕鯨サークルのお家芸<nッタリ。つまり、これまでの主張同様、現実には受け入れられる余地がなく、国内の支持者に向けたただのアピールと見られる。

 まず@について。
 そもそも日本は一体何のために調査捕鯨をやっているのでしょうか?
 答えは「商業捕鯨を再開するため」=「IWCに商業捕鯨モラトリアムを解除させるため」です。あくまで日本曰く、ですが。 
 つまり、商業捕鯨を再開させるためには、調査捕鯨を実施することがどうしてもどうしてもどーーーしても必要不可欠なのだと。
 裏を返せば、「調査捕鯨をやらないと商業捕鯨を再開させることができない」ということになりますね。
 パブコメの結果を受けて変更なく定められることとなった「商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律に基づく基本的な方針」には、以下のとおり記されています。

http://www.jfa.maff.go.jp/j/council/seisaku/kanri/attach/pdf/180531-6.pdf
商業捕鯨モラトリアムを解除して適切な捕獲頭数を設定するための科学的情報を収集するため、鯨類科学調査を実施するものである。(引用)

 言い換えると、「調査捕鯨をやらない」→「科学的情報を収集できない」→「適切な捕獲頭数を設定できない」→「商業捕鯨モラトリアムを解除できない」という話になります。
 国語的には「調査捕鯨をやらない」→「科学的情報を収集できない」→「商業捕鯨モラトリアムを解除できない」→「適切な捕獲頭数を設定できない」でも通りますが、いずれにしても、日本が調査捕鯨を実施し続けない限り、商業捕鯨モラトリアムを解除できる見通しは立たないことになります。日本に言わせれば。
 だからこその調査捕鯨なのだと。
 ICJで違法と断定されてしまったJARPAU(以前の南極海調査捕鯨)とは異なり、決して美味い刺身の安定供給(by本川元水産庁長官)目的じゃないんだ──と。
 おやおや・・早くも今回の日本の提案との途方もない矛盾が露呈されちゃいましたねえ。皆さん、もうお気づきと思いますが。
 商業捕鯨を再開するために調査捕鯨が必要なら、なぜ今その商業捕鯨再開を要求できてしまうのでしょうか?
 日経記事には「現行の調査計画が終了する2027年以降」(引用)とあります。そう、2016年にスタートしたNEWREP-Aの調査期間は12年と設定されました。実はこれ、ICJでオーストラリアに科学計画と言いながら期限が設定されてない点を突っ込まれ、いつまでもズルズルと続けられる美味い刺身の安定供給*レ的の偽装調査捕鯨だったことがバレちゃったことも背景にあるわけです。
 要するに、最低でもIWC科学委員会に中間報告が提出されその検証結果がまとまる6年+アルファの期間が経過するまで、モラトリアム解除の可否は判断できないはずなのです。商業捕鯨の再開のために本当に調査捕鯨が必要不可欠であるならば。
 日本が今¥、業捕鯨再開を要求するということは、すなわち必要な科学的情報はすでに十分集まり、少なくともこれ以上の調査捕鯨は必要ないことを意味するわけです。
 たった3年で結果が出たということは、12年の期間が必要という見積りが相当甘かったということかもしれませんが、美味い刺身法≠燗ッ基本方針もこれで無駄になっちゃいましたね・・。
 商業捕鯨モラトリアムが導入された経緯には、統計上の数字の修正を迫られるほどの悪質な規制違反が日本を始めとする捕鯨国の捕鯨会社で横行していた明白な事実があり、違法な捕鯨を完全に阻止するシステムこそモラトリアム解除の絶対条件にほかなりません。
 科学調査の名を騙り違法な商業捕鯨をつい最近まで国を挙げてしでかしていた前科のある日本が、後数年の間、もう必要なくなった調査捕鯨をやめられるかどうかが、あるいは加盟国にとってモラトリアム解除の可否を判断する本当の材料≠ノなるかもしれませんね。
 ここでもう少し詳細な背景の補足説明をば。
 現行の日本の調査捕鯨(ICJ違法判決後に南極海と北西太平洋で実施されているNEWREP-AおよびNEWREP-NP)の柱となる目的とは、具体的には「改訂管理方式(RMP)の精緻化」です。
 このRMPについてはIWCですでに合意が成立しているため、「商業捕鯨再開のために調査捕鯨が必要」という日本の主張は前提からしておかしいのです。この点はこれまでにも何度も説明してきたとおりですが、改めて拙パブコメより引用しておきましょう。

http://www.kkneko.com/pubcom5.htm
〈基本方針案〉「第一」を要約すれば、鯨類科学調査(以後〈調査捕鯨〉)の意義とは「『鯨類資源の持続的利用のための』商業捕鯨早期再開のため」ということになる。しかし、「〈調査捕鯨〉を実施すれば、商業捕鯨の早期再開への道が開ける」ことが、上記の背景の記載ではまったく説明できていない。それどころか、前段落では日本の商業捕鯨再開を阻んでいるのが「政治的対立」(引用)であると書かれている。つまり、本当に商業捕鯨を早期に再開するために必要なのは、政治的対立を解消するための政治的努力である。
  実際には、この政治的対立の具体的中身は、前述のとおり、すでに確立したRMPではなく、RMSをめぐる議論である。日本の立場は、「RMPはやっぱり未完成だった」としていったん国際合意を破棄・返上するというものではないはずだ。〈調査捕鯨〉の主目的はRMPの精緻化だが、そもそもRMPに関しては〈基本方針案〉に書かれているとおりすでに国際合意が得られているため、商業捕鯨再開を目指すという趣旨からいえば、RMPの数字を弄り回したところで何一つ役に立たない。国際社会の要請を無視した強行は、むしろ政治的対立を深めるだけで逆効果である。反捕鯨国の懸念に配慮し、保全側にRMPのハードルを高める調整を行う趣旨であれば、まだ理解を得られる可能性もあろう。しかし、4つのうち1つで絶滅リスクがさらに上がるシミュレーション結果が出てもなお捕獲枠を上乗せできると解釈するようなやり方では、ますます強い反発を招くばかりだ。
  「政治的対立」(引用)によって商業捕鯨が再開できないのに、その政治的対立を解消するどころかさらに煽ることで、一体どうして商業捕鯨を再開できるのか。
seichika.png

 今回の日経記事が示す日本の調査捕鯨の違法性は、この点だけに留まりません。
 日経記事の1、2、4番目では、現在NEWREP-Aの対象となっているクロミンククジラのみならず、違法なJARPAUが対象にしてきたナガスクジラとザトウクジラについても言及されています。直截的な表現ではありませんが、再開を要求する対象となる「一部鯨種」はこの3種を指しているとみて差し支えないでしょう。
 しかし、奇妙なことがあります。
 ICJの違法判決以降、日本はナガスとザトウの2種を南極海調査捕鯨の捕殺対象から除外しました。
 しかし一方で、日本は「商業捕鯨再開のため」にはあくまで「RMPの精緻化」が必要だと主張しているのです。そのための年齢組成を調べる経年大量致死調査なのだと。
 日本の主張を整理すると、次のとおりになります。

 商業捕鯨を再開できる種 : クロミンククジラ、ザトウクジラ、ナガスクジラ
 商業捕鯨再開の可否を判断するためにRMPの精緻化が必要な種(要調査捕鯨) : クロミンククジラ
 商業捕鯨再開の可否を判断するためにRMPの精緻化が必要ない種(調査捕鯨不要) : ザトウクジラ、ナガスクジラ

 これはまったくもって筋が通りません。
 興味深いのは、2014年のICJ判決で判事にズバリ指摘された矛盾、日本側が科学的合理的に説明できなかった「クロミンクとザトウ/ナガスのサンプル数の差」というJARPAUの致命的な欠陥を、NEWREP-Aがそっくりそのまま引きずっていることです。
 詳細はICJ判決について解説した拙過去記事をご参照。

■ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html

 二の轍を踏むとはまさにこのこと。捕鯨サークルは「ICJへの再提訴を阻んだから別にどうでもいい」と考えているかもしれませんが。
 商業捕鯨再開を要求する対象もクロミンククジラのみに限定するか(水産庁の言うサベツのないジゾクテキリヨウ原則には反するかもしれませんが・・)、あるいは、ザトウとナガスもクロミンクとビョウドウにRMP精緻化のための調査捕鯨を実施するなら、まだしも整合性は取れたでしょうにね・・。
 ついでに、日経記事中のクロミンクの「高水準で安定」、ザトウとナガスの「年間10%ほどのペースで回復」との表現について補足しておきます。
 クロミンククジラはIUCNの求める3世代期間の生息数推移の情報に基づくなら、CR(絶滅危惧種TA類)に相当する大幅な減少を示しています。種の保全に関わる科学的見地からすれば、クロミンククジラはまさに絶滅危惧種に該当するのです。南半球ナガスクジラが増えているというのは日本独自の主張で、IWCではその生息数についてまだ合意されていません。ザトウクジラは確かに多くの系群で回復傾向が見られますが、紅海系群等一部はまだ深刻な状況で、日本周辺の北西太平洋のように他の海域より回復が遅れているところもあります。ザトウクジラの捕獲禁止はモラトリアムよりさらに20年も遡るのですが。また、捕鯨開始以前の水準にまで回復するまでにはまだまだ年数がかかるとみられています。日経の「鮮明な回復」(引用)という表現はかなり誤解を招くものです。
 チンパンジーであれジャイアントパンダであれミナミイワトビペンギンであれ、オオハクチョウであれナベヅルであれ、ウナギのレベルでとにもかくにも殺さないとビョウドウなジゾクテキリヨウ原則に反するというのが、水産庁や日経記者の立場なのでしょうが・・。

 続いて、Aのハッタリについて。
 日経記事には「総会の決定手続きの変更」(引用)とあり、水産庁の説明通りなのでしょうが、これはきわめておかしな話。
 なぜなら、モラトリアム解除の条件となる附表の改訂に3/4以上の加盟国の賛同が必要なのは、総会手続規則ではなく、国際捕鯨取締条約(ICRW)そのもの(第3条)に記されていることだからです。法的に無体な要求。国際法を軽視する日本ならではの主張とはいえるでしょうが。

■調査捕鯨継続の法律ができて1年/日本の戦略は|ika-net日記
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/1-471c.html

法律をよく知っている人から、それは無理では、という意見をもらった。ICRW第3条に総会に関する規定があり、総会の決議は単純過半数、ただし、第5条の履行に関する行動については4分の3の票の獲得が必要と。(引用)

 大体、過半数で解除が可能なら、なんで票買いしまくって無意味な決議を通した2002年の下関会議の時にそれをやらなかったのかという話になってしまいます。もし、当時の担当者が気づかなかったのであれば、推進派から究極のド阿呆と非難されても仕方ない話。ド阿呆の中には捕鯨協会を含むサークルの古株が全員含まれるのは当然のことですが。

