2017年04月14日

イルカビジネスで胃袋を拡げる太地とエコヒーキ水産庁

■指定漁業の許可及び取締り等に関する省令の一部を改正する省令案についての意見・情報の募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002463&Mode=0
■新たな捕獲対象の追加 パブコメ中|IKAN
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/post-8a95.html

 つい先日、水産庁のパブコメに関する情報が回ってきました。
 一般の方ならながめてそのままスルーしちゃうタイトルですが、実はこれ、イルカ猟に関するもの。PDFまで開かなきゃわからないのですが。
 それも、シワハイルカとカズハゴンドウを新たに捕獲対象に付け加えるという、かなりとんでもない話。
 「指定漁業の許可及び取締り等に関する省令」は漁業法のもとで特定の漁業に対する細かい制限措置を定めたもの。ときどき発令されていますが、まぐろ等国際機関の規制がかかった場合に出されるケースが多いようです。5年に1度まとめて更新されることになっていますが、今回はイルカ猟の増枠に限って特別にお達しがあった模様。

■指定漁業の許可及び取締り等に関する省令
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S38/S38F00601000005.html
■指定漁業の許可及び取締り等に関する省令|日本法令一覧
http://hourei.ndl.go.jp/SearchSys/viewEnkaku.do?i=5uW4lojHPS4qoP8FX9LhbA%3D%3D

 今回の改正の背景についてIKANが水産庁に問い合わたところ、「コビレゴンドウとハンドウイルカの捕獲が『低位で推移しており、安定的な経営が困難』という理由」とのこと(詳細は上掲リンクIKANブログ記事を参照)。これは実にふざけた話。

「国連海洋法条約のもと、海生生物はすでに先に取ったものが勝ちではなくなっている。これまでのように、他の種を取りすぎたために、新しい種を取りたいというのは全く勝手な言い分であり、それをそのまま受け入れる管理当局の水産庁は、管理を放棄しているわけで、これはイルカに限ったことではないから驚くには当たらないかもしれない」(引用)

 ここでちょっと、時期を合わせるように発表された水産庁レッドリストの両種の評価とパブコメの概要資料(1枚きりですが)をチェックしてみましょう。
 日本近海のシワハイルカの個体数について、パブコメ資料の中では5,483頭(2014年)とあります。一方、レッドリストでは006年〜2007年の目視調査で11,811頭。十年足らずの間に半減しています。
 水産庁レッドリストでは、最新の減った値の方を使ってないのがまた嫌らしいところ。スナメリについてはなんとか数が増えたことにしようとして、2015年のデータをギリギリ押し込んだことが、前後で矛盾した記述からも明らかなのですが。
 基準Eを優先したり、準基準Eなるご都合基準を設けたり、勝手なローカルルールを導入している水産庁レッドリストの評価手法は無視し、IUCNの予防原則のグロスタに則り、同サイトで公開しているツールを使って筆者が判定した結果、日本周辺のシワハイルカはいずれもCR「絶滅危惧種U類」でした。
steno.png
 一方、カズハゴンドウの方は、目視調査データに関しては漸増しているものの、やはりレッドリスト資料にご都合主義的記述があります。「混獲・座礁は年2.5件と少ないことなどから」とありますが、2013年には22件発生していますし、2015年の鹿島灘では156頭のマスストランディングが起こっています(大半が死亡)。カズハゴンドウの大量座礁は2011年に東北沖大地震との関連が取り沙汰されましたが、もともとこの種はマスストランディングが多いようです。もちろん、ヒトの目に触れて記録されるものばかりがすべてではありません。ストランディングが起きる要因については、下掲のJAMSTECの解説もご参照。
 いずれにしても、今回の水産庁の設定した700頭を超える捕獲枠は、数年おきに数十頭、ときには100頭以上に上ることもあるマスストランディングを考慮したものにはなっていません。
 また、ゴンドウクジラ亜科・シャチ亜科・アカボウクジラ亜科は社会性が非常に複雑であることが知られています。コビレゴンドウとシャチには閉経があり、高齢雌が育児を担うと考えられていますし、ゴリラに似たツチクジラは父系社会の可能性が指摘されています。捕獲が単純に数だけでは推し量れない繁殖へのダメージをもたらすことは、陸上も含め社会性哺乳類全般についていわれていることで、マッコウクジラの管理に失敗したのも、そうした社会性への配慮のなさが要因でした。
 水産庁レッドリストでは「一般的に社会構造が複雑である可能性があり」との一行のみ。同種の社会性に対して何にも情報を持ち合わせてないことがモロバレ。

 沿岸マグロ漁業者の悲痛な声を無視する水産庁が、なぜ太地に対してだけはかくも手厚い便宜を図ろうとするのか、筆者には理解に苦しみます。
 なお、太地の今シーズンの捕獲表は前回のブログ記事に掲載しています。

 パブコメの提出締切は明日4/15(金)。時間がなくなってしまいましたが、イルカ猟問題に関心のある方は「捕獲する種を新たに増やすことはやめてください」とはっきり声を伝えましょう。
 以下、筆者の提出意見(ちと長くなったのでFAXで送りました)。

 〜 〜 〜 〜 〜
案件番号:550002463
平成29年3月17日付・
指定漁業の許可及び取締り等に関する省令の一部を改正する省令案についての意見

意見:
 指定省令第82条第1項ただし書きに、新たに「しわはいるか」及び「かずはごんどう」を追加することに反対する。

理由:
 鯨類は国連海洋法条約第65条において国際機関を通じて管理する旨定められている。
 カズハゴンドウならびにシワハイルカは日本近海と公海を行き来していると考えられ、また系群構造も不明であることから、とくに国際機関における管理が妥当である。
 両種は生態・個体群動態に不明な点が多いことからも、国連海洋法条約第65条の趣旨に照らして、開発するにあたってIWC、米国等太平洋諸国の協力下でのアセスメントを行わずに、一国の判断で利用を開始するのは早計である。

 概要資料の中で、シワハイルカの日本周辺海域での推定個体数は5,483頭(2014年)とあるが、2006年〜2007年の調査による推定値は11,811頭であり、10年に満たない期間に半減している。
 IUCNレッドリストの予防原則の趣旨に則り、ガイドラインに基づき近縁種の世代時間を外挿して基準Aによるカテゴリー判定を行ったところ、線形・指数両パターンで基準A1,2ともCR(絶滅危惧種U類)ランクに該当する結果となった。
 日本に生息する個体群として見た場合、シワハイルカは明らかに絶滅危惧種である。
 これが鯨類と同様に国際管理が求められる渡り鳥であれば、渡来数が短期間に半減し、なおかつその原因も究明されていないにもかかわらず、新たに資源としての利用を考えるなどありえないことである。
 系群の分布が日本周辺の外に広がるか、隣接する海域からの移入があるなら、なおのこと国際機関のもとしっかり調査を行い、域外の資源への影響を十分に把握するまで利用を思いとどまるのが、節度ある漁業国の態度である。

 カズハゴンドウについては、2001年に53頭、2002年に85頭、2011年に54頭、2015年に156頭等のマスストランディングがあり、2013年に22件等、単発のストランディングも多い。
 ストランディングの原因は不明であるが、気候変動による海流・水塊の変化に影響を受ける可能性も指摘されている。
 また、ゴンドウクジラ類は社会構造が複雑で種毎に異なる可能性がある。
 複雑な社会性を持つ哺乳類では、性比の偏りや社会行動の変化により繁殖率が低下し、単純な個体数から推測される以上に減少する恐れがあることは広く知られており、IUCNガイドラインにおいても注意喚起されている。
 しかし、水産庁および水研機構の資料を見る限り、同種の社会性に関して調査が行われていないことは明白であり、したがって持続的利用に十分な資源量が確認されたとは到底いえない。
 少なくとも、数年置きに発生しており、今後増加する可能性もあるマスストランディングと、複雑な社会性も十分に考慮に入れた管理方式を別途開発すべきであり、いずれもほとんど情報がない以上、今の段階で利用を開始するべきではない。

 なお、概要資料に「漁業者等からもこれらの鯨種の漁獲枠の設定について要望が相次いでいる」とあるが、「相次ぐ」とは少なくとも次から次へと立て続けに起こることを意味し、それだけの数の漁協が本当に2種の捕獲を求めているのか強い疑問を覚える。
 その要望の切迫性、切実性にもやはり大きな疑問を感じる。

 太地町のイルカ漁業(追い込み)に関しては、今年度の捕獲数は前年度より増加しており、中でも収益の高い水族館向け生体販売の比率が大幅に上がっている。
 既存の対象鯨種の捕獲枠は未消化であり、新たに対象鯨種を追加する合理的理由は見当たらない。

 乱獲に対する自制力を発揮できず、対象鯨種を枯渇させては次々に切り替えることを繰り返してきたのが近代捕鯨の歴史である。イルカ漁業の場合も同様に、有名な太地を例にとれば、静岡から技術を導入した途端漁協間の競争で捕獲数が膨れ上がった経緯がある。
 今回の捕獲枠新設は、そうした非持続性の業≠背負った過去を髣髴とさせる。

 諫早干拓事業、辺野古米軍基地移設、原発立地等をはじめ、沿岸事業者で国策の名のもとに代々続く漁場を手放さざるをえなくなった事例は数多い。また、クロマグロ漁業に携わる沿岸漁業者のように、大手巻網事業者との軋轢・不公平感を抱えながら、資源管理の重要性を理解して減収に涙を呑み規制を受け入れる事業者もいる。

 また、国際法を誠実に遵守する姿勢を内外に示すことや、民主主義の価値観を共有する各国と協調をはかることは、きわめて重要な国策である。

 少なくとも、この省令改正は、水産庁が喫緊に対応すべき、優先度の高い施策であるとはまったく考えられない。持続的漁業の推進を掲げるなら、水産庁にはもっと他にやるべきことが多々あるはずである。

参考資料:
−海洋海洋生物レッドリストの公表について
 整理番号79-81(カズハゴンドウ、マイルカ、ハセイルカ)
http://www.jfa.maff.go.jp/j/sigen/attach/pdf/20170321redlist-48.pdf
 整理番号85-87(シワハイルカ、カマイルカ、サラワクイルカ)
http://www.jfa.maff.go.jp/j/sigen/attach/pdf/20170321redlist-44.pdf
-Guidelines for Using the IUCN Red List Categories and Criteria ver.12, 2016
http://www.iucnredlist.org/technical-documents/red-list-training/red-list-guidance-docs
-茨城県の海岸に打ち上げられた多数のイルカと海洋異変について|JAMSTEC
http://www.jamstec.go.jp/apl/j/column/20150423/
-変容する鯨類資源の利用実態. 和歌山県太地町の小規模沿岸捕鯨業を事例として
http://ci.nii.ac.jp/naid/120003057536

 〜 〜 〜 〜 〜

以下のリンクもチェックのほどヨロシクm(_ _)m

■Taiji - an inflated symbol of perceived culture|WDC
http://uk.whales.org/blog/2017/03/taiji-an-inflated-symbol-of-perceived-culture

■「捕鯨がオランウータンを救う」なんて冗談キツイよ!
https://togetter.com/li/1099173
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2017年04月13日

太地−イルカ−水族館騒動リターンズ

17taiji.png
 まずは上掲の表、太地イルカ追い込み猟の今年度の捕獲数統計から。一次ソースはセタベースです。

■Drive Hunt Results • Taiji|セタベース
http://www.cetabase.org/category/taiji/

 食用捕殺数は前年度より57頭減りましたが(7頭の事故死を除く)、生体販売が115頭増えたため、トータルの捕獲数は83頭増に。追い込み数(捕獲+リリース)も前年度比380頭増の1,282頭で桁が増えました。
 ちなみに、捕獲後食用屠殺対象でない個体でも死亡するケースが示すように、追い込まれた個体は物理的・精神的ストレスを受け、群れの構成も変化するため、たとえリリースされても生残率が下がると考えられます。逃がせばいいという単純な話ではありません。
 ハナゴンドウは全部捕殺。ハンドウイルカはなぜか今シーズンの食用捕殺はなし(事故死を除く)。もっとも、水族館向け生体捕獲が前年度の7割増にあたる179頭。太地漁協にとっては売価1頭90万円、100万円前後のハンドウ生体はまさに稼ぎ頭であり、売れ筋の主力商品ということになるわけですが。
 過去の年度と比較すると、スジイルカとハナゴンドウが専ら食用向け、カマイルカ、マダライルカ、ハンドウイルカが水族館生体販売向けと鯨種を切り分ける傾向が強まりました。太地側が何の表明もしていないため、収益を優先した一過性のものと判断するしかないのでしょう。イルカ猟・捕鯨そのものに対しては特定のスタンスなど持ち合わせていないJAZA/WAZAとの協議の中で、食用と捕殺用の捕獲を完全に分離するよう求める要請に太地側が早く応えていたなら、そもそも脱退騒動自体回避できたかもしれません。体面ばかりを異常に気にする非合理な太地関係者の態度は理解に苦しみます。もっとも、コビレゴンドウでは一度に捕獲した群れを社会性への配慮など一切せず、食用捕殺・販売用選別・用済みリリースを同時にやってのけているので、やはり改善する気など端からないのでしょうけど・・
 で、ちょうどデータを整理してときに飛び込んできたのが、このとんでもないニュース。

■2水族館、JAZA退会…太地イルカ購入継続で (4/1,読売)
http://archive.is/Bn8o9
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170401-OYT1T50109.html:リンク切れ)
■太地のイルカ購入継続で2水族館がJAZA退会 (4/1,読売大阪)
http://www.yomiuri.co.jp/osaka/news/20170401-OYO1T50026.html
■和歌山・太地町のイルカ購入禁止措置に反発 2水族館がJAZA退会 (4/2,産経WEST)
http://www.sankei.com/west/news/170402/wst1704020058-n1.html
■イルカ入手禁止で 山口と神奈川の水族館が団体退会 (4/2,NHK)
http://archive.is/NgCk6
http://www3.nhk.or.jp/knews/20170402/k10010934611000.html:リンク切れ)
■2水族館がJAZAを退会、太地のイルカ購入禁止で (4/2,和歌山放送)
http://wbs.co.jp/news/2017/04/02/97964.html
■新江ノ島水族館が協会退会 追い込み漁イルカ入手継続 (4/3,神奈川新聞)
http://www.kanaloco.jp/article/241975
■イルカ追い込み漁巡り協会退会 新江ノ島など2水族館 (4/3,朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASK435TK1K43TIPE036.html?ref=tw_asahi
■問われる動物園・水族館の根拠  JAZA脱退の背後にある危機 (4/11,共同通信47ニュース)
http://www.47news.jp/47topics/himekuri/2017/04/post_20170411124556.html
■Aquariums in Kanagawa, Yamaguchi sever ties with national body over Taiji dolphin ban (4/2,ジャパンタイムズ)
http://www.japantimes.co.jp/news/2017/04/02/national/kanagawa-yamaguchi-aquariums-cut-ties-body-banned-dolphins-caught-taiji-drive-hunts/

 まず、ツイッターで指摘した誤報道のチェックから。
 読売、産経の「(太地町立館以外で)退会は初めて」との記述は間違い。静岡のあわしまマリンパークがさっさと脱けています。遅れた朝日の「退会は計3館」も同じ間違い。
 読売の「今年205頭のイルカが捕獲」もひどい間違い。詳細は上掲表をご参照。セタベースの数字もサイトで注記されているとおり公式の数字とは微妙にずれる場合がありえますが、隠したがりの太地の自己申告よりむしろ信用できると筆者は思っています。
 2年前の騒動については、以下の拙ブログ過去記事およびリンクでおさらいをば。

■沖縄を切り捨て太地を庇う、自民党と日本政府のすさまじいダブスタ
http://kkneko.sblo.jp/article/133050478.html
■水族館の未来
http://kkneko.sblo.jp/article/145181677.html
■太地イルカビジネス、JAZAと縁を切って万々歳?/哀しき虚飾の町・太地〜影≠フ部分も≪日本記憶遺産≫としてしっかり伝えよう!
http://kkneko.sblo.jp/article/175388681.html
■「池上彰のニュースそうだったのか!!2時間SP」の中で言及されたWAZAJAZA問題部分まとめ
https://togetter.com/li/837312
■激論!コロシアム【イルカが消えるだけじゃない!?日本を追い込む"やっかいなニュース"の真相!】(2015.6.13放送)
https://togetter.com/li/834969
■いるか漁業(追い込み漁)と生体販売の関係
https://togetter.com/li/824325
■野生イルカの展示目的による捕獲問題をめぐって|JWCS
http://www.jwcs.org/data/1608_namiki.pdf
■世界動物園水族館協会からの脱退勧告が意味すること|JWCS
http://www.jwcs.org/data/1511_namiki.pdf

 今回の新江ノ島水族館および海響館の脱退はきわめて不可解といわざるをえません。
何が不可解といって、脱退の判断がJAZAのWAZA残留決定/太地からの入手禁止通達の直後でもなければ、10年後でもなかったからです。
 この当時脱退を仄めかしていた水族館は数館あったものの(詳細は過去記事参照)、結局脱退したのは上掲のあわしまマリンパークのみで、問題の2館はその予備軍の中に含まれていませんでした。
 10年後というのは、何しろイルカは繁殖のスパンが長い動物ですから、JAZAネットワーク内で野生調達に依存せず繁殖による自家調達を確立するための研究・試行を重ねてある程度の目処がつくまで、最低でもそのくらいの時間はかかっていいはずだからです。それが岡田JAZA事務局長の言うところの「しばらくの苦労」。
 報道中の事務局長のコメントにもあったように、わざわざJAZAが前向きに動き始めようというこのタイミングで、突然2館が冷や水を浴びせる真似をしたのは一体なぜでしょうか?
 読売の第一報があった時点で、「政治的動機が裏にあるとしか考えられない」と筆者は指摘しました。 
 そして案の定、翌日2日のNHK報道で海響館・石橋館長のコメントが。

「JAZAの方針が捕鯨を推進する下関市の立場と整合性がとれないことも退会を決めた一因だ」(引用)

 海響館は下関市の公営水族館。そう、あの下関市です。近代捕鯨の大乱獲時代に大いに潤い、いまなお調査捕鯨母船日新丸の母港化誘致運動を積極的に展開している乱獲捕鯨城下町。運営する下関海洋科学アカデミー代表は捕鯨族議員の代表格である林芳正参院議員と懇意の中尾前下関市長、鯨類研究室長は元鯨研の石川氏と、捕鯨サークルと非常に強固なリレーションがある街。以下の過去記事もご参照。

■調査捕鯨と下関利権
http://kkneko.sblo.jp/article/69075833.html
■復興予算を食い物にしようとした調査捕鯨城下町・下関市
http://kkneko.sblo.jp/article/56253779.html

 では、新江ノ島水族館のほうは? 
 同館は首都圏近郊にある人気の高い大手水族館のひとつ。そのうえ日本国内ではイルカの繁殖実績が豊富な館として知られ、ハンドウイルカの繁殖に日本で初めて成功しています。つまり、JAZA内で自家調達・繁殖融通を考えるうえではとても重要なポジションにあったわけです。
 ちなみに、同館で現在飼育しているイルカはいずれも太地産≠ナはなく、近年太地から調達したイルカもいません。野生由来が3頭いますが、いずれも前世紀に壱岐と伊東から入手した個体。
 逆に、JAZAを切り崩すことを望む連中の目で見るなら、同館はまさしく最初に攻め落としたい城だったといえるでしょう。

 さて、一連の報道の中で、両館は異様なまでに太地の顔色をうかがうコメントをいくつか残しています。中にはあからさまな事実誤認も含まれています。

「追い込み漁は国が認める合法的なもの。国の政策に反する禁止規定を設けるJAZAの方針を容認できない」/両館(〜読売記事)

 これは間違い。マスコミ記者ではない業界関係者としては大いに問題アリです。
 第一に、追い込み猟の法的根拠などWAZA/JAZAは問うていません。動物園業界団体としてのWAZA/JAZAが飼育動物一般の入手のガイドラインに沿う形でイルカの調達のルールを設けただけ。
 両水族館の主張は、さまざまな商品・サービスに対して各小売店・業界団体が設けている自主基準を否定するものでしかありません。
 業界の事情に詳しい水族館通のイラストレーター・福武氏、作家・川端氏も以下のように指摘しています。

https://twitter.com/shinobuns/status/848494498443255809
「追い込み漁は禁止されてない。追い込み漁によって捕獲されたイルカの入手をしないとJAZAが決めたの」(引用)
https://twitter.com/shinobuns/status/848197260617826304
「国内法で禁止されてないから悪いことしてないという理屈やんね。だれも国内法の話なんかしてないっちゅうねん」(引用)
https://twitter.com/Rsider/status/848155204016930816
「動物園水族館が、国の法律や条例よりも上のスタンダードを自ら設定するのは別に変なことじゃないんだけど」(引用)

 動物園水族館における展示動物の入手に関する法的なガイドラインは、現在日本には存在しません。EU・英国のような動物園法がそもそもないのです。それに近いといえるのが、法的拘束力を持たない環境省の「展示動物等の飼養及び保管に関する基準」ですが、この中には調達に関する規定がありません(輸送まで)。
 つまり、事実を言えば、合法なのではなく無法地帯なのです。
 自主基準である以上、確かにやめたい会員は勝手に脱会すればいい話です。しかし、少なくとも両館は「違法でないことで縛られたくない」と正しい動機≠述べるべきでした。
 そして、その姿勢は「法律がない以上、水族館では何でも許されるべきだ」との主張につながります。それは、国内法基準がない中でのJAZAおよび加盟各館のエンリッチメント・動物福祉の向上に向けた取り組みをすべて否定することを意味します。

「(追い込み猟は)水産庁が計画だてて執り行ってきたもので、水産庁、太地いさな組合との関係は崩さない」江ノ島(〜神奈川新聞記事)

 主張の前半は事実ではありません。「水産庁が計画だてて執り行ってきた」のが新たな事実として発覚したら、世界的にとんでもない物議を醸すのは間違いありませんが・・。
 上記したように、動物園水族館業の所轄庁といえるのは環境省(及び自治体)。水産庁の出る幕はありません。2年前の騒動当時も自民党の捕鯨族議員が水産庁経由で「JAZAに圧力をかけろ」とまくし立てて問題になりましたが。
 同館は「環境省・JAZAとの関係を崩してでも、水産庁・太地とはがっちりスクラムを組みたい」と言っているわけです。これはびっくりです。同館は「水族館」の看板を引っ下げ、代わりに「新江ノ島魚市場」を名乗るのがスジというものでしょう。

「鯨類の繁殖研修を続けるには、地元の太地いさな組合などとの関係を維持する必要がある」/江ノ島(〜WBS報道)

 たった2年でJAZA内の飼育館のネットワークでの試行の努力を放棄し、「太地との連携が必須」との判定を下すのは明らかに時期尚早です。
 スタッフ研修に関して、太地町立館門外不出の秘伝でも存在し、それがなければ立ち行かないと、新江ノ島の担当者は本気で考えているのでしょうか?
 産経が中国からの受入を報じた太地のスタッフ研修制度が、他館が数年で追いつけないほど絶対的に優れたものだとは、筆者には到底思えません。
 あるいは、太地で飼育されているイルカを、獣医学部の実習訓練用のイメージで、飼育個体へのストレスを考慮せずに研修プログラムを組んでいることが、同町立館の異常に多い死亡率の一因になっているのではないかと勘繰ってしまいます。
 昨年1年だけでハンドウイルカ3頭、マダライルカ1頭が死亡。ほぼ毎年、多い時には年十数頭のイルカを死なせているのが太地町立館です。


 「供養さえすればいい」という身勝手な感覚で、次々に死なせては追い込み猟を使ってどんどん補充するのが太地町立館のスタイル。それはむしろ、追い込み猟という安易な補充手段があるからこそ可能なことであり、それ故に命の価値が軽くなっているといわざるをえません。いまは、飼育動物をできる限り長生きさせようと神経を配り、懸命に努力することが動物園にとって当たり前の時代です。太地の無神経さ、無節操さは、WAZA/JAZAの目指す方向性とは相容れないもの。
 新江ノ島水族館は、本当にそんな太地に寄り添う選択をしてしまっていいのでしょうか?