 この過半数の議決条件について、マスコミは「反捕鯨国にもメリットのある決定手続きの要件緩和」(引用〜共同手続)と伝えています。具体的には日本の妨害で棚ざらしにされている南大西洋サンクチュアリ等を指すわけですが・・冗談もほどほどに。
 反捕鯨国にとってはまったく何一つメリットなどありません。
 なぜなら、もし仮に過半数を制してサンクチュアリを可決できたとしても、留保された時点で意味をなさないからです。商業捕鯨モラトリアムを解除されたうえに、留保した国にサンクチュアリ内で捕鯨をされた日にゃ目も当てられません。モラトリアム解除の要件を厳しいままにしておく方が、はるかに、はるかに重要なのです。
 ブエノスアイレスグループを始めとする関係国は、狡猾ともいえない日本のエゴ丸出しのバカげた提案に決して乗ったりなどしないでしょうけど・・。
 外房捕鯨見学会に参加していたサントメ・プリンシペなど、このところ日本が懸命な買収工作で支持国を増やし、ジリジリとIWCで勢力を拡げてきているのは確かです。基本的に、一部の国(アイスランド・ノルウェー・ロシア・韓国)を除くと、他の捕鯨支持国は判を押したように日本の主張に賛同するだけで、当事国に公海商業捕鯨を実施する能力もなければ国民にとって何一つ益がないこともはっきりしているわけですが。
 そして、日本の再開要求が通らなかった場合として、各紙が報じているのが「脱退論」。
 これはもう毎度毎度耳タコの話。

一方で、頻繁に繰り返される「IWCからの脱退」と「新組織の設立」だが、公海に関しては国連海洋法条約のしばりで近隣諸国との合意が不可欠なので、近隣諸国との外交手腕が試される(!)。(引用〜上掲IKANブログ記事)

 ちなみに、ここでいう近隣諸国とは、南極海であればオーストラリアやニュージーランド、北太平洋であれば米国。それらの国々の合意なしには、いくらODAと引き換えに言いなりになってくれるアフリカやカリブ海諸国を引き連れて新組織を立ち上げたとしても、日本が公海で商業捕鯨を行うことは絶対にできないということです。国連海洋法条約まで脱退すれば話は別ですが、国際社会からNPTを脱退する北朝鮮と同列の扱いを受けることは火を見るより明らか。
 おなじみ環境外交の専門家・東北大石井准教授も次のように指摘しています。

https://twitter.com/kamekujiraneko/status/1011946475994079232
日本政府が南極海捕鯨の全面撤退、調査捕鯨条項の改正に応じない限り、反捕鯨国が同意してくれることはあり得ません。これは交渉関係者なら分かりきってますので、この提案は「IWC劇場」の演技です。(引用)

 母船の老朽化、消費低迷、財政悪化、ICJ敗訴と負け¢アきで、永田町・霞ヶ関の一部関係者からは「フェイドアウトもやむなし」と突き放され、危機感を抱いた捕鯨協会が族議員をに発破をかけ、美味い刺身*@を強引に成立させ、デタラメなプロパガンダ映画を作らせてネトウヨを焚き付け、枷を取っ払って税金を投じ、なりふりかまわぬ買収外交や消費拡大策を推進中──これが目下の捕鯨ニッポンの状況。
 しかし、こんな無茶苦茶なやり方をいくら続けても、捕鯨協会の思ったとおりに事が運ぶことは決してありません。
 ここで紹介した一般の方々が懸念を抱くように、日本の対外イメージをますます悪化させるばかりです
 今回の日経記事は、ICJ判決、悪質な規制違反や密漁というモラトリアム成立に至った歴史的背景、RMSをめぐる議論などをすべてすっ飛ばしており、ともかく悪質。やっぱり鯨肉マニアの記者が書いたんでしょうね。
 なお、3番目の記事の問題点については以下の拙ツイートをご参照。

posted by カメクジラネコ at 19:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2018年05月23日

調査捕鯨の根拠は支離滅裂──美味い刺身♀本方針案パブコメに意見を!

 先月4月27日、水産庁が調査捕鯨の基本方針に関するパブコメを募集しました。

■「鯨類科学調査を安定的かつ継続的に実施するための基本的な方針(案)」に関する意見募集(パブリックコメント)について
■鯨類科学調査を安定的かつ継続的に実施するための基本的な方針(案)
 実は別件で少々バタバタしてたのと、筆者の勘違いがもとで、締切ギリギリになるまでチェックできず(--;;
 締切直前になってしまったのですが、本日5月23日に水産庁に意見を送りました。

■美味い刺身♀本方針案パブコメ

 パブコメであんまり長いのも誉められたこっちゃないのですが・・意見の最後で述べたとおり、サークル側の捕鯨協会や海員組合と違い、組織票を動員できるほどの団体は日本国内にはありませんからね、クジラの側には。捕鯨政策は圧倒的多数の国民にとって何の関わりもないことですし、家族の犬猫のためならいざ知らず、遠い遠い南極の海に住む野生動物の話。いくら「別に世界の反対を押し切って南極まで押しかけなくてもいいんじゃないの?」という常識的意見が多数を占めたとしても、忙しい日々で時間と労力を割いてわざわざ意見を官庁に送ってくれるのは、よっぽど奇特な方でしょう。
 そうは言っても、もし送ってくれるという方がいらっしゃったら、ぜひ参考にしていただければ幸いですm(_ _)m もう時間が残されていませんが(汗)

 以下にポイントをまとめておきます。
 パブコメ公募サイトに当の方針案のPDFファイルが張っつけてあるので(上掲リンク)、合わせてお読みください。
 まず、今回のパブコメは、昨年の国会で鯨肉に釣られた族議員たちが強引に押し通してしまった美味い刺身*@のもとで制定されるもの。美味い刺身*@の問題点については、以下でおさらいをば。

■美味い刺身*@は廃止を!(プレゼン資料)
http://www.kkneko.com/sasimi/p01.htm
■ちぐはぐ族議員とグルメ好事家官僚が明かした美味い刺身*@のデタラメ
http://kkneko.sblo.jp/article/180420343.html

 それにしても基本的な方針≠ェここまでデタラメでいいのかと、正直あきれ返ってしまいます。
 まず、「第一 鯨類科学調査の意義に関する事項」として、商業捕鯨モラトリアム導入に至る経緯が概略的に述べられていますが、のっけから間違いだらけ
 2段落目の記述(PDF p2)は、あたかも乱獲が起こったのは二十世紀前半までで、IWCが設立されてからは科学的に管理されて乱獲などなかったかのように書かれています。が、とんでもないデタラメです。
 水産庁すら半世紀以上絶滅危惧種と認めているシロナガスクジラは、1960年代まで未だ捕獲され続けていました(南半球で捕獲禁止になったのが1963/64漁期から、北半球まで含めて全面禁漁となったのは1966年以降)。もちろん、日本の捕鯨会社によっても。
 また、1972年まで捕獲枠はBWU制に基づいていました。例のストックホルム人間環境会議で商業捕鯨モラトリアムが提唱されるまで
 BWUとはBlue Whale Unit、シロナガス換算。どういうものかというと、シロナガスなら1頭で1、ナガスなら2頭で1、イワシクジラなら6頭で1という計算で、しかも、ブッコミでいいよという、メッチャクチャいい加減な代物。非科学的なんてもんじゃありません。このBWU制があったせいで、ナガスクジラを捕りつつ、運よくシロナガスを見つけたらそっちを捕る(大きいし一度ですむのだから、当然そうしますわな)なんて真似が許されたのです。全面禁止後半世紀以上経っても絶滅危惧の状態を脱することが出来ないほどシロナガスを追い詰めたのは、専らこのBWU制の所為といっても過言ではありません。
 また、その後も大手捕鯨会社の人間がバイヤーとして関わっていた悪名高いシエラ号などによる密漁・密輸、非加盟国の沿岸基地を利用する規制の裏を掻く悪質な脱法行為等のため、IWCの規制は有効に機能した試しがありませんでした。近年、米国海洋大気局(NOAA)が発表したとおり、あまりにも悪質な規制違反のおかげで捕鯨統計の数字自体が信用できない始末。最も悪質な二大規制違反大国こそ、旧ソ連と日本でした。

■乱獲も密漁もなかった!? 捕鯨ニッポンのぶっとんだ歴史修正主義
■真・やる夫で学ぶ近代捕鯨史

 なんで担当者の水産官僚は基本をちゃんと勉強しなかったんでしょうね・・
 基本方針案では続いて、モラトリアムについて「科学的根拠に基づくものではない」「科学的根拠が欠けている」(引用)といった表現を用いて一蹴していますが、そもそも科学的根拠がはっきり断定できるくらいなら野生生物の絶滅なんて起きてやしません。「不確実性」を理由にモラトリアムが導入されたのは、今では環境問題の文脈で当たり前となった予防原則に基づくもの。予防原則を認めずに「科学的根拠がない!」と言い張り続けているのは、捕鯨業界にどっぷり依存して乱獲を放置した責任を負おうともしない、脳ミソが1970年前のまま凝り固まった御用学者たちです。
 そして、この基本方針案には実に驚くべき表現が。

このような極端な考え方を広く適用すれば、鯨類以外の多くの海洋生物資源の利用も否定されることに繋がりかねない(引用)

 ことあるごとに原則∞原則≠ニ唱える捕鯨サークルのジゾクテキリヨウ原則論≠ナすが、ここには致命的な誤りがあります。
 米国、オーストラリア等の代表的な反捕鯨国は、いずれも漁業・水産物消費の盛んな漁業先進国であり、持続的漁業において日本より先行しているのですから。

■オーストラリアから学ぶ日本の漁業の将来 (小松正之 上席研究員)|東京財団政策研究所
■成長する米国漁業〜自由競争を諦めたところがスタート地点|勝川俊雄公式サイト
■ニュージーランド Archive|〃

 対する持続的漁業の落第生%本の漁業のお粗末ぶりについては、漁業者・NGO・研究者から何度も発信されているとおりで、今更筆者が取り上げるまでもないこと。
 上掲拙提出意見では、新たにカスミ網、啼き合わせ問題を例にツッコミを入れて見ましたが、一貫性のかけらもない水産庁のジゾクテキリヨウ原理主義≠ノついては、これまでも解説してきたところ。

■持続的利用原理主義すらデタラメだった!

 基本方針案の問題点に戻ると、次に出てくるのはモラトリアム見直し問題(PDF p3)。ここにもすり替えが。
 方針案の文面自体を読めばわかりますが、IWCは10年後に「捕獲枠を設定する」なんて言ってやしません。「捕獲枠の設定を検討する=vです。最後の一語をすっ飛ばすところに、水産庁の悪質さがうかがえます。
 実際には、合意できたのは改訂管理方式(RMP)まで。日本の捕鯨会社が犯したような悪質な規制違反を防止するために不可欠の改訂管理体制(RMS)で合意が成立しない限り、モラトリアム解除という次のステップに進むことなどできやしないのです。
seichika.png
 まただんだん長くなってきちゃったので、以下は箇条書きで。

・「附表10(e)の規定どおりに(調査捕鯨を)実施」「国際法を遵守する」「ICJ判決の趣旨を踏まえる」とあるが、合法だと主張して来たはずのJARPAUが附表10(e)違反に問われたにもかかわらず、なぜ違反したのか、どうすれば違法行為の再発を防止できるのかの説明が何一つない。また、ICJ判決で「調査捕鯨の目的が科学目的かどうかは当該国のみの判断には委ねられない」と指摘されたにもかかわらず、その判決の趣旨を踏まえず、調査捕鯨の目的の合法性の判断を外部に委ねる仕組みが出来ていない。

・基本方針案には、商業捕鯨再開が実現しないのは「政治的対立」が原因であることが明記されている。にもかかわらず、その政治的対立を解消する努力をすることなく、各国が反対する調査捕鯨を独断で強行することによって、商業捕鯨早期再開の道が開けるはずはなく、同方針案の表現は矛盾だらけである。

・致死調査と非致死調査を適切に¢gみ合わせるとあるが、何が適切≠ゥの定義や判断基準が何も記されていない。「法令順守」を掲げるのであれば、動物愛護法第41条に定められた動物の科学利用の際の「代替」「削減」「苦痛の軽減」(いわゆる3R)の検討を明記すべき