 ここで、ツイッターで拾った反応の一部を紹介しましょう。

https://twitter.com/M_A_F_/status/848157510917693440
「んーーーーーー日本で一番イルカの繁殖に成功してる江ノ島やフグで充分キャラ立ってる上他もすごい海響館がなんで追い込み漁のイルカにこだわるかね」(引用)
https://twitter.com/nukotama001/status/848108324734119936
「あらら・・・、特に江ノ島水族館はバンドウイルカ繁殖が一番成功してたのにねえ。ただの見世物小屋に堕するのか」(引用)
https://twitter.com/adachib/status/848107295477313537
「日本は繁殖だけでショーのイルカをまかなえていない。アメリカはそれができている。死んだら野生からつかまえてきて補充って、教育施設のくせにそんな安易な真似をして恥ずかしくないの? 水族館の役割はサーカスやペットショップとは違うだろうに」(引用)
https://twitter.com/naagita/status/848182120119844864
「新江ノ島水族館のイメージがダダ下がりなんだが……もう行かないだろうな。(^_^;)」(引用)
https://twitter.com/cub_tsuke/status/848162660461928448
「え〜、新江ノ島が? 教育施設としての学術性にもちゃんと気を配ってる水族館という印象だったのにガッカリだ」(引用)
https://twitter.com/momoclocatb/status/848124245590761472
「「新江ノ島水族館」と「海響館」には、絶対に行きたくありません!」(引用)
https://twitter.com/windowmoon/status/848101478791172096
「残念。もう江ノ水には行けないな」(引用)

 以下はWCSの動物イラストレーター・本田公夫氏、IKAN、そして到津の森動物園園長の卓見。一部ここで抜粋させてもらいましたが、全文必読です。

https://www.facebook.com/hiroto.kawabata.98/posts/1278076102247912
「昨年末の段階では江の水には内部的にJAZAに残ろうとする拮抗力もあるという希望的な観測も流れていました。極めて残念です。江の水と海響館は、水族館、とくに鯨類飼育園館の「世間」とJAZAの「世間」の間で前者の世間を選択したということであろうと推察されます。そうでなければ、記事をそのまま真に受けると、太地から20年イルカを買っていないと言っていた江ノ島が「今後も太地町からイルカを購入したい」という理由で退会するというのは解せません」(引用)

■イルカ飼育と福祉について|IKAN
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/post-0d0a.html
「海響館はさすが下関、「イルカ猟は合法であり、禁止するJAZAの方針を容認できない」そうである。いやしくも、「教育的な」側面を持つ水族館が、命の大切さや自然の不思議さの前に、産業擁護を自分たちの都合のための言い訳にするって、どうよ?」(引用)

■JAZA(日本動物園水族館協会)を退会した水族館で思うこと
http://www.itozu-zoo.jp/blogs/encho/2017/04/7822.php
「海外から見ると(けだし客観的な見方です)、日本人は獲り尽くすと他へ移動し、獲り尽くすと。そのように映るものです。クジラもイルカも魚類という見方を私たちはしています。果たして私たちの感覚は正常なのでしょうか。たとえそれが魚類であったとしても、蓄養の試みなしに自然からの略奪(ちょっと過激的な言い方かもしれませんね)は許されるのでしょうか」(引用)
「水族館の弱点は、実はここにあります。あまりに身近すぎて、しかも漁撈という文化的な下地も相まって、イルカを含めた魚類に対する思いやり(実は福祉ですが)が欠けているのではないかと思われることです。消耗した(あるいは、された)魚類は補えると思っているように感じます。それは極端な言い方をすれば命の軽視にも繋がる恐れがあります。そのような非難にはどのように応えればいいのでしょうか。論理的回答を求められるところです」(引用)

 さて、新江ノ島水族館および海響館の関係者のみなさん。水族館ファンを含むこうした深い幻滅の声を聞いても、今回の決断が本当に正しいことだったと思いますか?
 今からでも遅くありません。もう一度よーく考え直してみてください。

 ◇ ◇ ◇

 次回は水産庁パブコメについて
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2017年04月12日

広島・長崎より太地・下関が上、非核平和より美味い刺身≠ェ上──壊れた捕鯨ニッポン

dabsta.png
■Ultra double standard of Japan's diplomacy: 100% opposite in nuclear ban and "Favorite sashimi"
http://www.kkneko.com/english/nuclearban.htm

 今回は英語版を先に出しました。
 正直英語が超苦手な筆者ですが、国際司法裁判所(ICJ)でボロ負けして以降、判決全無視と卑劣な受諾宣言書き換え、ガラクタ調査捕鯨NEWREP-Aの強行に同じくNEWREP-NPの拡大宣言、トンデモ捕鯨礼賛映画裏コーヴ≠活用した愛国歴史修正主義者煽動etc.と、捕鯨サークルがなりふりかまわぬ姿勢に転じたこともあり、日本語/英語双方での発信強化を決めた次第です。

■核兵器禁止を目指す初の国連会議 日本の空席には「#wishyouwerehere」(3/29,ライブドアニュース)
http://news.livedoor.com/article/detail/12863111/
■核禁止条約交渉、日本は不参加=「国際社会の分断深める」と軍縮大使−国連 (3/28,時事)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017032800199&g=pol
■核禁止条約、対立を危惧=岸田外相 (3/28,時事)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017032800293&g=pol
■米国連大使、核兵器禁止「現実的でない」 (3/28,BBCジャパン)
http://www.bbc.com/japanese/39414602
■「核兵器禁止」日本は賛同せず 被爆国なのにどうして?【NPT再検討会議】 (2015/5/24)
http://www.huffingtonpost.jp/2015/05/24/npt-ban-nuclear-weapon-humanitarian-pledge_n_7429810.html
■Japan abstains as nuclear arms ban treaty talks start at U.N.(3/28,ジャパンタイムズ)
http://www.japantimes.co.jp/news/2017/03/28/national/japan-abstains-talks-start-u-n-nuclear-arms-ban-treaty/
■世界の核兵器、これだけある|朝日新聞
http://www.asahi.com/special/nuclear_peace/change/

先月国連で開かれた核兵器禁止条約(NWC)締結に向けた国際交渉への参加を日本が蹴ったニュースを見て、たぶん国民の多くが「なんで?」と首をひねったことでしょう。
 広島・長崎の原爆の悲劇は絶対に忘れてはならない、繰り返してはならない歴史として、直接被爆を体験していない世代も含め、私たち日本人の心に刷り込まれています。そのハズです。
 ですから、岸田外相や高見沢国連大使の、(少なくとも拉致被害者家族と同等以上に)心に深い傷を負い続けてきた被爆者の方々にまったく寄り添おうとしない、冷淡で突き放した言い方に対し、国民の感覚との大きなズレを感じたことでしょう。
 世界で最初に核攻撃による甚大な被害を受け、多数の尊い人命を奪われた日本が、核兵器廃絶を外交の最優先課題に据え、非人道的な兵器を認めないという価値観を共有する約110カ国の先頭に立って核のない世界を目指すことは、大変理にかなっています。
 世界中の心あるすべての人々が、きっと日本の姿勢に共感してくれるはずです。オバマ前米国大統領が示してくれたように。
 心を持たないシステムたる国家の場合、話はそう簡単ではありません。しかし、核兵器保有を正当化する大国の代表者は、真実に裏打ちされた日本の主張に対し、歯に物が挟まったような、あるいは冷淡で突き放した利己的かつ非人間的な言い訳≠オかできないはずです。彼らは被爆者の目をまっすぐに見ることができないはずです。そして、そのことは間違いなく世界に伝わります。
 日本が核兵器禁止条約での議論をリードすれば、確実に目標に一歩近づいたことでしょう。なんでもかんでも手っ取り早く武力で解決を図ろうとする、文明の後退を匂わせる昨今の世界情勢に、一石を投じることができたでしょう。
 世界における日本の存在感も格段に大きくなったはずです。TV局に厨二病的日本スゴイ番組をせっせと作らせるより。一過性のどんちゃん騒ぎにすぎない五輪なんか開くより。武器の流入を黙認しながら情勢が悪化するとそそくさと撤退する超中途半端なPKO派遣なんかより。
 ところが、残念なことに、日本政府はまったく逆の選択をしました。核保有国のお先棒を担ぎ、彼らに格好の口実を与えました。自称唯一の被爆国である日本が、具体的な核廃絶への道筋を何一つ示さないまま、「(核兵器禁止条約交渉を)現実的・効果的でないと平然と言ってのけちゃったんですから。これで、本来なら後ろめたさでいっぱいになるはずの言い逃れの文句を、彼らも安心して堂々と使えるわけです。
 参加した被爆者や核廃絶を求める世界中の市民の間からなんと情けない国だろうと失望の深いため息が聞こえてくるのは、あまりにも当然のことでしょう。
 そもそも日本が米国等の核保有国とタッグを組みながら推している核不拡散条約(NPT)は、既存の核大国を別格扱いする身も蓋もない差別的な不平等条約です。イスラエルやインド、パキスタンは参加せず、問題児の北朝鮮は脱退し、2010年代からは世界の核兵器の数はほぼ横ばいと、実効的な成果を挙げてきたとはとてもいえません。それ以前に今世紀に入ってからは、削減はもともと非合理に量産した米ロが主で、他の核保有国は変化なし、新興核保有国の登場まで許したのが実情です。核保有国には「誠実に核軍縮交渉を行う」ことが義務づけられていたにもかかわらず、ちっとも誠実に履行などされませんでした。一方、質量的に大国と対抗できる軍備を揃える技術も金もない国にとって、核はむしろより手軽な脅しのカードに使えるオプションとなってしまいました。だからこそ、業を煮やした世界中の非核保有国とNGOがNWCの制定に向けて準備を進めてきたわけです。
 しかし、そのように停滞した状況を打開する行動を一切とることなく、唯一の被爆国を謳いながら指をくわえてながめてきたに等しかったのが日本でした。そんな日本の言い訳は矛盾だらけで、ひたすら見苦しいの一言に尽きます。
 気候変動枠組条約にしろ、生物多様性条約にしろ、核以外の非人道的な大量殺傷兵器禁止条約にしろ、よその国の顔色ばかりうかがっていたら何も進みやしないのは、あらゆる国際条約でいえることです。対人地雷禁止条約とクラスター弾禁止条約には、米ロ等核大国とも重複する肝腎の保有国が批准していませんが、日本は加わっています。NWCに対する日本の態度は、地雷敷設で多大な人的被害を被ったカンボジアがオタワ条約に参加しないのに等しいものです。あるいは、後にパリ協定につながり、後ろ向きだった米国や豪州も参加させることにつながった京都議定書を最初から「無駄だ」と一蹴するのに等しいことです。
 破綻を前提とするのでない限り、できるだけ多くの国々が参加する筋の通った法的枠組を作ったうえで、消極的な国に方針の転換を粘り強く促すことこそ、現実的で効果的な唯一の道といえるでしょう。
 さて、筆者はもちろん、国に一刻も早く核廃絶を達成してほしい一日本人として、次の国政選挙では景気よりNWC早期加盟の是非を候補者・政党を選択する際の重要な基準に据えるつもりでいます。

 ただ、一連のニュース、特に日本政府担当者の発言を聞いていて、憤りとともに非常に強く感じたことがあります。
 それは、モヤモヤ感・とてつもない違和感
 というのも、別の分野の国際交渉をウォッチしてきた者の目には、日本政府のあまりにも煮え切らない卑屈な態度が、まるで別人格≠フように映ったのです。英語版記事では「ジキルとハイド」という表現を使いましたが。
 実際のところ、とある国際交渉の場において、日本政府はまるっきり逆の態度を取り続けてきました。すでに拙HP、ブログにお越しいただいたことのある皆さんには、何のことかもうおわかりですよね?
 原爆については日本は被害者の立場(太平洋戦争ではむしろ加害者の側面が大きいにしろ)ですが、商業捕鯨の乱獲・規制違反・密漁密輸の責任については日本はノルウェーに次ぐトップ2の加害者の立場です。南極海の荒廃をもたらし、多数の野生動物の命を奪った日本が、捕鯨推進を外交の最優先課題に据え、ジゾクテキリヨウという価値観を共有(?)する30カ国余りの捕鯨支持国の先頭に立って商業捕鯨再開を目指す──それが捕鯨外交なのです。
 非核平和ではよその国に遠慮しまくっている日本が、美味い刺身≠ノなると態度を一変させることができちゃっているのです。
 国際捕鯨委員会(IWC)の議論で、日本側のトップとして交渉にあたった前/現ミスター捕鯨問題≠スる小松正之氏と森下丈二氏も、≪原理原則≫を前面に押し出して一歩も譲歩する姿勢を示しませんでした。小松氏は国際法違反認定されたJARPAUの拡大路線とODA票買いの音頭を取り、森下氏は2009年の外部専門家を交えた和解協議だったデソト交渉を破談させました。まあ、「海のゴキブリ」発言で有名な小松氏はぶち上げ型、森下氏はサークルの核である日本捕鯨協会とは一線を画する斜めの主張がむしろ持ち味で、お二人のカラーはだいぶ異なりますけど。森下氏の方は最近微妙なニュアンスの変化がうかがえるものの、残念ながら極端なジゾクテキリヨウ原理主義から脱することはできていません。
 永田町の捕鯨族議員は何かと言えば「脱退しろ!」と拳を突き上げ(しかも鯨肉カレーなんぞ頬張りながら)、担当者も会議の場で脱退カードをこれ見よがしにちらつかせ、自らが決議を拒むことを正当化してきました。NWC参加問題での広島・長崎への仕打ちとは対照的に、IWCでは太地と二人三脚でぴったりと寄り添い、南極の自然を勝手に1地方自治体・特定漁協にとっての外堀≠ノしてしまいました。
極めつけは2014年のICJ判決に対する日本の不誠実かつ不遜極まりない態度。当時、各新聞も社説で「調査を名目にするのはやっぱりおかしい。南極海からはもう撤退した方が現実的≠ナはないか」とまともな国民の多くの声を代弁しました。しかし、当の捕鯨サークルは馬耳東風と聞き流したわけです。
 ヤッツケ・デタラメ新調査捕鯨の強行と国連受諾宣言書き換えは、岸田外相や高見沢国連大使の言うところの「対立・分断を深める」行為以外の何物でもありません。公海での違法な調査捕鯨に固執し続けるのは反発を強めるばかりで逆効果であり、日本の国是「商業捕鯨(沿岸捕鯨)再開」すらもますます遠ざける悪手といわざるをえません。
 実際のところ、捕鯨文脈における日本の独善的な行動は北朝鮮と瓜二つ。この辺はブログで何度も指摘しているところ。
■北は人工衛星という名のミサイル、日本は調査捕鯨という名の商業捕鯨
http://kkneko.sblo.jp/article/60752017.html
■ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html
■IWC決議違反の調査捕鯨は国連決議違反の北朝鮮のミサイルと同じ!
http://kkneko.sblo.jp/article/96646061.html

 もっとも、その北朝鮮はICJ判決後に日本の国際法違反の調査捕鯨を「犯罪行為」と強く非難しています。

■北朝鮮 日本の捕鯨を「犯罪行為」と批判 ('15/11/2, 聯合ニュース)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2015/11/02/0300000000AJP20151102004500882.HTML

 自分のことを棚に上げて? そりゃ、どんぴしゃブーメランでしょうに・・。
 そう、国際社会の目から見れば「どっちもどっち」。むしろ、たかが美味い刺身≠ナ国際法違反の悪いお手本を世界に示してしまう日本の方が、ずっと奇異に映るでしょうね。
 要するに、NWCとIWCの二つの国際会議における日本の態度は、到底同じ国のものとは思えないのです。
 南極産鯨肉=美味い刺身≠フためならあれほど傲岸不遜に振舞うことのできる国が、内外で共感する市民が圧倒的に多いはずの反核平和に関しては、すっかり萎縮してとことんしおらしくなってしまうのですから。
 「日本人の美徳」、慎ましさ、奥ゆかしさ?
 広島・長崎の声を犠牲にしてまで発揮した度を越した謙虚さの美徳も、オーストラリア・ニュージーランド両国が主権を主張しているサンクチュアリにまで一方的に押し入って美味い刺身≠強奪している時点で台無しですよ。
 もっとも、日本人の中にはこれでもまだ生温すぎるとお思いの御仁もいらっしゃるようですが。
 そう、「日本人の美徳である耐え忍ぶ、あうんで分かり合える、という素晴らしい民族性が今、仇となっている」という教育勅語も顔負けの迷言を残したウルトラナショナリスト、トンデモ竜田揚げ映画「ビハインド・ザ・コーヴ」を製作した八木景子氏。

■いろんな意味で「The Cove」を超えたトンデモ竜田揚げプロパガンダ映画=uBehind the Cove」の真っ赤な嘘|トゥゲッター
http://togetter.com/li/941637
■暴かれる陰謀|YOICHI MOGI
http://uminchumogi.blog111.fc2.com/blog-entry-446.html
■「ベトナム戦争」と「核問題」に直結する本物の陰謀≠暴き、かけがえのない日本の非核文化をサポートしてくれた「グリーンピースの研究者」と、竜田揚げブンカのために「広島長崎の虐殺」を掲げながら贋物の陰謀≠ノ引っかかったトンデモ映画監督|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/174248692.html
■Talk-back to an Oscar winner: Keiko Yagi's doc, BEHIND THE COVE, opens in Los Angeles | TrustMovies
https://trustmovies.blogspot.jp/2016/12/talk-back-to-oscar-winner-keiko-yagis.html

 八木氏が熱情を込めて作ったこのノンフィクション映画≠ノは、なんと驚くべきことに、原爆のワンシーンが登場します。これには外国人も日本人も(まともな人は)ドン引き。リンク、まとめの感想をご参照。
 ICJ判決まで捕鯨問題に無関心だった方が、新宿の鯨肉居酒屋で捕鯨協会のコンサルタントを務めた世論操作の立役者・梅崎義人氏と意気投合し、何かに突き動かされるように(とご本人もおっしゃってますが)作り上げたというこの作品。国内でも海外の映画祭でもクオリティについてはさんざんな評価を受けました。そんな無名の監督の初作であるにもかかわらず、なぜか永田町の国会議員を招いた試写会がセットされたり、記者レクのサポートまで水産庁がお膳立てしたり。安倍昭恵夫人の秘書さんじゃないけれど、何とも至れり尽くせりのアシストです。担当者はきっと「公務じゃない」とさえ言わないでしょうけど。
 氏はこれまでにも映画後のトークショーやメディアインタビュー、あるいは漁業問題のプロフェッショナル・茂木氏とのやり取り等各所で、人権・外交・環境・動物・漁業問題に関する相当とんちんかんな見識を開陳されてきましたが・・どなたか、八木監督の核兵器廃絶に向けたメッセージ、メディアへの寄稿を目にされた方はいらっしゃいますか? 今回のNWC交渉日本不参加に対する発言を聞かれた方は?
 まあ、本当に南極産美味い刺身≠フことしか頭にないんでしょうねえ・・なんともザンネンな御仁です。
 13日に渋谷で上映との話ですが、核兵器禁止条約交渉に対する日本政府の不甲斐なさに対し、せめて何か一言でもガツンと言ってくれるといいんですけどねえ。
 ちなみに、八木監督のお好きな阿吽の呼吸という言葉、核廃絶の足を引っ張る米国に歩調を合わせる日本にこそまさにぴったりあてはまる表現だと、本当に核問題に関心のある&はみなさんお思いになったことでしょう。当人にはちんぷんかんぷんかもしれませんが・・。

 筆者はむしろ、日本政府としての反核平和の哲学とジゾクテキリヨウ(美味い刺身=jの哲学の扱いは、今と正反対であるべきだと思います。美味い刺身≠ネんぞ優先順位の最下位でよろしい。
 毎年52億円の捕鯨対策予算は全部、「核兵器のない世界」を構築するための事業に振り向けるべきです。復興事業にたかった23億円や、これまでODAに注ぎ込んできた1千億円の予算も返納してもらいたいところ。縁故主義が支配的でガバナンスの未熟な発展途上国にODAを大盤振る舞いし、旅費を持ち、担当役人にはよい女の子≠ワで手配し、手練手管を駆使して多数派工作を進めてきた捕鯨推進外交のエネルギーも、今後はすべて非核グループの結束と拡大のために注がれるべきです(コールガール接待しろとは言いませんが)。
 美味い刺身@~しさに国際法を蹂躙し、南極海の平和を欲望でかき乱す、そんなエゴむき出しの行為をやめられない国がいくら平和を口にしたところで、世界に対して説得力を持つはずがないではありませんか。

 ◇ ◇ ◇

 次回(近日中)太地イルカ猟問題の予定
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2017年03月14日

南極海じゃ強行するくせに北方領土じゃやっぱり捕鯨はできない!! ロシアにゃヘイコラ、AUS&NZにはアカンベエ、売国水産庁の超ダブスタ外交

 前回前々回の続き。
 問合せに対し水産庁から回答がありました。
 結論から言うと、北方領土周辺(EEZ相当部分含む)で調査捕鯨はやらないということで確定です。
 ということで、英語版も含め図を更新しました。

■Ultra double standard of Japan's diplomacy : Territorial disputes issue and Japanese research whaling

hoppo2.png
territoryj.png

 まあ、概要資料でやらないとこまで水色にぜーんぶ塗りたくっちゃった水産庁が悪いわけですが。
 ひとつはっきり言えるのは、科学(カガク)的線引政治的線引がまったく一致しておらず、NEWREP-NPがまさに政治的にデザインされたものだということ。
 さらに、計画案資料の中では「外国EEZを除く」とあるものの、「(北方領土)係争区域を除く」とは一言も書かれていません。
 実質的に不可能なのはやむをえないにしろ、前回指摘したとおり、これだと日本政府の公式見解に反する形で水産庁が北方領土を暗にロシアの領土だと認めたのも同然。
 こうなると、オーストラリア/ニュージーランドのクレームを全無視する形で強行している南極海調査捕鯨との途方もない矛盾はもはや包み隠しようがありません。
 日本政府は両国民に対し平に謝罪し(ICJに美味い刺身*レ的の違法捕鯨と認定されながら判決を無視したことも合わせ)、南極海調査捕鯨をただちに撤回すべきです!!!