・妨害行為への対応は、海上保安庁に無駄な業務を強いる予算の無駄遣いである。南極海から撤退して北半球に限定するだけでも、予算は大幅に削減可能。それよりも、持続的漁業の大きな障害となっている密漁対策に充てるべき。

・広報予算を政府と事業実施主体別々に使うのは税金の無駄遣い。デマの発信に税金が注ぎ込まれるのを防ぐ仕組みもない。

 このように問題だらけの基本方針案ですが、

「伝統食文化というが、相撲の女人禁制と同じ」
「南極海でまでやる必要はない」

 といった短いメッセージで十分です。
 利害関係者ばっかり、食通ばっかり、ネトウヨばっかりで国の方針が決められちゃうのは嫌だな〜と思ってくれた方は、ぜひ一言意見を送ってください!

posted by カメクジラネコ at 16:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2018年03月07日

デマ屋と化した竜田揚げ映画監督、シーシェパードに代わって独り相撲・その3

◇デマ屋と化したトンデモ竜田揚げ映画「ビハインド・ザ・コーヴ」八木監督、シーシェパードに代わって独り相撲・その3

 シリーズ3回目。筆者としてもこんなに引っ張らされるとは思いませんでしたけど。
 検証するのはデイリー新潮オンラインの以下の記事。

■反捕鯨の本拠地で「ビハインド・ザ・コーヴ」が最優秀監督賞をもらったワケ
https://www.dailyshincho.jp/article/2018/03010700/

 記事の日付は2/27になっていますが、URLを見てもわかるとおり、実際には3/1に掲載されたもの。
 正確に言うと、まったく同じタイトル・内容の記事が2日前の2/27午前中にいったん公開されたのですが、なぜか午後には削除されていたのです。それが以下のURL。リンクを開けば「お探しのページが見つかりません。」との表記。


 ちなみに、ヤフー掲載版は上書きされているものの、ライブドア版はデイリー新潮自身のサイトと同様、削除したページとは別のページを新たにアップ。
 筆者は当初、八木氏のコメントが捕鯨サークル的に見てもあまりにヤバすぎる内容だったため、待ったがかかったのではないかと勘繰りましたが、修正もなく再掲されたところを見ると、どうやらデマを放置する気のようですね・・。
 さっそくツッコミに入りましょう。前回同様、Y:が八木氏本人のコメント引用。

英国といえば、国際捕鯨委員会(IWC)の事務局がある反捕鯨の拠点である。(引用)

 この記事を書いた新潮編集者は救いようのない阿呆ですな。八木氏にインプットされたのであれば、救いようのない阿呆は八木氏本人ですが。
 IWCは国際条約に基づき設立された機関であり、同委員会自体は完全に中立です。議長と副議長は捕鯨賛成・反対両派から交互に選ばれる形。現在の議長は日本の森下丈二氏。必ず与党から議長が選出される日本の国会よりよっぽど公平。
 新潮のアホ表現をユネスコの下部審査機関イコモスに当てはめてみましょうか。ネトウヨ風に。

フランスといえば、従軍慰安婦資料の登録を促したイコモスの事務局がある反日の拠点である。

 阿呆です。
 まあ、捕鯨に反対する多くのNGOがあり、市民の多くも反対しており、そもそも英国政府自身が明確な反捕鯨の立場なのは確かに事実ですが。
 冒頭から要らんこと書いて記事のレベルを思いっきり下げる、これが《新潮クオリティという理解でいいんですかね。
 その他の問題点については、以下のとおり週刊新潮WEB取材班に対して質問状を送りました。

■デイリー新潮掲載記事『反捕鯨の本拠地で「ビハインド・ザ・コーヴ」が最優秀監督賞をもらったワケ』への質問状
http://www.kkneko.com/shincho.htm

 重複になりますが、以下に解説します。

Y:「(ザ・コーヴ上映の)その4年後にはオーストラリアから、日本の調査捕鯨は商業捕鯨の隠れ蓑だとして国際司法裁判所(ICJ)に訴えられて、日本に見直しを求めました(編注:その1年後、ICJが示した調査目的の捕鯨が許される条件を満たしているとして、日本は調査捕鯨を再開)。」(引用)

 間違い。事実を指摘すると、オーストラリアがICJに提訴したのは「4年後」ではなく2010年のことで、同政府は数年かけて法的な検討・準備を重ねており、「ザ・コーヴ」の上映とはまったく無関係です。うろ覚えをしたり顔で吹聴しちゃういつもながらのデマ屋ぶり。事実を確認して編注を加えることをしなかった新潮編集部もメディアとしてお粗末ですが。
 また、八木氏の主語をごまかす曖昧な表現は「オーストラリアが見直しを求めたが、ICJの示した条件は満たしており(違法性がなかったので)再開した」とも受け取られかねないものですが、そのような趣旨であれば、やはりまったく事実に反します。
 ICJは2014年3月の判決の中で、日本の調査捕鯨(JARPAII)が国際捕鯨取締条約第8条に定める合法的な調査捕鯨に該当しないこと、同条約附表第10項(d)(e)及び第7条(b)に違反し国際法を破ったとはっきりと認定しています。また、「発給された捕獲許可が科学研究目的であるかは、当該発給国の認識のみに委ねることはできない」(判決文パラグラフ21)、「サンプル数は調査目的に照らして合理的でなければならない」(同22)とも判示しています。同22は、JARPAIIのサンプル数の鯨種毎の相違を日本側が科学的合理的に説明できず、「美味い刺身の安定供給」(〜本川水産庁長官(当時)の国会答弁)による恣意的な設定だったと認定されたことに基づきます(ICJ判決文パラグラフ211及び197)。
 日本政府はJARPAIIを国際法違反とするICJの判決を受け入れており、1年半後に開始された新南極海調査捕鯨(NEWREP-A)は違法なJARPAIIとは別というのが、あくまで日本政府自身の建前です。もちろん建前だ≠ネんて日本政府自身は言いませんけどね。
 JARPAIIは国際条約上の調査捕鯨ではなかったため、そもそも「再開」ではありません。調査捕鯨に該当しないJARPAII同様の違法捕鯨を「再開」したという批判は厳然として存在しますが。
 編注の部分は当然ながら新潮編集部の文責になりますが、これでは「国際条約違反の捕鯨を再開した」という趣旨にも、「もともと違法でなかった調査捕鯨を再開した」という、ICJ判決を認めない趣旨にも受け取れ、どちらであれきわめて問題の大きな表現です。また、「ICJが示した調査目的の捕鯨が許される条件」とは、具体的に何を指しているのか、ICJが提示した条件の「すべて」なのか、それとも「一部」なのかも読者には判然としません。少なくとも、「すべて」でないのは明白な事実なのですが。
 ICJが示した条件の中には、上掲した判決文パラグラフ21「発給された捕獲許可が科学研究目的であるかは、当該発給国の認識のみに委ねることはできない」も含まれています。新潮編集部の脚注の表現はこの条件をも満たしたと受け取られかねないもので、実に悪辣なミスリード。一部さえ満たせば国際条約違反に該当しないと新潮編集部が考えているのであれば、新潮社も遵法精神の非常に希薄な企業といわざるを得ませんが。

アカデミー賞では受賞には至らなかったが、監督の挑戦は続いた。昨年(17年)8月25日から、映画はNetflixを通じて23カ国語版が海外189カ国に配信されるようになった。日本映画としては非常に珍しいケースだ。配信3日後には、シーシェパードの創立者ポール・ワトソンは、日本の調査捕鯨への攻撃を一時中止すると表明した。さらに太地町へ人員を送ることも難航し中止を表明した。そこに今回は、反捕鯨デモの最大拠点ともいえる英国の映画祭での受賞も加わったのだ。(引用)

 これまたビックリ仰天の記述。まるで、配信からたった3日で同映画のシンパによる抗議活動が全世界で巻き起こり、シーシェパードを追い込んだかのよう。何よりSSCSの連中自身が寝耳に水でしょう。
 SSCS、ワトソン本人の発表にもあるとおり、背景にあるのは日本鯨類研究所との米国での法廷闘争、日本側の妨害対策、昨年日本で施行された法律(に対する誤解)であり、同映画の配信にこじつけるのは牽強付会もいいところです。もし、シーシェパードの活動方針を変更させた主因が同映画にあるという具体的な根拠があるのなら、新潮編集部は具体的に明示するのがスジというもの。配信開始翌日、ヨーロッパのどこそこの都市で云千人が参加する「竜田揚げ万歳デモ」が起こったとか。

Y:「また、一般的に言われていることとは逆に、西洋人も油だけでなく生活用品に鯨の髭を使用していたことを紹介しており共感を呼んでいます」(引用)

 八木監督オリジナルのきわめてユニークなコメント。
 文章そのままに解釈すると、「西洋人も油だけでなく生活用品に鯨のひげを使用していた」ことが、「一般的に言われていること」とは逆≠セという趣旨ですね。
 ということは、「西洋人は油だけ使用していた(生活用品には使用していなかった)」という言説が一般に流布していると八木氏はおっしゃっているわけです。米、英、オーストラリア等の国で。
 いや〜〜、初耳ですねえ。2年前からのめり込んだという八木氏と違い、筆者は長年捕鯨問題に関わってきましたが、それらの国々でそんなビックリ言説が一般的≠セなんて話は一度も耳にしたことがありません。
 まず、それらの国々には太地の町立博物館にも引けを取らない、中世・近代の捕鯨に関する史料を展示した立派なミュージアムがあり、庶民に負の側面を含む正しい西洋捕鯨史を伝えていますし、一般教養をお持ちの方であれば、それらの博物館に行ってなくてもコルセットやピアノの弦等にクジラの鬚が使われていたくらいのことは普通に知っていますよ。
 西洋諸国で生活用品に使われていたことと、日本の現代の調査捕鯨の是非に、一体全体何の関係があるのでしょう?
 はたして、いわゆる鯨体完全利用神話が八木氏の念頭にあり、いつものごとく明後日の方向に話が飛躍してしまったのかどうかは定かではありません。
 しかし、いずれにしても、捕鯨サークル当事者(和歌山県・仁坂知事を含む)がデマを積極的に発信し続けたが故に「(日本人と違って)西洋人は油だけ使用していた」という一般的に言われていること≠ェ日本では£闥してしまっているのは事実です。八木氏の映画は、その日本で一般的になってしまったデマを拡散する役割しか果たしていませんが。

■「油目的で肉を捨てていた西洋と異なり、日本はクジラを余すところなく完全利用してきた」って本当?
https://togetter.com/li/1012491

 「この映画を観て初めて知った! 共感した!」という人は、八木氏の脳内にしかいないか(思いきり勘違いしただけ)、八木氏と同水準の奇特な方が1人、2人いただけに違いないと、筆者は確信します。

Y:「鯨を日本人が食として利用、海外では軍事としての利用など、“残虐性”についても真逆であったこと」(引用)