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2017年03月03日

南極海で強行できても北方領土で捕鯨はできない!? 売国水産庁の超ダブスタ外交

 前回、日本が新たに計画している北西太平洋鯨類科学調査(NEWREP-NP)で北方領土係争区域内が捕獲調査海域に含まれること、それによって重大な問題が浮上したことを取り上げました。

■北方領土問題とクジラ
http://kkneko.sblo.jp/article/178565457.html

 今回はみなさんにさらにわかりやすいよう3枚のチャートを用意しました。

newrepnp_t.png
newrepa_t.png
territoryj.png

 英語版はこちら。

■Ultra double standard of Japan's diplomacy : Territorial disputes issue and Japanese research whaling
http://www.kkneko.com/english/territory.htm

 なお、出典は以下の水産庁の調査捕鯨計画概要資料そのものです。

■南極海における新たな鯨類調査計画案の概要について|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/enyou/pdf/newrep-a.pdf
■新北西太平洋鯨類科学調査計画案の概要について|〃
http://www.jfa.maff.go.jp/j/whale/attach/pdf/index-2.pdf

 水産庁はあっけらかんと発表してしまいましたが、もはや実際に調査捕鯨をやろうがやるまいが、ロシアに許可を取ろうが取るまいが、国の根幹に関わる領土主権問題における日本の外交スタンスの途方もない矛盾が露呈してしまい、主要国との外交関係に重大な亀裂が生じたとしても何の不思議もありません。
 水産庁は「調査は我が国領海・EEZ・公海のみでやります」と宣言しました。つまり、調査捕鯨をやるかやらないかは、「その海域は日本の領海・EEZか、公海かのいずれかである(と日本政府はみなす)」という宣言にほかなりません。
 北方領土周辺海域で日本が調査捕鯨を計画通りに実施する場合、それは「ここは日本の領海だ!」と世界にメッセージを送ることを意味します。
 逆に、調査捕鯨を計画通りに実施しないなら「ここは日本の領海ではありません!」と宣言したのとイコールです。
 しかし、常識≠フ範疇で判断する限り、北方領土周辺海域での調査捕鯨はどう考えても不可能です。
 南極海でオーストラリア・NZに対してやってるのとまさに同じように、ロシアに許諾を得たり通知したりなど一切することなく、日本が同海域で調査捕鯨を強行するなら、たちまちロシアのコーストガードにとっ捕まるのは火を見るより明らか。
 それを防ぐ方策は、ロシアに「やらせてください」と頭を下げる以外にありません。それはやはり、「ここは日本の領海ではありません!」と認めるのも同然です。
 日露両国は互いのEEZで漁船を操業できるようにする協定を結んでいます。また、北方四島周辺に関しては領海12海里で日本漁船の操業を認める代わりに、日本がロシア側に協力金を支払っています。
 つまりこれらは、人道的見地からの墓参事業と合わせて、地元北海道の漁業者への配慮を優先し、国の体面を捨てて領土主権の主張を棚上げすることで実現しているわけです。
 とはいえ、調査捕鯨はそもそも建前上≠くまで科学調査であり、漁業ではありません。「ロシアEEZ内での調査許可申請」という形ではなく、「北方4島周辺水域における日本調査捕鯨船の操業枠組み協定」的なものを新たに取り結ぶひねり技も、あるいはアリかもしれません。その際にはロシアに何らかの便宜(普通に考えて協力金)を提供することが不可欠ですけど。
 いずれにしろ、目と鼻の先の北方領土と、はるか地球の裏側の南極海で、日本の態度があまりにもかけ離れているという事実は、もはや覆しようがありません。
 実施を見送るにしろ、許諾を得て実施するにしろ、それは水産庁がロシアという国に対して特別な配慮をしたことを意味します。オーストラリアやニュージーランドとは正反対に。
 水産庁が平伏しているのは、当の日本政府いわく目の前の北方領土を不当に占領し、クリミア半島でこれ以上ない「一方的な現状変更」をやってのけ、西側諸国からサミットで弾き出され、日本もその経済制裁に参加している国・プーチンが絶大な権力を振るう覇権主義の大国ロシア。日本側が固有の領土の主権を侵害されている相手です。
 一方、水産庁がICJ判決すら無視して嘲弄している相手であるオーストラリア・ニュージーランド両国は、そのロシアと対照的に、日本と「民主主義・国際法の支配」という価値観を共有するハズの国。特にオーストラリアは米国とともに太平洋の安全保障において緊密な連携を図っているハズの国。それが、日本側がわざわざ赤道を越えてはるばる遠征してまで相手国の領土主権の主張を直接侵害している相手です。
 南極海の調査捕鯨操業海域は日本に言わせれば公海≠ナすが、北方領土周辺海域は建前上日本固有の海=B
 目の前の自国の固有の海≠ナ、領土主権を侵害されているロシアに特別な配慮を払って実施を見送ることができるのに、はるかな南極海では価値観を共有する同盟国に一切配慮することなく、相手国の主権を踏みにじって強行しているのが日本なのです。

 先日も、オーストラリアのターンブル首相とニュージーランドのイングリッシュ首相がNZで対談した際、南シナ海問題における日米の見解にわざわざ同調してくれました。

■「米国のアジア関与歓迎」と豪とNZが首相共同声明(2/17,産経)
http://www.sankei.com/world/news/170217/wor1702170042-n1.html

 相変わらずなウヨ産経記事について補足すると、中国に対しては名指しせず国際法に基づく解決と自制を求めただけなのに対し、日本の調査捕鯨に両首脳は「強い反対」を表明していますが。
 しかし、そもそもICJ判決を無視して国際法を蹂躙する前例を示し、中国に塩を送ったのは日本なのです。
 そして、両国の唱える領有権を超拡張主義的に直接侵害しているのも、ダーウィンに空襲を仕掛けた前科のある日本なのです。中国ではありません。
 こんなことが許されていいはずがありません。
 以下はNZ在住のガメ・オベール氏のツイート。

https://twitter.com/gamayauber01/status/833646731497598976
オネストベース社会はNZ人やAU人の誇りであると思いまする。「相手の言葉を信用する」はダウンアンダー文明の特徴なんだす。
だから捕鯨で判る通り相手の言うことがウソだと判ったときのケーベツはすごい。
最近はNZやAUでは「日本人=ウソツキ」イメージが強いのでマトモ日本人は大変かもね(引用)

 オーストラリアとニュージーランド両国の市民は、美味い刺身*レ的の違法捕鯨を科学≠フ名のもとに正当化しようとした日本の不誠実を許すべきではありません。
 日本と中国とのケンカで、両国とも貿易・経済面では中国との結び付きの方がずっと大きいのに、北半球のことでもわざわざ日本の肩を持ってくれているにもかかわらず、その中国が日本に対してやっているのと同レベルの主権侵害を両国自身に対してやっているのは他ならぬ日本なのです。お人好し≠ノも限度というものがあります。
 両国市民はもっと、もっと怒るべきです。
 もちろん、日本人も。
 ロシアに媚びへつらって北方領土を売り渡すに等しいまねをしている水産庁の売国奴ぶりには、曲がりなりにも愛国者なら目をつぶるべきではないでしょう。
 そしてそれ以上に、かけがえのない友好国オーストラリアとニュージーランドの人々を傷つけて顧みようともしない水産庁のダブスタ外交こそ、私たち日本人は決して許すべきではありません。
 美味い刺身=iby本川元水産庁長官)などくそくらえです。
 ふざけるな、水産庁!!!
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2017年01月27日

南極海捕鯨プロレスに異変!?/北方領土問題とクジラ

◇南極海プロレス(日本捕鯨船団VSシーシェパード)に異変!?

 米国で史上稀に見る粗暴な政治家が大統領に選ばれ、ポピュリズム・一国至上主義が一層勢いを増しそうでなんとも憂鬱な気分になります。
 とりわけ深刻なのが、世界各国が協調して取り組まないことには解決が望めない地球環境問題。
 温室効果ガス排出国トップ2の米中が手を取り合って真剣に取り組む姿勢を示したこと自体大きな前進といえたのに、そのパリ協定から離脱ということになれば影響は計り知れません。
 野生生物問題もまた然り。
 生きものたちはニンゲンが勝手に引いた国境線を越えて行き来しますし、その製品(生体含む)も船や飛行機で本来の生息場所とはかけ離れた場所へ運ばれます。よその土地や海の自然に対する消費国の責任はきわめて重大。どの国もトランプ大統領に右へ倣えしてエゴをむき出しにすれば、野生動物たちはますます追い詰められることでしょう。
 TPP撤退は地球環境にとって唯一のプラス材料かもしれませんが、米国は環境負荷を下げたり多国籍企業に環境規制を反故にさせないためにTPPを脱けるわけではありませんから、自国にさらに有利な条件で負の部分だけ引き継いだ二国間の貿易協定を結ぼうとするでしょう。そうなったら、どっかの国はいち早く手を挙げそうですし・・ていうか、もう挙げつつありますが。。
 米国の政権交代はクジラたちにとっても逆風となりそうな気配。
 地球温暖化は中国のでっち上げ、ホワイトハウス伝統のファーストドッグも置きたがらず、息子はトロフィーハンティングが趣味というトランプ氏のこと、公海のクジラを守ることの優先順位はこれまで以上に下がりそう。「TPPなしでも米国産牛肉どんどん買いますんで、どうか南極海での捕鯨はお目こぼしを」と日本政府が持ちかければ、二つ返事で乗っかってしまうかもしれませんね・・。
 何より、トランプイズム:ポピュリズム&一国至上主義を日本でそっくりそのまま体現しているものこそ、反反捕鯨にほかなりません。
 わかりやすい敵≠ニスローガンを掲げ、憎悪を煽動する手法も見事にかぶっています。マスコミの抱きこみと大本営化に関してはまだ米国の方がマシといえますが、今後どうなるか心配。

 さて、その捕鯨ニッポンがわかりやすい敵≠ノ設定し、対立を演出することで共存共栄の関係を築いてきた相手であるシーシェパード(SS)、昨シーズンは南極海に船を出しませんでしたが、今回は新造船の投入を宣言。今月に入ってついに日本の調査捕鯨船団を捕捉し、ヘリから撮影した母船日新丸上のクジラの死体の映像を世界中に流しました。折しも、当の安倍首相とターンブル豪首相の首脳会談があったばかりのタイミングで、オーストラリアを中心に各国のメディアが報じました。

■Japanese ship Nisshin Maru found in Australia waters with dead whale on deck: Sea Shepherd (1/15,ABCニュースAU)
http://www.abc.net.au/news/2017-01-15/japanese-ship-nisshin-maru-dead-whale-found-sea-shepherd-says/8183856
■Japanese whaling criticised by Government in wake of Sea Shepherd footage, Shinzo Abe visit (1/16,ABCニュースAU)
http://www.abc.net.au/news/2017-01-16/japanese-whaling-criticised-by-government-sea-shepherd-footage/8184640
■Japan criticised after whale slaughtered in Australian waters (1/16,ガーディアン)
https://www.theguardian.com/environment/2017/jan/16/frydenberg-criticises-japan-after-whale-slaughtered-in-australian-waters

 中国・台湾メディアもご覧のとおり。

■日漁船偷偷在南極捕鯨 (1/15,中國報)
http://www.chinapress.com.my/20170115/%E6%97%A5%E6%BC%81%E8%88%B9%E5%81%B7%E5%81%B7%E5%9C%A8%E5%8D%97%E6%A5%B5%E6%8D%95%E9%AF%A8/
■日罔顧反對聲浪續捕鯨 澳洲:深感失望 (1/16,大紀元)
http://www.epochtimes.com/b5/17/1/16/n8708415.htm
■無視國際法庭禁令 日漁船於南極再偷捕鯨魚 (1/15,自由時報)
http://news.ltn.com.tw/news/world/breakingnews/1948441
■日船闖澳海洋保護區 再被拍到偷捕鯨 (1/19,環境資訊中心)
http://e-info.org.tw/node/202545

 ところが、当事者である日本の大手メディアによる報道は日経の1本のみ。ただし、アジアニュースのコーナーなのでこれもオンライン版のみと思われます。いつも騒ぎ立てる産経を始め、なぜか各紙とも沈黙を守りました。

■豪、日本の調査捕鯨を批判 反捕鯨団体が捕獲写真公開 (1/16,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM16H1X_W7A110C1EAF000/

 不可解なことに、NHKと毎日新聞はタイムリーでも重要でもない捕鯨関連報道を前後に流していたりするのです。

■捕鯨支持国拡大へ注力 IWC総会にらみ (1/9,毎日)
http://mainichi.jp/articles/20170110/k00/00m/020/107000c
■調査捕鯨計画案 約100頭増 (1/17,NHK 北海道 NEWS WEB)
http://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20170117/5641421.html (リンク切れ)
http://archive.is/3rpkE

 毎日の方は共同配信で同記者が水産庁担当者から聞き出しスクープにした模様。従来から続けてきた抱き込み捕鯨外交を強化するというものですが、目新しいものとまでは呼べません。
 NHK北海道に至っては、昨年11月に水産庁がリリースを出し、他紙がとっくに取り上げたことだけ。年が変わって出す理由は皆無。
 他の日本語での報道は以下の海外メディアや通信社のものばかり。

■日本の捕鯨船、南極海でミンククジラ殺害と 豪政府批判 (1/16,BBC)
http://www.bbc.com/japanese/38633486
■シー・シェパード、調査捕鯨の写真公開 「IJC判決後初」 (1/16,AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3114239
■豪環境相、日本の南極海での調査捕鯨再開を批判 (1/16,ロイター)
http://jp.reuters.com/article/australia-japan-whaling-idJPKBN1500TB
■安倍訪豪直後に連邦政府、日本の調査捕鯨を批判 (1/16,日豪プレス)
http://www.afpbb.com/articles/-/3114239
■日本、捕鯨禁止に違反、シーシェパードが摘発【写真】 (1/16,スプートニク)
https://jp.sputniknews.com/life/201701163242969/
■日本の捕鯨船にクジラの死骸か、シー・シェパードが写真公開 (1/18,CNN)
http://www.cnn.co.jp/world/35095164.html?ref=rss

 スプートニクが全然関係ない破裂寸前漂流クジラの画像を貼っ付けたのはご愛嬌として。。。
 いわゆる大手マスコミ以外でこの一件を伝えたのが、下掲のビジネスニュースオンラインとハフィントンポスト。

■日本が調査捕鯨を再開、アメリカ人の見方は? (1/16,businessnewsonline)
http://business.newsln.jp/news/201701161618230000.html
 中身はRedditといういわゆる米国版2chの内容を拾ってきただけ。そんなもので「アメリカ人の見方」がわかるはずもないのですが。「○○で鯨肉売ってた」だの、日本在住の反反捕鯨ネトウヨとすぐわかる書き込みも散見されますし。。
 まあ、まともなジャーナリズムとは到底呼べませんわな。これですから。。。

 現在、ポストプロセスの日本語辞書作成のための統計処理が完了していないため日本語の作文に不具合が生じている場合があります。(引用)

■シーシェパード、日本の捕鯨写真を公開 水産庁の反論は?【UPDATE】 (1/16,ハフィントンポスト日本語版)
http://www.huffingtonpost.jp/2017/01/16/whale-hunting_n_14192392.html

 こちらはハフィントンポスト日本版。水産庁と同紙記者・濱田理央氏のやり取りがあるので、詳細にチェックしていきましょう。
 まずは記事本文と4番目の質問の間違い「ICJ判決後初めての殺害」について。
 記事の誤解のもとはBBCニュース日本語版≠フ「国際司法裁判所(ICJ)が2014年に判断を示して以来、ミンククジラが殺害されるのは初めてだとしている」(引用)とみられます。が、実は各英文報道にはそのような表記がありません。「(第三者が)写真で記録したのは初めて」という意味。つまり誤訳。新調査捕鯨・NEWREP-Aが今回で2期目であるのは当然みんな知っていることです。
 水産庁の担当者は鼻高々に答えていますが、まさか海外報道に目を通していないはずはないので、意図的に記者の誤りに便乗したというのがおそらく正解でしょう。優秀な霞ヶ関官僚さんの英語力や調査力がそんなに低いはずはないですからね・・。
 記事本文、というより安倍首相の間違い「国際的に認められている種類だけを利用する」について。
 これ、まさにトランプ流の真っ赤な嘘です。トランプと同様何にもわかってないのでしょうけど。
 真っ赤な嘘といっても、商業捕鯨モラトリアムから調査捕鯨国際裁判、新調査捕鯨に至る一連の経緯を考えると、きわめて意味深。水産庁も本当は困ってしまうレベル(まともだったらの話ですが)。
 事実を言えば、「国際的に認められている種類」などというものは存在しません。
 もしそんなものがあれば、国際司法裁判所で違法判決が出るはずもなし。誰だってわかりますよね?
 商業捕鯨モラトリアムには「国際的に認められる種類を例外とする」なんて規定は設けられていません。
 つまり、国際的に認められていないものを、日本が勝手に利用しようとしているだけなのです。だからこそ、国際的な反対の声が挙がっているのです。
 安倍首相のこの発言について、もう少し掘り下げてみましょう。
 実はこのコメントは外務省の発表した共同声明の中には含まれていません。捕鯨に関しては以下だけ。

■安倍総理大臣とターンブル豪首相共同声明|外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000120556.pdf

ターンブル首相は安倍総理大臣に対し,日本が今期に南極海において捕鯨を実施することを決定したことに対するオーストラリアの深い失望を伝えた。安倍総理大臣は,新南極海鯨類科学調査計画(NEWREP-A)の法的及び科学的根拠に関する日本の立場を説明した。両首相は,日本とオーストラリアは,海における人命や財産に対するリスクとなるいかなる行動も容認しないことを改めて強調した。(引用)

 では、出所はというと、以下のフジテレビの報道の模様。そもそも日豪首脳会談自体、日本のマスコミはあまり大きく取り上げていなかったのですが。

■日豪首脳会談 調査捕鯨への過激な妨害行為に厳正な対応求める (1/15,FNN)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00347039.html

これに対して、安倍首相は、捕獲によって鯨の総数に悪影響を及ぼさないと、国際的に認められている種類だけを持続的に利用するとする、日本の立場を説明した。(引用)

 ハフィントンポストの「国際的に認められている」の一言では、読者は「なぁんだ、じゃあ別にいいんじゃん」という反応で終わってしまいそう。
 同紙記事のみでは「国際的に」が一体どういう趣旨なのか、法的にか、(自然)科学的にか、社会的にか、判然としなかったわけですが、FNN報道からはやや科学的(?)なニュアンスの発言だということがわかります。
 ハフィントンポストの濱田記者は、なぜ前半部分を端折ったのでしょうか? 時事通信出身とのことですが、時事通信といえば、いわずと知れた元国際PR・梅崎義人氏がかつて所属し、全体的に捕鯨擁護のトーンが高いメディア。まあ、記者個人の立場が常に媒体と一致するとは限りませんけど。
 いずれにしろ、「捕獲によって鯨の総数に悪影響を及ぼさないと、国際的に認められている種類」はやはり存在しません。
 もし、事実なら、モラトリアムはとっくに解除されています。日本が勝手に主張しているだけで国際的に認められていないが故に、解除されないのです。
 安倍首相の「鯨の総数」という表現も素人的ですが、「悪影響を及ぼさない」はあくまで日本の御用学者の主張。当然のことながら「捕獲によって」の部分には規制の有効性が含まれるべきで、CITES違反の鯨肉製品違法販売や、調査捕鯨の名を借りた美味い刺身*レ的の国際法違反商業捕鯨を日本が続けている以上──しかも歴史的にも大乱獲の前科があるのですから──影響がないという主張を国際社会が認めることはありえません。また、ニホンウナギも太平洋クロマグロも、近海の主要な漁業資源の半数も、持続的に利用などまったくできていないのが日本の漁業の実態ですから、「持続的に利用する」という言葉自体に何一つ説得力がないといえます。
 さらに、何に対する「悪影響」かによっても見方は変わります。炭素固定など重要な生態系サービスを担っている大型鯨類をたかが美味い刺身≠ナ少しでも減らすこと自体、悪影響には違いありません。
 ハフィントン記事中の水産庁の回答の問題点に戻りましょう。以下に1番目の質問と回答を引用。

Q:オーストラリアの海域で現在捕鯨調査をしているのでしょうか?
A:写真を公開は承知しています。実際に調査をしていますが、国際捕鯨取締条約で認められた正当な活動で、問題はないと考えています。(引用)

 見事に噛み合っていませんね・・。
 オーストラリアの指定したサンクチュアリは、同国が主張する南極大陸領土の沖合のEEZの中にあります。
 ただ、水産庁担当者の「実際に調査をしている」という発言は、SSCSが報じた位置情報が正しく、実際に同国(が権利を主張する)海域で勝手に£イ査をやっていること、またその事実を自ら認識していることを裏付けるものといえます。
 水産庁の「国際捕鯨取り締まり条約で認められた正当な活動で、問題はない」というコメントには2つの重要な内容が抜けており、補足が不可欠。
 まず第一に、国際捕鯨取締条約(ICRW)で認められた「正当な活動」と謳って日本が同海域で行ってきた前調査捕鯨・JARPAUは、美味い刺身の安定供給(by本川元水産庁長官)目的でICRWに違反した「正当でない活動」でした。「問題大ありだった」のです。同様に、NEWREP-AもJARPAU以上に問題だらけ。国際法上問題があるかどうかシンプルに判定するにはICJにかける必要がありますが、日本は正々堂々と司法判断を仰ぐのを回避するために国連受諾宣言を書き替えました。「問題がない」のであれば、そんなことをする必要はまったくなかったのです。詳細は下掲の過去記事及び『クジラコンプレックス』(東京書籍)をご参照。

■新調査捕鯨NEWREP-Aはやっぱり「美味い刺身」目当ての違法捕鯨だ
http://kkneko.sblo.jp/article/176208780.html
■とことん卑屈でみっともない捕鯨ニッポン、国際裁判に負けて逃げる
http://kkneko.sblo.jp/article/166553124.html

 もう一点の極めて重要な問題については後述。
 2番目の質問への回答は1番目と重複する内容で、つまり問題もやはり同じ。違法なJARPAUでの主張の繰り返しです。
 続いて、3番目の質問と回答を引用。

Q:2014年に国際司法裁判所で日本の捕鯨行為を違法とする判決が出ましたが、その後も調査を継続していることに問題はないのでしょうか?
A:確かに違法判決は出ましたが、捕獲するサンプル数の根拠が明確でないといった指摘であり、将来の捕鯨活動を制限するものではありません。2015年秋にサンプル数の根拠を明確にした新しい調査計画を作成し、国際捕鯨委員会に提出しています。(引用)

 さあ、これもトランプ流の嘘。真っ赤な嘘≠ニいうよりは、国民に与える情報を極小に留めることを意図した計算された嘘に近いですが。
 ICJが日本の調査捕鯨の違法性を断じたのは「捕獲するサンプル数の根拠が明確でないから」ではありません。大体、皆さんも「根拠がはっきりしないくらいで違法なのか?」と首をひねるでしょう。
 科学を偽装した美味い刺身の安定供給(by本川元水産庁長官)目的の国際法に反する商業捕鯨だったから、です。
 詳細に解説すると、ICJが指摘した「JARPAUで明確でなかった部分」というのは「サンプル数の根拠」ではないのです。「サンプル数が鯨種毎に食い違う根拠」。ナガスクジラやザトウクジラはほとんどあるいはまったく捕獲しなくても成果ありとしながら、クロミンククジラで桁違いのサンプル数を要求するのは科学的に辻褄が合わない。クロミンククジラのみに捕獲が偏向しているのは、本川元水産庁長官が国会で答弁したとおり、「クロミンククジラが香りや味がよいから」とみなさざるを得ない、と。このことは判決文にもはっきりと明示されています。水産庁やマスコミは国民にこの事実をまったく伝えようとしませんが。
 そして、実際のところ、NEWREP-AはICJの指摘に合わせて改善されるどころか、より「美味い刺身」に専念することで違法性がさらにアップしています。サンプル数の根拠の説明の仕方も違法なJARPAUを踏襲しており、最初に数字ありき≠フ代物です。水産庁担当者いわく「IWCに提出した調査計画」は専門家パネルでさんざんに叩かれました。日本側が大量に送り込んでいる御用学者が無理やり両論併記にしましたが。
 さらに詳細は拙ブログ過去記事及び『クジラコンプレックス』をご参照(NEWREP-Aの違法性については上掲)。

■ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html

 もう一つの表現、「将来の捕鯨活動を制限するものではありません」も、明らかに事実に反します。舌足らずですが。
 大体、将来の捕鯨活動が調査捕鯨を指すのか商業捕鯨を指すのか判然としません。卑しくも官僚たるもの、こんないい加減な言葉遣いをすべきではありません。
 むしろ、この曖昧な表現自体が商業捕鯨と調査捕鯨の線引をはっきりさせる気がない意思の現われともいえますが。
 商業捕鯨の趣旨でいえば、要件が整わず商業捕鯨モラトリアムが解除されない以上、捕鯨活動は制限され続けます。
 調査捕鯨の趣旨でいえば、日本が「制約を受けない擬似商業捕鯨を続けるテクニック」として調査捕鯨を位置づけたのは火を見るより明らかなわけですが、ICJは判決の中で今後許可を発給する際には判決内容を考慮するよう釘を刺しました。
 事実に従えば、日本はICJによって課された国際法上の制約を無視したうえ、国連受諾宣言を書き替えることでそのことを問われないよう手を打った、ということです。
 最後の設問に関しては、おそらくSSは狙ったけど間に合わなかったというところでしょう。特にターンブルはほっとしてるでしょうね。

 ところで、水産庁は今回オンラインメディアのハフィントンポストの取材しか受けていません。記事にしようともない日本のマスコミも腰が引けていますが。
 しかもどういうわけか、CNN(上掲)に対しては、「日新丸から報告を受けるまでコメントは差し控える」(引用)と回答を避けています。なんともちぐはぐな対応。
 その一方で、水産業界紙には直前に以下の記事が。

■水産庁、シーシェパード活動HPに 「捕鯨」への関心喚起 (1/10,みなと新聞)
http://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/e-minato/articles/65065