 ここも注目に値するコメント。
 八木氏は動物福祉における残虐性≠フ新たな定義をデイリー新潮上で提唱しました。

 「食として利用」=残虐でない  「軍事として利用」=残虐

 捕獲方法、保管方法、飼育環境、屠殺方法、致死時間、社会行動学知見や生理学的データ等、今日の動物福祉において熟慮勘案されるべき要素をばっさり切り落とす、恐るべき動物フクシ基準。
 いわゆる先進国のほぼすべて、アジア・南米を含む他の多くの国々においても、もはや動物福祉(アニマルウェルフェア)の概念を抜きに動物の取り扱いを語ることはできません。法規制の中身には国によって細かい差異があるものの、基本概念はグローバルスタンダードとしてすでに確立されています。その特徴は、動物福祉後進国・日本において見られがちな感情的な愛護≠ナはなく、科学的指針に基づくアプローチであることです。ちなみに、学問としての生命倫理・環境倫理の中で議論され、またラディカルなNGOが唱えるアニマルライト(動物の権利)は、動物福祉とは別物。
 対象は実験動物、産業動物(畜産)、愛玩動物、野生動物(狩猟・駆除)、展示動物(動物園・水族館)であり、追い込み猟経由のイルカ調達を禁止したWAZA(世界動物園水族館協会)の倫理規約もこの流れに沿ったもの。ユネスコや国連食糧農業機関(FAO)、世界動物保健機関(IEO)等国際機関にも取り入れられています。
 もちろん、その動物福祉後進国の日本においても、動物愛護関連の法規は先進国(特に英国)のそれをお手本にする形で制定され、他の先進国に近づこうと改良≠重ねている段階。八木氏や新潮編集部に言わせれば改悪≠ノなりそうですが。

■5つの自由を知っていますか?|環境省ツイッター式アカウント
https://twitter.com/kankyo_jpn/status/907893415731273728
■アニマルウェルフェアについて|農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/animal_welfare.html
■アニマルウェルフェア(動物福祉)―日本の状況 
http://www.hopeforanimals.org/animal-welfare/311/
■小泉進次郎が憂慮した東京五輪のおもてなし
http://toyokeizai.net/articles/-/197890

 従来から環境省所管の「動物の愛護及び管理に関する法律」の下に「産業動物の飼養及び保管に関する基準」という法律より弱く基準の不明瞭な(言い換えれば諸外国より遅れた)ガイドラインはあったのですが、最近になって農水省が「アニマルウエルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」と銘打ったガイドラインを掲示しています。実はこれ、2年後に控えた東京オリンピック前に急慮打ち出されたもの。
 そう、FTA(自由貿易協定)の締結やオリンピックの開催も、動物福祉を避けて通ることはできないのです。何しろ、動物愛護議員連盟の国会議員に日本の畜産業における動物福祉の現状は「中国やフィリピンより劣っている」とまで指摘されるほど。
 動物福祉そのものに無知無頓着な市井の反反捕鯨派の主張とは裏腹に、およそ大抵の生き物の取り扱いにおいて日本は他の先進国の水準に達していないのが実情なのです。巷の反反捕鯨が「じゃあ、こっちはどうなんだ」とギャーギャーうるさい家畜の取り扱いにおいても。
 そして、他の先進国に比べて甘い指針さえ存在しない鯨類は、まさにウシやブタ未満≠フ扱いを受けているのです。日本においては。
 捕鯨に関しては、ノルウェーでは銛を撃たれてから死ぬまでに(致死時間)5時間以上かかったケースが報告されてますし、即死率が半分でしかないことも海外では問題視されています。太地は2008年になってようやく屠殺法にフェロー諸島から脊椎切断法を導入したものの、動物福祉とまったく無関係に残虐性を独自解釈し、「海が真っ赤に染まる(=残虐)ところを見られたくない」という理由で致死時間を引き延ばす形に改変されました。追い込み猟の捕獲方法や水族館の飼育展示への批判も、すべて動物福祉の観点で鯨類の特性を科学的に評価したうえでのこと。
 では、世界に類を見ない八木氏の新定義≠ノ基づき日本の動物福祉政策を抜本的に変更した場合、一体どういうことになるでしょう?

 「軍事利用しないこと。後はすべて却下」

 「5つの自由」「1つの自由」のみに。

 1.軍事利用されない自由

 動物実験の「3R」「1R」に。

 1.軍事利用しないこと(Refusal for Military Use)

 鯨類の扱いに目をつぶれば国内でも国会議員を含めて決して少なくない動物福祉推進派は、みんな目が点になるでしょう。海外旅行客は激減、当て込んでいたレストランは閑古鳥、FTAもオリンピックもご破算に。
 もっとも、八木氏は他の動物の取り扱いは別にどうでもよく、「ともかくクジラだけは私の定義≠採用してくれ!」と言いたいのかもしれませんが。
 クジラだけはサベツしてくれ、と。
 八木氏の「海外では軍事としての利用」とは、主に米ロによる軍用イルカのことを指しているのでしょう。
 確かに、軍事利用は間違いなく、米軍自身が主張するあくまで平和のための掃海目的だとしても、用途云々抜きに動物福祉≠フ観点から問題があり、特に水族館飼育とは並列で議論される余地があります。殺人兵士説はゴシップネタとして無視するとしても。これはまた軍用・警察用に使われるイヌやアシカ等他種の動物とも共通する課題です。
 もっとも、反対運動を続けてきたWDCによれば、米海軍は2012年、掃海用のイルカ訓練プログラムを5年後を目処に終了する予定だと発表したとのこと。


 残念ながら、米海軍のこの約束は守られていません。ハワイ連邦地裁によるソナー使用禁止判決が最高裁で覆った件も、ジュゴンの保全を省みない沖縄の辺野古基地移設にしても、世界中から反対の声があがっても一朝一夕に変わらないのは、ヒトの命を軽んじる組織としての特性故でしょう。日本と海外とを問わず。
 「はたして本当に兵器・基地・軍隊・戦争の犠牲は必要なのか?」という命題は、ヒトの倫理としてもっと真剣に考えられるべきことですが。日本と海外とを問わず。
 ともあれ、八木氏の主張には大きな矛盾が2つあります。
 第一に、日本でも動物の軍事利用は行われています。

■防衛医科大学校は回答なしだが、翌日作成のファイルをこっそりup
http://animals-peace.net/experiments/ndmc-animalresearch.html
■レーザー誘起衝撃波を用いたマウス爆傷モデル
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/meeting/kyumei/sonota/pdf/05/007.pdf

 八木氏の主張が「日本だけが動物を食用にし、海外では動物を軍用にしている。だから、日本より海外の方が残虐だ」という趣旨なら、単純に間違い
 「他の動物はどうでもいいが、鯨類を軍事利用することだけは残虐であり、よって日本より海外の方が残虐だ」という趣旨なら、非論理的なクジラ差別主義者兼排外主義者という以外の説明はつきません。
 少なくとも軍用イルカを禁止する法規制は日本にはなく、今のところ実績がないというだけの話ですが。
 もう一つ、もっと重大な致命的矛盾は、太地町の組合自身が鯨類の軍事利用に直接関与しているということです。

■軍事用として注目の太地町イルカ 露、ウクライナ等に輸出(週刊ポスト, '14/9/5)
http://www.news-postseven.com/archives/20140829_272949.html

 1989年とだいぶ遡りますが、太地は米軍向けにもハナゴンドウ2頭を輸出したことがあります。つまり、日本・太地は、敵にも味方にも兵士を売る傭兵国家に相当する位置づけでした。
 少なくとも米国が今後太地から再度イルカを購入する可能性はなさそうです。となると、太地の組合は国家にとって長年仮想敵国とされてきたロシアを相手に商売をする死の商人≠ニいっても過言ではないでしょう。
 もっとも、北方領土をめぐって紛争関係にある敵国といっても、こと捕鯨に関しては日本とロシアは密接に結び付いたお友達の関係。なんといっても、かつては「大洋漁業ロシア事業部」と言われるほどのお得意先。両国とも最後まで母船式商業捕鯨を続け、乱獲と悪質な規制違反の限りを尽くした戦後の二大捕鯨大国なのです。ロシアは今では商業捕鯨から撤退し、チュコト半島での先住民生存捕鯨のみ行っていますが、律儀にも日本の捕鯨を支持し続けてくれてますし、日本側も便宜を図り、オーストラリアが領有権を主張する南極海サンクチュアリを傲然と侵襲しても、日本自身が領有を主張する北方領土周辺では非科学的に調査捕鯨を控えるくらいですから。
 八木氏の動物フクシ新定義≠ヘ以下の形に修正を余儀なくされそうです。

 「動物を軍事利用することを残虐≠ニいう。ただし、捕獲した動物を軍事利用する相手に売るだけなら残虐≠ニはいわない」

 支離滅裂の一語に尽きますね。
 こうした主張は、国内の一握りの狂信的な反反捕鯨シンパにはウケるでしょうが、海外の目にはただ非常識としか映らないでしょう。
 八木氏はどうやら動物福祉に関する議論は入り口に立つことさえ拒絶している印象があります。「動物福祉とは何か」をまず一から学ぶという姿勢がまったく見受けられないのです。

感情的にならずに、客観的な証拠を出せば、納得せざるを得なかったのだ。(引用)

 受賞理由は「ともかく情熱的だったから」だったのでは? 感情的にならずに情熱が伝わるもんなんですかねえ。同じ部門にエントリーされた他のどの作品の監督より八木氏が激情を迸らせていたから、審査員もそれにアテられて賞を獲れたのではないかと筆者には思えるのですが・・
 納得したのは救いようのない阿呆の新潮編集部だけでしょう。
 これまで見てきたとおり、八木氏の主張はおよそ「客観的な証拠」を欠いたものばかりですが、中でも最後のコメントがその最たるもの。

Y:「反捕鯨活動家は、豊富にいる鯨が絶滅種であるように、うまくキャンペーンを繰り広げている。むしろ鯨を過剰に保護しすぎたために、鯨のエサであるオキアミや小魚が減って、生態系が崩れてきています」(引用)

 捕鯨問題ウォッチャーには鯨体完全利用神話と並んで耳タコの都市伝説、それがトンデモクジラ食害論です。
 「豊富にいる鯨が絶滅種であるように」という主張には、野生動物問題全般に対する八木氏の無知が露呈しています。ミナミイワトビペンギンは生息数250万羽、キタオットセイは129万頭、ともにIUCNレッドリストでは3世代減少率に基づき絶滅危惧種(VU:危急種)に指定されています。IUCNでさらに絶滅危惧度の高いEN:絶滅危惧IB類となったニホンウナギは、あえて個体数を算出するなら810万尾。絶滅の恐れがあるかどうかは、個体数の推移や生息環境の悪化等の要因を考慮に入れ、あくまで予防原則に基づき判定されるもので、数のみでは判断できません。
 クロミンククジラはまだ個体数推定の議論に決着がついていない2008年に判定を受けたため、IUCNレッドリスト上ではDD(情報不足)となっていますが、約10年ほどの期間に72万頭から51.5万頭へと激減したことで合意されたため、ガイドラインに従って判定するなら、最も絶滅危惧度の高いCR:絶滅危惧IA類が適用されてもおかしくありません。気候変動の影響を特に受けやすい種であることもWWF等NGOや研究者から指摘されています。
 八木氏はきっと、「豊富にいる各野生生物種が絶滅種であるように、IUCNやWWFはじめ世界中のすべての野生生物保護団体と研究者がうまくキャンペーンを繰り広げている」と言うのでしょう。あるいは、クジラ以外はどうでもいいか。
 「鯨を過剰に保護しすぎた」という主張も真っ赤な嘘。パンダやコアラをはじめ、陸上(淡水域含む)の野生生物種の場合、環境を復元した保護区の設立や増殖事業など、積極的な保護対策を択ることが比較的容易です。しかし、鯨類は増殖・リリースのハードルがきわめて高く(大型種は事実上不可能)、生息環境も汚染や開発の影響を取り除くことが困難です。結局、「保護対象種」「保護区」として名づける以上のことは何もできず、せいぜい獲らない≠フが関の山。保護が求められる他のどの野生生物種と比べても、「過剰に保護されている」どころか「圧倒的に過少な保護しかできていない」のが事実なのです。
 耳タコのトンデモ食害論、「鯨を過剰に保護しすぎた→生態系が崩れた」証明する学術論文は1本も存在しません。サークル自身が掲げる唯一の客観的なショウコ≠ヘただ捕食量をざっくり推定しただけの大隅論文ですが、トータルの摂餌量も単位体重当り摂餌量も鯨類以外の種の方が多いことがわかっています。
 最後の八木氏のコメントで八木氏がぶち上げた食害論等の仮説がトンデモなく間違っていることについては、以下で一次ソースを含め客観的な証拠≠挙げているのでご参照。