 ウナギやマグロの窮状はじめ、水産庁として国民の関心を喚起すべきことは他に山ほどあるはずですが・・。
 いずれにしても、自分で「関心を喚起する」と言っておきながら、オンラインメディアには中途半端な受け答えに終始し、海外メディアに対してはコメントすら出さないという、あまりに支離滅裂な対応を取っているのです。これは非常に奇異なことです。
 なぜといって、最初に述べたように、これまで捕鯨ニッポンはSSとの対立をPRすることで国内のナショナリズムを煽り、国会議員からネトウヨまでの支持を取り付ける戦略をとってきたからです。
 シーシェパードが違法な暴力的妨害行動に打って出ず、目撃者∞監視者≠フ役割に(今のところ)徹しているのが気に食わない?
 確かに、プロレス番組で視聴率の数字を取りたい立場としては、相手がもっと過激なパフォーマンスを繰り広げてくれないと、日本のヒール≠ヤりが目立っちゃいますものね・・。

 一方のオーストラリアでは、こんな報道もありました。タイムリーというかなんというか。

■Sixteen men arrested over $60m cocaine bust on ex-Japanese whaling boat (1/18,ヤフーニュースAU)
https://au.news.yahoo.com/vic/a/34176592/sixteen-men-arrested-over-60m-cocaine-boat-bust/
■Vic smugglers shipped cocaine on whaling boat (1/19,スカイニュースAU)
http://www.skynews.com.au/news/national/vic/2017/01/19/vic-smugglers-shipped-cocaine-on-whaling-boat.html
■〔オセアニアン事件簿〕麻薬密輸組織、日本の旧捕鯨船利用も (1/24,NNA ASIA)
http://www.nna.jp/articles/show/1561641

 元日本の捕鯨船がコカイン密輸に遣われ摘発を受けたという記事。
 下のスカイニュースででかでかと遣われている画像はもろ調査捕鯨のもの。直接は関係ないですけどね・・同様に豪国内法に違反する行為なのも事実ですけど・・。
 これも、コアラが穴に落っこちたとかいったほのぼのニュースなんかよりははるかに、日本でも報じる意味のある事件のはずですが、やはり日本のマスコミは全スルー。
 この一件を日本語で唯一報じたNNA ASIAでは、以下の非常に興味深い解説を載せています。

■【有為転変】第107回 日豪と韓豪の貿易協定 (1/20,NNA ASIA)
http://www.nna.jp/articles/show/1557202

その一方で日本は、日豪EPAによる2年間の成果を検証することさえしていない。優先順位が低いはずの捕鯨にこだわり、過去の日豪友好関係にしがみつき、既得権益や規制ばかりを重視しているうちに、オーストラリアではいつのまにか韓国産ブランドが席巻していた、という事態は見たくないものだ。(引用)

 オーストラリアにとって、日本は韓国や中国と天秤にかけて計る対象にすぎません。
 南極産美味い刺身≠ノ拘泥することがどれほど日本の国益を大きく損ねる愚かな真似か、私たち日本人はもっと真剣に考え直す必要があるでしょう。


◇北方領土問題とクジラ〜お人好しすぎるオーストラリア

 北方領土とクジラといえば、最近近代捕鯨の操業当時の模様の写真がニュースになりました。日本(和人)の捕鯨会社が、捕鯨を強制的に禁止したアイヌを尻目にシロナガスを乱獲していた事実を示すものでもありますが、ここでするのは別の話。
 上掲で取り上げたハフィントンポスト記事にある水産庁コメントの2番目は、国際的に大きな波紋を呼びかねない重大な問題をはらんでいます。
 以下で何がそんなに大ごとなのかを解説しましょう。
 まず、水産庁の誤り指摘の続きから。
 国際捕鯨取締条約(ICRW)で認められた「正当な活動」という間違った前提≠フもとですが、「科学調査だから問題ない」という主張自体そもそも間違っています。
 国連海洋法条約のもとでは、EEZは資源調査も含めて沿岸国が排他的許認可権を有しています。
 たとえ本物の、条約上正当な調査捕鯨であったとしても(違いますけど)、同海域で実施する前に日本はオーストラリア政府に対してお伺いを立てなければいけないのです。同国の権利を尊重するならば。
 もう一度確認すると、水産庁のコメント「条約で認められた活動」はこの場合意味がありません。条約で認められているか否かは関係ないのです。認められていようがいまいが、日本が勝手に≠竄チていいのは公海と自国EEZ内だけ。他国EEZ(排他的′o済水域)内で調査をやろうと思ったら、当該国の許認可を得る必要があるのです。
 つまり、この場合「オーストラリアの海域だという同国の主張を日本政府は認めない。ここは公海だから我々は堂々と勝手にやるのだ」と明言するのが筋なのです。実際、日本は従来、ICJ法廷をはじめ他の場所ではそう主張してきました。裏でどっぷり癒着しているとはいえ、一応民間の日本捕鯨協会は、オーストラリアを嘲弄する態度を隠そうともしていません。
 ですから、ここで記者に「オーストラリアの海域で」と質問をさせておきながら、水産庁が歯に物が挟まったようなすり替えの回答でごまかしているのは、やはり非常に奇異なことではあります。
 ともあれ、オーストラリア側の反応からも、水産庁のコメントからも、オーストラリアが自国EEZであると主張する海域内で調査捕鯨を実施するにあたり、日本が同国に許諾を得るどころか通知さえ一切していないことは明らかです。

 実は、これは調査捕鯨のセオリーどおりの振る舞いというわけではありません。

■日本のクジラ調査船、ロシア当局が検査 オホーツク海 (2014/8/22,AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3023838
(報道当時の拙解説〜ツイログ)
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-140822

 これは3年前に起きた事件。
 調査捕鯨船団の1隻(監視船)がロシア当局に一時拿捕されたのはロシア領海内。
 ただし、この調査自体がオホーツク海のロシアEEZ内での目視調査でした。ロシアのオブザーバー科学者も乗船。
 これは旧北西太平洋調査捕鯨・JARPNUの一環として行われたものです。
 当時、日露関係はクリミア半島併合、いわゆる一方的な現状変更≠ニ制裁によって極度に悪化し、一種の嫌がらせとの見方もあります。サケマス流し網操業の禁止等、ロシアEEZ内の日本漁船操業をめぐっても、両国間は緊張状態が続いていますが。
 しかし、ロシアとの関係が冷え込んだ時期ですら、日本はロシアに対して調査実施を申請し許認可を得ていたわけです。
 目視調査ですら。
 そればかりではありません。
 まず、JARPNUにおいては、ロシアEEZ内で日本はクジラの捕殺調査を行っていません。
 オーストラリアサンクチュアリとは対照的に。
 そればかりではありません。
 問題はNEWREP-Aと対をなす新北西太平洋調査捕鯨・NEWREP-NP。NEWREP-A同様、捕殺調査の実施海域を拡大したのですが・・以下の水産庁発表の計画概要のPDFファイル、最後のページにご注目。

■新北西太平洋鯨類科学調査計画案の概要について|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/whale/attach/pdf/index-2.pdf

 おわかりでしょうか?
 新調査から、いわゆる北方領土のEEZを捕殺調査の実施海域に加えたのが。
 ただし、3箇所の日本沿岸調査と異なり、沿岸12kmの領海部分は除かれていますが。
 まず、科学的な問題点を指摘しておきましょう。
 NEWREP-NPでは稀少なミンククジラJ系群の比率を調べるなどというトンチキな理由で網走沖沿岸調査を企てています。しかし、対象となるのは一時期の、回遊コースのごく狭い部分にすぎません。もし、本当にデータの精度を高めるうえで捕殺調査が必要なのであれば、一時期、狭い範囲限定の調査をもとに類推に類推を重ねるのではなく、回遊先の索餌海域となるオホーツク海で大々的な捕殺調査を行うべきです。
 それはまさに、オーストラリア(が自国のだと主張する)海域で、NEWREP-Aのクロミンククジラの捕殺調査でやっていることなのですから。
 逆に言えば、ロシアEEZに相当する海域で捕殺調査の必要がないのであれば、目視調査で済ませることができるのであれば、南極海での捕殺調査もまったく必要ありません。
 いずれにしても、網走沖調査捕鯨には下道水産に便宜をはかる以上の意味が皆無だという一語に尽きるわけですが。
 詳細は前回のブログ記事をご参照。

■史上最悪の調査捕鯨NEWREP-NP──その正体は科学の名を借りた乱獲海賊捕鯨
http://kkneko.sblo.jp/article/177973131.html

 さて、ここで3つのEEZないし係争区域における日本の調査捕鯨の態様を比較してみましょう。
territoryj.png
 皆さんご承知のとおり、北方領土周辺EEZを実効支配しているのはロシアです。


 周辺のEEZは北方領土同様にロシアにより管理されている。(引用)

 水産庁がNEWREP-NPで計画している同海域での捕殺調査を本当にやるつもりだとしたら、間違いなくロシア政府当局に通知し、了解を得ることでしょう(あるいは既に得たか)。
 さもないと、ロシアの監視船がすっ飛んできてとっ捕まるのは目に見えてますし、ね。
 日本政府は「ここは我々の領土だ!」と拳を突き上げているわけですが、それでもロシアに断りを入れずに、自国の当然の権利として傲然と強行するとは思えません。
 翻って、南極海で日本は一体何をやっているでしょうか?
 友好国のオーストラリアが自国の領海だと主張している海域に、何の通知もなく「当然の権利だ」とばかり傲然と押し入っているのです。
 自国の領土だと主張している海域ですら、ロシアに対しては殊更に配慮しているにも関わらず、です。
 西側同盟の一員として価値観を共有しており、米国に次いで最も親密であるといわれ、両国市民の好感度も良好なオーストラリアに対する態度。
 日本も一応含まれる西側諸国とは国内の民主化・外交政策の両面で大きな隔たりがあり、価値観を共有しているとはいえない国、しかも領土をめぐる軋轢を直接抱えている相手でもあるロシアに対する態度。
 両者に対する日本の待遇に、どれほど途方もないギャップのあることか。
 ICJ判決無視や国連受諾宣言書き換え、そしてこの極端な外交のダブスタに象徴される美味い刺身″ナ優先の日本外交が、いかに世界の人々から奇怪なものとして受け入れられることか。
 硬直的な捕鯨推進政策が一体どれほど大きく日本の国益を損ねていることか。
 今こそすべての日本国民が真剣に考えるべきときです。

 同時に、これはオーストラリア国民にもいえることです。

■日豪首相が会談、多彩な連携 「TPPの早期発効目指す」 (1/16,NNA ASIA)
http://www.nna.jp/articles/show/1558658

■捕鯨問題では双方が要請
一方会談では、安倍首相が調査捕鯨についての日本の立場を説明し、反捕鯨団体による妨害行為について予防や厳正な対処を要請。ターンブル首相は捕鯨に反対するオーストラリアの立場を説明したのみで、日本の要請を受け入れると明言しなかったという。
ただ、ターンブル首相は会談後、日豪関係について「喜びも悲しみも共有する友人(all―weather friend)」と表現し、捕鯨問題が日豪関係全体を損ねるものではないと話した。(引用)

 ターンブル首相のこの発言はあまりにも人が好すぎます。
 「おまえたちがやってることは友人に対してしていいことじゃない」と、はっきりと口にすべきでした。
 日本がオーストラリアのサンクチュアリでやっていることは、日本人を被害者≠フ立場に置き換えるなら、「国立公園に指定されている知床沖に、南半球の国が勝手に浸入し、好き放題密漁をやっている」のと同じ。
 日本でいえばツルやハクチョウに相当する、市民の愛でる野生動物を「美味い刺身≠セ」といって殺され、国家としての主権も踏みにじられながら、うわべだけの友人関係を演出することが、一体どうして国のためになるでしょう?
 オーストラリアの人たちの悲しみを、日本人はまったく共有してなどいないのです。少なくとも、霞ヶ関と永田町にいる連中は。
 捕鯨ニッポンどれだけオーストラリアとその市民をバカにした態度をとっているか、今こそはっきりと認識するべきです。


関連:(たまたま検索していて引っかかりました・・)
■一九四六年十一月に外務省が連合軍総司令部に提出した北方領土問題についての調書
http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/HoppouShiryou/S1/194611GaumushouChousho.htm
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2016年12月08日

史上最悪の調査捕鯨NEWREP-NP──その正体は科学の名を借りた乱獲海賊捕鯨


 11月9日、マスコミ報道が米大統領選一色に染まる中、こっそりとまぎれ込むように流れた1つのニュースが内外の捕鯨問題ウォッチャーに衝撃をもたらしました。

■政府、捕鯨計画100頭増 北西太平洋 網走沿岸でも調査 (11/8-9,北海道新聞)
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/economy/agriculture/1-0336135.html
■北西太平洋で314頭=調査捕鯨の新計画案−政府 (11/9,時事)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016110900941&g=eco
■調査捕鯨、政府が年100頭増の計画 対立深まる恐れ (11/9,朝日)
http://www.asahi.com/articles/ASJC9551VJC9ULFA016.html
■捕獲314頭に増加 北西太平洋・新計画案 (11/9,毎日)
http://mainichi.jp/articles/20161110/k00/00m/020/111000c

 こちらが水産庁の発表。

■新北西太平洋鯨類科学調査計画案の提出について|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kokusai/161109.html
■新北西太平洋鯨類科学調査計画案の概要について|〃
http://www.jfa.maff.go.jp/j/whale/attach/pdf/index-2.pdf
■Proposed Research Plan for New ScientificWhale Research Program in the western North Pacific(NEWREP-NP)
http://www.jfa.maff.go.jp/j/whale/attach/pdf/index-3.pdf

 今年の漁期で終了した北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPNU)を引き継ぐ形で登場したこの北西太平洋鯨類科学調査(NEWREP-NP)、きわめて大きな問題をいくつもはらんでいます。
 名称こそ、昨年度から開始された新南極海鯨類科学調査(NEWREP-A)に合わせ、「捕獲」を「科学」に置き換えていますが、捕殺数は最後の捕獲調査より約100頭・7割も増えています。
newrepnp.png
 数字以上に重大なのは、捕獲数変更のロジックの破綻。
 これまでも、日本の調査捕鯨は国際捕鯨委員会(IWC-SC)とその専門家パネルによって検証され、批判を浴びながらも馬耳東風と聞き流してきました。が、今回のNEWREP-NPは致死調査とその拡張の根拠のこじつけぶりが、NEWREP-Aを含む既存のどの調査捕鯨よりも際立っているのです。計画提案書の体裁だけは傭船の写真とカラーのグラフを並べてきれいに取り繕っているものの、計画の中身は輪をかけてずさんになっているのです。
 特に許しがたいのが、その変更内容が国際司法裁判所(ICJ)の判決直後に加えられたJARPNUの修正と真っ向から矛盾している点。真逆の主張までしれっと入っていたり・・。
 また、NEWREP-NPにおける対象鯨種と捕獲枠の変更は、ICJからきっぱり違法認定されたJARPAUとそっくりのパターンを踏襲しています。
 言い換えれば、NEWREP-NPはJARPAUと同様の明白な違法性を有しているのです。当のJARPAUの後継計画であるNEWREP-A以上に。

 先にNEWREP-NPの具体的な問題点をまとめてみましょう。

@ワシントン条約(CITES)違反のイワシクジラ捕獲大幅増
A稀少なミンククジラの日本海・黄海・東シナ海個体群(Jストック)を積極的に捕殺
B日本政府自身が主張する改定管理方式(RMP)の捕獲枠を大幅に上回る非持続的な目標捕獲数
C下道水産と伊藤議員の顔を立てる網走沿岸調査捕鯨の新規追加が示す露骨な政治的性格
Dニタリクジラ捕獲中止とイワシクジラ・ミンククジラ捕獲増にみられる違法なJARPAUとの共通性とICJ判決の蹂躙
E沖合ミンククジラ再捕獲の根拠およびレジームシフト解明の調査目的と、修正JARPNUとの間にみられる大きな不整合

 このうち@〜Cに関しては、市民団体IKANの抗議声明とブログ記事で詳しく解説しているのでそちらをご参照。

■抗議声明 「日本政府の新北西太平洋鯨類捕獲調査計画(NEWREP-NP)の撤回を!」
http://ika-net.jp/ja/ikan-activities/whaling/329-no-newrep-np
■対話の素地ができたって???
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-bfb7.html
■大盤振る舞い?
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-8c13.html
■地域個体群
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-13ef.html
■スロベニアIWC66(3)NGO発言
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/iwcngo-4e71.html

 ここではA、D、Eを中心に検証しておきます。
 さらに詳細を調べたい方は、以下に掲げたICJ判決ならびに修正JARPNU報告の一次ソースおよび解説と、『クジラコンプレックス』(東京書籍)を読んでください。

■JUDGMENT|WHALING IN THE ANTARCTIC (AUSTRALIA v. JAPAN: NEW ZEALAND INTERVENING)
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18162.pdf
■南極海における捕鯨(オーストラリア(以下「豪州」)対日本:ニュージーランド(以下「NZ」)訴訟参加) 判決 |外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000035016.pdf
■ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html
■Response to SC 65b recommendation on Japans Whale Research Program under Special Permit in the Western North Pacific(JARPNU) |IWC
https://archive.iwc.int/pages/search.php?search=!collection206&bc_from=themes
■日本の新調査捕鯨計画(NEWREP-A)とIWC科学委員会報告|IKAN
http://ika-net.jp/ja/ikan-activities/whaling/312-newrep-a-iwc2015
■検証JARPNU〜北太平洋の調査捕鯨もやっぱりガッカリだった・・|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/175081634.html

 特に注目すべきは、ICJ判決直後のJARPNU改≠ニの途方もないギャップ。まるで前計画に関する記憶が頭からスッポリ抜け落ちてしまったかのよう。
 加えて、IWC-SC/専門家パネルが多大な労力をかけたJARPNUへのレビューと各勧告を無視する内容となっています。これは国際機関と専門家に対してきわめて失礼な話。
 JARPNUの主目的は3つでしたが、NEWREP-NPでは「ミンククジラのRMPに基づく捕獲枠算出の精緻化」と「イワシクジラの捕獲枠算出」の2つに。これは南極海のNEWREP-Aの第1の主目的と同じ。
 新旧の調査捕鯨:JARPA/JARPNと南北のNEWREPとで、毎年百頭単位という規模も操業スタイルもほぼ変わらないにもかかわらず、主目的が大きく変更されたのはなぜでしょうか?
 答えは非常にシンプル。数々の問題点を指摘されたJARPAU/JARPNUの反省≠踏まえ、ツッコまれた部分は副目的・補助目的に下げ、ややツッコまれにくい「RMPの精緻化」を主目的に据えることで、致死調査の正当化を目論んだわけです。もっとも、提案書にはしおらしい反省の文面は見当たらず、追及された課題をほぼそのままスルーし、パネルが合意した一部分のみを得意満面にひけらかしていますが・・。
 ちなみに、NEWREP-Aの2番目の主目的には「生態系アプローチ」の用語が残っていますが、ターゲットをクロミンク1種に絞ったことで完全に空文化しています。
 要するに、調査捕鯨の設計そのものが、@捕鯨サークル(水産庁・日本鯨類研究所・共同船舶)が妥当とみなす「鯨肉生産量」→A「捕獲枠(サンプル数)」→B「そのサンプル数を正当化し得る口実」→Cサンプル数に合わせて調節したモデルとパラメータの提示(例:「性成熟年齢の0.1歳/年の変化率を検出」)という具合に進められているからです。彼らは「妥当」「最適」の一言で片付けてそこで説明を打ち切り、何食わぬ顔で口笛を吹きながら、《美味い刺身の安定供給》を続けようとしているのです。
 後付けで理由を探し出すのは、日本の鯨類学の第一人者である粕谷氏が当時の真相を暴露したとおり、商業捕鯨モラトリアム直後のJARPAT導入以来の伝統≠ナもありますが。
 十年一日のごとく耳垢の切片を収集するだけの致死的研究とは対照的に、日進月歩の勢いで進歩している非致死的研究ですが、年齢査定等の精度は先行する致死調査の方が現状では相対的に有利な面はあります。それが、主目的に「RMPの精緻化」を据えた理由。

 では、「RMPの精緻化」は、本当に日本の掲げる商業捕鯨再開のために必要不可欠な作業なのでしょうか?
 もちろん、NOです。
 そもそもIWCで商業捕鯨モラトリアムが採択されたのはなぜでしょうか? 答えは、商業捕鯨が文字どおり非持続的で、乱獲・規制違反/規制逃れ・密漁/密輸を阻止することがIWCにできなかったから。「甘すぎる規制と捕鯨会社の抵抗による導入の遅れが招いた乱獲」「基地式捕鯨等の規制の抜け穴」「捕鯨会社によるデータ改竄等の規制違反」「捕鯨会社も関わった密漁・密輸」。この4つに対して、日本の捕鯨業界はきわめて重大な責任を負っています。
 モラトリアムを解除するために必要な最低要件は、あまりにも当たり前のことながら、当事者である捕鯨国・捕鯨産業による真摯な反省と、過去の過ちが二度と繰り返されないように宣誓すること。乱獲・密漁が商業捕鯨そのものと不可分でないということを、世界に対して証明すること。その一環として、IWCの枠組みで確実に乱獲と違法行為を防止するための実効性のある仕組みを構築することが求められているのです。かくして、いくつものハードルが設けられたわけです。
 ハードルのひとつが改訂管理方式(RMP)でした。賛成・反対両派の科学者が喧々囂々の議論を重ねる中でようやく完成したRMP自体は、最も頑健な管理方式として、今日捕鯨以外の漁業にも活用されています。
 ただし、これは机上の理論の話にすぎません。IWCが商業捕鯨の管理に失敗した理由は、科学的な管理方式が未熟だったからだけではないのです。
 日本は商業捕鯨再開というゴールを目指すハードル競走で、まず1つ目のハードルをクリアしました。すでにクリアしたのです。1つは。
 しかし、1つハードルを飛び越えたくらいで、目指すゴールは見えてはきません。
 RMPの完成で自然科学(資源学)上の課題を克服したといっても、社会科学的に実効性のある管理体制を構築できない限り、そんなものは絵に画いた餅にすぎません。
 改訂管理体制(RMS)をめぐる議論はすったもんだの末頓挫したまま。RMSの合意が成立しない限り、RMPは適用されません。今は机上のシミュレーションをグダグダ繰り返しているだけ。つまり、日本はこの2つめのハードルを飛ばせてもらえないのが実情です。
 過去の乱獲・規制違反・密漁に対する反省がまったく見られないどころか、つい2年前まで調査捕鯨という抜け道を利用して国際法に反する罪を犯し続け、ネットでは日本の業者によるワシントン条約違反の違法な鯨肉通販がいまなお大手を振ってまかり通っている有様なのですから。ドーピング疑惑がぬぐえないので、トラックをそれ以上走らせてもらえないわけです。