■間引き必要説の大ウソ
http://www.kkneko.com/mabiki.htm
■クジラたちを脅かす海の環境破壊
http://www.kkneko.com/osen.htm
■持続的利用原理主義すらデタラメだった!
http://www.kkneko.com/sus.htm
■徹底検証! 水産庁海洋生物レッドリスト
http://kkneko.sblo.jp/article/181313159.html
http://www.kkneko.com/kikaku.htm
■びっくり仰天、都合の悪い事実に蓋をする非科学的な水産庁広報資料
http://kkneko.sblo.jp/article/176346053.html
■嘘つきデタラメ捕鯨協会
http://kkneko.sblo.jp/article/103173111.html
■トンデモクジラ食害論を斬る!(リンク集)
http://kkneko.sblo.jp/article/29976279.html

:「今後の目標は、不条理に制限されているIWCやワシントン条約から鯨を外して、自由貿易を可能にすることです」(引用)

 こちらも注目ポイント。「自由貿易」だそうです。
 動物福祉に関しても、野生生物保全に関しても、八木氏は本当に次から次へと物議を醸してくれるものです。国内では避けられがちな捕鯨問題について、両分野にかかわる人々に危機意識を持ってもらうには好都合かもしれませんが・・。
 まず事実を指摘すると、昨年開かれたCITES(ワシントン条約)常設委員会において、日本の調査捕鯨による北西太平洋イワシクジラの海上からの持込問題が議論され、国内メディアでも報じられました。そこで、日本がこれまで多額の水産ODAと引き換えに捕鯨支持を取り付けていたアフリカ諸国も含め、日本が集中的に批判を浴びる形になりました。
 八木氏は「不条理に制限されている」と主張していますが、同問題はそもそも日本政府自身による特殊な留保条件に対し、CITESの正規の規定を他のすべての対象種と同等に適用しただけのことであり、従前から国際法学者によって指摘されながら日本政府の圧力によって先送りされてきたにすぎません。
 CITESにおいて鯨だけが「不条理に制限」されているとの主張は、報道されている事実や背景、条約の趣旨について何一つ知ろうとしない不勉強な人物の妄言にすぎません。「外して自由貿易を」に至っては、「鯨類は野生生物とみなすな」「鯨のみを差別的に扱え」という主張と同義であり、あまりに常軌を逸しています。
 また、IWC(国際捕鯨委員会)から「鯨類を外せ」とは、IWC並びに国際捕鯨取締条約そのものの否定に他ならず、これもナンセンスの一語に尽きます(脱退論であれば以前から存在しますが)。
 こんな暴論を平気で載せてしまっていいのでしょうかね、新潮編集部は? まあ、救いようのない阿呆メディア、煽るだけ煽って購読数を稼げればいい劣悪タブロイド誌らしいといえばらしいのでしょうが。
 こんなネタもありますし。奇しくも同じ映画の話題ながら、「ビハインド・ザ・コーヴ」とは騒ぎ立て方≠ェ対照的。とはいえ、実に新潮らしいですね。

■黒く塗りつぶされた週刊新潮の広告
http://hagex.hatenadiary.jp/entry/2018/03/01/111947

 たとえ売らんかなの新潮がOKだとしても、これは前回で取り上げた「抜け道」と同じく、狂信者の妄言の一言で片付けられる話ではありません。
 なぜといって、外務省は新年度予算でこのガラクタ映画の海外上映に予算を付けてしまったからです
 公的支援をしている人物の口から、政府の公式見解とかけ離れた、日本の信用を一層貶める主張が飛び出すのを放置するのは、外務省として決して許されるべきことではありません。以下は筆者が外務省に送った質問状。

■外務省の来年度の捕鯨関係予算および在英大使館広報、公的支援を受けた広報映画の監督による発言と日本政府の外交方針の整合性について
http://www.kkneko.com/mofa.htm

 DVDがアマゾンで売れていると当人も新潮編集部も強調していますが、そのアマゾンにはこんな感想も寄せられています。クオリティの低さには当初から捕鯨賛成派の間でさえ懸念の声がありましたが。
 
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/RKRW6MCEBCFYR/ref=cm_cr_dp_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=B072QDGTF2
確かに意義ある作品ではあるが、画質、音声、共にランクダウンしたくなるレベルだった。ブツ切りの映像が入れ替わり立ち替わり流され途中で眠くなってしまった。製作者の労苦を考えると残念でならない。ちなみに私は、音声がキンキンして嫌だったのでTVのTREBLEを下げて視聴しました。製作者のサポートができる技術者が出てくることに期待したい。(引用)

 映画制作に携わるクリエーターの方たちをリスペクトする者としては、こんなお粗末な代物を映画と呼ぶこと自体に抵抗を感じてしまうのですけどね。ましてや、スクリーンにかけたり、賞を与えるなど、映画界の名折れではないかと思えてしまうのですが。
 それにしても、これでアカデミー賞を本気で受賞できる気でいたのだからあきれてしまいます。「ハーブ&ドロシー」で多数の映画賞を受賞した実績のある佐々木氏ならいざ知らず。その彼女の方は「アカデミー賞狙う」なんて欲の皮の突っ張った発言はなかったはず。身の程を弁える奥ゆかしさこそ日本人の美徳≠セと思うのですがね・・
 実は、英国のほんの一握りの人たちには好評価を得たらしい「ビハインド・ザ・コーヴ」、日本のある町ではすこぶる評判が悪いとのこと。

https://twitter.com/kumatarouguma/status/897180834116927489
COVEについて面白いのは、以前太地町役場にはなしをききにいったとき(私は移動手段の関係でその場にいなかったのだけど)反捕鯨のCOVEはすごく綺麗に自分たちの伝統をとれていて、それに対しアンチCOVEの方が太地町擁護なのに画像があまりよくない、おすすめできないといわれたはなし(引用)
https://twitter.com/taijinankimeioh/status/965807165226102784
この映画、ただ日本人が鯨の竜田揚げを食べられなくなるという映画だと聞いてますが違うんですか。(引用)

 そう・・肝腎要の太地町。上掲のとおり、役場で「おすすめできない」と言われるほど。筆者は複数筋から同様の話を耳にしています。道の駅等でももう一つの映画「おクジラさま」の方は積極的にPRしているのに対し、「ビハインド・ザ・コーヴ」のパンフ等は置いていないとのこと。
 関係者が撮影までは応じているのですから、筆者が推測するに、その後何か≠ったんでしょうけどね。「『ザ・コーヴ』よりよくない」という映画の品質もさることながら、感情的、情熱的に何か不興を買うようなことをやらかしたのではないかと。
 「表コーヴ」の方は日本発の2本の映画(3本目のフィクションも制作中とのことですが)に触発され、続編が企画されているとのこと。

■反捕鯨映画、続編を計画 「ザ・コーヴ」太地町のイルカ漁批判
http://www.sankei.com/west/news/180204/wst1802040010-n1.html
 続編は、現地で活動家らが撮影した映像が用いられる可能性がある。(引用)

 この分だと、プロレスの舞台は南極海から銀幕に移行しそうですね。ただ、たとえ「ザ・コーヴ2」に太地町の映像が使われることがあっても、上掲の有様では「ビハインド・ザ・コーヴ2」は太地の関係者の協力を得ることは難しいのではないでしょうか。少なくとも、映像はブツ切り、音質はキンキンの素人レベルのものしか作れない御仁ではなく、感情を爆発させもせず、映画のクオリティ面でも申し分なく信頼できる佐々木監督のほうにお願いしたいと思っているのでは。
 竜田揚げ監督には、竜田揚げ以外の映画は作れないとも思いますけど。人種差別撤廃提案ネタとか、「ビハインド・ザ・ヤスクニ」とかなら市場も見込めると考えるかしら?
 筆者としては、沖縄や広島、福島、諫早を舞台にした映画を、むしろ佐々木監督にこそ作ってほしいところ。
 もうこれ以上デマ映画合戦を繰り返すのはやめて、客観的な証拠のみに基づき国際法できっちり蹴りをつけるのが、誰にとっても最善の道だと筆者は考えます。

   ◇   ◇   ◇

 ただ今客観的な評価に資する「徹底検証! 水産庁海洋生物レッドリスト」レポート前半総論部分の英訳を進めています。日本語版(リンク上掲)の拡散もよろしくm(_ _)m
posted by カメクジラネコ at 00:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2018年03月04日

デマ屋と化した竜田揚げ映画監督、シーシェパードに代わって独り相撲・その2/真に中立な意見とは・その2


◇デマ屋と化したトンデモ竜田揚げ映画「ビハインド・ザ・コーヴ」八木監督、シーシェパードに代わって独り相撲・その2

前回の続き。
 映画「ビハインド・ザ・コーヴ」監督の八木景子氏は、これまでもかなりぶっ飛んだデマを映画のプロモーション・メディアインタビューを通じて拡散してきました。主なものは前回の記事末のリンクまとめ・拙過去記事で取り上げています。
 八木氏の発信するデマは大きく3つに大別されます。ひとつが、「ベトナム戦争陰謀論」をはじめとする、捕鯨サークル当事者から仕入れた情報を単に垂れ流しているだけのもの。ただし、別に何人も間に挟んだ伝言ゲームというわけでもないのに、エントロピーが急速に増大して一次情報からだいぶ離れてしまうのが氏の発信の特徴。ベトナム戦争陰謀論に関しては、米公文書館まで出向き、独自に情報を入手して手柄を立てようとは思ったんでしょうが、結局絵≠撮っただけで手ぶらで帰ってきておしまい。
 次に、外野の反反捕鯨ネトウヨから吹き込まれたと見られるもの。京大シンポジウムでの「韓国の方が日本よりクジラを殺している」といった嫌韓右翼へのアピールを狙った発言や、人種差別撤廃提案ネタなど。
 最後に、八木氏のオリジナル。同じ京大シンポジウムでよりによって韓国の方に対して偉そうに言っちゃった「韓国はIWC不参加」発言(純度100%のデマ)や、映画上映時のトークイベントでの動物福祉全般に関するかなーりぶっ飛んだ見識など。
 これまでの諸々の発言については、前回の記事末にまとめたリンクをご参照。
 上記のポイントを押えつつ、今回と次回の2回に分け、2本のメディア上の八木氏の発言を取り上げることにしましょう。

 まず、2月26日月曜にOAされたアベマプライムの特集から。
 要約テキスト版は下掲リンク。それにしても拡散しましたね・・


 アベマTVはいわゆるインターネット専門TV局で、免許を持った放送事業者ではありません。アベマプライムは同局の報道番組の位置づけで、以前漁業問題がテーマになったときに、情報を市民に向けてこまめに発信してくれる水産学者の東京海洋大学准教授・勝川俊雄氏や築地仲卸でシースマート代表理事を務める生田與克氏も出演されています。昨年7月放送時は以下の水産庁のヤラセ問題がネタに。解説はこちらもお馴染みの国際政治学者、早大客員準教授・真田康弘氏。