 結論からいえば、いくらRMPを精緻化しようがしまいが、商業捕鯨再開の道が開けることは決してありません。
 日本が本当に¥、業捕鯨再開を目指すのであれば、やるべきことは2つめのハードルを飛ばせてもらうために、過去にドーピングをやってしまったことを正直に認めて平身低頭謝罪したうえで、今後は絶対にドーピングをしないことを宣誓し、世界に信用してもらうことです。
 ところが、いま日本がやっているのは、ドーピングについてはあくまでもシラを切り続け、1つ目のハードルの高さを自分で勝手に微調整して、「どうだ、もうちょっと高く跳べるぞ!」と何度も繰り返し跳び跳ねているだけのことなのです。まったく無意味なパフォーマンスにすぎないのです。
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 繰り返しますが、「RMPが精緻でないから商業捕鯨が再開できない」わけではありません。一般の方々が捕鯨サークルの主張を読めば、まずそう誤解して受け止めてしまうでしょうが。
 かつての基地式捕鯨や、違法認定されたJARPAUと同様の脱法行為を繰り返している以上、NEWREP-AおよびNEWREP-NPはむしろ間違いなく商業捕鯨再開へのステップを後退させているのです。
 RMPの精緻化は対象・指標となる特性値とその精度、サンプル数の設定がきわめて恣意的で、すべて日本が勝手に決めているだけ。どのようなケースで、どれくらい精緻化すべきか≠ニいう国際的に合意された科学的基準・必要要件は何一つ存在しません。
 今回、JARPNで獲り続けてきたニタリクジラの捕獲枠をゼロにした理由も適当に言葉を並べただけ。真の動機は「鯨肉が不人気で売れなかったから」に違いありませんが・・。
 対照的に捕獲数を大幅に増加させたイワシクジラに関しては、ICJに「期限を切らずにズルズルやる調査は科学じゃない」と言われたこともあり、捕獲枠算出を急いでやりたいと言っていますが、急ぐ意味はまったくありません。急いだところで実地に適用されることなどないのですから。
 前回の総会では、ミンククジラで17頭の捕獲枠を例外的に%K用するよう求めましたが、RMSの合意とモラトリアムの解除というステップを踏まない以上、もちろん却下。例外が認められる余地はないのです。
 精緻化は、仮に商業捕鯨が再開された場合には、当然データもあがってくるわけですから、それをもとにボチボチやればいい話。獲りすぎは許されることではありませんが、枠に満たないからといって責めを負う漁業はありません。鯨研が債務超過に陥るほど過年度在庫を発生させ、他の一次産品とは桁違いの税金を投入して販促を促しているのが実情なのですから、供給不足を心配するのは杞憂もいいところ。
 また、RMPを精緻化する手法はいくらでも考えられます。非致死調査によっても。
 例えば、現在致死調査に割り当てられているリソースをすべて目視調査に振り向けることで、生息数と動態に関するデータの推定精度が上がり、それに従ってRMPも間違いなく精緻化できます。
 また、繁殖海域を特定することによっても、非致死調査では確定されなかった系群構造に関する解明が飛躍的に進み、やはりRMPの精緻化に寄与するでしょう。
 さらに、致死調査によるRMPの精緻化への寄与は、IWC-SCのJARPAレビューで指摘されたとおり、あくまで潜在的可能性の域でしかありません。NEWREP-Aレビュー勧告に対する日本側の回答では、クロミンククジラの2つの系群(交雑問題はまだ未解決)に対するRMP実装シミュレーション試験(RMP/CLA)をそれぞれ7回試行した結果、うち1回で年齢構成を加味した修正版のMCLA(捕獲枠算出アルゴリズム)の方がわずかながら減っています。また、100年間の保全上の枯渇リスクは1つの試行を除いてみな上がっています。公平な観点からは、(旧来の捕鯨産業にとっては)獲れる数が多いほど旨みがあり、(クジラにとっては)保全上のリスクが低ければ低いに越したことはないわけですが、「リスクが一定以下なら後者は切り捨てていい」というのが日本の言い分(SC/66b/SP/10)。
 しかし、何をもって最適≠ニするかは日本が好き勝手に判断していいことではありません。日本は国際的に合意された最もシンプルな管理方式に対し、独善的な価値観に基づく修正を加え、捻じ曲げようとしているわけですが、RMPで設定された枠からさらに減らすことこそ最適との見方も十分成り立つのです。
 法律にしろ、国際条約にしろ、時代に見合った形で条文そのものを直したり、運用を工夫して適合させていくのは当たり前の話。多額の税金を注ぎ込まなければ維持できない特定の一国・一産業のみの利益を優先せず、炭素固定や海洋生産性の向上、レジームシフトの緩和等、クジラの生態系サービスでの寄与による、漁業を含む人類の福利を最大化するために「捕獲枠を最適化する」のももちろんアリです。
 もし、日本が決着済みのRMPをこね回すのをやめないのであれば、本会議で管理方式について再度議論するか、資源学に偏っているIWC-SCに保全・生態系サービスに関わる研究者の視点を加えるべきなのです。

■Future IWC for Japan, fishery, the world and whales; the keyword is "Ebisu"
http://www.kkneko.com/english/ebisu.htm

 NEWREP-NPの主目的「RMPの精緻化」について要約すると以下のとおり。

「RMPの精緻化は商業捕鯨の再開と無関係」
「どの対象でどの程度精緻化するかを日本が好き勝手に決めており、公的・客観的な基準は何もない」
「RMPは非致死調査で精緻化できる」
「RMPの最適化≠ヘ定義次第で変わり、国際的・学際的な議論と合意がはかられるべき」

 もちろん、その真の主目的≠ヘ明々白々。調査捕鯨という形で北太平洋産美味い刺身を供給し続けること本川一善元水産庁長官が国会でうっかり答弁してしまい、国際裁判の判決文に未来永劫記されることになったJARPAUの動機と何ら変わらないのです。
 「調査捕鯨によるRMPの精緻化」は美味い刺身にとって最適≠ニいう意味でしかないのです。

 それでは、日本政府が公開した計画提案書に沿ってさらにツッコミを入れていきましょう。@〜Eの要点と「RMPの精緻化」という主目的が無意味なことを押えておけばいいので、面倒臭い方は結論まで飛ばしてください。

 提案書(PDF)は全163ページですが、ICJ判決への対応についてはP52からの別添1にまとめられています。たった4ページ。非致死調査の検証に関する記述は本文2.4、2.5および3.1.1(P16〜P24)。概略(P1〜P3)、本文3章、別添1で基本的に同じ内容が繰り返されています。
 まず、提案書の中で「IWC-SC推奨」と何やらサプリや健康グッズの宣伝じみた文言が幾度も登場しますが、そもそもSCメンバーには日本の御用学者も多数加わっています。これが常に玉虫色の両論併記の形となり、国内報道であたかもIWC-SCが調査捕鯨を支持しているかのように伝えられる理由。
 中には誤解を招く表現もあります。提案書のP1他で「JARPNU最終レビューワークショップは『将来ISTを改訂する際には年齢データを組み込むべきだ』と記した」とありますが、これは提案者日本の主張がレビューの報告文書に記載されたというだけのこと。パネルは系群構造仮説を絞り込む作業に進捗があった点に関しては合意しているものの、更なる進展には課題があると指摘しています(詳細は上掲拙ブログ過去記事のJARPANUレビュー解説)。
 要するに、致死調査に基づくRMPの精緻化には依然として未解決の宿題が積み残されており、NEWREP-AにおいてもNEWREP-NPにおいても先述した潜在的可能性≠フ範囲に留まっているわけです。

 3箇所の非致死調査の検証の部分は、いずれも「慎重に検討した」うえで「非致死的手法では実現不能」という結論を先に述べながら、その後に「非致死的手法の実行可能性を検証する」とあり、矛盾に満ち満ちています。結論が最初からはっきりしているなら、非致死調査を並行でやる必要などありません。予算と時間の無駄。
 もちろん、致死調査はポーズであり、「国際裁判所に言われたとおり、非致死調査をちゃんとやってますよ」という日本国民および国際社会の目を欺くメッセージにすぎません。対外的なイメージを気にしているだけで、その時点で科学的合理性など欠片もないのです。
 潜在的可能性≠ノ留まっている致死調査の貢献に対し、非致死調査も一般的な動物学の科学的研究手法としてはすでに十分成熟し洗練されたものになっているとはいえ、日本の掲げる主目的に照らした場合、現状では致死調査と同様潜在的可能性≠ノ留まっているのは事実でしょう。
 先行研究事例を参考に、その分野の先駆者に教えを濃い、想定した成果が得られなかった場合は手法のどこがまずかったか丹念に検証しながら、実地の運用に耐えるよう改良を重ねていくのが、常識的な科学調査のプロセスです。そのための検証であれば問題はないのですが、提案書の記述からは「言われたから仕方なく形だけやっているんだ」というお座なりな意識しかうかがえず、具体的な課題とそれを克服するためのアイディアが何も記されていません。
 2、3年ブランクがあっても影響は小さく無視できるとNEWREP-Aのレビューで専門家パネルが指摘した以上、本来であれば、「代替による致死的調査の削減≠検討する」よう求めたICJの判決の趣旨に従い、今後数年間は全リソースを非致死調査の検証と開発に振り向けるべきなのです。
 致死的手法と非致死的手法との比較考量はすべて定性的な説明にとどまっており、具体的な精度等を並べた定量的な対照表はありません。P23に意味のないチャートがありますが、非致死に「?」と入っているとおり、「実現不能」と結論を出してしまっている本文の記述とも矛盾しています。鯨研茂越氏の準備中≠フ論文からも、該当する定量的資料の抜粋もありません。レビューどころか書き終わってもいない論文を根拠に「実現不能」と結論をまとめてしまうのはあまりにも拙速にすぎます。
 そもそも、まともな比較検証ができるはずはないのです。ICJ判決後のJARPNU改≠ナ、たった2シーズン、全サンプル数の1割のみを非致死調査にあてがっただけ。致死と非致死の割合を9:1に設定する科学的合理性は何もなく、むしろICJ判決直後で国連管轄権受諾宣言の書換という荒業で国際司法の追及を逃れる手を思いつく前のことで、単に判決に萎縮≠オて捕獲数を減らすポーズを取っただけに見えます。致死調査を完全に優先し、その間に片手間でやっただけでは、まともな検証とは到底呼べません。JARPA/JARPAUは足掛け20年間、致死調査の技術自体は商業捕鯨時代からある程度確立されていたのですから、公平に双方の手法を比較するためにも、同じだけのリソースが注がれるべきです。
 現物がない茂越論文をもとに「北太平洋ミンククジラではバイオプシーサンプリングが困難だ」と、ICJ判決以前からずーっと掲げられてきたのと同じ非致死的手法を選ばない口実が述べられていますが、障害や困難を工夫しながら乗り越えることで、短期間に目覚しい発展を遂げてきた非致死的手法の今日をまるで理解していません。というより、見て見ぬふりをしているわけですが。
 提案書でも取り上げられている、主要な目的に関わる年齢査定のための代替研究の一例がこちら。

■Epigenetic estimation of age in humpback whales
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1755-0998.12247/abstract

 ヒトとマウスで開発されたこのエピジェネティクス(後天的な遺伝子の性質変化の研究)による年齢解析手法が野生動物として初めて適用されたのがザトウクジラ。日本の御用鯨類学者以外の世界中の動物学者が、この手法の登場と進展を快く歓迎することでしょう。
 DNAメチル化技術自体開発されて10年しか経っていませんが、この事例では2007〜2011にかけて採集されたサンプルをもとに研究され、論文は2014年の発表。ザトウだって決して一朝一夕に、たまたま開発できたわけではないのです。「ザトウの値は太平洋ミンクにそのまま当てはめられない」なんて理由にもなりません。それは研究者としての努力の放棄。同様のリソースを傾ければ、数年のうちにミンククジラの代謝に合わせる較正作業は十分可能なはずです。まともな研究意欲を持ち合わせた科学者なら。

 一方で、致死調査に対する批判的検証の方は一切なされていません。
 耳垢栓を用いた年齢・性成熟年齢の査定は100%完璧ではありません。標本採集・保存・加工・読み取り(顕微鏡による目視計数である意味古風な職人技)の過程で劣化・誤差が生じます。実は、北太平洋ミンクの耳垢栓の年輪の可読率は雄で45%、雌で41%でしかありません(JARPNT/U期間、p79)。同じくイワシでは63%。しかも、ミンクの沿岸調査で比率の高い未成熟ほど判読の難度が上がります。要するに、程度の問題なのです。
 北太平洋のミンクは南半球のクロミンクより縞が不鮮明。それ故に、技術改良の研究に人員と研究費が投じられてきたわけですが、それであれば、ザトウで実用化されたDNAメチル化技術をミンク用にカストマイズする作業を敬遠する理由は何もありません。
 もうひとつ、致死調査の重大な欠陥の一例を挙げましょう。妊娠雌は捕殺時に銛を撃ち込まれるショックのあまり、一種の堕胎をすることがあります。胎児は貴重な科学的情報もろとも失われます。毎漁期、こうしたデータの欠損≠ェ生じているのです。
 これは致死的手法すべてに言えることですが、経時的に膨大な情報を蓄積していく貴重な科学的資源であるサンプル=生きた野生動物を、ほんの一部の限定的な情報取得のため、瞬間的なスナップショットとして切り取るために破壊してしまう、きわめて短絡的で欠陥の大きな手法です。非致死調査で長期間にわたって追跡していけば得られたはずの科学的成果を無に帰せしめ、有用な研究のためのリソースを奪い、進展を大きく妨げているのです。
 また、非致死調査より致死調査を優先した4つの判定基準には「コストの妥当性」が入っていますが、NEWREP-Aの提案書に投げているだけで、検証結果について具体的な言及が何もありません。リンク先のNEWREP-Aの資料にも、定性的なコメントのみでコスト比較の試算結果などはやはり載っていません。
 実際には、非致死調査のバイオロギングは普及の結果コストが大幅に下がっている一方、調査捕鯨は鯨肉販売不振もあいまって税金投入が年間50億円を突破し、クジラ以外の水産研究予算の総額を上回る大きなお荷物と化しているのが事実なのです。
 日本はICJ判決で求められた、致死的サンプリングのコストの公正で厳密な相対的評価、致死を選択する結論を裏付けるだけの分析などやってはいないのです。この点1つとっても、NEWREP-NPおよびNEWREP-AはJARPAUと同じ国際法違反の謗りを免かれません。
 JARPAUを違法と認定したICJの判決では、鯨肉売却益が得られることが日本が致死調査を選好≠キる動機だと結論付けられました。そして、日本が致死調査を削減・代替するべく非致死調査の実行可能性を探る努力を払うことなく、JARPAと類似した目的でさらに捕獲数を拡大させたことを問題視したのです。JARPAUとJARPAとの関係は、目的をすり替えて捕獲枠拡大を狙ったNEWREP-NPとJARPNU改≠ニの関係にそっくりそのまま当てはまります。

 P18では、まるで手放しで賞賛されたかのごとく、JARPNU最終レビューワークショップの肯定的評価のみを取り上げています。しかし、同WSではICJ判決後のヤッツケ変更に対するあからさまな苦言をはじめ、多くの勧告が出されました(詳細は同じく拙解説記事)。別添にもそれらの勧告リストは含まれず、あるのは系群構造問題に関する日本側の補足説明のみ。そのうえ、NEWREP-NPはJARPNT/Uの拡張版じゃないんだと言い訳し、勧告のうち都合の悪いものは無視する姿勢を鮮明にしています。

 続いて、これまでJARPNUで捕獲し続けてきたニタリクジラ(修正前50、修正後25)の致死調査をバッサリ削除した理由について。P18で、ミンクおよびイワシとは違ってニタリの優先度は低いと、恣意的で定性的な、きわめて大雑把な表現でごく短く述べています。参考文献に(see in 2008)としかありませんが、これは2008年のRMP実装試験に関する第2回IWC-SC中間ワークショップで、複数の系群構造仮説についてRMPの実装シミュレーションを行った結果、4つのうち3つの仮説について追加調査の必要はない点で合意したという報告。
 
■Abundance estimate of western North Pacific Bryde's whales for the estimation of additional variance and CLA application|IWC
https://iwc.int/document_1800
■Research proposal accompanying management variant 2 of the RMP Implementation for western North Pacific Bryde’s whale |ICR
http://www.icrwhale.org/pdf/SC-60-PFI9.pdf

 2008年時点の情報に基づいてニタリクジラを殺す必要がないと判断できるなら、JARPNUでのその後の8年間の捕殺(年50頭および25頭)は不要だったということにほかなりません。
 鯨研側は「主目的が変わったんだからいいんだ」と弁明するでしょうが、致死調査の対象選択にあたって目的の方をいくらでもデザインできることが証明されたといえます。
 JARPNUレビューで日本側が提示した査読論文のうち、2008年以降ニタリの致死調査(胃内容物)をもとにして書かれたのは2012年のたった1本のみ(残りは非致死調査)。その論文の結論は「クジラの生息域は餌生物の選択と密接に関連していることが示唆された」というもので、誰でもわかる当ったり前のことを確認しただけ。
 太平洋ニタリクジラは系群構造への異論が少なくバイオプシーサンプリングの難易度が低い点で太平洋イワシクジラに近く、両者の違いはRMP/ISTが実施済みか未だかくらい。ニタリで精緻化の必要がないなら、イワシもあえて調査捕鯨を使って精緻化する必要はないはずです。
 摂餌生態の調査に関しては、カタクチイワシの占める比率が大きいニタリのほうがミンクやイワシより選択的嗜好性が高いのは確かで、それが今回致死調査不要とした理由。しかし、専らナンキョクオキアミを食べる南極のクロミンクは、当然ながら選択的嗜好性が太平洋ニタリよりさらに高いのです。動機が生態系アプローチであれ環境変化のモニタリングであれ、この大きな矛盾は致命的。
 
 クロミンククジラ(南半球) > ニタリクジラ(北太平洋) > ミンククジラ(北太平洋)
     殺さなきゃダメ         殺さなくていい        殺さなきゃダメ

 動物種のサベツがヘイトスピーチより鶴保沖縄北方相の土人発言より重大事だと考える狂信的な反反捕鯨論者たちなら、「ミンクやイワシを殺してニタリを殺さないのはジンシュサベツだ!」と吠えそうですね。
 それでも、捕獲を増やしたミンク/イワシと枠そのものをなくしたニタリとの扱いの差はやはり主観的な好み≠ニしか考えられず、サベツだとの指摘は当たっているといえるでしょう。
 そして、その真の動機≠ニして強く疑われるのは、JARPNUで調査副産物である鯨肉がニタリクジラでは前2種より不人気で、入札でも敬遠され売れ残ってしまったこと(詳細はIKA-NETニュース57号参照)。本川元水産庁長官流に言えば、「ミンクは美味いし、イワシも一部で人気があるが、ニタリは刺身にしても美味くないから安定供給の必要はない」との判断で外したというわけです。
 狂信的な反反捕鯨論者たちなら、やはり「美味いウシやミンククジラを殺して不味いニタリクジラを殺さないのはジンシュサベツだ!」と吠えそうですね。
 ニタリで必要ないのなら、クロミンクを毎年殺して胃の中身を調べ続ける必要もまったくありません。JARPAUでクロミンクに捕獲を集中させてナガスやザトウを獲らずにICJに矛盾を指摘されたのと同様、こうした科学的合理性のない捕獲対象の取捨選別は、国際裁判にかけられれば間違いなく判事にアウトの宣告を受けるでしょう。実際、高価値種と低価値種を恣意的に分けたことが、ICJ判決でJARPAUが美味い刺身*レ的の違法捕鯨として認定されるにあたって決定的な証拠となったのです。

 ASM(50%が性成熟に達する年齢)の推定については、確かに非致死的手法だとややハードルが高め。しかし、この計画書では、ASMの変化率の検出精度とサンプル数の関係について何も記されていないのです。
 大体、NEWREP-Aの捕獲数333頭は、日本の捕獲対象となる太平洋側2海区中心の2系群について、ASMの0.1%の変化率を90%の確率で検出できるサンプル数として算出されました。いかにも333頭という数字に合わせて後付けした印象がぬぐえませんが・・。
 サンプル数の差を考慮すると、南のクロミンクと北の3鯨種とで、ASMの変化率および検出率に違う値を当てていることになります。あるいは、クロミンクで333頭も捕殺の必要がないか、北の3鯨種ではASMに関して統計的に有意な結果が得られないということになりかねません。

 今回のNEWREP-NPの各鯨種のサンプル数の算出根拠は、ミンククジラ太平洋側127頭が「O系群の個体数の変化率(成熟雌1頭当りの出生率の30%の変化)を検出するのに53頭、107頭、160頭の3パターン用意した中で真ん中が一番適切だ」、同オホーツク海側47頭が「JとOの比率を調べるため、とりあえず暫定的に47にしてみた」、イワシクジラ140頭が「最大持続生産率(MSYR)を4%、自然死亡率(M)を0.05と仮定してみたら140が最適なんだ」と、見事にバラバラ(P35、別添12および別添17)。O系ミンクに関して、なぜ検出する変化率が30%でなければならないのかの説明もなし。サンプル数の設定で成熟雄が埒外なのは、非致死調査に対して雄の性成熟年齢の検出を要求していることともまったく矛盾しています。
 やはり南のクロミンクの333頭と同様、最初に数字ありきで後からこじつけたとしか思えません。
 太平洋側のうち127頭から107を引いた残り20頭はJストック。一方、オホーツク海側の47頭のうち33頭はOストックになる勘定。沿岸調査3箇所の系群比率がそれぞれ想定どおりになるとの前提付ですが、O系群における変化率を検出するなら、網走沖での33頭を加えれば沖合調査で27頭を加える必要はなくなるはずです。いずれにしても、太平洋ミンクは性・年齢に応じて回遊ルートが変わる生態を持っており、仙台沖・釧路沖の沿岸30kmのごく狭い範囲、特定の一時季に捕獲を集中させる調査設計では、捕獲対象の性比・年齢比にも大きな偏向が生じると考えられます。ランダムサンプリングとはいえない以上、年級や生殖状態に応じた行動パターンの変化等による見かけの出生率の変化を検出する可能性が生じますし、真の出生率の変化との区別もつきません。
 ニタリ削除と同様、このサンプル数が設定された真の動機≠推し量るなら、太平洋側ミンクは「2箇所の沿岸事業者のための50頭枠を維持したうえ、沖合調査再開の余地を残した」、網走沖は「下道水産と伊藤議員の顔を立てるべく、仙台・釧路沖と同等の枠を与えた」、イワシは「日新丸の積載能力から、裏作(南極海が表作)の目標生産量として妥当な線にした」といえそうです。
 もう一点補足すると、JARPNU終盤では沖合ミンクは実績としてほとんど捕獲されず、ICJ判決後はレジームシフトを口実に捕獲枠をゼロにしました。理由のひとつとして考えられるのは、鯨肉の過年度在庫を消化するための、南極産と沿岸事業者にミンク鯨肉を譲る形の減産調整。もうひとつは、311の福島原発事故直後に常磐沖で採取されたコウナゴから1万Bq/kgを超える放射性物質が検出され、仙台沖に回遊していた若いミンククジラがこれを捕食して汚染された可能性があること。高濃度の汚染が疑われる年級群もその後沖合に回遊ルートを移動させているはずなので、捕獲する可能性があったのは日新丸船団のJARPNU沖合調査だったわけです。いつごろ収束するか様子を伺っているのではないかと筆者は勘繰っています。
 いずれにしても、多くの渡り鳥のように繁殖海域と索餌海域とを往復するクジラの繁殖サイクルは年単位なので、0.1%ずつ日数でずれたりするわけでもなく、6歳・7歳・8歳ないしそれ以降に繁殖を開始する個体の割合に年毎に差が出るというだけの話。再生産は妊娠率、乳児死亡率等それ以外の要素も関わってくるのですから、単独の特性値の微妙な変化をチェックしたところで参考程度のものでしかなく、致死調査が絶対必要という根拠になどなりえません。RMPの改善には、間接的情報でしかない性成熟年齢より目視による推定個体数推移の精度を上げるほうがより有用です。