■激震!やらせ発言≠ェ発覚、国際会議を操作する水産庁のモラル|Wedge
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10164

 硬派なニュース番組の路線を貫いていればまあよかったんでしょうが・・担当者の力量差によってムラが激しいのか(それを言ったら正規の放送局も同じですけど)、一言で言えば今回のはお下劣バラエティ
 あるいは、報道で比較するなら、露骨な沖縄ヘイトデマを流したことが問題視され、今月にTOKYO MXでの打ち切りが決定された「ニュース女子」のレベル。
 番組前半がイバンカネタでクジラは後半の1時間でしたが、ゲストの月亭八光氏に鯨肉を無理やり食わせようとする茶番でまあ引っ張るわ引っ張るわ。
 さらに某鯨料理屋の宣伝と映画のシーンがバシバシ入り、ディベートの部分は正味10分もあったかどうか。といってもほぼ一問一答で、八木氏のデタラメコメントで締めてどんどん流す進行だったため、ある意味トンデモ映画そのものの構成に近かったといえます。
 出演者のうち、元読売のジャーナリスト・ジェイク・エーデルスタイン氏のみが反捕鯨の立場で出演。後の4人はゴチゴチの反反捕鯨。外国人訛りのエーデルスタイン氏に対する進行側の配慮がなかったことも手伝い、袋叩きの様相を帯びる有様。ずいぶん昔にやはりTVの討論番組でデーブ・スペクター氏が同様に多勢に無勢の扱いを受けていましたが。
 報道番組・討論番組といっても台本が用意されているのが常ですが、この台本を書いた奴は相当にゲスいですな。
 その点、JAZA/WAZA除名問題を取り上げたテレビ愛知の激論!コロシアムは、用意された資料映像とテロップに一定の先入観・偏見が見られたものの、出演者の構成や進行の点で公平性への配慮もあり、まだマシだったといえます。

■激論!コロシアム【イルカが消えるだけじゃない!?日本を追い込む"やっかいなニュース"の真相!】(2015.6.13放送)
https://togetter.com/li/834969

 先に、リンク記事中の内容とは前後しますが、八木氏以外のゲストの方へのツッコミから。

 マグロ漁師の経験もあるリディラバ代表の安部敏樹も「日本の文化は、油、骨、皮までちゃんと使って、しっかりサスティナブルに消費していこうという考え方。クジラの頭数が増えてきたのであれば、商業捕鯨にして良いはず。"それなら捕っていいよね"と国際社会に言ってもらえるまで、水産庁も含め日本はしっかりコミュニケーションしなきゃいけない」と指摘する。(引用)

 おそらく、ウォッチャーの皆さんは「ああ、こいつもか・・」とため息をつかれたことでしょう。
まず、「日本の文化=サスティナブルに消費」という、捕鯨であれ漁業であれ、史実に反する俗説を真に受けている時点でアウト。しかも非論理的で雑な主張。カタカナでかっこつけて「サスティナブル」とか言っても、「消費」にかかってる時点で水産資源管理の根本について何も理解できていない証拠。東大出が泣きますね。
 鯨体完全利用神話については以下をご参照。

■「油目的で肉を捨てていた西洋と異なり、日本はクジラを余すところなく完全利用してきた」って本当?
https://togetter.com/li/1012491

 番組では「元マグロ漁師」の肩書きがしきりに強調され、他所にはプロフィールで「マグロを素手で取る」なんて特技が紹介されてたのですが・・安部氏は30の若さで今は社会企業家。遠洋マグロで一攫千金、陸に上がってさっさと転身というサクセスストーリーが目に浮かびます。であれば、日本の水産業の非持続性と悲惨な現状についてまったく無理解なのも頷けます。
 アベマTVにはぜひ次は「マグロ」をテーマに、今回と同じ4:1のタッグマッチ討論の企画を組んで欲しいもの。他の出演者は勝川氏、生田氏、真田氏、環境ジャーナリストの第一人者である共同通信記者・井田徹治氏で。でもって、安部氏に素朴な持論をぶってボッコボコにのされていただきたいもの。

 もう1人のゲスト、経済評論家の上念司氏は、記事中にはありませんが、反対運動・NGO批判の流れで、ユニセフの子供利用SSCSのクジラと対比させる印象深い発言をしていました。ユニセフ(国連児童基金)が子供の人権を守ることにリソースを集中するのは当たり前すぎる話ですが、同団体に対するデマ由来のいくつかの批判と比べても、上念氏やネトウヨたちの「ユニセフが子供を利用して金集めをしている」との主張は斜め上を走っています。よっぽど日本を国際社会で孤立させたいのでしょうか? まあ、上念氏がソッチ方面の人なのはツイートだけでもよーくわかりますが。

■日本ユニセフ協会に対する不当な批判に対して応えてみる
http://blogos.com/article/173694/

 社会的立場が圧倒的に弱い児童の権利は手厚く優遇されて当然と筆者は思いますが、よもや伊武雅刀の「子供達を責めないで」を地で行く連中がいるとは、想像だにしなかったことです。女性専用車両の一件にしろ、先住民生存捕鯨に対する日本政府のいちゃもんにしろ、社会的弱者に対するやっかみは、むしろ深刻な日本社会の病理と捉えるべきでしょう。
 一応補足しておくと、欧米発の市民運動の胡散臭さ≠強調するのは、モラトリアム当時からの反反捕鯨の常套手段で、これも出所をたどれば梅崎氏に行き着くのですが(拙記事に何度となく登場する反反捕鯨広報コンサルタント・梅崎義人氏については前回記事等をご参照)。私が常々疑問に思うのは、梅崎氏は日本捕鯨協会から一体いくらのコンサルタント料を受け取ったのかということなんですけどね。某御用学者と養鰻業界じゃないけれど、捕鯨業界から感謝の印にでっかいクジラ御殿を提供してもらっていても不思議はない気がします。
 胡散臭い組織≠ェどーーしても気になるという方には、怪しさ全開の巨大組織・日本青年会議所(JC)の工作活動に目を凝らし、ぜひ資金の流れをたどるなり何なりしていただきたいもの。

■ネット工作がバレた途端に垢消し逃亡、日本青年会議所(JC)謹製の憲法改正マスコット「宇予くん」の発言をお楽しみ下さい
http://buzzap.jp/news/20180227-jaycee-net-kaiken-uyokun/

 続いて、アベマタイムズの担当者による文と八木氏のコメントの問題箇所をひとつずつチェックしていきましょう。行頭Yを付けたのが八木氏本人のコメント。強調は筆者。それ以外も内容は大体八木氏の情報提供に基づいているのでしょうが。

(「ザ・コーヴ」受賞後)日本の捕鯨やイルカ漁に対する国際世論の厳しい見方が広がり(引用)

 日本の捕鯨やイルカ漁に対する厳しい国際世論は、たかが1本の映画の影響で一朝一夕に出来上がったものではありません。商業捕鯨モラトリアムの発効も、WAZAの追い込み猟由来のイルカ調達禁止規定も、厳しい国際世論が背景にあってのことですが、まさかシホヨス氏がタイムマシンに乗ってそれらの時代の関係者に映画を観せたとでもいうのでしょうか? バカも休み休み言え、です。
 前世紀に野生生物保全を求める運動が市民権を得て国際政治に影響を及ぼしていく過程で、商業捕鯨によるクジラの乱獲が遡上に上るのは当然の成り行きでした。詳細は拙HPの解説をご参照。

■真・やる夫で学ぶ近代捕鯨史 (4)モラトリアム発効と「国際ピーアール」の陰謀
http://www.kkneko.com/aa4.htm

 そんな中、今回『ビハインド・ザ・コーヴ』を評価したのは、反捕鯨国であるイギリスだった(引用)

 いやはや、盛りましたねえ。イギリスが評価したとは。今年のIWC総会では同政府が捕鯨支持に転向、捕鯨ニッポンとしちゃ万々歳じゃないですか。
 んなわけないでしょ(--;;
 前回で詳しく解説していますが、筆者が向こうに問い合わせたところ、ロンドン国際映画製作者祭はまだ日の浅いマイナーな映画祭で、英国内でも認知度が低いとのこと。会場はクラウンプラザホテルロンドンドックランズというホテル。平日15日の午後、ホテルの一室で行われた1回の上映を観た客は、せいぜい多くて2、30人じゃないですか。八木氏本人なら、実際に映画を観た観客の数字を言えるはずですが。
 しかも、TBSや東京新聞の報道のとおり、「『ザ・コーヴ』と同じプロパガンダだ」との観客の反応もあったわけです。日本国内でさえ、原爆の描写をはじめとする一連の演出に嫌悪感を感じたり、首を傾げた観客が少なくないのですから、大半の観客の反応が好意的だったとは到底考えにくいことです。
 すなわち、人口約6,600万の英国で同映画を評価したのは、同映画祭の審査員を含むせいぜい2桁、ほんの一握りの人たちでしかなかったのが事実のはずです。同映画を酷評する捕鯨推進国・日本人の数の方が多いのは間違いありますまい。アベマTVの担当者の口を借りれば、「『ビハインド・ザ・コーヴ』をボロクソにこき下ろしたのは、捕鯨国である日本だった」と言えちゃいますね。

日本の古式捕鯨発祥の地として知られ(引用)

 間違い。筆者は何度も口を酸っぱくして指摘しているのですが、ちっとも直りませんね。マスコミもですが。
 組織的な形態のいわゆる古式捕鯨が始まった発祥地は、太地ではなく尾州(現在の愛知県知多半島南部)。太地は尾州から技術が持ち込まれた後、網取式の手法を初めて編み出されたというのが有力な仮説。初期の突取式から網取式への転換が図られたのも、乱獲によって初期の対象種が激減したために他なりません。その後、太地で開発された効率的な捕獲法は土佐や九州北部等各地に瞬く間に拡散、乱獲に拍車をかける事態となりました。発祥地の尾州や、やはり伝播先の三崎などでは乱獲が祟って捕鯨自体が自滅しています。
 古式捕鯨史と太地が果たした役割については、下掲の拙記事と二次リンクを参照。

■哀しき虚飾の町・太地〜影≠フ部分も≪日本記憶遺産≫としてしっかり伝えよう!
http://kkneko.sblo.jp/article/175388681.html

1982年以降、大型の鯨を対象とする「商業捕鯨」が全面禁止となり(引用)

 間違い。1982年はIWC年次会議で商業捕鯨モラトリアムの決議が採択された年。実際の発効は1985年です。

町民からも「(中略)」「(中略)」と話す。(引用)

 ・・・。なんでしょうね、このグダグダな日本語は(--;; この記事を書いたWEB担当者は小学校に入り直して国語を一から勉強し直しなさい。上司なり別の担当者に記事チェックさせる作業もしていないのですね、アベマTVは。個人の日記ブログ・ツイートなら多少の粗は許されるでしょうが、これでメディアを名乗っていいんですか? 放送事業者じゃないけれど。
 これも「評価したのは英国」と同じ。太地町にだって無関心な住民もいれば、捕鯨・イルカ猟ないし三軒町長のワンマン行政を快く思っていない人だって当然いるのです。

■和歌山県太地町民の本音。
http://animalliberation.blog.fc2.com/blog-entry-122.html
■「太地町とフェロー諸島のクラクスビークの姉妹都市提携に異議」の記事
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=1821814097875296&id=100001401694621
https://twitter.com/ishii_atsushi/status/921234334912192512
太地町の「正義」を描いているつもりかもしれませんが、イルカ漁に関わっていない太地町民たちはほとんどでてきません。ドキュメンタリー映画なので、そういう人たちが本当にイルカ漁を支持しているのか、支持しているのであればなぜなのか、を明らかにしてほしかったです。(引用)
(なお、上掲のツイートは別の映画「おクジラさま」に対する意見ですが、偏向の程度は「ビハインド・ザ・コーヴ」の方が数段上)

水産庁によると、イルカとは体長4メートル以下の鯨を指し、基本的には同種の生物だ。(引用)

 ・・・。このWEB担当者は国語だけでなく理科のリテラシーも小学校中学年以下ですな。いや、小学校中学年でも、理科好きの子は上の文のどこがとんでもなくおかしいかすぐわかるでしょう。小学校入り直してきなさい。まあ、質問を受けた水産庁の担当者もさすがに苦笑いするしかないでしょうね。八木氏に理解できるかどうかは心もとないけど。。
 一応正解を述べておくと、「(広義の)クジラは同じ分類群(下目)に属する種の総称で、イルカはそのうちおおよそ体長4メートル以下の種を指す。(狭義のクジラとして、イルカを除くクジラ下目の種を指す場合もある)」です。

捕鯨には、一般に食用肉に加工するなどを目的とする「商業捕鯨」、生活に必要な捕鯨としてIWC(国際捕鯨委員会)に捕獲枠を認められている「先住民生存捕鯨」などがある。(引用)

 まずは単純な間違いの指摘から。「商業捕鯨」の定義は完全な間違い。文を構成する「一般に」「食用」「肉に」「加工」のすべてが間違い。読んで字のごとく商業目的で行われる捕鯨のこと。部位がどこか、用途が食用かなど無関係。母船式捕鯨の場合は加工処理の工程の一部を担いますが、捕鯨の定義は加工ではありません。
 IWCによって定義されている「先住民生存捕鯨」は「生活に必要な捕鯨」ではありません。先住民の先住権への配慮から特別に認められた枠です。先住権を持つ先住民の伝統的なコミュニティの維持に不可欠な要素と認められることが重要です。その背景には、先住民に対する搾取と抑圧の歴史に対する反省があります。そして、先住民を迫害したのは西洋人ばかりではありません。私たち倭人もです。
 太地より圧倒的に長い歴史と持続性を備えていたのがアイヌの捕鯨。しかし、彼らは江戸時代から松前藩に不公正な搾取を受けたうえに、明治政府には強制的に捕鯨を禁止され、捕鯨に依存していた伝統的なコミュニティを破壊されました。それさえなければ、日本で先住民アイヌの伝統文化がきちんと尊重されてさえいれば、国際社会からも二つ返事で先住民捕鯨として認められていたはずなのに。
 のみならず、水産庁と組織を代表するIWCコミッショナー森下丈二氏らは、先住民の権利に対する認識の欠如を臆面もなく露呈してきました。実際のところ、先住民の権利擁護の取り組みにおいては、捕鯨への賛否を問わず先進国の中で日本ほど遅れている国はありません。詳細は以下のリンクをご参照。

■「原住民生存捕鯨」に関する日本政府の考え方について|GPJ
http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/archives/ocean/blog/30448/
■倭人にねじ伏せられたアイヌの豊かなクジラ文化
http://kkneko.sblo.jp/article/105361041.html

Y:「国際会議で"いじめ"に遭ってしまっていて」(引用)

 おやおや、まるで国連での北朝鮮代表のようなことをおっしゃる。
 しかし、北朝鮮が国連安保理でいじめ≠ノ遭うのも、日本がICJ、IWC、CITES、各地域漁業機関の会合でいじめ≠ノ遭うのも、仕方がないことです。
 国際秩序を保つために不可欠なルールを破るのが悪いのです。
 もっとも、いじめの程度でいえば、経済制裁によって国民の窮乏・餓死に至っている前者の方が、いじめで言うなら自殺につながりかねないはるかに苛烈なレベルですし、NPT(核不拡散条約)が自衛のための核保有の権利を核大国のみに認めてそれ以外の国との間に線を引く明々白々な不平等条約であるのは否定の余地がありません。
 それに比べれば、後者はそもそも公海・南極海における高度回遊性野生動物という世界共有の財産の管理の話であり、自国の主張が通らないからといって「いじめだ!」と叫ぶのはとんだお門違いというものです。
 日本が国家間の平等を最優先の大義とする国であるならば、核兵器削減・廃絶の枠組としてNPTではなく核兵器禁止条約を推し、米国にも北朝鮮にも批准を促すべきなのです。ところが、実際に日本政府がやったことといえば、差別を容認するばかりか核大国に思いっきりおもねって、国内の被爆者と核廃絶を求める世界中の市民から深い失望を買う始末。
 八木氏は核の脅威と無縁な平和な国で、核について何も知らずに育った人間なわけではありません。何しろ、唯一の被爆国(核実験の被害者は世界中にいますが)日本の国民なのです。そればかりではありません。八木氏は自作の映画の中で広島の原爆投下のシーンをわざわざはめ込んでいるのです。筆者は核兵器禁止の取り組みに対する日本政府の後ろ向きな姿勢を八木氏が批判したのをまったく聞いたことがないのですが。
 結局のところ、八木氏の主張は「国際会議でのいじめ≠根絶しよう」ではなく、ただひたすら「私は南極産竜田揚げが食べたい!」だけなのです。そのためには原爆の悲劇すら利用できてしまう、実に驚くべき人物なのです。

■Ultra double standard of Japan's diplomacy: 100% opposite in nuclear ban and "Favorite sashimi"
http://www.kkneko.com/english/nuclearban.htm
■広島・長崎より太地・下関が上、非核平和より美味い刺身≠ェ上──壊れた捕鯨ニッポン
http://kkneko.sblo.jp/article/179410385.html

Y:「日本の政治家はイエスかノーかハッキリ言えない理不尽な状況」(引用)

 これもまったく事実に反します。日本の政治家はモラトリアム当時から、一貫して、捕鯨推進の立場を明確にしてきました。特に自民党は捕鯨業界と密接に癒着した数十人の族議員連盟を抱え、調査を騙る脱法商業捕鯨を継続させ、多額の税金投入を決定してきたのです。永田町の議員の過半数が態度を明確にできない状態だったら、美味い刺身*@が共謀罪国会の最中に超特急で成立するはずがありません。族議員の何人かはこれまでIWC年次会議にも出席したり、あるいは発展途上国に出向いて援助と引き換えにIWC加盟と日本の捕鯨支持を取り付けるなど、率先して働いてきました。まあ、国際会議には業界の連中も同行してるんだから、現地で「自分はイエスかノーかはっきり言えません」なんて口にしたら、それこそ怒られちゃいますわな。2014年の国際司法裁判所(ICJ)による調査違法判決直後には、二階俊博議員(現党幹事長)をはじめとする族議員が鯨肉カレーを頬張りながら気勢を上げたことが、海外メディアでも報じられています。
 八木氏の理不尽な発言は、もはや無知・無理解というレベルではありません。捕鯨支持の内野も外野もみな知っていることについて、まるで正反対の主張を唱えているのですから。
 ただ、このぶっ飛び発言は、捕鯨サークル(鯨研・共同船舶・水産庁)だったら絶対認められない、八木氏オリジナルの持論あってのものかもしれません。

日本が行なっている「調査捕鯨」は 、頭数、年齢分布、食性などの調査が建前だ。(引用)
:「仕方なく抜け道として調査捕鯨を行っている」(引用)

 さあ、ここはきわめて重要なポイントです。
 まず担当者の間違い、調査捕鯨の説明の補足から。生息数の調査は、日本周辺の小型鯨類も含め、目視で行われます。調査「捕鯨」は必要なし。食性の調査は、調査捕鯨による胃内容物調査ではごく限定された断片的情報しか得られず、他の野生動物で普及している非致死的な代替手法の方が優れています。サンプルの年齢組成情報の収集は、日本が掲げる調査捕鯨の正当性の根拠の中で議論の余地がある唯一のものですが、現行の管理方式において不可欠≠ネものではありません。管理方式を改良・補完する手法はいくらでも考えられる中、特定のパラメータの経年変化を特定の精度で求めることだけが解だとする水産庁・御用鯨類学者の主張は、事実に反しています。ひとつ言えることは、年齢組成の変化を調べることを主目的とする経年大量致死調査事業が行われているのは、あらゆる大型野生動物の中で日本の調査捕鯨の対象種となっているクジラのみです(漁業の場合は漁業が主≠ナ漁獲物のデータが資源管理に役立てられる)。まさにサベツそのもの。
 で、問題のキーワード、「建前」「抜け道」
 これは日本の国際法違反を公然と認める発言です。
 記事中の担当者による「調査捕鯨」の説明は、少なくとも国際捕鯨取締条約(ICRW)第8条に基づく「合法的な£イ査捕鯨」の定義ではない、ということです。もちろん、「建前≠ナいいよ」なんて条文には一言も書いてやしません。
 アベマTVの担当者は、わざわざ聞くまでもないイルカとクジラの違いについて水産庁に問い合わせておきながら、肝腎の調査捕鯨の説明については何も尋ねなかったわけです。水産庁なら「あれは建前≠ナすか? 抜け道≠ナすか?」と問われたら、断固として否定するはずですから。本当に間抜けな担当者ですね。。
 では、当事者の捕鯨サークル・日本政府の見解とは相容れない八木氏オリジナルの持論とは何でしょうか?
 八木氏の一連の発言が示唆するのは、「私が決めた正義>>法」という非常識極まりない個人的信念。
 「商業捕鯨は再開しても全然おかしくない」(引用〜Y)んだ、悪いのは国際条約の方なんだ。だから、商業捕鯨はやっていいんだ、と。それがいつのまにか、調査捕鯨なんて建前の看板を下ろして今から堂々と商業捕鯨を名乗ればいいではないか、にまで昇段してしまったのではないでしょうか。もう既成事実なのだから、条約の方を捻じ曲げて、モラトリアム条項を破棄しろと。つまり、八木氏のいう「イエスかノーかはっきりしない」とは、「ノー(商業捕鯨ではなく調査捕鯨だという建前)」ではなく「イエス(これは商業捕鯨だぞ。正義は国際法ではなく我々にある!)」とストレートに叫んでほしいという、氏の願望の現われのように見受けられるのです。国会議員試写会などでさんざんちやほやされたものだから、政治家も官僚も同調してくれると本気で信じていそうですが。
 平然と「抜け道」発言をしてしまう辺り、八木氏は遵法精神の非常に希薄な人物に見えてしまいます。いやはや、シーシェパードも真っ青。
 というより、「ワトソンだって犯罪者なのに逮捕されないじゃないか!」「シホヨスだって立入禁止の場所に入ったじゃないか!」という憤怒が、八木氏をしてここまでの狂気に駆り立てたのでしょうけど。
 違法なことをされたんだから、こっちだって国際条約の抜け道を探るぐらい当然のことじゃないか──と。
 「映画には映画を」「嘲笑には嘲笑を」「サベツにはサベツを」「嘘には嘘を」「違法行為には違法行為を」「原爆投下には南極海捕鯨を」──。
 「目には目を」「やられたらやり返せ」
 不満の捌け口を求めるネトウヨたちの賛同が集まるワケです。
 このうち、「サベツにはサベツを」という八木氏の狂信は、次に取り上げるデイリー新潮記事の末尾のコメントの中に明瞭に示されています。次回で解説しますが。
 さて、日本政府は中国・ロシア・韓国との領土紛争を念頭に、国際法を遵守する姿勢を国際社会に対して前面に打ち出しています。政府関係者が堂々と「国際法は破っていいんだ!」なんて口が裂けても言えるはずがありません。鯨研と共同船舶はただの事業者として粛々と畏まるのみ。
 もっとも、日本捕鯨協会は、過激で支離滅裂な主張を振りまく竜田揚げジャンヌダルクを広告塔として精一杯利用しようと考えているかもしれませんが。そう、まさにデマ屋として価値のある存在だと。
 確かに、日本の調査捕鯨はICJ判決後に始まった南北の新調査捕鯨NEWREP-A/NPも、国際司法の場で審判を受ければ違法と判定されるのは議論を待たないでしょう。イワシクジラ持込のCITES違反も然り。
 そうはいっても、日本政府の公式の立場はあくまで合法=B調査捕鯨そのものから国連管轄権受諾宣言の書き換えまで、あの手この手を駆使しながらも、ギリギリのところで国際司法上の手続を踏まえる(ふりをする)ところまでは譲らなかったわけです。一線を越えたことを認めたうえで「建前で何が悪い」とふんぞり返る真似まではしませんでした。今までのところは。
 官僚の中で唯一うっかりポロッと本音を漏らしてしまったのが、本川一善元農水事務次官(国会発言当時は水産庁長官)でした。彼のポカのおかげで日本のICJ敗訴が決定付けられたわけですが。霞ヶ関のエリートに二の轍を踏みたがる者がいるとは考えにくいことです。
 しかし・・一方で、「ビハインド・ザ・コーヴ」には海外上映に外務省予算が新年度から付くことが決まっています。
 もし、公的な支援を受けている人物に公の場での説明とは異なる本音を代弁させているとすれば、日本政府は二枚舌の謗りを免れないでしょう。たかが美味い刺身≠ナ国際ルールを無視する国に、中国や北朝鮮を非難する資格はありません。逆に、たかが美味い刺身≠ナ国際法を蔑ろにすることが本当に出来てしまう国であれば、一体何をしでかすかわかったもんじゃないと、
 その意味で、八木氏の発言は狂信者の妄言として片付けるだけではすまないものです。
 一方で、「中立派」だったり「捕鯨擁護派」だったりクルクルと忙しい八木氏らしく、最後に「『違法なんだ』(中略)という誤った情報が」(引用)とも述べています。アベマタイムズ記事中では端折られていますが、番組中では八木氏は非常に問題のある発言されていました(全部問題っちゃ問題なのですが)。というのも、ICJからは単に見直しを求められただけで、数を減らしたことでICJに応えた=Aだから違法ではないという趣旨に受け止められるものでした。
 もちろん、これは事実に著しく反します。日本の調査捕鯨(JARPAII)はICJにより国際法違反であるとはっきりと認定されたわけですが、ICJに見直しを求められ、それに問題なく対応して違法性を解消できたのであれば、国連管轄権受諾宣言を書き直してICJへの再提訴を封じる必要などまったくありません。しかし、日本がやったのは、新調査捕鯨に対する国際司法判断を回避する策を講じることだったのです。国際法学者・神戸大教授は次のように批判しています。