 最悪なのが、致死的な胃内容物分析を正当化する言い訳。
 非致死的手法の脂肪酸プロファイル分析は、今日では野生動物の摂餌生態調査で幅広く使用されています。
 提案書では「空間的モデリングのためにクジラが捕獲された時点の胃内容物を明らかにすることが大事なんだ」との主張が短く述べられていますが、これは稚拙なごまかし以外の何物でもありません。
 「クジラが捕獲された直前の胃内容物の情報のみしかわからないというのが正しい説明。
 彼らは「2ヶ月間のみ=A港から30km以内のみ=A特定の鯨種の胃の中身のみ£イべればレジームシフトが解明できるし、逆にそれがわからないと海洋生態系について理解できないんだ」という、とんでもなく乱暴な主張をしているのです。
 仙台沖・釧路沖の生態系は外部と切り離された独立の系で、クジラと餌生物の一部(カタクチイワシ・イワシ・サンマ等)のみから構成され、それらの種は出入りをせず、他の海の生物種との相互作用もなく、調査期間の2ヶ月以外は系が停止しているのだ、と。これでは、網走・釧路・仙台の沖の海はガラスで仕切られた実験水槽の扱いも同然です。
 クジラが餌にしている魚の捕食者にはオットセイ等の鰭脚類、各種海鳥、大型魚、イカ類他多数いますし、幼魚時代には競合種や同種の成魚、大型プランクトンも捕食者になりえます。クジラのように食性を変えるタイプもいれば、食性自体は変わらなくても生物量自体が大きく変動することで捕食量が変わってくるタイプもいます。海況の変化にも大きく影響を受けます。回遊する前や先の海域での捕食・被食関係も変化します。そうした情報を定量的に比較考量することを一切せず、ただひたすらクジラの胃の中身だけ調べ続ければ、「海の自然がすべてわかって漁業に役立つ」かのような言い草は、あまりにも非科学的です。
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 生態系アプローチで考慮されるのは構成種と種間関係のごく一部で、現実の生態系とはかなり隔たりがある単純化されたモデルにすぎません。データが不十分な場合は適当なパラメータをあてがう仕様≠ネのですが、そのときの値の取り方次第でいくらでも結果がいじれてしまうという代物。現状では単一種の管理の方が合理的だと水産研究者も指摘しています(下掲リンク参照)。
 構成種と種間関係の入力を増やし、その品質を揃え、モデルをより充実させることで、生態系モデルの精緻化は可能ですが(その代わりシミュレーションは複雑になり膨大なデータ処理が必要になるでしょう)、特定の一種のみを毎年何十頭も殺して胃の中身を調べても、ますますいびつになるだけで、最適化≠ノはまったく寄与しません。

■持続的利用原理主義すらデタラメだった!(拙HP)
http://www.kkneko.com/sus.htm

 本当に胃内容物調査を活かすつもりなら、すべての海域・すべての時季で、すべての捕食者の胃内容物調査を同精度でやるべきなのです。
 もっとも、パフォーマンスを考えれば、コストがかかるだけの超拡張版調査捕鯨などやる必要はなく、バイオプシー脂肪酸解析で十分でしょう。
 ミンククジラもイワシクジラも未知の食害エイリアンではありません。その摂餌生態は、選り好みせず臨機応変に利用可能な餌資源を利用する何でも屋タイプで、野生動物としては至ってポピュラー。サンマが多い年はサンマを、イワシが多い年はイワシを食べるなんて、素人でもわかる当たり前の話で、「だから何?」です。画期的な科学的発見などどこにもありません。これからも、それ以上意味のある知見など決して得られやしません。
 JARPNT/Uの20年間、この胃内容物調査を延々やってきたわけですが、そこからは水産資源管理に活用できる、釧路・仙台両地域の漁業の発展(ないし乱獲の防止)に資するいかなるアウトプットも出てきてはいません。命を奪ったうえで得られたその膨大なデータは、骨董コレクターの収集メモやゲームの入手アイテムリストと同じくらい、(鯨肉好きと業界以外の)社会にも科学にも貢献することのない無価値なガラクタなのです。
 実際のところ、海面漁業生産の1%にすぎない鯨肉生産のための調査捕鯨に回される年間50億円の予算は、クジラ以外の水産水産資源調査に充てられる年間予算34億円を上回っており、明らかに必要な沿岸の漁業資源管理のために投じられるべきリソースを奪っています。そのおかげで、近海の主要な漁獲対象魚種の半数は長年資源状態が低位のまま、FAO白書の統計でも日本だけが将来の漁業生産が落ち込む地域として予測される始末。
 例えるなら、調査捕鯨は報酬ばっかり高くて仕事のできない無能な穀潰し取締役
 捕鯨サークルは日本の水産業を蝕む癌と言っても過言ではありません。

 胃内容物調査と同様に許しがたい欺瞞に満ちているのが、レジームシフトに関する記述。
 はっきり言ってあまりにもふざけています。
 というのも、ICJ判決後のJARPNU改≠ナ、これまで毎年100頭の捕獲枠を設定してきた沖合調査ミンククジラ捕獲をゼロにした理由について、日本側は以下のように説明しているからです。

目視数の減少と餌生物(カタクチイワシ)の分布パターンの変化は、ミンククジラの沖合の分布を変化させる可能性がある。可能な説明として、レジームシフトのような大規模な海洋環境の変化が挙げられる。しかし、その主要なメカニズムは不明なため、われわれはこの種の捕獲を取りやめることを決め、沖合でのこの種の致死調査を継続するよりも、将来の調査計画におけるこの種の取り扱いについて再考することにした(SC/66a/SP/10,p4)。

 そして、ご丁寧に水産庁のカタクチイワシとサンマの漁協予報(日本語)のリンクまで貼っ付けています。
 無論、このわずか2年の間に、レジームシフトのメカニズムが解明したわけではありません。
 「やっぱりやめるのやーめた」です。
 なぜ前言を撤回することにしたのかも、JARPNUの計画の修正の誤り≠ノ対する弁明も、今回の計画書には一言もありません。
 ひたすら支離滅裂の一語に尽きます。
 レジームシフトは北極振動等地球規模の気候・海況変化と魚種交代のメカニズムを結び付ける概念。もちろん、クジラはレジームシフトを引き起こすエイリアンなどではありません。
 クジラの餌生物の切り替えはわかりやすいボトムアップ型の順応的変化です。新しい理論を構築しなければ説明がつかず、そのための追加の情報が切実に求められるような未知の現象ではありません。今までずっと続けてきたのと同じ、殺して胃を切り開く作業を今後何年継続しようと、これまでわかっている以上の新たな科学的知見は決して出てきやしません。
 50億もの予算を投じるのであれば、レジームシフトの海洋生態系全体への影響について調査研究がなされるべきであり、そのために必要とされるのはクジラの胃内容物のサンプルをこれ以上積み上げることではありません。優先順位は最下位。
 要するに、気候変動をテーマにした脂皮厚論文(後述)と同様、もっともらしい用語を散りばめて、美味い刺身*レ的の捕鯨に科学の体裁を装わせようとしただけなのです。
 言葉を弄ぶばかりでおよそ専門家に値しない鯨研の御用学者らに、レジームシフトの謎を解き明かせるなどとは、筆者には到底信じられません。他機関に共同研究を呼びかけていますが、乗らないのが賢明というものでしょう。
 レジームシフトの問題については、クジラの恵比寿〜漁業の救世主≠ニしての側面を、別途改めて取り上げたいと思います。

 地球温暖化/気候変動については、「global warming」の用語を2回、「climate change」を1回使っていますが、この提案書で使い分ける理由はなく、鯨研の研究者の環境問題に対する認識不足が伺えます。
 「調査捕鯨の提供する情報がこの問題に対する洞察に役立つ」と主張しているのですが、南極海も含めておよそ30年やってきた中で、気候学者にとって有用な情報は何ひとつ出てきやしませんでした。脂皮厚の変化について論じた論文がネイチャーに掲載され、ここぞとばかり胸を張った鯨研でしたが、統計処理を誤っていて使えないことがIWC-SCで指摘され、ICJでも恥をかくことに。
 サンプル数算出根拠の項目で「出生率の変化は気候変動やレジームシフト等の海洋環境の変動の結果」とありますが、問題は複合的な環境要因の切り分けが、調査捕鯨のみではまったくできないことです。生態的特性値の変化がどの程度気候変動に起因し、どのくらいの割合が違う要因に基づくのか、調査捕鯨の結果は何も教えてくれません。気候変動に対して捕獲対象の鯨種が他の野生動物に比べてどのくらい脆弱なのか、あるいはタフなのかも、クジラのみを毎年ガンガン殺し続けたところで答えは決して得られやしないのです。

 同様に問題があまりにも大きすぎる網走沖のJストック捕獲問題について。
 まず、現在IWCで合意されている北西太平洋ミンククジラの2系群合わせた個体数の数字は25,000頭。しかし、計画書ではOストックについてサブエリア毎の合算値として約46、000頭、Jストックについて約16,000頭の値をシミュレーションに用いています。この時点ですでに先走っていますが。
 そのシミュレーションの図表の1つが計画書のP41の図7。そのうちMSYR(ちなみに、図では「MSRY」となっていますが、これは単純な表記ミス)1%と仮定した上のほうは完全な連続減少モード。
 この図1つとってみても、J系群はIUCNのレッドリストの定義上の絶滅危惧Tb(EN)、あるいは最低でも危急種(VU)に指定されてまったくおかしくはないステータスです。
 提案書でも、その場合の減少の理由については混獲を挙げているとおり、日本と韓国の混獲が半端ないのは事実。
 「疑わしきは野生動物の利益に」という国際的なグロスタに従えば、混獲にダメージを上乗せする大掛かりな経年捕獲調査などありえません。
 ところが、日本側は既存のデータをもとにJストックの比率を網走沖30%、釧路沖および仙台沖各20%としたうえで、(MSYR1%のケースでは)「34頭獲っても獲らなくても減少モードに変わりないのだから影響はない」とのすさまじい理由で、網走沖での新規捕獲を正当化しようとしているわけです。
 そもそも、時期も未定のまま枠の数字だけ出てくるというのがきわめておかしな話。新たに網走沖調査を追加した真の動機が政治であるのは見え見えですが、絶滅危惧個体群の捕獲を強行するのに掲げた口実を聞けば、野生動物保護に携わる世界中の関係者が目を丸くすることでしょう。いわく、「Jストックの太平洋側での混淆率が増えているっぽい。それは日本海側からあふれて太平洋に浸み出している、つまり増えているからだ」と(別添7)。
 しかし、比較されている過去のデータのうち、専ら成熟個体を捕獲していた80年代の商業捕鯨のデータは52頭のうちJストックが2頭で不明が4頭。この数では、統計学的にも最近の調査捕鯨のデータと比較可能だとは考えられません。P95の図2では両者の捕獲場所が比較されていますが、沿岸ギリギリで幼若個体も獲る調査捕鯨と商業捕鯨とでは、重なっているようでよく見るとずれています。これでは時系列データとして比較するのは妥当とはいえません。
 いずれにしても、仮に分布や回遊パターンに変化があったとして、それを増加の証と捉えるのはあまりにも乱暴すぎます。渡り鳥を例にとれば、ある中継地でのカウント数が増えたことのみをもって「増加の証拠」と捉える野鳥研究者などおりますまい。
 証拠もないのに決め付けで捕獲を強行するのは、絶滅が懸念される野生動物なら適用されて当然の「予防原則」に明らかに反します。
 Jストックの個体数動態について検証したいのであれば、さまざまな要因が考えられ、そのどれかも特定できない間接証拠の収集を真っ先に考えるのでなく、国際協力に基づく繁殖海域・回遊ルートの特定と目視調査に全リソースを振り向けるべきでしょう。もちろん、混獲の実態調査と削減のための方策を開発し運用することも、商法捕鯨再開を早めるうえで役立つでしょう。少なくとも、デモンストレーションじみた網走捕鯨に比べれば。
 網走捕鯨の問題については、社会的側面も見過ごせません。
 伝統とは名ばかりの典型的な移植近代捕鯨としての網走捕鯨の性格については、リンク上掲のIKANブログ記事をご参照。
 何度も繰り返すとおり、北海道で伝統的にミンククジラを獲っていたのは、明治政府に政治的理由で捕鯨を強制的に禁じられたアイヌです。その性格も侵襲的な和人の近代捕鯨とは大きく異なっていました。

■倭人にねじ伏せられたアイヌの豊かなクジラ文化|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/105361041.html

 2007年にはこんなニアミス事件≠ェ発生。

■“「かわいそう」「気分悪くなった」と観光客” くじらウオッチング船の眼前で、捕鯨船が捕鯨作業…北海道
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1022397.html

 自分たちのショバだとばかり、羅臼町にヤクザじみた逆クレームを入れたのが、太地と共同で当の捕鯨船を保有していた下道水産社長。今年のIWC総会で吼えたのと同じ振る舞いですね・・。
 このときはツチクジラでしたが、NEWREP-Aでターゲットに加えたミンククジラは、知床の観光の目玉でもあるホエール・ウォッチングの対象として、シャチやマッコウとともに親しまれている鯨種です。
 しかも、エリアはユネスコによって世界自然遺産に認定された知床国立公園に重なっています。Jストックはその知床の近海も生息域に含む絶滅危惧個体群なわけです。
 知床が世界自然遺産に認定されるにあたっては、同地域の漁業の持続性に対して厳しい要件がつけられました。
 NEWREP-NPによるJ-ストックの捕獲数は、日本政府自身が持続可能な枠として設定した17頭を超える34頭。
 科学の名を借りた非持続的な乱獲が、世界自然遺産に生息する絶滅危惧個体群に対して行われることなど、許されていいはずがありません。
 網走捕鯨を取り下げないなら、知床は危機遺産に指定されても文句は言えないでしょう。
 この場所での捕鯨が一体どのような意味を持つのか、世界の人々にどう受け止められるか、捕鯨関係者以外のすべての北海道民・日本国民がもっと真剣に考えるべきです。

 目視調査に関しては、IWC-SCのガイドラインを完全に遵守して計画されたトラックライン(航路)どおりに実施することを保証するとしています。奇妙なのは、捕獲調査に関して同様の宣誓が見られないこと。というのも、JARPNUレビューでは、トラックラインを勝手に外れて捕獲していたことが発覚し、調査結果に信頼が置けないと苦言を呈されたからです(詳細はIKA-NETニュース64号)。口先で何を言おうが、実効性のある仕組みがない以上、日本が同じことを繰り返さない保証≠ヘありません。日本は常に規制の裏を掻く狡い国なのではないかと、世界から強い疑いの目を向けられているのはわかっているはず。科学調査の建前でさえこれなのに、どうして商業捕鯨の再開を認められるでしょうか。

 最後に、ICJ判決への対応を記した別添1の最後の項目、海外を含む他の国際機関との連携について。海外の研究機関は、連携するのが当たり前の非致死の目視調査に関するIWC-POWERと、ノルウェーのLkarts Norway(バイオプシー銃等調査ツールを開発している企業)のみ。他はすべて日本国内、遠洋水研等水産庁所管の身内機関や、これまで共著論文数を稼ぐためにサンプルを投げてきた大学等で、JARPA/JARPN時代とたいして代わり映えしません。

結論:

 JARPAUが「美味い刺身の安定供給(by本川元水産庁長官)捕鯨」なら、NEWREP-NPは「政治捕鯨」「乱獲捕鯨」「絶滅危惧種捕鯨」であり、性格的には「デタラメ捕鯨」「開き直り捕鯨」「挑発捕鯨」と言い表すことができるでしょう。
 そこには、科学的正当性の更なる喪失と露骨な独善性、過激なまでの侵襲性の増大が見て取れます。
 また、捕鯨ニッポンから世界に向けて発せられた強いメッセージが表れています。国民に対しては必ずしも明瞭ではないのですが。
 大げさに聞こえるかもしれませんが、NEWREP-NPは国際法の尊重・生物多様性保全・動物福祉・持続可能な漁業に対抗する反逆の狼煙にほかなりません。
 国際社会が時間をかけて培ってきた以下の4つのベクトルを、一気に逆転させようとしているのです。

「とりわけ絶滅危惧種に対しては、不確実性を都合よく解釈せず、予防原理に則り、環境・野生動物の利益≠優先しよう」
「乱獲の歴史と現状を直視し、非持続的に魚を貪る漁業を改め、持続可能な水産業に変えていこう」
「たとえ科学目的であっても動物の命を殺すことは極力控え、致死的な手法に頼らず削減していく努力をしよう」
「国際法秩序を尊重し、よその地域にまでエゴを押し付けず、対話を優先して実力行使に訴えるのを控えよう」

 1つ目の流れは、レッドリストをとりまとめ、国家や大手NGOを傘下に収める最も権威ある野生生物保護組織である国際自然保護連合(IUCN)や、ワシントン条約(CITES)・生物多様性条約(CBD)・ボン条約(CMS)といった野生生物関連の国際条約にとって、まさに柱≠なす基本理念にほかなりません。
 特定事業者と族議員への配慮を優先し、予防原則の真逆をいく口実でJストックをターゲットに網走捕鯨の新規追加を目論む日本の姿勢は、その理念を正面から脅かすものです。国内を含む世界中の野生生物保全関係者に強く警鐘を打ち鳴らすだけのインパクトがあります。

 2つ目の流れは、FAO白書が示すとおり、持続的漁業後進国・日本が世界から取り残されているのが実情。その距離はますます開く一方です。
 12/5の読売夕刊に、「商業捕鯨『再開』譲らぬ」と題するNEWREP-NPについての報道がありました(オンライン記事はなし)。
 その中の森下IWCコミッショナーの発言に、すべてが要約されています。

「持続可能な形で水産資源を利用する、という筋を通せないと、マグロなどでも極端な保護を主張する国際世論が高まる恐れがある」(引用〜読売記事)

 あからさまな嘘ばかりで構成されたこの発言には、真実〜日本の漁業の非持続性を覆い隠し国民の目を欺く意図が明白に表れています。特に、太平洋クロマグロで顕著な刹那的荒稼ぎ′^の乱獲を続けるために、批判や規制の流れに抵抗するために、クジラという生贄を彼らは必要としているわけです。
 今回日本は、国際的に合意された持続的利用のためのRMPに基づき自ら試算した17頭と比べても10倍に上る過大な捕獲枠を、規制に縛られない調査名目で要求しました。南極海を荒廃させた過去の捕鯨会社による大乱獲を再現する意思の表れだと、世界が受け止めないはずはないでしょう。

 3つ目の流れは、いわゆる動物実験の3R。
 対象が野生動物であり、殺す場所が実験室ではなくフィールドであるというだけで、調査捕鯨はまさに非人道的で不必要な動物実験にほかなりません。国際的な学術誌への調査捕鯨論文掲載が拒まれてきた理由もそれ。
 ICJは判決の中で、致死的手法削減し非致死的手法によって代替するための検証の努力や、ザトウとナガスの捕獲削減・中止によって示される「より低い精度での結果の受け入れ」に言及しました。そして、JARPAUの規模拡大が、IWC決議と同ガイドラインのみならず、「必要以上に致死的手段を用いない」とする日本自身の科学政策方針にも反するものだとズバリ指摘してみせたのです。
 「RMPの精緻化」は別に必要不可欠≠ネものではありません。商業捕鯨再開のためにさえ。
 今回のNEWREP-NPの提案書で、日本は言葉をはぐらかすように「目的に沿いさえすれば」捕獲数を増やすことすら正当化されるのだと主張しだしています。
 たとえ、ICJ判決の趣旨を汲まない水産庁の政策方針が、目的≠フカストマイズによって安直な致死調査とその拡大を許すものであったとしても、日本政府自身の別の科学政策方針にはやはり明確に反しています。環境省及び農水省の。
 ここで改めて『3Rの原則』について説明しておきましょう。

・Replacement (代替法の利用)
・Reduction (使用動物数の削減)
・Refinement (実験方法の洗練、実験動物の苦痛軽減)

■実験動物の福祉|環境省
https://www.env.go.jp/council/14animal/y143-21/mat01-1.pdf
■「農林水産省の所管する研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」の制定について|農水省
http://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/tuti/t0000775.html

 日本の捕鯨サークルは、この3Rに関して世界に挑戦状を突きつけました。彼らの提唱する≪新3Rの原則≫は以下。

・Restoration (致死への復古[いったん中止・削減しながら再度致死的手法へと回帰する])
・Raising (嵩上げ[削減するどころかわざわざ増量する])
・Remissress (怠慢[代替手法や削減の検討・検証をまともに行わず、適当な口実でごまかす])

 致死対象の鯨種に対して掲げられた「目的」と「その目的のために必要」との決まり文句のセットは、「必要だから必要だ」「重要だから重要だ」というトートロジーじみた主張です。JARPAUはICJより「致死調査を用いることへの客観的説明がない」と指摘を受けたわけですが、なぜ特化しているのか、突出しているのかについて、提案書に書かれているのは客観的根拠というよりあくまで主観的な説明にとどまっています。中でもお座なりな説明で済ませている「ニタリ削除の相対的な理由」「暫定的な網走枠」からは、犠牲を減らすために努力をしようとの意思が微塵も感じられません。3Rの趣旨・社会的要請に対する無理解そのもの。
 鳥インフルエンザの調査の公益性の高さは、たかが美味い刺身≠ニは比較になりません。しかし、環境省はそれを口実に、野鳥を対象にした調査捕鯨スタイルの大規模経年致死調査を実施したりなどしていません(詳細は上掲リンクのJARPNU検証記事参照)。
 ある意味で、殺しの拡大志向、無思慮に命を貪る社会≠ヨの道しるべを提示したのが、新調査捕鯨計画だといえるでしょう。その影響は、クジラ以外のすべての動物に波及していくでしょう。
 動物福祉に関わるすべての人々は、日本の調査捕鯨の本質にもっと強い関心を払うべきです。

 公平を期すなら、4つ目の流れは米国・ロシア・中国という大国のせいでいままさに危機に瀕しているのが事実ではあります。しかし、日本は白々しい嘘と国連受諾宣言の書き換えという姑息極まりない手法を用い、国際法の最高権威に唾を吐いて判決を反故にし、「よりによって南極のクジラ≠ナそれをやるのか!?」と世界に衝撃を与えました。
 国民の大多数が関心を持たず、現政権のブレインが「友好国との信頼関係を損ねるくらいなら実にちっぽけな狭義国益にすぎない」と有識者の本音を代弁した、遠い南極の野生動物〜たかが美味い刺身に対し、そのような超法規的手法に訴えることができてしまうのです。そのうえ、現政権の閣僚の1人は、世界で最も緊密な軍事同盟関係にあり、重要な価値観を共有すると互いに公言している間柄の米国に対し、「永遠に分かり合えないという不信感」「埋めようのない価値観の違い」と口にしてしまえるのです(人権尊重の価値観を共有する先進国の閣僚とは到底思えない妄言を連発した捕鯨族議員・鶴保氏ですけど・・)。
 これには北朝鮮も中国もロシアもびっくりです。たかがクジラ≠ナ……飽食・廃食大国の高級料亭で供される南極産美味い刺身を固守する目的で、西側諸国の一員のはずの日本がそれをやってしまえるのなら、彼らの現状変更≠ノ大義名分が与えられるのは、ある意味当然のことでしょう。
 JARPNU改≠フ萎縮モードから、お尻をたたきながらあかんべえをするNEWREP-NPの嘲笑モードへの変化は、「IJC判決に対する無視・逃げ切り宣言」にほかならず、国際法と国際機関、友好国に対する愚弄以外の何物でもありません。網走捕鯨の新規追加は、JARPAUでの南半球ザトウ50頭捕獲と同様、北朝鮮じみた国際社会への示威のニュアンスも帯びています。

 残念ながら、オーストラリアはICJ提訴アプローチを掲げた当時とは政権が代わってしまい、安倍政権との当たり障りのない関係を優先するあまり、国民の愛する身近な自然・野生動物を脅かす、日本にとっての尖閣諸島と同様に自国の領土・領海問題にも直結するところの公海調査捕鯨問題に対し、国際法に基づいて粛々と解決をはかる道をあきらめかけているように映ります。
 IWCも、お互い耳を塞いだまま言いたいことを言い合うだけで、何も変えられない以前の膠着状態に戻りかけています。
 しかし、NEWREP-NPは、「ダメなものはダメ」と言い切れない──本当の友好関係を築くためには避けて通れないはずですが──反捕鯨国とその市民に、思いっきりバケツで冷水を浴びせるものです。
 悲しいことに、捕鯨ニッポンは変わりませんでした。その絶好の機会だったはずのICJ判決で、自ら襟を正すことができませんでした。日本人としては内心忸怩たるものがありますが・・。
 世界はいまこそ毅然とした態度で臨むべきです。曖昧になあなあで済ませ続けるべきではありません。それは、すべての自然、すべての動物たち、必要とされる良き漁業にとって、ためになりません。
 もう一度、国際法の下できちんと決着を着けることを、真剣に考え直すときです。
posted by カメクジラネコ at 23:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系

2016年11月20日

捕鯨国際会議の裏側──IWC66で水産庁は国民に何を伝え、何を伏せようとしたか

 10月20日から28日までスロベニアで開催された第66回国際捕鯨委員会本会議の模様については、期間中ツイッターでお伝えしてきたとおり。


 なお、会議の模様は動画で実況中継もされました。

■国際捕鯨委員会スロベニア会合公式HP及びユーチューブアカウント
https://iwc.int/iwc66
https://www.youtube.com/channel/UCLtg7GtpJ_eTaJuPqRyOOhQ

 詳細については以下もご参照。

■66th Biennial Meeting of the International Whaling Commission (IWC66) | IISD
http://www.iisd.ca/iwc/66/
■What happened at the International Whaling Commission Meeting 2016? | WDC
■What happened at the International Whaling Commission 2016 meeting | GP-UK

 国内マスコミの社説は全国紙3紙、地方紙2紙。日経と朝日は南極産美味い刺身≠ノ常軌を逸した熱情を注ぐ国の姿勢に首をひねる大方の国民の意見を代弁する内容で○。後は環境音痴・科学音痴をさらけ出すトンデモ鯨食害論全開で×(詳細はツイッター)。

■クジラめぐる不毛な溝埋めよ (11/1,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO09015410R01C16A1EA1000/
■調査捕鯨 本当に展望はあるのか (11/1,朝日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12636100.html
■調査捕鯨 継続には国民的議論が大切だ (10/30,読売)
www.yomiuri.co.jp/editorial/20161030-OYT1T50124.html (リンク切れ)
■国際捕鯨委員会 機能不全を解消するには (11/7,西日本新聞)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/287335
■捕鯨を巡る対立 粘り強い説得が必要だ (11/12,北海道新聞)
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0092118.html

 永田町の捕鯨族議員では、自民党から伊東良孝衆院議員と金子恭之衆院議員、民進党から野田国義参院議員が出席。金子議員、野田議員とも、一部のアフリカ・カリブ海諸国等から成る捕鯨支持国との会食付打ち合わせの模様を報告してくれています。金子議員は筆者がリプライ付けたツイート1個消しちゃいましたけど。。これらの国々の大半は捕鯨産業と何一つ所縁もなければそこから入る益もありません。日本からODAを優先配分してもらえる以外には。

■第66回 国際捕鯨委員会〔IWC〕総会出席のアフリカ諸国政府代表との夕食会|金子やすしオフィシャルサイト
http://www.kaneko-yasushi.com/archives/date/2016/10/25
http://www.kaneko-yasushi.com/archives/date/2016/10/26
■IWC(国際捕鯨委員会)総会へ出席・党捕鯨議連にて報告|野田くによしオフィシャルサイト
http://nodakuniyoshi.net/report/%ef%bd%89%ef%bd%97%ef%bd%83%e5%9b%bd%e9%9a%9b%e6%8d%95%e9%af%a8%e5%a7%94%e5%93%a1%e4%bc%9a%e7%b7%8f%e4%bc%9a%e3%81%b8%e5%87%ba%e5%b8%ad%e3%83%bb%e5%85%9a%e6%8d%95%e9%af%a8%e8%ad%b0%e9%80%a3%e3%81%ab/

 水産官僚や族議員らとともに出席していたのが三軒一高太地町長と下道吉一日本小型捕鯨協会会長。すったもんだの一幕もありましたが、業界関係者にとっては世界にどう見られようと関係ないのでしょう・・

■スロベニアIWC66(3)NGO発言|IKAN
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/iwcngo-4e71.html
■IWC 66 Day Three | ORCALAB
http://orcalab.org/2016/10/26/iwc-66-day-three/

 で・・以下が水産庁の公式結果報告。

■「国際捕鯨委員会(IWC)第66回総会」の結果について|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kokusai/161029.html

 上掲の概要を以下のIWC及びNGOの報告と比較してみましょう。税金で送られている日本政府代表団の報告には、実際に審議され採決された重要な決議すら一部しか列記されていません。彼ら捕鯨サークルが、国際会議でどのようなことが話し合われたのかを如何に国民の目から隠したがっているかがよぉくわかります。

■Five Resolutions Adopted on Day Four of the IWC Plenary | IWC
https://iwc.int/day-four-special-permit-whaling
■Decisions taken at IWC 2016 | WDC
http://uk.whales.org/wdc-in-action/decisions-taken-at-iwc-2016
■IWCスロベニア会議 その4決議など|IKAN
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/iwc-9fbe.html

 詳しい解説はNGOと専門家がバッチリしてくれてますので、筆者の方では要点を1枚の絵にまとめてみました。
iwc66reso.png

 さらに、設立70周年を記念する今年のIWC総会にぶつけるように、日本は自国が法の裏を掻くダーティーな国であることをアピールするかの如く、ネタをわざわざ3つも提供してくれました。

@ICJ判決の反省なく新南極海調査捕鯨NEWREP-Aを強行
A日本の業者が海外向け通販サイトでワシントン条約違反の鯨肉缶詰を販売
B沿岸捕鯨に続き遠洋でも改めて明らかになった過去の商業捕鯨のデータ改竄

■Illegal sale of Japanese whale meat exposed by WDC on eve of international whaling meeting | WDC
http://uk.whales.org/news/2016/10/illegal-sale-of-japanese-whale-meat-exposed-by-wdc-on-eve-of-international-whaling-0#.WAT7uLfjrH4.twitter
■Japan Repeatedly Falsified Whaling Reports (9/13,Seeker)
http://www.seeker.com/new-investigation-finds-japan-repeatedly-falsified-whaling-reports-2004275176.html
■What's the catch? Validity of whaling data for Japanese catches of sperm whales in the North Pacific | ROYAL SOCIETY
http://rsos.royalsocietypublishing.org/content/2/7/150177
■日本の新調査捕鯨計画(NEWREP-A)とIWC科学委員会報告|IKAN
http://ika-net.jp/ja/ikan-activities/whaling/312-newrep-a-iwc2015
■新調査捕鯨NEWREP-Aはやっぱり「美味い刺身」目当ての違法捕鯨だ(拙ブログ記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/176208780.html

 また、関連するトピックとして大きいのが、日本の調査捕鯨操業海域とばっちり重なるロス海MPA(海洋保護区)がようやくCCAMLRで日の目を見たこと。国内ではAFP以外取り上げられず。水産庁のプレスリリースも、閉会日は同じなのに、なぜか3日後に配信されてます。サンクチュアリの意義に対する日本政府の非合理で非科学的なダブスタは決して許されるものではありません。

■CCAMLR to create world's largest Marine Protected Area | CCAMLR
https://www.ccamlr.org/node/92518
■世界最大の海洋保護区、南極ロス海に設置へ 国際会議で合意 (10/28,AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3105973
■Major diplomatic coup for New Zealand as world's largest marine reserve finally gets the tick (10/28,NZHERALD)
http://www.nzherald.co.nz/world/news/article.cfm?c_id=2&objectid=11737669
■「南極の海洋生物資源の保存に関する委員会 (CCAMLR) 第35回 年次会合」の結果について|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kokusai/161031_3.html

 
 閉会後、お馴染みの森下日本政府代表が以下のように発言。これだけ読むと、あたかも日本が理性的・抑制的に振る舞ったかの印象を受けます。

■対話の窓が開かれた=日本政府代表−IWC (10/29,時事)

 当然のことながら、「相手の立場を理解し、主張に耳を傾けること」「お互いに独善的な原理主義を捨てること」「妥協点を探ること」が対話の大前提のはず。

mses.png
■Future IWC for Japan, fishery, the world and whales; the keyword is "Ebisu"

 上掲は筆者が自身のスタンスをいったん脇に置いたうえで提案するIWCのあるべき将来像。「whaling」の定義を拡張することで、IWCは条約と整合性の保たれた現実的かつ理想的な国際機関に脱皮することが可能になります。漁業にとってもはかりしれない利益をもたらし、日本がリーダーシップを発揮して国際社会に貢献し、プレゼンスを大きく高めることだってできるはずなのです。

 しかし・・残念ながら、日本の唱える「対話」は口先だけにすぎませんでした。

■対話の素地ができたって???|IKAN
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-bfb7.html
■抗議声明 「日本政府の新北西太平洋鯨類捕獲調査計画(NEWREP-NP)の撤回を!」

 NEWREP-NPは、JARPAU、JARPNU、NEWREP-Aより輪をかけてひどい、眩暈がするほどの超ガラクタ調査捕鯨です。
 国民の一人として国の誠意を少しでも信じた筆者がバカだったと、ひたすら残念でなりません……。
 次回、「調査捕鯨という名の乱獲・超ガラクタNEWREP-NP」の予定。
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2016年10月09日

野生動物をことごとく貪る捕鯨推進派の持続的利用原理主義は百害あって一利なし

ゾウ、ヨウム、ハヤブサ、トカゲ、カエルまで、みんな捕鯨のとばっちり!

 ここ半月余り、TVは連日のように豊洲・五輪施設関連報道に明け暮れ、視聴者の身としてはいささか食傷気味。
 確かに、築地市場移転問題は食・漁業に直結することで決して疎かにはできません。振り回される市場関係者が本当にお気の毒ですし、東京都は移転の遅延に伴って発生した損害について、真摯に補償等の対応に努めるのがスジでしょう。そして、どのような形であれ、うやむやな説明でごまかしたり、強弁で押し切るのでなく、市場関係者や消費者が完全に納得のいく形で決着が図られるべきです。
 それにしても、莫大な税金を使ってすでに施設が完成し、いよいよ引越しという間際になってからでは、あまりにも騒ぐのが遅すぎないでしょうか? 五輪施設も同様ですが。
 移転の是非、五輪招致の是非をめぐる当時の報道の質・量に比べ、小池劇場≠ノ注がれるエネルギーの膨大さには、ある種の違和感を禁じ得ません。「この間一体何をやっていたのか!?」という問いは、歴代知事、都の担当者、都議会ばかりでなく、マスコミに対しても向けられるべきでしょう。
 偏った報道の裏には、今国の内外で起きているさまざまな出来事から国民の目を逸らす意図もあるのではないか──つい、そんなふうに勘繰ってしまいます。

 そのひとつ、CITES(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:通称ワシントン条約)の締約国会議がこの9月下旬から南アフリカ・ヨハネスブルクで開かれました。
 3年に1度開かれる、いま絶滅の危機にある世界中の野生生物の帰趨を左右するきわめて重要な国際会議です。
 そこでは間違いなく小池劇場≠ノ負けないドラマが繰り広げられていました。
 プレイヤーは、国益(ないしは業界益)を背負った各国政府代表団。そしてNGO(非政府組織)、いわゆる市民団体。野生動物たちの声を代弁する気ぐるみやマスコットも登場しましたが。
 その中で、とくに存在感を示した役者が3カ国あります。
 それは中国インド、そして日本
 中でも日本は、残りの2カ国とも異色の役回りを演じ、一際目立っていました。
 「どんなふうに」って?
 それは、会議に参加したNGOと研究者の方々が報告の中で教えてくれています。
 CITES#COP17にオブザーバーとして参加したJWCS(野生動物保全論研究会)、JTFF(トラ・ゾウ保護基金)、早稲田大学の国際政治学者・真田康弘氏、会場を取材した朝日新聞アフリカ支局の三浦英之氏による現地からの報告をもとに、日本がどういう具合に脚光を浴びたのか、追ってみることにしましょう。


 以下、背景着色部分引用。

https://twitter.com/JTEFstaff/status/780065662383382528
クロサンゴ・アカサンゴについての審議が行われています。日本は「サンゴについてはワシントン条約は何の役にも立たない、なぜならサンゴはあらゆる場所で密漁され、小さな漁港に運び込まれるからだ」という。海生種について全面的に国際取引規制を拒絶する姿勢がありありと表れている

https://twitter.com/Sanada_Yasuhiro/status/780516854049759238
前回の締約国会議でサメ関係で決議を妨害しようとしてきたのは日本・韓国・中国だったのですが、今日の審議では中国も表立って今日審議の決議に反対しない立場を取り、決議にいちゃもんをつけまくる日本だけが「悪代官」として浮いてしまっていました。

https://twitter.com/JWCSJWCS/status/781526466974609408
カナダが提案したハヤブサの附属書TからIIへのダウンリストが3分の2に達せず否決。日本はダウンリストに賛成と発言。

https://twitter.com/JWCSJWCS/status/782508977032687616
ヨウムの国際取引禁止の提案、日本は附属書格上げの要件を満たしていないと反対の発言。

https://twitter.com/Sanada_Yasuhiro/status/782573163934806016
お昼のサメ関係のサイドイベントにて。水産庁の中の人「この問題は地域漁業機関で扱うべき」と相変わらずのオウム返し。その後で南太平洋地域の政府間組織代表より「サメでは地域漁業機関は全然ダメだったやん」ときっちり反論され、すっかり会場の人に(・∀・)ニヤニヤされちゃいました。

https://twitter.com/JWCSJWCS/status/782655613138509824
マレーシアのミミナシオオトカケ全種を附属書Tにする提案に、日本は附属書T掲載の要件に満たないと発言。日本、韓国、インドネシアの反対で、附属書Uで輸出割当量ゼロで合意。

https://twitter.com/JWCSJWCS/status/782862611553607680
日本はナミビア・ジンバブエ案の修正を提案し、それを受け入れた提案が秘密投票になりましたが、どちらも否決。この会議の前にマリとベナンの政府代表は、象牙の国内市場閉鎖の議題が合意されたので日本も附属書T格上に賛成するのではと話していたのですが。

https://twitter.com/JWCSJWCS/status/782950653769515008
附属書Uのスワジランドのミナミシロサイの自然死したサイの角や密猟から押収した角を国際取引できるようにする提案は、秘密投票で賛成26 棄権17 反対100で否決。日本は保全ができているとして取引支持の発言をしていました。

https://twitter.com/JWCSJWCS/status/782971726850383872
クロトガリザメSilkysharkを附属書Uに掲載する提案に日本はサメの識別など実行が負担、掲載の要件を満たしていないと発言。そして秘密投票を提案。結果は賛成111棄権5反対30で採択。

https://twitter.com/JWCSJWCS/status/782976277586247685
オナガザメ属全種を附属書U(国際取引に許可が必要)に掲載する提案に日本はまたしても反対。サメとエイは附属書Uにしても保全の利点がないと発言。提案国は附属書Uに掲載して持続可能な漁業をめざしている。

https://twitter.com/JWCSJWCS/status/782987499417309185
イトマキエイ属の附属書Uにまたしても日本は反対。生息数が掲載の要件を満たしていない、附属書Uは保全の利点がないとサメと同じ趣旨の発言。コンセンサスができず投票へ

https://twitter.com/JWCSJWCS/status/783000739308273664
メキシコ提案の観賞魚の附属書U掲載に日本は掲載要件を満たしていないので、自国の種だけ国際取引禁止にする附属書Vを提案。投票で賛成69棄権15反対21で採択

https://twitter.com/JWCSJWCS/status/783285742193836032
全体会議で委員会の合意を決議しています。クェートからハヤブサのダウンリストが否決された件で、再議論を提案。投票で再議論が否決。日本は再議論に賛成していました。

https://twitter.com/Sanada_Yasuhiro/status/783246893308637185
チチカカ湖にしか生息しないチチカカミズガエルの付属書T掲載提案に、生息国が提案してるのに日本は「科学的根拠が不明確だ」と一人いちゃもんつけるも、議長から「コンセンサスをブロックしないね」と迫られ撤回。水にあるもの皆反対というCITES水産外交の象徴的場面でした。

 なんというか・・もうここまで来ると、「アッパレ」というほかないですね・・・・。
 もちろん、現実の国際交渉の場のこと、個々の種の取引に関する議論では国毎に立場が分かれますし、どの国であれ必ずしも一貫したスタンスが取れるわけではありません(自国の産業に奉仕する面も含め)。
 そんな中、日本はあくまで教条主義的な持続的利用原理主義≠ノ固執し、『(保護のための規制強化には)なんでもかんでも反対!!』の姿勢を貫いた点で、「なんとも不思議な国だ」と世界に強烈に印象付けることに成功したといえます。
 「野生動物はとにかく消費して金に換えないと気がすまない国」だと。自国に直接の利害がほとんどない対象でさえ。
 実際、日本に対する印象は他国との相対評価で大きく下がった点は否めません。欧米のみならず、いま国際政治の舞台で先進国に肩を並べるほど大きな存在感を示している新興国・中国とインドとの比較において。

https://twitter.com/miura_hideyuki/status/781129304029749248
ワシントン条約会議で環境団体のブースを回る。日本人としてはいたたまれない。浴びせられる質問は同じ。「なぜ日本は象牙市場の閉鎖に反対?」「日本人にはそこまで象牙が必要?」。釈明するが合理的な説明にならない。アフリカ諸国が象牙市場の全面閉鎖を訴え、米中が賛成、日本はそれに反対している

https://twitter.com/Sanada_Yasuhiro/status/783051118108696578
サメ系付属書U提案が採択に必要な3分の2を大幅に上回る約4分の3の多数で委員会採択。前回サメ系に反対した韓国は終始沈黙、中国も玉虫色発言を行い、日本が経済的利害のないこの提案に固執し多数の途上国が賛成するなか惨敗しました。

https://twitter.com/JTEFstaff/status/782553807163121664
日本は、「密猟を増加させるような著しい違法取引」に寄与する国に限って閉鎖すべきと主張していた。これによると、閉鎖対象は、一部アフリカの無法地帯くらいに限定されてしまう。一方、中国は違法取引に関係のない市場など、この世に存在しないと主張、拍手を浴びた。日本の主張は顧みられなかった。

https://www.facebook.com/yasuhiro.sanada.7/posts/1072613156184764
EUはどんな話題にも発言してかんできます。米国にしてもたいがいの場面で発言します。アフリカ諸国もどんどん発言します。しかし日本は私が聞いていた限りでは、第一委員会ではこの日最後に扱った唯一の植物以外の提案であるハヤブサの付属書掲載TからUへの格下げに賛成発言をしただけでした。存在感がなくてとても残念です。

https://twitter.com/JTEFstaff/status/783553058022289408
一つ一つの国の方向性を観察しても、この10年間で大きく変わった国が多いのが印象的です。保護のもと結束する大多数のアフリカ諸国、大きな問題は残るものの大胆な保護の強化をする中国、再び毅然とした姿勢を示す米国。その中、産業利用一辺倒の政策を20年来全く変えぬ日本は発展を忘れた「化石」

https://twitter.com/miura_hideyuki/status/783679824971886594
会議の実感。中国は国際政治に長けている。日本はどうか。その近視眼的な方策は島国でこそ通用する理論であり利益だ。世界の風をリアルに感じ、大勢を読んで大胆に動く。そんな政治家や官僚が今の日本には圧倒的に足りない

https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=285215&comment_sub_id=0&category_id=256
http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:eyZOEgHH5LAJ:www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php%3Fcomment_id%3D285215%26comment_sub_id%3D0%26category_id%3D256+&cd=5&hl=ja&ct=clnk&gl=jp
象牙取引を巡っては、オバマ米大統領と中国の習近平国家主席が昨年9月の首脳会談で、国内取引の禁止に取り組むことで合意した。アッシュ氏は「中国側は今年中に取引禁止に向けたスケジュールを示すと約束した」と明らかにし「日本も共に立ち上がるべきだ」と付け加えた。

 こちらはおなじみの水産学者・東京海洋大・勝川俊雄准教授のコメント。

https://twitter.com/katukawa/status/783191073438904321
今回のワシントン条約締約国会議は、これまでと違う。中国の方向転換によって、日本が孤立するという新しいステージに突入したような印象を持ちます。

https://twitter.com/katukawa/status/782805366543220737
自然保護のシンボルともいえる象牙は、世界的な関心が高い。「日本は、持続性よりも目先の金が大切な国」という風に受け取られかねない。国益を考えたときに妥当な判断だったのだろうか?

■ワシントン条約の象牙規制

 実際、中国とインドの両国は、悪役∞引き立て役を自ら買って出た日本に事実上助けられる格好で、国際的な好感度≠大幅にアップさせるのに成功したといえるでしょう。とくに中国は必ずしも進歩的な発言ばかりではなかったのですが。

https://twitter.com/JWCSJWCS/status/780357390411718656
CITES CoP17 サイドイベント 中国政府による、中国のCITESの法執行。満席です。

https://twitter.com/JTEFstaff/status/782545130888855552
インド政府主催トラ保護サイドイベント。1973年に狩猟でトラ個体数が激減し、狩猟禁止にし9の保護区を作った。その後危機もありながら今は28に。密猟防止強化。野生動物保護リーダー国。背景にガンジーの動物たちも生きる権利ありの信念が。

https://twitter.com/JTEFstaff/status/782865269672771584
これに対し、インドとナイジェリアは象牙の資源利用に依存しない、地域によりそったプログラムが実際に成立することを強調していたことも重要だ。

 何しろ、一方の日本はといえば、こんなところまでしっかり見られちゃう始末・・・・。

https://twitter.com/NakaweProject/status/782290681435918336/photo/1
Sleaze at @CITES!!! Japan delegates treat South East Asian & African delegates to big dinner drinks night before #shark vote at #CITESCoP17

https://twitter.com/JTEFstaff/status/782480807353090048
政府が、自国のポジションへの指示を訴えるために、浮動票の国々を選んで、パーティーやディナー、1日旅行にでかけることは、私が知る限り、1994年以来、何度もあった。

 さすがにこれでは、以下のような指摘も免れないでしょう。

https://twitter.com/Sanada_Yasuhiro/status/783538357687189505
今回の#CITES COP17を通して出席した感想ですが、敢えて先進国・新興国のなかでよせばいいのに唯一嫌われ役を買って出て悪目立ちし、なのにやたら弱く格好の藁人形役とされ敗れる様は、「日本のCITESショッカー外交」と言えるかも、とも思いました。キィ。

 筆者がとくに憂慮するのは、このCITESショッカー外交国民の総意を得たものではないのに、日本のキャラクター≠ニして世界に受け止められてしまうことです。
 これらは経産省・水産庁・環境省の役人が国民の声を聞かぬまま天下り先ともなる業界擁護のために勝手に動いた結果です。さらにいえば、自国の主張が世界に受け入れられる見込みもまったくない中、業界への忠誠を必死にアピールする内向きの動機に基づくものなのです。
 国際会議の場で、ただひたすらジゾクテキリヨウ教という空疎な念仏を唱え続ける日本の役人たちが、世界中の人々の目にどれほど滑稽に映ったことか。
 それに対し、中国は間違いなく外交ポイントを稼ぎました。同国がかつての日本にも重なる一大消費国として重大な責任があるのは事実ですが、米国を始め各国と協調しながら前向きに取り組む姿勢を強く打ち出したことで、国際社会に歓迎されたのです。実効的な政策について強く問われることなく、非難をかわすことができたのは、半ば日本のおかげといっても過言ではないでしょう。中国の方から頼むまでもなく、独り勝手にエゴイスティックな行動に終始し、ショッカーのイメージを一国でかぶってくれたわけですから。
 環境外交での完全敗北は、他の分野にも影響を及ぼさずにはいないでしょう。
 IWC日本政府代表・森下氏ら捕鯨関係者の言説に端的に示される持続的利用原理主義≠ェ日本の国益にとってどれほど有害か、すべての日本国民が知るべきです。

以下、締約国会議に参加したNGOによるイベントのお知らせ
ワシントン条約第17回締約国会議報告会
●主催:認定NPO法人 野生生物保全論研究会(JWCS)
●共催:NPO法人 アフリカ日本協議会
●日時:10月14日(金)18:30−20:30
●会場:地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)
posted by カメクジラネコ at 19:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2016年08月27日

金を払ってSSCSと和解の怪! 司法判断から逃げ続ける卑劣な鯨研と共船

 最後のJARPNU(北西太平洋調査捕鯨)沖合調査が終了し、10月にスロヴェニアで開かれるIWC年次会議まで、しばらくクジラは世間の話題に上らないだろうと思っていたら、唐突にニュースが流れ込んできました。