明らかに南極海での調査捕鯨の再開は国際法的に危うい、少なくともICJに持って行かれるのはいやだ、というメッセージです。「法の支配」を標榜する日本としてはいかがなものでしょうか。(引用)

 八木氏の言い草は、まるで単に捕獲数が多すぎたのがICJによる違法性の判断の根拠であったかのようですが、実際の判決内容はまったく異なります。鯨種毎のサンプル数の相違(具体的にはクロミンククジラとナガスクジラ及びザトウクジラ)を日本側が科学的合理的に説明できなかったのみならず、日本側証人として法廷に立ったノルウェーの鯨類学者・オスロ大名誉教授ラルス・ワロー氏も日本側の不合理性に同意したからです。判決当時、一部の捕鯨推進派からは「数が少なすぎたから違法だというなら、増やせばいいじゃないか」という意見も飛び出していました。実は、当の八木氏もプロモーションの中で「おかしい」という発言をしていたんですがね・・。もうすっかり忘れてしまったんでしょう。
 判決の詳細については以下をご参照。

■ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html

 実際、NEWREP-Aは捕獲数を333頭に減らしただけで、ICJの指摘に応えるどころか、クロミンク1種に絞って数を減らしたため、不合理性が一段と増したことになります。だからこそ、日本側は国連管轄権受諾宣言書き換えによる逃げの一手に出ざるを得なかったわけです。
 NEWREP-A/NPにしろ、イワシクジラ持込にしろ、国際条約のICRWやCITESに違反する可能性が濃厚ながら、国際司法による判断がまだ下されていないというだけ。この点については次回もさらに取り上げますが。
 八木氏曰く「誤った情報」のうち、水銀問題については筆者個人は正直関心がありません(本人の意思によらず児童が学校給食等で無理やり食わされる場合を除いて)。厚労省が「妊婦は2ヶ月に1度以上食べないこと」と通達を出すほど水銀濃度が高かろうと、フェロー諸島で疫学研究により母親のゴンドウクジラ摂食による水銀暴露と小児の神経症状への影響の相関が報告されようと、住民の毛髪から全国平均の40倍の水銀が検出されて国水研が調査に乗り出したものの全町民ではなく希望者のみだったため疫学的な影響評価が出来ずじまいであろうと、食べたいんだという奴は自己責任で好きにすればいいことです。捕鯨の是非と「食っていいか悪いか問題」はまったくリンクしないのですから。
 気になるという方は、上掲した激コロまとめ中のリンクをご参照。
 というわけで、残りの「誤った情報」について。

Y:「農産物にも税金が投入されているのに、なぜ捕鯨だけ突くのかという、アンバランスさもある」(引用)

 まずこの発言からわかるのは、農産物への補助金がどのようなものか八木氏が何も勉強しておらず、日本の農業政策に恐ろしく無知であることです。本当に「竜田揚げ食いたい」だけで後は頭空っぽなのですね、この御仁は・・。
 稲作農家への補助金は減反(生産調整)や飼料米への転換に応じて支給されるもの、つまり、地産地消・主食の米の生産維持という、きわめて重要な日本の食文化に貢献するのをやめた¥鼾に金が払われる仕組み。しかも、今年度からは減反廃止、さらにTPP参加により一部の重要品目を除き関税も撤廃されます。コメも輸入枠が設けられたうえ、経団連と輸出国の圧力に屈するのは時間の問題。農業者は優勝劣敗の苛烈な国際競争にさらされながら、自助努力で対応を余儀なくされることになります。
 ここで、来年度農水予算(概算決定)をもとに、雑穀生産と捕鯨のケースを比較してみましょう。
 雑穀生産農家には、環境保全型農業直接支払交付金の名目で10a当り3,000円が支給されます。雑穀の生産農家戸数は全国で9,947戸、作付面積は8,367ha(2015年)。先の交付金を1戸当りに換算すると2万5千円程度。この他自治体毎の産地交付金等を合わせても、せいぜいその倍程度。地方自治体の税金投入を含めるとしたら、太地町は捕鯨・イルカ猟関連にさまざまな名目で税金を使っているわけですけど。
 これに対し、捕鯨対策予算は年間約51億円。鯨研・共同船舶・沿岸捕鯨会社の就業者数3百数十名で割れば、使われる国の税金は関係者1世帯当り実に約1,400万円。事業者単位で見れば、沿岸捕鯨事業者各1億円、共同船舶と鯨研の2者で45億円ということになりますが。比較にもなりません。
 高々400年の歴史しかない、ローカルな余禄≠ナしかない古式捕鯨の鯨肉生産とは異なり、雑穀は古来から日本人の9割の人口を支えてきた主食でした。伝統食としては南極産美味い刺身≠謔闊ウ倒的に格上。しかし、採算性と過疎、それに対する行政の無策によって生産量は激減、この百年で栽培面積は千分の1以下にまで減少しました。伝統よりカネを優先する日本の農業政策故に。
 そして漁業。真田氏、勝川氏はじめ漁業問題に詳しい専門家が再三にわたって述べていることですが、捕鯨対策予算は水産資源管理・調査事業のためのトータルの予算を上回っているのです。全国の漁業者を置き去りにして、海面漁業生産の1%に満たない一握りの特定事業者のために、莫大な税金が使われているのです。これほどアンバランスなことはありません。
 八木氏が「他の水産物」と言わず「農産物」と言ったのは、その点を誤魔化す意図もあったのでしょうが。
 他の一次産業と捕鯨との間に厳然として存在する待遇格差、雑穀や漁業の現状については、以下の資料もご参照。上掲の数字について確認したい方は、農水省の予算・センサス関連の資料をチェックしてください。

■美味い刺身*@は廃止を!
http://www.kkneko.com/sasimi/p01.htm

 今回はこの辺で。次回は一度削除されながら復活したデイリー新潮トンデモ記事について解説します。


◇本当に中立な日本人の捕鯨に対する意見・その2

 これも前回の続き。2009年にWEDGEに掲載された慶応大学大学院教授・谷口智彦氏の卓見を再度ご紹介。前回ご紹介した市民・研究者の方々の意見同様、谷口氏は日本の捕鯨文化そのものについてははっきり肯定の立場です。にもかかわらず、元外務官僚としてあくまで日本の広義国益の観点から、冷静にこの問題を分析しておられます。
 以下、同記事の一部を引用させていただきます。多額の税金を注ぎ込まなければ成立しない経済的な不合理性については、谷口氏の指摘した時点よりさらに拡大しましたが、下掲は今日まで続く日本の捕鯨政策の膠着ぶりを的確に言い当てています。やはり八木氏に爪の垢を煎じて飲ませたいもの。

 このように、捕鯨に託した日本の国益とは、経済面を見る限り既にあまりに小さい。これが、議論の出発点に来るべき認識である。我が国が守ろうとしているのは、何か経済とは別の価値だと考えるほかない。
 日本側の姿勢は長年のうち固着を重ね、容易な転換を許さない。
 捕鯨関係者を突き動かしてやまぬ思いとは、反捕鯨勢力との格闘を続けるうち身についた「大義は我にあり」とする信念であり、正論を譲るまいとする正義の感情である。
 「正しいものは正しい」ゆえに、妥協の余地はない。非妥協的姿勢を貫くことそれ自体が価値であり、その保全は国益だと、そう言わんとしているかに聞こえることすらある。
 この状態で、関係者は自ら進んで旗を下ろせない。経済学で言うサンク・コスト(埋没費用)の投下残高がかさみ過ぎ、方針を変えるスイッチング・コストが禁止的に高止まりした状態だと見立てればよい。
 下から内発的に膠着を破るのが困難な場合は、政治が外発的に、トップダウンで状況を動かすのを期待したい。が一般に利害当事者の票田が小さい場合、政治家の大勢はあまり関心を払わぬ中で、「声の大きい少数派」が影響力を奮いやすい。民主主義の逆説だが、この傾向は捕鯨をめぐる政治過程に当てはまる。
 似た構図がマスコミにある。捕鯨への一般的無関心を映して普段は何も書かず、国際会議の対立や、日本に対する攻撃といった派手な話だけ記事にしがちだ。政治家も世論もいつしか「熱く」なり、国益をめぐる冷静な検討は省みられない。(引用)

■メディアが伝えぬ日本捕鯨の内幕─税を投じて友人をなくす
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/721
posted by カメクジラネコ at 11:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系