■調査捕鯨の妨害しない 米の反捕鯨団体と合意 (8/23,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160823/k10010650891000.html
■捕鯨妨害、永久に禁止=米シー・シェパードと合意−豪団体は活動継続の意向・日本側 (8/23,時事)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016082300406&g=eco
■シー・シェパード 調査捕鯨妨害、永遠に禁止 日鯨研合意 (8/23,毎日)
http://mainichi.jp/articles/20160823/k00/00e/040/178000c
■シー・シェパード、捕鯨妨害禁止で日本側と合意 米での訴訟決着 (8/23,日経/共同)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG23H40_T20C16A8CR0000/
■逆風続く調査捕鯨 豪、NZなど根強い反対 妨害禁止合意 (8/23,東京/共同)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201608/CK2016082302000245.html
■「妨害永久に行わない」合意に抜け穴…拠点移し、高速新造船を投入 ワトソン容疑者「南極海に戻る」と豪語(8/23,産経)
http://www.sankei.com/world/news/160823/wor1608230032-n1.html
■妨害禁止「一定の効果」 調査捕鯨、米シー・シェパードと合意=訂正・おわびあり (8/24,朝日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12525379.html

日本側が金銭を支払う一方(引用〜NHK)

 これを聞いて、誰もが一瞬「えっ!?」と耳を疑ったことでしょう。
 裁判で事実上勝っている被害者が、一体なぜ加害者に金を払う必要があるのか、と。
 ネット上では「盗人に追い銭」という感想が聞かれますが、盗人より暴漢に近いとはいえ、あながち間違いとも言い切れないでしょうね。
 NHKは同記事中、他紙も第二報で、今回の取り決めは米国以外のSSオーストラリア支部等には「適用されない」とする当事者のコメントを伝えています。
 「じゃあ、一体全体何のために金を払ったの??」と、疑問はますます膨れあがるばかり。

■捕鯨妨害「禁止」 この合意では安心できぬ (8/26,産経)
http://www.sankei.com/affairs/news/160826/afr1608260011-n1.html
■[捕鯨妨害禁止] 安全性は確保されるか (8/25,鹿児島新聞)
https://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201608&storyid=78229
■捕鯨妨害禁止、安全確保の取り組み続けよ (8/25,世界日報)
http://www.worldtimes.co.jp/opnion/editorial/71537.html
https://vpoint.jp/opnion/editorial/71203.html

 今のところのマスコミの反応はこのくらい。国民の抱く素朴な疑問とはおよそかけ離れた内容で、違和感は強まる一方です。なお、最後の世界日報およびビューポイントは統一教会系メディア。いかにもそれっぽい感じ・・。
 そんな中、唯一ごくまともなツッコミを入れてくれたのが、こちらのコラムニストの保科省吾氏。

■暴力集団シー・シェパードに日本側が和解金を支払う謎 (8/25,メディアゴン)
http://mediagong.jp/?p=18812
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160825-00010000-mediagong-ent&p=1

だが、なぜ正当な理由で得た賠償金を返さなければならないのか。さっぱり分からない。
民事裁判だから原告(鯨類研究所)被告(米のシー・シェパード)とも、なんらかの利があって双方合意したということか。では、日本鯨類研究所の利とはなんなのか。シー・シェパードのそれはなんなのか。
もっと調べないと真実は分からないが、筆者はシー・シェパードにも日本鯨類研究所にもある種の怪しさを感じてしまうのである。(引用)

 当事者である日本鯨類研究所(鯨研)および共同船舶(共船)とSSCSの発表をチェックする前に、まず上掲の朝日と産経の記事中の重大な誤りについて、指摘しておきましょう。
 朝日記事(農水担当野口陽記者)は、アナログ版では8/24の三面、かなり大きな扱いです。
 オンライン記事の方は「訂正・おわびあり」とあり、鯨研が写真した写真のキャプションが間違っている旨追記されています。ちなみに、野口記者が日新丸と間違えた補給船の名称はサン・ローレル号パナマ船籍で船会社は韓国だったりします。いわゆる便宜置籍船。この辺も日本の調査捕鯨のいかがわしさ。

国際司法裁判所(ICJ)は14年、捕獲数が多く肉を販売しており、実質的に商業捕鯨に当たるとの理由で、南極海での調査捕鯨を違法と判断(引用)

 捕鯨の賛否によらず、捕鯨問題・ICJ調査捕鯨裁判の経過をウォッチしてきた人は、この一文を見てあからさまに眉をしかめたことでしょう。実際、和田浦の外房捕鯨の社長である庄司義則氏も「この記述は明らかな誤りです」(引用)と指摘するほど。

■シーシェパード(SS)と日本鯨類研究所の和解報道に関連して (8/25,外房捕鯨株式会社)
http://gaibouhogei.blog107.fc2.com/blog-entry-761.html

 国際捕鯨取締条約(ICRW)8条のもとで副産物≠フ利用は認められており、従来日本の調査捕鯨の合法性の拠り所とされてきました。「肉を販売したこと」が「違法判断の理由」と書いてしまった野口記者は、捕鯨問題の基礎中の基礎もまったく勉強していないことが明らかです。
 ただし、庄司氏の次の主張も明白な誤り。

「ICJが日本の調査捕鯨が擬似的な商業捕鯨であると認定した」と誤った報道をすることにより(引用〜外房捕鯨ブログ)

 無知な野口記者と異なり、事情を知っているはずの庄司氏のコメントは狡猾な誘導といわざるをえません。外房捕鯨は現在IWCの規制対象外となっている日本近海のツチクジラとゴンドウを捕獲対象としており、本来なら南極海母船式捕鯨とは一線を画する立場であっていいはずですが・・捕鯨支持国向けのレクチャーを引き受けたり、侵襲的で硬直的な性格も含め、中央の捕鯨サークルとどっぷり一体化してしまっているのは、きわめて残念なことです。
 ICJは、JARPAUは「商業捕鯨モラトリアム違反」である、すなわち商業捕鯨だったとはっきり認定しています。そして、その証拠として、本川一善水産庁長官(当時)による「刺身にしたとき非常に香りと味がいいミンククジラを安定的に供給するため」との国会答弁を採用し、判決文にもきちんと明記されました。要するに、科学が主目的≠ナ鯨肉が副産物≠ナさえあれば、JARPAUは商業捕鯨ではなく合法的な調査捕鯨として認められていたのです。しかし、ICJは、鯨肉こそが主産物であり、その安定供給がJARPAUの主目的だったときっぱり認定したのです。
 読者の皆さんには改めて説明の必要もないと思いますが、詳細はこちら。

■ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html

 朝日記事に話を戻しましょう。
 「捕獲数が多く」も詳細な補足が必要。ナガスクジラやザトウクジラは捕獲数が少数ないしゼロでも「成果あり」としながら、クロミンククジラのみ大量経年致死調査が「不可欠」とする矛盾を日本側が説明できなかったことがその理由。詳細は上掲拙記事解説をご参照。
 判決後に「じゃあ、捕獲数を増やせばよかったんだ」と外野の捕鯨推進派が訴えたものの、日本はNEWREP-Aで対象種をクロミンク1種のみに絞ったうえ、捕獲数を333頭に縮小、ますます矛盾だらけになったのが実情です。

調査捕鯨を日本が続けるのは、鯨が増えていることを証明するデータを集め(引用)

 こちらも完全な間違い。NEWREP-Aの主目的は「RMPの高精度化」「生態系モデルの構築」。
 なお、クロミンククジラについては、IWC科学委員会におけるJARPAレビューの中で「調査期間中の増加の停止」が確認されています。
 いま「増えている」と日本側が主張しているのは、「商業捕鯨対象になりえる」との理由で唯一の捕獲対象としたクロミンククジラではなく、ザトウクジラとナガスクジラ。ただし、ナガスクジラについてはIWC科学委員会で生息数について合意されてはおらず、どちらも日本をはじめとする捕鯨会社の乱獲によって激減した状態から少し回復しつつあるとみられるだけで、「増えている」という言葉を用いるのは大きな誤解のもとです。
 詳細はこちら。

■間引き必要説の大ウソ|拙HP
http://www.kkneko.com/mabiki.htm

 続いて、おなじみパクリ記者佐々木正明氏がリオからわざわざ届けてくれた産経記事。ただ、朝日ほどひどくはないといえ、いつもの佐々木節でたいした中身はなく、適当に書いた作文≠ヌまり。

一方、ワトソン容疑者は最近、「フランスを出る」「南極海に戻る」などとの発言を繰り返しており(引用)

 佐々木氏はこんなことを書いているのですが、以下の海外報道が出た25日の2週間前には、当のポール・ワトソンは米バーモント州に入っていた模様。まともなジャーナリストだったら穴に隠れたくなるくらい恥ずかしいチョンボ。
 不思議でならないのは、こんなガサツな作文で原稿料を要求できる佐々木記者と支払える産経の神経。ろくに裏取りもしないで駄文を書く暇があったら、リオでちゃんと仕事すりゃいいのにね・・

■US anti-whaling group to stop interfering with Japanese (8/25,FOX NEWS)
http://www.foxnews.com/world/2016/08/25/us-anti-whaling-group-to-stop-interfering-with-japanese.html
■Sea Shepherd's Paul Watson Returns to the U.S (8/25,MarEx)
http://www.maritime-executive.com/features/sea-shepherds-paul-watson-returns-to-the-us

 マスコミ報道チェックはこんなところで、当事者の発表内容を検証してみることにしましょう。

■対シーシェパード訴訟での調停合意のお知らせ|日本鯨類研究所
http://www.icrwhale.org/160823ReleaseJp.html
■妨害差止訴訟・豆知識|〃
http://www.icrwhale.org/10-A-b.html
■米国第九巡回区控訴裁判所の法廷意見|〃
http://www.icrwhale.org/pdf/daikyujunkaihoutei.pdf
■米国第九巡回控訴裁判所・命令|〃
http://www.icrwhale.org/pdf/karishobunmeirei.pdf

 鯨研&共船v.s.シーシェパードの場外プロレスの経緯は、上掲2番目のリンクにあります。
 まず、2011年に捕鯨サークルの2角をなす鯨研・共船が米国のワシントン州米連邦地裁に妨害行為の禁止を求めて提訴。同地裁が仮差止命令の申し立てを却下したため、翌2012年に鯨研&共船側が第九巡回上訴裁に控訴。こちらで鯨研&共船側の言い分が概ね通ったわけです。
 その後SSCS側が命令を無視したため、法廷侮辱罪として賠償金255万ドル(約3億円)を課せられ、実際に連中は支払ったわけです。
 法廷侮辱罪の罰金は「原告の弁護士費用・経費及び被告の妨害により生じた損害」(引用) 3億円が懐に入ったといっても、決してまんまと大金をせしめたわけではありません。どんな裁判の賠償請求の場合も同じですが。
 つまり、船や機材などの修理代や弁護費用等にかかった実費分を加害者に払わせたはずなのに、その一部(金額不明)をわざわざ返してしまったのです。まさに保科氏の言うとおり、「さっぱり分からない」ですね・・。
 民事賠償請求で、そのような和解が一体起こりえるでしょうか?
 示談金(通常相当な高額)を加害者側≠ェ支払う代わり、刑事告訴を取り下げるという取引なら、よく聞く話です。しかし、このケースでは金を払ったのは被害者≠フ方なのです。
 暴行を受けた被害者側が、すでに裁判自体は勝訴目前(判決には至っていないものの、原告の主張に沿って差止命令を出した状態)のステータスでありながら、損害補填のために得た賠償金を「和解金」の名目で返すなんて話は、およそ聞いた試しがありません。
 朝日記事に写真があるとおり、13年に実害を蒙ったのは韓国企業が所有するサン・ローレル号。鯨研&共船がSSCSから得た賠償金は同号の補修費用に充てられるべきですが、こうなると彼らが本当に受け取れたのか疑わしくなってきますね・・。
 ちなみに、この3億円と同額の予算が「調査捕鯨円滑化事業」の名目のもとSSCS妨害対策費として2009年度から付けられ、その額は年を追う毎に膨れ上がって年間11億円を越え、東北大震災のあった2011年には復興予算まで流用して約23億円が確保されました。
 修理費用にも充てずSSCSに金を戻すくらいなら、国庫に返還するのがスジというもの。
 産経佐々木記者にしろ朝日野口記者にしろ、納税者の視点が圧倒的に欠如しているといわざるをえません。
 報道されているとおり、SS-AUSによる妨害は継続が考えられ、オーストラリアで米国と同様に司法による解決をはかることは不可能です。
 ちなみに、豪連邦裁による日本の調査捕鯨裁判の経緯については、下掲リンク先をご参照。まじめに賠償金を払ったSSCSと異なり、共船は豪裁判所の命令をガン無視。出廷要求にすら応ぜず。

【共同船舶はオーストラリア連邦裁判所法廷侮辱罪での罰金100万豪ドル(約8750万円)支払い命令を無視して未だ納めず】
http://textream.yahoo.co.jp/message/1834578/a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa/1/75954

 SS-USからの資金の流れがなくなるといっても、妨害の規模が縮小するという具体的な根拠は何もありません。産経佐々木記者は抜け穴≠ニ表現していますが、民事の取り決めにすぎず、日本の脱法調査捕鯨と同じ意味での国際法の網の目をかいくぐる抜け穴とは言えないものの、外れてはいません。新船はすでに建造済み、実行部隊はもともとAUS支部、支援者には寄付を直接そっちへ送るよう呼びかければ済む話で、SS側が実質的に困る要素はほとんどないと言っていいでしょう。つまり、今回の決定を受けて、国から安全対策にかける予算が減ることはないのです。日本国民には何の利益もないのです。
 一方、NEWREP-Aでは妨害による計画への支障を減じる万全の対策を講じている旨も、水産庁は公言しています。
 要するに、今回の当事者同士の表向きの和解は、情勢の変化を何ももたらすわけではないのです。
 当事者以外には詳細がベールに包まれたこの不可解な和解は、さらに大きな疑念を呼び起こします。

妨害禁止で合意したのは、訴訟費用がSSに重くのしかかったためとの見方がある(引用〜朝日)

 誰の見方なのか記事には書かれていませんが、朝日野口記者にこう耳打ちしたのは、鯨研・共船関係者に間違いないでしょう。
 しかし、2つの観点でこの見方≠ヘ決定的に間違っています。
 SSCSにとって少なからぬ費用負担となったのは、訴訟費用というより3億円の賠償金(大半は船等の損害賠償)のはず。産経・佐々木氏が以前記事にしていますが、オランダの宝くじ団体から入手した11億円が年間予算に相当するとすれば、3億円の損失は確かに痛いでしょう。
 ただ、弁護士委託等のそれ以外の訴訟関連費用より、南極海に船を送る妨害活動の経費の方がはるかにコストがかかります。反訴によって賠償金を減額させる、あるいは相手からも賠償金を得るという戦術も考えられるでしょう。敵≠ナある相手から金を受け取り、秘密の協定を交わしたうえで手を引くのは、SS流の直接行動をこれまでずっと支持してきたサポーターたちにとってみれば裏切り行為と映るもので、今回の和解自体が同団体のイメージダウンにつながり、寄付収入の減少の形で打撃を与えても不思議はありません。まさに本末転倒です。
 もうひとつ、もし本当に金がなくてSS側が困っているとすれば、なぜ鯨研・共船側から手を差し伸べてやる必要があるのでしょうか? SSCSが本当に財政的に行き詰まり、訴訟費用の負担に喘いでいるなら、鯨研・共船側から救済を申し出なくても、SSCS自らの判断で訴訟ないし妨害活動ないしはその両方を断念するでしょう。鯨研・共船側から、自分たちの蒙った損失分の補償金を返上してまで、彼らに援助≠オてやる理由は何もないはずです。共謀者でない限り。
 すなわち、SS側の不利益とは別に、鯨研・共船側にとってここで妥協を成立させておきたい強固な理由があるはずなのです。仇敵と握らなければ確実に失うもの、あるいはそうすることで得るものが。

本合意の詳細は、裁判所により公開された永久的妨害差止に関する情報を除いて合意条項に基づき対外秘となっている。(引用〜鯨研プレスリリース)

 鯨研・共船側から返還された額が相当大きかった──おそらく3億円の大部分が返ったのでしょう──疑いとともに、お互いにとってそうしたデメリットを補って余りある何かが、この密約の裏に隠されているのは否定の余地がありません。
 誰もがこう疑問を抱いて当然でしょう。

日本鯨類研究所の利とはなんなのか。シー・シェパードのそれはなんなのか(再引用〜メディアゴン)

 以下は筆者の推理。
 まず、SSCS側の大きな利について。


I am now free to travel in the USA and France(引用)

 これはワトソンの8/19のFB。まさに鯨研のプレスリリース直前のコメント
 それに対して、彼が「フランスを出たがってる」と書いてしまったお間抜けな産経佐々木氏が、悔しまぎれにつぶやいています。


米国は日本と犯罪人引き渡し条約を結んでおり、日本側が要求すれば米国はそれ相当の対応をしなくてはなくなります(引用)

 しかし、ワトソン本人の発信を見る限り、びくついている様子は微塵もなさそうです。米国が日本からの彼の身柄請求に応じること、あるいはそもそも日本からの身柄請求自体が来ないことを、確信したうえでの発言と受け取れます。
 むしろ、引退・代代わりもささやかれていたワトソンは、この春のタイミングでSS-USAの代表兼総責任者に復帰し、潮目が変わって℃ゥ由の身になったかの如く晴れ晴れとした風情で、当分米国に腰を落ち着けて任務に励むかに見受けられます。
 ちなみに、死刑存続国家である日本は、欧州諸国との間で犯罪人引渡し条約を結べず、条約を締結したのは米国と韓国のたった2国という先進国として恥ずかしいありさま。
 いずれにしろ、ワトソンがわざわざ直前のタイミングで自信にあふれるコメントを公表したことは、極秘事項の中に彼の身柄に関する事柄が含まれているのではないかという、強い疑念を呼び覚まします。
 というより、SSCS側にとって、南極海で捕鯨を継続している当事者との、金を受け取ることも含めて自分たちに不利を強いる取引に応じるだけの十分な利得があるとすれば、それは「ほぼ3億の返還」+「ワトソンの自由」以外に考えられないという気がするのです。

 では、鯨研・共船側にとっての大きな利とは一体何でしょうか?
 こちらの答えはより明瞭です。
 鯨研・共船側のねらい≠示すヒントは、彼らの発信している情報の中に隠されています。

反訴も含め正式に収束(引用〜プレスリリース)
連邦地裁に差し戻しとなった、永久差し止めの審理は、2016年10月11日に開廷の予定(引用〜鯨研リンク2番目)

 鯨研・共船の行動から明らかなのは、「金を払ってでも、今ここで和解しておく必要があった」ということです。
 では、もし仮に和解をしなかったとしたら、一体何が起こったでしょうか?

 ここで仮定を置くことにしましょう。
 まず、鯨研・共船側の主張が全面的に正しい場合。
 上述の流れで、暫定差止命令と同様に、SSCSに対して永久差止の判決が米連邦裁から下されることになるでしょう。和解による合意内容より厳しいものになった可能性さえあるでしょうね。
 それに対してSSCS側が反訴した場合。
 反訴の内容は、調査捕鯨船団側も人命に危害を加え得るLRADや放水による武力≠ナ応じ、自分たちにも被害が生じたとする主張を展開するものになるでしょう。
 ただ、それで狙えるのは損害賠償額の減額程度と考えられます。「先に手を出したSSCSが悪い」と米判事が判断すれば、それでおしまいでしょうね。
 鯨研・共船側にとっては、「自分たちも暴力をふるった」というエビデンスが残るマイナスイメージくらいで、マスコミを掌握できている間は国内で非難が高まる恐れはないとみていいでしょう。
 どちらもいま沖縄・辺野古で海保が、高江で機動隊が武器ひとつ持たない市民に対してふるっている圧倒的な暴力に比べればたいしたことではないと筆者は思いますけど・・。
 こうして裁判が鯨研・共船側ほぼ完全勝利の形で結審します。
 その後は、SS-USAと本部がそのまま加担し続ける形で、妨害活動が続行されるケースが考えられます。
 しかし、判決はすでに確定し、永久差止命令が下りているため、SSCSは妨害を行う度に法廷侮辱罪で罰金を命じられるでしょう。毎年、SSCS側は3億円を失い、日本側の懐には3億円が転がり込みます。しかも、再犯を繰り返すのは悪質との理由で罰金額は年を追う毎に引き上げられるでしょうね。また、米国内での公益団体としての認可は取り消され、非合法組織としての扱いを受けることになるでしょう。SSCSの台所事情が訴訟費用が痛手になるほどなら、存亡の危機に立たされるのは必至です。
 おや・・おかしいですね。鯨研・共船側にはまったく何のデメリットも存在しません。むしろ、願ったりかなったり。対策を十分に練ってある妨害を後数年だけ辛抱すれば、目障りな連中が勝手に自滅してくれるわけですから。

 次に、もうひとつの仮定に沿った展開を考えてみましょう。
 それは、鯨研・共船の思惑から逸れる、予想外の要素が裁判に付け加わった場合。
 そんなことがあるでしょうか? 主席判事がSSCSのパフォーマンスに対して「義足や眼帯がなかろうとおまえら海賊だ」と不快感も露に表明した以上、ひとつのきっかけで判決内容が覆ったりするでしょうか?
 実は、鯨研・共船にとって予想外の事態は、すでにあったのです。
 もちろん、米司法がSSCSの妨害を肯定することはないでしょう。どちらにしたって、SSCSの有罪はほぼ確定です。
 しかし、和解の形で終わらず、裁判がこのまま進行した場合、判決文は2013年2月に公表された控訴審の法廷意見の主旨とはまるで別のものに置き換えられることになるでしょう。
 そう・・その予想外の要素≠ニは、国際司法裁判所によるJARPAUの違法判決。
 賠償が課せられた期間は2012年/13年から2013/14年までの2シーズン、つまりJARPAUのとき。
 米連邦控訴裁の差止命令には、ICJの判断は一切加味されていないのです。シンプルに日本の調査捕鯨は国際法上合法だという前提に立っていたのです。

国際捕鯨取締条約の第8条は、締約国によって発給された調査許可に従って行われる場合、鯨類の捕獲を認めている。日鯨研は、日本からそのような許可を受けている。(引用〜鯨研リンク3)
捕鯨に関して公共の利益を定義している法は、捕鯨条約法と海産哺乳類保護法であり、両者とも捕鯨取締条約の下で発給された科学許可に従った捕鯨を認めている。日鯨研の活動はそのような許可の下で行われており、よって、海洋生態系に関する議会の政策と合致する。(引用〜鯨研リンク3)

 この部分は完全に差し替えを余儀なくされます。JARPAUは、ICRWと米国海産哺乳類保護法に背く違法行為であり、海洋生態系に関する米議会の政策に真っ向から反するものなのです。国際法の最高権威によって、すでにそういう判定が下りているのです。
 つまり、和解の形で途中で裁判を収束させず、続行させた場合には、10月のIWC年次総会が開かれるタイミングで、国民から忘れられつつある日本の調査捕鯨の違法性に、米裁判所による再認定という形で、改めてスポットライトが当てられることになるのです。
 そう・・それこそは、盗人に追い銭≠やってでも、捕鯨サークルとしては回避すべき事態なのです。ついでにいえば、NEWREP-Aに対して新たな妨害が企てられた場合には、その違法性が議論の焦点にならざるをえないでしょう。
 ICJ判決後、日本は調査捕鯨の看板を挿げ替えたり、国連のICJ受諾宣言の書き換えをやったり、国際司法判断からともかく逃げ続けてばかりいました。今回の一連の顛末も、蓋を開ければその延長にすぎなかったわけです。

 どう考えても被害者らしくない、まともな日本人の目にはあまりにも奇異に映る鯨研・共船の行動の裏には、「自分たちの違法行為を白日のもとにさらしたくない」というエゴイスティックな動機が働いていたと考えれば、皆さんもすべてがストンと腑に落ちるでしょう。
 捕鯨問題に詳しい環境外交のエキスパート・東北大の石井敦准教授は、捕鯨サークルとSSCS等の過激な反捕鯨団体の関係を指して「逆予定調和関係」と呼んでいます。
 今回の一連の経緯から、まさにお互い持ちつ持たれつ≠フ関係が改めて浮き彫りになったといえるでしょう。

   *   *   *

おかげさまで、HPリニュアル版、まとめ、ともに好評をいただいております。
引き続き周知にご協力くださいm(_ _)m

■クジラを食べたかったネコ
■「油目的で肉を捨てていた西洋と異なり、日本はクジラを余すところなく完全利用してきた」って本当?
posted by カメクジラネコ at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系